【完結】ルビーがお姉ちゃん   作:座右の銘

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中間管理職ミヤコ社長

B小町の長女にしてリーダー的存在のメムさんが楽曲PVの撮影について娘たちに説明している。

 

流石メムさん、コミカルなキャラクターのお陰で仕事の話も良い雰囲気で進められる。社長の私ではこうはいかないだろう。

 

判断力もあるしタフに仕事をこなしてくれて、その上プロデューサーとしてもやり手とあって裏方の能力としては言う事なし。アイドルを引退した後も是非事務所に残ってもらいたい逸材。それが私から見たメムさんだ。

 

しかし、そんな仕事熱心な逸材がウチに居てくれるのは非常に有難い反面、抱える上司としては意外と苦労も多い。ちょっとでもB小町関連の仕事で手を抜くようなそぶりを見せればすぐに提案と言う名のダメだしが飛んでくる。

 

例によって今日も、以前ちらっと彼女に話したあの件について文句があるようで。

 

「『B小町』テコ入れプランその2!! オリジナル楽曲を作ろう! 今まで旧『B小町』の楽曲でなんとかしていたけれど、どうしたって十数年前の曲。今の若者には刺さりにくい! 今のティックトック時代に向けた新しい楽曲が必要になってくる!」

 

娘たちに話していたメムさんがぐるりとこちらに向き直る。

 

「社長! 発注した曲はどうなってるんですか!」

「それねー…」

 

わぁ怖い顔。

 

メンバーには優しく接する傍ら社長の私にはこうしてきっちり圧を掛けてくる。般若のような恐ろしい表情は私だけに向けられており、そのために位置取りまで計算して娘たちをそこに座らせたのだとしたら大したものだ。

 

メムさん越しに見えるルビーと有馬さんのは間の抜けた顔でその後ろ姿を眺めている。

 

「以前から発注してるって言ってたわよね。」

「そもそも誰にお願いしてるんだろ。」

 

メムさんの狙い通りか、焚きつけられ有馬さんとルビーが彼女の味方に付いた。これで3対1。やり手な部下にせっつかれる上司というのも中々大変だ。

 

これじゃあ、もう隠し通すのは難しそうね。

 

「皆を驚かそうと思って黙ってたんだけどね、新生『B小町』の初オリジナル曲は『B小町』の楽曲を多く手掛けてきた「ヒムラ」さんにお願いしたの。」

「えっ! ヒムラ!?」

 

一斉に驚くB小町。

 

「自身もトップアーティストとして第一線で活躍し……」

 

有馬さんが驚愕の表情で語りだす。

 

「作曲家としてもヒット曲を連発…」

 

大げさなポーズで驚きながら続きを言うメムさん。なんで貴女まで驚いてるのよ。ヒムラさんに楽曲を依頼したことは知ってるでしょうに。あざとい子。

 

「『B小町』の代表曲「STAR☆T☆RAIN」を手掛けたあの……!」

 

ルビー。何でそんな作ったようなセリフが突然出てくるのよ。

 

全く、本当に仲が良いわねこの子達。息がぴったり過ぎて怖いくらい。まぁ、こんなに良いリアクションをしてくれたのなら秘密にした甲斐はあったかしらね。

 

彼女達が言うようにヒムラさんは超一流のアーティスト。新人アイドルグループがおいそれと作曲をお願いできるような相手ではない。今回は旧B小町に思い入れのあるヒムラさんだからこそ大御所であるにも関わらず新曲を書きおろしてもらえることになった。

 

要するにアイさんと壱護が残してくれたコネを利用した形だ。

 

しかし残念なことに楽曲はまだできていない。

 

強い圧を掛けてくるメムさんや目を輝かせて喜ぶルビーには申し訳ないけど、嫌われるのも仕事の内。これは事実として伝える必要がある。

 

「早く歌いたい! 早く歌いたい!」

「ただね……先月末までの締め切りで依頼したんだけれど、まだあがってきてないのよね…。向こうも忙しいでしょうから仕方ないけれど。だからもうちょっと時間がかかるかも―――」

 

「やだ。催促しよ?」

 

真顔で物凄い圧を掛けてくる娘。

 

こういう有無を言わさぬわがままの通し方がアイさんを彷彿とさせ懐かしい気持ちになる。が、今回ばかりはそんなわがままは通らない。相手は超一流トップアーティスト。弱小事務所のアイドルが催促できるような相手ではないのだから。

 

最悪の場合「じゃあ書きません」となる可能性だってあるのだ。それを咎めるだけの力はウチにはない。

 

私だってB小町には強い思い入れがある。出来るだけ良い楽曲を歌わせてあげたいし早く新曲を出させてあげたい。気持ちはルビーと全く同じ。

 

しかし立場と言うものがある。

 

「そうは言ってもヒムラさんに書いてもらえるだけありがたいのよ? 『B小町』に思い入れがある人だから特別に受けてもらえたの。一応メールで催促は……」

「やだ! 今電話して!」

「でもね」

 

「やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!」

 

あんたは小学生か! ……とは口には出さないけれど、いい加減もっと大人になって欲しいものだ。この子は小学生くらいまでは凄く大人びていると思ったものだけどここ最近は幼さが目立つようになってきた。

 

子供の成長ペースは人それぞれとはいえ、高校生がこんな様子では親として不安にもなる。

 

「そんなに焦らなくても…」

「焦るよ!」

 

かと思えば、雰囲気を一変させて年齢不相応に大人びた姿を見せることもあり、戸惑ってしまう。

 

「アイドルがアイドルでいられる時間は長くない。のんびりしてたらあっという間にタイムアウト。このまま売れなかったら先輩は役者の道に戻っちゃうかもしれない……。MEMちょも時期が来れば三十路に……。」

「ぐふぅ!?」

 

メムさんご愁傷様。若い子ばかりだと気が滅入るのは私も同じよ。

 

それにしてもルビーは時々妙に理知的で落ち着いた話し方をすることがある。落ち込んだアクアをなだめる時が顕著だ。最近だと事務所で泣く有馬さん優しく慰めてあげた時にそういう雰囲気を見せた。

 

タイミングも完璧で、とても器用に切り替える。

 

こんな風に。

 

「まだ5年! まだ5年も猶予あるから!」

「そう言ってさ! もう5年しかないんだよ!?」

「ぐぶはぁ!」

 

今のは幼稚な方のルビーだ。それもたった今切り替わったみたいだけど。

 

こちらをじっと見つめるのは強い意志を宿した瞳。アクアやアイさんと同じ。この目は人の心を動かす力を持っている。

 

そんな強い瞳を真っ直ぐこちらに向けられ、ついに私が折れた。

 

「大人の時間で考えないで。私たちは今を走ってる。ゆっくりしてる暇はない。」

「……分かったわ。直電(ちょくでん)してみましょう。」

 

天性の才能。こういう所はアクア共々アイさんにそっくりね。

 

B小町の皆が見つめる中スマホを取り出し、ヒムラさんに電話を掛ける。

 

さほど期待はしていなかったがやはり色好い返事は貰えず、なあなあの返答が返ってくるばかり。月内には。ビジョンは見えてる。そんな何の保証にもならない言葉を並べられればやる気の無さを嫌でも察してしまう。

 

電話を切り、ため息をついて見せる。

 

「あまり良い返事は貰えなかったわ。」

「そうですか……」

 

落ち込むメムさん。三十路が近い彼女は焦りも大きいだろう。

 

だが長く芸能界で仕事をしていればこんなことはいくらでもある。これも勉強と思って彼女たちには呑み込んでもらう他ない。全員が全員やる気に満ち溢れた状態で仕事をしているわけではないのだから。

 

親として社長として、ここで私が言わなければならない。

 

「ルビー。これで良いわよね? ヒムラさんはこれでも真面目に仕事をしてくれてるの。今は待ちましょう。こういうのはよくある事よ。」

「分かったよ。でもちょっと小突くくらいの事はしても良いよね?」

 

全く動じていない。ルビーは驚くほど冷静に、かつ自信たっぷりに答えた。

 

ルビーはアクアの方へ歩いて行って、スマホを無言で手渡す。するとアクアはスマホを渡されただけで意図を察し、壁際へ移動したかと思うとカメラマンのようにスマホを構えた。一方のルビーはふーっと息を吐き、目を瞑って何やら考えている。

 

そして次に目を開いた時にはアイドルらしいはつらつとした表情に切り替わり、元気な声でアクアに向かって喋り始めた。

 

「ヒムラさーん! 新生『B小町』のルビーです!! ヒムラさんの書いた「STAR☆T☆RAIN」小さいころからずっと歌ってて! 『B小町』入る前から振り付きで踊れるんですよ! ヒムラさんの曲歌えるの私凄く嬉しいです! お忙しいと思いますが凄く楽しみにしています! お体に気を付けて頑張ってください! ルビーでした!」

 

なるほどビデオメッセージ。これくらいなら迷惑にはならないか。

 

スマホに送られてきた動画をヒムラさんへ送信し、ようやく楽曲の件については一区切り。血気盛んな若者たちと締め切りを守らないアーティストの板挟みにあい、時間も体力もごっそり持っていかれてしまった。

 

曲を上げないのはヒムラさんであって、私は1ミリも悪くないのに。

 

完結か続行か。原作単行本9巻以降、本格的に復讐劇が話のメインになっていきます。復讐をしない今作において、原作沿いのストーリー展開はここで破綻です。つきましては、8巻の内容で完結とするか原作沿いを諦めてオリジナルストーリーを描き続けるかをここで決めさせてください。

  • 原作沿いのまま完結!
  • オリジナルストーリーで続行!
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