【完結】ルビーがお姉ちゃん   作:座右の銘

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顔合わせ

新生『B小町』のファーストライブから4か月が経ち、もう12月。

 

配信業はMEMちょのおかげで順調。アイドル姉妹としてチャンネル登録者も着実に増えてきている。小さいけどライブも何度か開いた。アイドル業は軌道に乗っている。

 

そして今日は役者としての大仕事。その初日だ。

 

舞台『東京ブレイド』のスタッフ顔合わせ。『つるぎ』役の私は『刀鬼』役のアクアと二人で集合場所のスタジオへと向かう。

 

「『劇団ララライ』って硬派なイメージだったけれど、よくもまぁ2.5受けたわよね。」

「と言っても半分は外部から集めたキャストだ。緊張しなくても良いと思うぞ。」

「緊張なんてしてないんだけど。……あっ」

 

前方から歩いてくる見覚えのある美少年。ドラマ『今日あま』で共演した鳴嶋メルトだ。今日あまに出演した役者は鏑木さんが無理やりねじ込んだ演技の出来ないモデルが多くいたが、彼もその一人。

 

正直、あまり良い印象はない。

 

「メルトくん」

「……オス」

 

一応知り合いなので挨拶だけはしておく。するとメルトの方から話しかけてきた。

 

「この講演、鏑木Pが外部の役者のキャスティングに噛んでるんだと。つまり俺たちは鏑木組ってわけだ。よろしくな。」

「……よろしくね。」

「なんだよその間は…」

 

社交辞令的によろしくだけ言っておいた。アクアは沈黙。

 

どうしても今日あまの悲劇が脳裏を過る。いかにララライが主催とはいえ、この男が居たのではこの舞台もどうなるか分からない。

 

しかしメルトもこの舞台にかける思いは今日あまとは異なるようで、あれから演技の勉強をしてマシになったとか、駄目だったら遠慮なく言ってくれだとか、殊勝なことをほざいている。

 

アクアの前でそんな事を言ったらどうなるか……

 

「メルト。今回は本気なんだな?」

「ああ。あの時とは違う。お前たちから見たら全然だめかもしれないけど、俺なりに全力を尽くすつもりだ。」

「なるほど、良く言った。俺も出来る限りサポートするから遠慮なく頼ってくれ。よろしくな。」

 

ほら、アクアの役者魂に火がついてる。さっきまでメルトの挨拶も無視してたくせに、演技に真剣な姿をちょっと見せただけでこれだ。

 

こうなったら止まらないわよ、こいつ。

 

壁に貼られた『Bスタジオ』の文字。

 

集合場所のスタジオであることを確認し、大きな扉を開く。中にはすでに私達以外の関係者がほとんど揃っていた。

 

「『キザミ』役を務めさせていただきます。『ソニックステージ』所属鳴嶋メルトです。」

 

丁寧にお辞儀をしながら挨拶と自己紹介をしている。今日あまの時とはまるで別人。どうやら本当に心変わりしたらしい。

 

「皆早いねー。まだ10分前なのに。揃ったみたいだから紹介始めちゃおっか。ボクの名前は雷田(らいだ)。この公演の総合責任者。で…こっちが演出家の(きん)ちゃんね。」

金田一敏郎(きんだいちとしろう)だ。」

 

最後にスタジオに到着した雷田さんにより、粛々と紹介が進められる。

 

脚本家のGOA(ゴア)さん、2.5経験豊富な役者の鴨志田朔夜(かもしださくや)、ララライの役者達。その中には当然黒川あかねの名前もある。

 

そして最後は主演俳優。

 

「起きろバカモンが!」

「って。あぁサーセン。この芝居の主演の……役名なんだっけ。まぁ良いか。姫川大輝。よろ。」

 

壁にもたれて居眠りする無精ひげを生やした男が一人。演出の金田一さんに蹴飛ばされて目を覚ました。

 

劇団ララライの看板役者、姫川大輝。こんな態度でも誰も文句を言えないのはさすが大物と言ったところか。

 

「このメンバーで一丸となり、舞台『東京ブレイド』を成功に導きましょう!」

 

総合責任者の雷田さんの元気な掛け声で、顔合わせは終了した。

 

・・・

 

演出の金田一さんの指示により、顔合わせに引き続き本読みも実施することになった。

 

しばらく休憩時間。早速アクアは彼女のあかねと演技の話で盛り上がっている。

 

「よう。あかね。ようやく台本を確認できるな。」

「そうだね。ずっとあっちの方見てるけど、気になるの?」

「ああ。キザミ役の鳴嶋メルト、実は前に共演したことがあるんだ。その時はやる気も実力も無い顔だけの奴だと思ったんだが、どうにも今回はやる気みたいなんだよなぁ。」

「嬉しいの?」

「そりゃ、皆がやる気になってくれた方が良いに決まってるだろ。俺だって楽しく()りたい。」

「オファー受けて演技をやりに来てるのに、やる気のない人なんて居ないでしょ。」

「ララライで演技やってるあかねは知らない世界かもしれないが、本当に居るんだよ。なんとなく芸能界に入って、事務所に言われるまま適当に演技して何とも思わないような奴が。」

