【完結】ルビーがお姉ちゃん   作:座右の銘

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ギャラクシーメルト

ルビーちゃんから舞台の日は添い寝するという提案。アクア君の返事は「今日は」よろしく。

 

アクア君気づいてるのかな。絶対に今日だけじゃ済まないよね。姉弟揃っていい笑顔してるけど、ルビーちゃんの笑顔はちょっとだけ意味が違うよ? 完全にいたずら成功の顔だからね?

 

今ここで指摘してもいいけど、家に帰ってからビデオ通話のほうが面白い話が聞けそうだ。黙っていよう。

 

そして面白いのがメルト君。

 

まるで宇宙の真理の一端を目の当たりにして、自分の理解をはるかに超える壮大なスケールに途方に暮れたような間抜けな顔を晒している。今の彼の顔を写真に撮って背景をキレイな銀河の写真にしたら、流行りの宇宙猫のような仕上がりになるだろう。

 

スペースメルト。いや、ギャラクシーメルトの方が語感が良いかな。

 

流石は職業イケメンのタレント。こんな時でも華がある。

 

「今日は打ち上げがあるでしょう? ひとまず私とルビーは帰るわね。」

「打ち上げ終わる時間教えてね。お迎えに行くから。」

「ああ分かった。」

 

短く言葉を交わし、楽屋を後にするルビーちゃんとミヤコさん。相変わらずアクア君絡みの事となると途轍もない存在感を放つお姉ちゃんだった。

 

ここでメルト君が我に返る。

 

「お、おい、黒川。アクアってあんな奴だったっけ? それにあのルビーって子、前に見た時と雰囲気違うぞ。」

「メルト君は初めて見るからびっくりするのもしょうがないよね。二人は双子で凄く仲が良いの。アクア君はお姉ちゃんのことが大好きで、ルビーちゃんもアクア君の事が大好きなんだよ。」

「それにしたって強烈すぎるだろ………。」

 

これから打ち上げの度にその強烈なやり取りを見せつけられることになるんだけどね。今から他の役者さんの反応が楽しみになって来た。

 

「アクア、添い寝するって言ってたけどマジなのか?」

「ん? マジだぞ? いや流石にこれが特殊なのは分かってるけど。」

「ぶっ飛んでるな……」

 

事も無げに答えるアクア君。これが星野姉弟の平常運転だ。

 

「私もアクア君とよくビデオ通話するんだけどね、時々ルビーちゃんの部屋なの。」

「別に添い寝じゃなくたってお姉ちゃんの部屋に居ることくらいあるだろ。」

「アクア君がスマホ持ってて手が空いてない時はルビーちゃんがじゃがりことかポテチとか食べさせてあげてるよね。」

「食ってる間は喋れないからあまり嬉しくないんだけどな。」

「……」

 

ギャラクシーメルト再び。弄りがいのある子だな。

 

・・・

 

公演初日の打ち上げ。広い個室で焼肉だ。

 

一応飲み会と言う事にはなってるけど、役者は未成年も多いからお酒はあまり出ないし大人もベロベロになるまでは飲まない。そういうのは子供が居ない2次会からやるとの事らしい。

 

私の知らない大人の世界だ。

 

でも、アルコールなんてなくても場の雰囲気だけでそういう感じになれちゃう人も居る。

 

「だからね!? 役者も一人の作家であるべきなのよ! その場その場をミスしないように演じるんじゃなくて、作劇的な盛り上げに加担しなきゃいけないわけ!」

 

薄い琥珀色の飲み物が注がれたジョッキを叩きつけながら熱弁するかなちゃん。飲み会とか騒がしくて苦手とか言ってなかったっけ? しっかり盛り上がってるじゃん。

 

念の為補足しておくとかなちゃんが飲んでいるのはビールじゃなくてジンジャーエール。アルコールは入っていない。

 

素面でこれだ。

 

