【完結】ルビーがお姉ちゃん   作:座右の銘

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ライブ観戦

「ルビー、生放送始まるぞ。起きなくていいのか?」

「むー・・・あとちょっとだけ・・・。」

 

目の前で眠っているのは俺の双子の姉のルビー。母であり推しのアイドルであるアイのことが大好きな俺のお姉ちゃんだ。そして俺と同じく転生者であり、幼児である俺たちはお互いが現状唯一の話し相手である。

 

寝ているルビーを先ほどから何度も起こそうとしているのだが、一向に起きる気配がない。

せっかく気持ちよさそうに眠っている姉を無理やり起こすのは心苦しいが、今はそうしなければいけない理由がある。B小町のライブの生放送がもうすぐ始まるのだ。

 

昨晩からとても楽しみにしていた一大イベントだし、ルビーは絶対に見逃せないはずだ。互いが眠っていたら起こす約束もしているので、もしルビーがライブを見逃したら恐らく俺が怒られるのだろう。ここは何とかして起きてもらいたいのだが。

 

「アイの復帰後の初仕事だぞ。起きないと後悔するぞ。」

「むり・・・眠い・・・」

 

前世の記憶があるとはいえ所詮は赤ん坊、幼児の体では眠気に抗えないようだ。俺も今の体では睡魔に勝てないからその気持ちは良く分かる。だがライブのために朝から体力を温存した俺に対し、ルビーはつい数十分前まではしゃぎまわっていた。人生経験の差が出たな。

 

力の抜けたアホ面をさらしながら眠りこける姉をよそに俺は一人テレビを見つめる。しばらく待つと、ついにお待ちかねの番組が始まった。

 

テレビから耳なじみのある音楽が流れてくる。ステージ上で歌って踊るアイがテレビ画面に映し出される。可愛い。相変わらず完璧なパフォーマンスだ。しかも産後間もないというのにセクシーなボディラインを見せつけながらキレのあるダンスを披露している。これが若さか。いや今は俺の方がずっと若いが。

 

アイの晴れ舞台を堪能していると、よたよたと可愛い物体がこちらへやってくる。やっと起きたかお姉ちゃん。

 

「まって・・・Nステもう始まってるじゃん!!どうして起こしてくれなかったの!?」

「何度も起こしたけど。」

「・・・マジ?」

 

ルビーが慌ててテレビの方へやってくる。眠気には勝てないお姉ちゃんだが、ママの歌声にはもっと勝てないようだ。なんと分かりやすい姉だろう。

 

「ターンの時の表現力まじやばない!?鬼気迫りすぎてむしろ鬼!?」

 

ライブを視聴するルビーは生き生きとしていてアイに負けず劣らず可愛い。小さな体を精一杯に動かして、楽しくて仕方がないというオーラを全身から振りまいている。

 

テレビにかじりついてひたすらアイのことを褒めちぎるルビーを見ていると、こちらまで楽しくなってくる。

 

「やっぱりアイは唯一無二の天才だ。」

「ほんとそう!ウチの母まじのまじで逸材過ぎる・・・!」

「お、今のカメラ目線決まってたな!」

「やばい魂持ってかれるかと思った!いやもう持ってかれてる!」

「アイー!いいぞー!可愛いぞー!」

「ママさいこー!頑張れー!」

 

生まれて初めてのB小町のライブ視聴は大いに盛り上がった。ルビーはアイの一挙手一投足を食い入るように見つめ、目線が合えば歓喜の声を上げる。俺も負けじとステージ上のアイドル達に負けない熱量で画面の向こうの推しを応援する。

 

画面に映るアイの笑顔に心を支配される。耳をくすぐる可愛い歌声に胸が高鳴る。アイを見ている間、辛いこと苦しいことをすべて忘れて、ただ幸せな気持ちで満たされる。やっぱりアイは最高だ。隣で夢中になってアイを応援しているルビーも同じ気持ちだろう。

 

ライブが終わるまでの間、俺たち姉弟この上なく幸せな時間を堪能したのだった。

 

「はあ、はあ・・・最高だったね、アクア。」

「ぜえ、ぜえ・・・うん。さすがだった。やっぱりアイが世界一のアイドルだと再確認した。」

「うわ、アクア、汗びっしょり。大丈夫?」

「それはお前もだろ。まあ、俺もライブに夢中でこんなになるまで気づかなかったんだけどな。」

「このままじゃ風邪ひいちゃう。大丈夫?寒くない?ちょっと待っててね、お姉ちゃんミヤコさん呼んでくるから。」

「うん。」

 

お互い気づいたときには息も絶え絶えで、汗をびっしょりかいていた。アイのライブに熱中するあまり、自分がまだ赤ちゃんであることも忘れて全力で動いてしまっていたらしい。

ルビーはいつものお姉ちゃんムーブである。ちょっと気に入らないが、自分を心配してくれているので悪い気はしない。

 

今日は最高の一日だ。最推しのアイドルであり母親であるアイのステージをルビーと共に思う存分楽しんだ。この後は心地よい疲労感に包まれながら眠って、起きたらアイが傍にいて笑いかけてくれるのだろう。

こんな生活がこれからも続いていくのか。ああ、俺は世界一の幸せ者だ。

 

星野愛久愛海(あくあまりん)として生きられる幸福を噛み締めながら、俺はついに体力の限界を迎え、眠りに落ちるのだった。

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