「随分と気持ちが籠ってるね……」

「今日あま見ただろ? あの中で演技させられるところを想像してみろ。」

「ああー……うん。分かる。」

「だろ? そんな適当な役者の一人だと思ってたメルトがあんなにやる気だしてるんだぜ? ここは先輩として演技の楽しさをみっちりと教えてやらないといけないよな。」

 

いつになくノリノリだ。今日あまの次の仕事がこれじゃ、テンションが上がるのも当然だけど。

 

手元には本読みの前に配られた台本。人気漫画『東京ブレイド』を原作として、脚本家のGOAさんが書き下ろしたものだ。

 

台本をめくりながら、改めて東京ブレイドという物語を確認する。

 

『東京ブレイド』はいくつかのチームが抗争を繰り広げ、いつしか互いに友情や、愛情を深めていく王道バトル漫画だ。

 

私が演じる『つるぎ』は主人公たちの『新宿クラスタ』に所属していて、黒川あかね演じる『鞘姫』やアクア演じる『刀鬼』が所属する『渋谷クラスタ』が敵として立ちはだかる。

 

今回の劇はこの2チームが戦う『渋谷抗争編』を柱にシナリオは展開するようだ。

 

気に入らないことに、鞘姫と刀鬼は許嫁。今ガチと言い今回の舞台と言い、この世界の神様はあの手この手でアクアとあかねをくっつけようとしてくる。私、前世で悪いことでもしたんだろうか? 

 

どうも神様は黒川あかねばかり贔屓している気がする。

 

「時間だ。本読み始めるぞ。」

 

演出がスタジオに戻り、そのまま本読みが始まる。

 

安定した実力を見せるのはララライの役者陣。さすが舞台をメインに活動しているだけの事はある。アクアもやはり上手い。映像演技とは勝手が異なる舞台演技だというのにそつなくこなしている。

 

意外なのはメルトだ。今日あまからの9か月間それなりに役者として勉強してきたとのことだが、役者をギリギリ名乗れる程度には仕上がっている。ついでに彼を見るアクアの目がキラッキラに輝いてる。本当に楽しそうね、アイツ。

 

初日と言うこともあり、本読みが終わるとその日はすぐに解散となった。そそくさと帰る人もいれば、残って本読みや雑談をする人もいる。私は少しスタジオに残り、本読みで気づいたことを思い返しつつ台本に目を通す。

 

アクアとの共演は……ラストの数シーンだけか。残念。代わりに姫川さん、メルトとの共演が多い。あの姫川大輝の演技を間近で見られる機会など滅多にないだろう。今回ばかりはアクアにこだわる必要もないか。

 

ついでに共演シーンが多いメルトも巻き込んで1から鍛え上げてしまおう。

 

ブレイド(姫川)キザミ(メルト)つるぎ()。主演グループの人で稽古三昧ね。本読みでのブレイドとつるぎの掛け合いも注目を浴びていたし、久々に楽しい仕事になりそうだわ。

 

とまぁ、そんな感じで今後のプランを練る私。

 

「有馬かな。この後メシどう。」

「良いわね。私も聞きたいことが山ほどあるわ。」

 

私の想いが通じたのか知らないが、姫川さんの方から食事のお誘いが来た。

 

「メルトも来なさい。」

「俺も?」

「共演シーンが多いんだから当然でしょ。」

 

展開が早くて助かるわね。早速今回の舞台について徹底的に語り合おうじゃないの。キャラクターの考察、気になる役者、演技のやり方。聞きたいことは無限にある。

 

かなり良い役を貰えたし、相方は超一流。おまけに鍛えがいのある後輩もいる。

 

楽しい仕事になりそうね。

 




主要キャラが全員フルスペックかつやる気満々。


有馬かな
黒川あかねに演技で勝ちたいのでとても気合が入っている。
お姉ちゃん達のおかげで過去のトラウマを克服した。

星野アクア
今日あま以来となる演技の仕事でとても気合が入っている。
4歳で監督に弟子入りし、復讐などせずに演技や映像制作について広く学んでいる。

黒川あかね
かなちゃんに演技で勝ちたいのでとても気合が入っている。
早い段階からアクアと共に舞台への準備を進め、スタートダッシュを図る。

鳴嶋メルト
役者としてのプロ意識が芽生えてとても気合が入っている。
重点的にフォローすべき役者としてアクアと重曹にマークされている。

姫川大輝
劇団ララライの看板役者。文句なしの作中トップレベルの役者。
やる気が無いように見えて演技に対する情熱は本物。

鴨志田朔夜
2.5次元の舞台に引っ張りだこな実力派俳優。
鏑木組なのでイケメン。

ララライの役者達
噂によると一流の役者しかいないらしい。舞台をメインに活動している。
2.5次元が初めての役者が多数。

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