そんな愉快な推し兼ライバルを眺めつつ、私は両手に握ったトングで焼肉を量産していく。焼けた肉を美味しそうに頬張るのはアクア君。それから仲のいいメルト君も一緒だ。

 

「流石有馬、やっぱり感受性が高い。雰囲気だけで酔えるなんてな。」

「だよね。こうやってかなちゃんはまた一つ演技の幅を広げるんだろうなぁ。」

「飲兵衛役か? はまり役だな。」

 

飲んだくれるかなちゃん………アリだね。大人しくて堅い印象の私と違ってコメディも似合う。お笑い番組でコントでもやれば受けるんじゃないかな。

 

ピーマン多めの青椒肉絲にブチギレるかなちゃんとか絶対面白い。BGMは勿論ピーマン体操で。

 

「はい、アクア君。お肉焼けましたよ。」

「ん」

「メルト君もどうぞ。」

「悪ぃな。黒川ばっかに焼かせちゃって。俺も焼くぞ?」

「良いんです。私精進の身なので。」

「それは俺も同じだ。」

 

アクア君は平常運転。目の前に積まれていく焼肉を黙々と食べている。一方で割と常識的なセンスの持ち主であるメルト君は私ばかり肉を焼くのが不公平だと思ったらしい。

 

トングを1本メルト君に渡す。これで二人がかりで焼いた肉をアクア君が一人で消費する形となる。

 

「アクア君、お肉。」

「ん」

「おいアクア。こっちも焼けたぞ。」

「おう。」

「この子も良い感じ。」

「コレうまそうだな。アクア皿よこせ。」

「ちょっと待って追いつかない。」

 

アクア君のお皿には焼けたお肉がどっさり。

 

「ペースを考えろよお前ら。あと自分でも食え。」

「「はい。」」

 

一旦肉を焼くのは中断となった。

 

アクア君が山盛りの肉が積まれたお皿をテーブル中央へ滑らせ、私とメルト君で少し冷めたお肉を食べる。アクア君は休憩だ。

 

アクア君を眺めながら食べるお肉も美味しいなぁと思っていたら、こちらへ移動してくる二人組が見えた。やって来たのは演出の金田一さんと彼の一番弟子の姫川さん。二人ともほろ酔いで気分が良さそう。

 

金田一さんはアクア君に興味があるみたいだ。

 

「よう星野。良い演技だったぞ。さすがは五反田監督の秘蔵っ子だ。」

「ありがとうございます。」

「どうだ? 演劇も面白いだろう。ララライに入ってもいいぞ。」

「謹んで辞退させていただきます。」

 

ノータイムで断った。

 

言葉遣いこそ丁寧だけど遠慮が無いというか、大分くだけた態度だ。偉い人相手でも全く動じないなぁ。やっぱり肝が据わってる。

 

金田一さんはそんな彼の態度に気を悪くするどころかますますご機嫌になっている。

 

「言うじゃねぇか星野! よしこっち来い。もう食わないんだろ?」

「ええまあ。」

 

アクア君は金田一さんに連れていかれてしまった。

 

残されたのは私とメルト君、そして山積みの冷たいお肉。2週間監督の下で稽古をしたメルト君とはそれなりに親しいけど、二人きりと言うのは初めてでなんとなく気まずい。

 

「……食べよっか。」

「そうだな。」

 

冷めて美味しくなくなったお肉をちまちまと処理する。お開きまでそう時間が無かったのが救いだった。

 

お肉を平らげ、お会計をする金田一さんを横目に店の外へと出る。そこには予想通りの光景があった。

 

「アクアー。迎えに来たよー。」

 

ルビーちゃんの突然の登場にざわつく役者陣。誰だこの美人。アクアって星野アクアだよね。黒川さんと付き合ってるはずじゃ。二股? コレ黒川さんに見られたらヤバいんじゃね?

