【完結】ルビーがお姉ちゃん   作:座右の銘

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テコ入れプランナーMEMちょ

kawaii趣味全開のカラフルな自室で一人かなちゃんのルームツアー動画をチェックする。

 

かなちゃんのお部屋、衝撃的だったな………。あれは中々に闇深い。もっとかなちゃんが自分に自信を持てるようにお姉ちゃんとして頑張らないとだね。

 

PCでは編集担当から上がって来た編集済み動画が流れている。

 

モデルルームのような殺風景な部屋とところどころにこれ見よがしに配置された高級ブランド品の数々。天真爛漫で幼いイメージを前面に押し出しているかなちゃんからはちょっと想像しづらい内容だ。

 

かといってのギャップが良い方向に作用するかと言うとそれも微妙。ひょっとするとこの動画はお蔵入りかもしれない。かなちゃんを擦れた女と思って欲しくはないからね。

 

……実際は擦り切れる寸前だったんだけど。

 

とりあえず動画についてはいったん保留。社長に動画を送り、内容を確認するようメールで依頼しておいた。

 

「ふぅ。今日の仕事はここまでかな。」

 

作業を止めて椅子の背もたれにぐっと体を押し付ける。私に合わせて適度に調整されたリクライニングシートがゆっくりと倒れ込む体を支え、フットレストに足を乗せれば寝心地の良い簡易ベッドの完成だ。

 

ぼやっと天井を見ながら体を休め、誰もいない部屋で一人呟く。

 

「2万人には届いたし、ユーチューブチャンネルとしては十分成功の部類だけど…………あの子達の言う通り、まだまだ足りないねぇ。」

 

MEMちゃんねるは自称高校生の2X歳のおばさんが一人で喋るちゃんねるだ。それでも2年かけて登録者数37万人にまで成長出来た。毎日投稿や他のユーチューバーとのコラボ、そして積極的な営業による部分が大きいとはいえ、私一人であそこまで行けたという事実は揺るがない。

 

一方のB小町chはと言えば、もう素材がMEMちゃんねるとは別次元に良い。

 

ルビーもかなちゃんも芸能界を見渡したってなかなか居ないレベルの容姿だ。ルビーちゃんは明るい人気者タイプで動画映えするし、かなちゃんは切れ味抜群のトークが魅力的。グループの仲もすこぶる良いし、ただカメラを回すだけで十分素材になる。

 

そこに人気ユーチューバーの自分が加われば企画も完璧。これまで培ってきた経験を活かして質の高い動画をコンスタントに出し続けられる。私目当ての客が居れば動画が埋もれることも無い。

 

そんな磨けば絶対に光る宝石を預かり、半年頑張った結果が登録者数2万人。

 

正直に言って情けない。

 

「私の実力ってこんなものだったのかねぇ。MEMちゃんねるがうまく行ったのは時の運ってこと?」

 

結局は何か一つでもいいから話題になる動画が必要なのだろう。一発あてることが飛躍のきっかけになる。私の経験から言えるのはそれだけだ。

 

良い動画を出し続けてそれなりの人気を得ているチャンネルはいくらでもある。それで十分食べていける人は沢山いて、それも一つのやり方だ。でも私達が目指すのはその先。B小町chが半端なチャンネルで終わるなどあってはいけない。

 

「もっと自分から動いていかなきゃ駄目かねぇ。」

 

スマホを取り出し、電話を掛ける。使えるコネは全部使う。弾切れを気にしてる場合じゃない。全部出し切ってから考えるくらいで行かないと。

 

「もしもし、アネモネ? ちょっとお願いがあるんだけど。」

 

……交渉成立。社長には良い報告が出来そうだ。

 

椅子にぐったりと身体を預けて休息をとるが、やっぱり頭の中は仕事の事でいっぱいだ。そろそろ何か動かないと。でも何をすれば良い? そんな事をぐるぐると考え続け、気づけば深夜。

 

今日もここで寝ちゃおうか。

 

・・・

 

翌日。軋む体をどうにかほぐし、事務所へと向かう。

 

「社長、PVの件なんですけど安く作ってくれるところ見つけました。」

「メールをくれた件ね。安いのは有難いけど適当な会社は駄目よ。その辺は大丈夫なの?」

「もちろん。なんたって私の知り合いがやってる会社なので。クオリティーは間違いないです。」

 

タブレットでアネモネの作った映像作品を社長に確認してもらう。我が友人ながらアーティスティックな映像の数々は本当に大したものだ。

 

社長も気に入った様子。

 

「このレベルのアーティストが友達価格でやってくれるなら是非もないわね。ここに決めましょう。」

「はい。私から連絡しときます。」

 

