【完結】ルビーがお姉ちゃん   作:座右の銘

8 / 165
私も踊って良いんだ!

あの映画撮影から2年の年月が経過した。

 

アイが二十歳になり、大きく飛躍する年の話だ。

 

「んー今日も可愛い!!可愛いよー!!」

「まぁトータルではママの方が可愛いけどね。」

「なんの対抗意識」

 

私たちは幼稚園に入園した。

 

園児服を着た私とアクアにママはご満悦の様子。私もアクアの園児服姿にテンションが上がりっぱなしだ。まぁ、ママの可愛さには及ばないけどね。

 

前世の私が病気になったのは確かこれくらいの年で、幼稚園で遊ぶのは初めての体験だ。弟のアクアはそうでもないようで、遊具には目もくれず難しそうな本を読んでいる。少しは園児らしく出来ないのだろうか。

 

とにかく、前世でできなかった遊びを満喫できて初めての幼稚園生活は毎日が楽しかった。そんなさなかの出来事。

 

「皆ー、お遊戯の時間ですよー。皆の踊りを保護者の方も見に来てくれるから!一生懸命練習しましょうね!」

「やだ!!私やらない!!」

 

お遊戯の時間でダンスをすることになったのだ。でもダンスなんてできる気がしない。しかも保護者が、ママが見に来る。私は思わずその場から逃げ出してしまった。

 

前世でみた光景が思い出される。

 

思い通りに動いてくれない身体。歩こうとしてもすぐに転んでしまい、踊るどころではない。目の前に迫る病院の床に何度ひじを打ち付けたことだろう。

 

木陰でいじけていると、アクアが追いかけてきた。

 

「なんで逃げ出すのさ。」

「私ダンス下手だから。っていうかしたことない。」

「いつも部屋に閉じこもって遊んでたのか?現代っ子め。」

 

そんな生易しいものではないけれど。

 

「まぁ・・・大体そんな感じ。何度か挑戦したけど出来なかった。運動は出来る気がしない。」

「これまでの事は知らんけど・・・それでいいの?俺たちの人生、これから長いんだぞ?」

 

これからの人生・・・

 

そういえばアクアは前世で何歳まで生きていたんだろう。12歳で死んだ私とは人生観が違うというか、ちゃんと先のことまで考えてる。

 

「でも・・・。」

「大丈夫だ。いつもあんなに元気に走り回ってるじゃないか。それにお姉ちゃんはアイの娘だぞ?ダンスの才能だってあるに決まってる。」

 

元気に走り回って・・・。そういえばそうだった。私、元気だ。ちょっと前世の辛い記憶を思い出して、踊れないと決めつけていただけ。

 

今の私は病気じゃない。大人になるまで生きていられる。身体だってちゃんと動く。ダンスだって踊れるかもしれない。

 

「そうだよね。今の私ならきっとダンスだって踊れる!ありがとうアクア!」

 

そうと決まれば、練習だ。家には大きな鏡がある部屋があって時々ママはそこでダンスの練習をしている。ママは一流のアイドルだから、家でも練習を欠かさない。私もそこで練習しよう。

 

家に帰ると、さっそくダンスの練習を始めた。大きな鏡の前に立ち、恐る恐る体を動かしてみる。しかし思ったようにはいかない。うまく動けずに転んでしまう。

 

やっぱり私にダンスは踊れないのかな。そんなことを考えていると、ママとアクアが部屋にやってきた。

 

「あれ?ダンスの練習?じゃママもやろーっと。今度ライブで昔の曲やるから練習しないと。」

「へえ、母さん今度は何の曲やるの?」

「これこれ。」

 

ママが曲に合わせて踊りだす。聞き覚えのある曲だ。でも、記憶にあるママの振り付けと少し違う。

 

「ママ、そこの振りちょっと変。武道館の時もっと手高かったよ。」

「そうだな。言われてみればちょっと違うかも。しかしお姉ちゃんよくそんな細かく覚えてるな。」

「あれー、二人とも私のライブ映像観たの?よく覚えてるねー。」

 

当たり前だよ。

 

ママのライブ映像は何百・・・何千回も見た。振りだって全部覚えてる。

 

私の人生はその殆どを病室で終えた。体は不自由で言うことを聞かず、立ち上がることすらままならぬ中で、ひたすらにあこがれ続けた。

 

振りだって全部覚えてる。ママのかっこいい動きは全部脳裏に刻まれてる。あの光は全部網膜に焼き付いてる。

 

「どんなだっけ。」

「ここの時はもっと・・・」

「あ、お姉ちゃん!大丈夫?」

 

記憶の中にある振りを見せようとするが、またしても転んでしまう。振りは完璧に覚えているのに、その通りに動けない。どうしても倒れることばかり考えて、受け身を取ろうとしてしまう。

 

やっぱり私にダンスなんて出来ないのかな。

 

「転ぶのを恐れたらもっと転んじゃうものなんだよ。もっと堂々として、胸を張って立つの。」

「そうだよお姉ちゃん。母さんの娘なんだから、踊りだって上手になれるに決まってる。」

 

ママは優しく私を抱き上げて教えてくれる。アクアも応援してくれている。

堂々と、胸を張って。そうか、ママみたいにすれば。

 

「大丈夫だよ。ママを信じて。」

 

その一言はまるで魔法の呪文のように、私の動きを変えてくれた。

 

体が自由に動く。思い通りに表現できる。どんどん上手になっていくのが楽しくて仕方がない。

体を動かすのがこんなに気持ちいいなんて知らなかった!

 

 

ああ、私も踊って良いんだ!

 

 

それからというもの、私は一人でダンスの練習に打ち込むようになった。幼稚園のお遊戯で踊る分だけではない。踊りたいB小町の曲が沢山ある。振りは全部完璧に覚えてる。後は自分の身体で表現するだけ。

 

いつか私も、ママみたいに踊れるようになれるかな。

 

 





ほとんど本編と同じになってしまった・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。