 

……全部聞こえておりますとも。

 

あまりに予想通り過ぎて笑えてくるよ。

 

「星野お前、黒川以外の女にも手ぇ出してやがったか。」

「違う! お姉ちゃんだ!」

「それはそれでおかしい。」

 

呆れる姫川さん。この姉弟はマジのガチでこうなのよと同じくあきれ顔のかなちゃんがフォローしている。

 

やっぱりルビーちゃんが居ると場が和んで楽しくなる。いつも嵐のように場をかき乱す一方で、本人は台風の目のごとくあっけらかんとして動じない。意外と根っこの部分はアクア君と似てるのかな。

 

「じゃあ私とアクアはこれで。」

「皆さんお先に失礼します。」

 

またしても連れていかれるアクア君を見送り、打ち上げは解散となった。

 

・・・

 

自室のベッドでスマホを操作する。

 

無料通話アプリでアクア君の名前をタップし、ビデオ通話を選択。映るのは多分ルビーちゃんのお部屋だろう。今日は添い寝の日だからね。

 

「よう。あかね。」

「あかねちゃんこんばんわー。」

「こんばんわ。アクア君。ルビーちゃん。」

 

お揃いのパジャマ姿でベッドに寝そべる二人。画になるなぁ。

 

「今日は添い寝の日なんだよね? アクア君。」

「まあな。」

「でもさぁ、ルビーちゃんは「舞台の日は添い寝」って言ったんだよね?」

「そうだよ! さすがあかねちゃん。気づいてたか。」

 

がばっとルビーちゃんの方に振り向くアクア君が可愛い。やっぱり気づいてなかったんだね。アクア君はこれから週に1日の休演日以外は毎日お姉ちゃんと添い寝することになる。

 

一瞬驚いた様子を見せたアクア君だったが、すぐに平静を取り戻した。

 

「流石お姉ちゃんだな。」

「えっへん。」

 

どや顔で応えるルビーちゃんも可愛い。

 

やっぱりこの姉弟はこうして仲良くしてるのがお似合いだ。楽屋で喧嘩して泣いてるルビーちゃんは本当に痛々しくて見てられなかった。

 

それだけお母さんを失った時の心の傷は深いって事なんだろう。そしてアクア君が苦しむとルビーちゃんも同じように苦しくなる。生まれた時からずっと一緒に育ってきた二人は一心同体といっても過言ではない。

 

すぐに仲直り出来て本当に良かった。

 

それはそうと、ルビーちゃんが居ると話題には事欠かない。

 

「ねえアクア。今度あかねちゃんも一緒に三人で寝よっか?」

 

こんな風に。

 

「……お姉ちゃんはもっとこう、なんというか男女関係ってものについて勉強した方が良い。」

「ルビーちゃん。私もそれは無いと思うな……」

 

このお姉ちゃんならやりかねないと思えるのも彼女の魅力の一つだろうか。アクアと言う名目が付けばどんな行動でもとりかねない。

 

何でもありだ。弟とその彼女と三人で添い寝だって何食わぬ顔でやるだろう。

 

流石はアクア君のお姉ちゃんだ。

 

「じゃあ、また明日。舞台頑張ろうね。」

「おう、またな。」

「明日も添い寝しながらお話ししようねっ。」

 

少し話して通話を切った。

 

しばらく二人きりの通話はムリそうだ。ちょっと悲しい。でも休演日は間違いなくアクア君は一人になるだろうからそこを狙えばいいかな。

 

それにこれから一か月はほとんど毎日舞台で会えるんだから何の問題もない。

 

明日も明後日も明々後日もその次の日も、毎日なでなでしてもらえるんだから。

 

んふふふふ。

 




姫川さんが空気……
アクア・ルビー「お兄ちゃん!」
姫川さん「やめろキショいから」チョットウレシイ
みたいな感じになったらおもしろかったのに。遺伝子検査なしでは異母兄弟であることが判明することも無くフェードアウトするしかありません。
何か都合の良い理由はないものか。
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