速攻でアネモネにメッセージを送った。これで念願のPV撮影が出来るとあって私のテンションは爆上がりだ。JIFに続いてまた夢が叶ってしまう。

 

「「ただいまー。」」

「こんにちは。」

「ルビー、アクア、おかえりなさい。」

 

そこへ高校生たちが帰って来た。仲が良いみたいで何より。社長に聞きたい話がもう一つあったけど、まあいいか。メンバーが揃ってた方が聞きやすい。

 

「ルビーちゃんにかなちゃん。この後お話があるので荷物を置いてここに集合。」

「「はーい」」

 

事務所から自宅へ引っ込んでいく二人を見送り、今度はアクたん。

 

「そしてアクたん。B小町chの新しい動画をクラウドに置いたから編集よろしく。指示はメールで送っといたから。」

「分かった。」

 

いつものようにノートパソコンを開き、アクたんが作業を始める。

 

これが苺プロの日常の風景。とてもアットホームな職場だ。というか実際にここは社長とその子供のホームで、なんなら私もかなちゃんも1か月間も泊まり込みで暮らしていたこともあり、割とマジで家族である。

 

そろそろアクたんからもお姉ちゃんとか呼ばれたりして。

 

……さすがに無いか。

 

「お姉ちゃんお待たせー」

「話って何よ。」

 

妹達が戻って来た。さぁ、ここからは大事なお話だ。切り替えて行こう。

 

なるべくこの前みたいなギラギラした感じは抑えて、MEMちゃんねるの生放送みたいに出来るだけ可愛く威圧感が無いように……。

 

「はーいそこ座ってぇ。お姉ちゃんから大事なお話です。」

「話ってなんだろうね先輩。」

「ライブでもやるのかしら。」

 

うんうん。良い雰囲気。

 

「B小町chのチャンネル登録者数の伸びが芳しくないのはご存じの通り。そこで私MEMちょが無い頭をひねって良い感じのプランを考えてきました!」

「なになに!?」

「さすが人気ユーチューバー。早くも策を練ってきたのね。」

「じゃあ行くよ。……ユーチューブテコ入れプランその1! PVを撮ろう!」

「PV!」

「楽曲PVが一番アクセス数稼ぎやすいからねー! 『B小町ch』にも1動画くらい再生数100万超えの動画が欲しい! そしたらその再生数をサンプルにして各所に営業も掛けられる! やっぱこれよぉ!」

 

決まった……! この前はキレて数字ばかりの小難しい話をしてしまい、ルビーちゃんを置いてきぼりにしちゃったけど、二度同じ失敗を繰り返す私じゃない。

 

というか加入した頃はもっと気を使って話してた気がするから初心に帰った感じか。あまりに距離が近いから忘れがちだけど、年齢は一回り違うからなぁ。

 

若い子って難しい。

 

「へぇ楽しそうじゃない。でもお高いんでしょう?」

「地方でデザイン会社をやってる人がねぇ、こっちまでくるなら友達価格で撮ってくれるって! 私の人脈に感謝してほしいねえ! 帰りに観光も出来て一石二鳥ってわけさ!」

「わーい! 旅行だー!」

 

ルビーちゃん。あんたは小学生か。

 

そんでかなちゃんの疑問は当然だけど、社長にも確認済みで抜かりはない。まあルビーちゃんとかなちゃんまで話が降りて来てる時点で確定事項なんだけどね。基本的にこの二人は意思決定には関わらないし。

 

「かなちゃんは舞台で忙しいから、撮影は『東ブレ』が終わってから。慰安も兼ねて2泊3日というのが私のプランだよぉ。」

「撮影場所はどこ?」

「えっとねー……宮崎。」

「また遠い所……」

「良い場所だよぉ。」

 

宮崎と言った瞬間テンションが下がる二人。ホントにいいところなんだけどねぇ。移動は確かに大変だけど、運転するのは社長で助手席は私。ただ寝てれば良いんだから心配いらないのに。

 

コレだからキッズ共は…………可愛いんだよねぇ。

 

さーて、張り切ってプラン2に参りますかぁ。楽曲どうなってるんですかね社長。

 




久しぶりの仕事人MEMちょ回。やっぱりいいキャラしてます。

完結か続行か。原作単行本9巻以降、本格的に復讐劇が話のメインになっていきます。復讐をしない今作において、原作沿いのストーリー展開はここで破綻です。つきましては、8巻の内容で完結とするか原作沿いを諦めてオリジナルストーリーを描き続けるかをここで決めさせてください。

  • 原作沿いのまま完結!
  • オリジナルストーリーで続行!
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