「ママ。久しぶり。」
「母さん。会いに来たよ。」
今日はママの命日。
私とアクアとミヤコさんが手を合わせる先には星野家之墓と刻まれた墓石。毎年恒例のお墓参りだ。1年ぶりにママに会いに来た。
「アイさん、貴女の子供は元気に育ってるわ。お仕事も順調。ルビーはアイドル、アクアは役者として活動を始めたのよ。心配せずに安らかに眠って頂戴。」
それだけ言ってミヤコさんはその場を離れる。ここから先はママと私とアクアの3人の時間だ。
「ママ、私アイドルになったよ。しかもママと同じ苺プロでB小町なの。メンバーも凄い子が集まったんだ。先輩はとっても可愛くて演技が上手。MEMちょは年上のお姉ちゃんですっごい頼りになるの。初ライブもやったんだよ。しかもね、そのライブ、JIFだったの。凄いでしょ。」
激動の1年間。ママに言いたいこともいつもより沢山あった。
「母さん。俺もついに役者として仕事を始めたんだ。監督にみっちり鍛えられたおかげか結構注目されてるみたいでさ。業界の人が俺の事五反田監督の秘蔵っ子とか言うんだ。恋愛リアリティーショーに出たときは炎上しちゃってちょっと大変だったよ。母さんの気持ちが分かった。まぁそのおかげで彼女が出来たんだけどね。ついこの間も大きな舞台をやったんだけど、大盛り上がりだったよ。母さんのお陰で良い演技が出来た。ありがとう。」
アクアもママに報告したい事いっぱいあるよね。
出来る事なら全部ママに見せてあげたかった。あれから小学生になって、中学生になって、今は高校生になった私達。ママの思い描いた通り、私はアイドルでアクアは役者。私たちはこんなに素敵な人生を送れているのにママはもういない。
「今度宮崎にロケ行くんだよ。懐かしいよね。私達が生まれて以来ずっと東京だったし。」
「母さんが俺達を生んだ病院があるんだよな。」
「アクアは覚えてないんだっけ。綺麗なところだよ。」
「楽しみだな。」
しばらく星野家3人で過ごした後墓参りを終えて墓地を後にする。その途中、アクアによく似た顔立ちの男性とすれ違った。
「今の人アクアに似てたねー。」
「ああ。あの人は誰のお墓参りだろうな。」
「おばあちゃんとかじゃない?」
それ以上気に留めることも無く、すぐに忘れてしまったけれど。
・・・
ヒムラさんから新曲『POP IN 2』が上がって来た。
B小町の3人が事務所に集まりヒムラさんが歌う新曲を聞いたが、さすがトップアーティストと言うだけあって歌のうまさは別格だった。
曲も新生B小町らしい良い出来だ。
後になって知らされたことだけど、この新曲も宮崎でPV撮影をすることになった。まさかの2本撮り。しかもスケジュールは変更なしとのこと。
そして今、私は空港に居る。
「アクア、旅行に来れてよかったね。」
「それはお姉ちゃんだろ。あんなに慌ててたし。」
「は? ちがうし。演技だし。」
「じゃあそういう事にしといてやるよ。」
「むむむ…」
生意気アクア。
宮崎に行くのはPV撮影をするB小町の3人とミヤコさん、そして撮影とは関係ないけどアクアとあかねちゃんだ。
当初の予定ではアクアとあかねちゃんは来ない予定だったけど、アクアと離れ離れになるのが嫌で私はMEMちょに泣きついた。これはどうやら想定内だったらしくアクアの参加はすんなり許可された。それどころか、
「そんなこともあろうかとお部屋は1つ多めにとってあるし、お部屋も大き目だよぉ。同じ部屋で良いならアクたん以外にも一人か二人くらいはOKだから。」
さすがMEMちょ。分かってる。
という訳でアクアが参加となり、その後アクアが誘ってきたのが彼女のあかねちゃん。何やら先輩が嫌そうな目で睨んでるけど気にしない。
「揃ったわね。じゃあ行きましょうか。」
「しゅっぱーつ!」
東京から宮崎まで飛行機で約2時間。だけど広い空港を歩き回ったり搭乗手続きしたりでそれ以上の時間がかかった。飛行機を降りたら空港でお昼ご飯を食べて、そこからレンタカーを借りてさらに車で2時間。大分早朝に出発したのに、高千穂に到着するころにはすでに昼過ぎになっていた。
「社長、そろそろですよ。」
「長かったわね……。田舎の道は運転しやすいとはいえ、2時間は結構疲れるわ。」
「あ、あそこ! あの黒髪の人の所に止めてください。」
どうやら目的地に到着したらしい。駐車場にはやたら存在感のある綺麗な女の人が立っている。
レンタカーからいの一番にMEMちょが降り、その人の所へ走って向かう。あの人がMEMちょが言ってたお友達かな。確か名前が姉モネ……じゃなくてアネモネなんとかって人。
「アネモネ!」
「MEMちょおひさー!」
今回PV撮影をしてくれるのはMEMちょの友達がやっている会社で、友達価格でかなりお安くしてくれたらしい。
MEMちょに続き、早速ご挨拶。
「こんにちは。アネモネモネネモネ……あれ?」
「アネモネ・モネモネさんだ。お姉ちゃん。」
「うん。アネモネネネモモネ……うん?」
「アネモネ・モネモネ。」
「アネモモモ…………モネさんこんにちは!」
「はい、こんにちは。」
人生、時には諦めも肝心だと思うよ。
アネモネモネモネさん、すごくモネモネしてて言いにくい。なんでアクアはあんなにスラスラ言えるんだろう。役者だからか?
一通り挨拶を済ませたが、結局噛んだのは私だけだった。
自然に囲まれたいかにも田舎という感じの景色。建物は背が低くまばらに立っていて、どの家も敷地がやたら広い。道は広く空いていて、高速道路のように快適に走ることが出来る。
懐かしいなあ。帰って来たんだ、宮崎に。
「アクア、懐かしいね。ほらあの山の上の方に大きな建物があるでしょ。あそこが私達が生まれた病院なんだよ。」
「………そうか。」
「どうかした?」
「いや、何でもない。」
雄大な自然の景色に見惚れている……わけではなさそうだ。さっきまで普通のアクアだったのに病院を見た途端になんというか一瞬戸惑うようなそぶりを見せたような気がする。
自分が生まれた場所に何か思う所でもあるのかな?
私にはある。だってあそこは私が生まれる前、さりなが死んだ場所でもあるから。ママにもアクアにも話していない私の前世だ。
そういえば私とアクアの前世を秘密にしていたのはどうしてだっけ。確か、前世が年下だとバカにされると思って隠すようになったのが始まりだったかな。そしてそのままなんとなく暗黙の了解で前世の話はしなくなったんだ。
良い機会かもしれない。今更前世の事を知ったところで関係が変わる私達でもないし、先生のことはアクアにも知って欲しい。
あの病院にアクアと行って、そこで打ち明けてみようか。
「アクアあそこが気になるの? お姉ちゃんと一緒に行く?」
「待ちなさいルビー、今日何しに来たのか忘れた?」
「今回はMVの撮影2本ありますんでね! スケジュール詰め詰めなんですわ! 早く衣装に着替えてスタジオに入ってもらいましょう!」
アクアと一緒に病院に行きたかったけど、ミヤコさんとモネさんに阻止された。
仕方がない。アクアとのお話は撮影が終わってからゆっくりしよう。さりなの人生と優しい先生について、それからアクアが忘れてしまった赤ちゃんの頃のお話もじっくりしたいなぁ。
私が先に生まれたから、アクアの産声だって覚えてるんだよ?
「お姉ちゃん撮影頑張れよ。」
「また後で……。」
後ろ髪をひかれつつスタジオへと向かう。
真四角の豆腐のような建物の大きな出入口を抜けると、そこは東京のテレビ局にありそうな立派なスタジオ。外が山に囲まれたド田舎の景色なので落差が凄い。
「さぁ、ルビーちゃんかなちゃん。張り切っていくよぉ!」
「「おおー!」」
とにかく今はお仕事。これはB小町が飛躍するチャンスだ。PVを作って再生数が伸びればそれをきっかけにユーチューバーとしての注目度が上がる。
アクアの事はひとまず忘れ、私は撮影に向けて気持ちを切り替えた。
皆さんアネモネモネモネってスムーズに言えますか。私は単体だと言えますが会話の中に入ってくると噛む自身があります。
完結か続行か。原作単行本9巻以降、本格的に復讐劇が話のメインになっていきます。復讐をしない今作において、原作沿いのストーリー展開はここで破綻です。つきましては、8巻の内容で完結とするか原作沿いを諦めてオリジナルストーリーを描き続けるかをここで決めさせてください。
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原作沿いのまま完結!
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オリジナルストーリーで続行!