虎杖悠香は虎杖悠仁には届かない〜羂索さん家の今日のご飯〜   作:母親面

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虎杖悠仁の記憶がある私はいったい誰なんだ?


瓏々

 その時の羂索は自らの腹を痛めて産んだ子供を見に来ていた、特に予定があったわけではなく単なる気紛れだ。

 羂索という人間の精神性は現代社会に生きる一般人とは異なるが、人を外れ過ぎる事も出来ていない。

 ミロのヴィーナスを見て美しいと思う事も、自分と同じ視点を持っている者(九十九由基)が現れた時に喜ぶ事すらできる。

 なんなら期待を掛けた者の実態に失望するといういかにも人間らしき情動すら存在する、一番の欠点はそれら全ての感性を持ち合わせながら非人道的行為に一切の躊躇いが無く、自分の子供すら楽しみながら殺せるという事実だ。

 彼の世界に、他者は介在できない。

 

 彼は只人や稀人が届き得る最高到達地点の術師であるが、いつまで経っても両面宿儺(呪いの王)には届きやしない。

 感性すら、残虐な人間(マッドサイエンティスト)の範疇である。 

 

「虎杖ちゃん、どうしたの?そんなに泣いて」

 

 向かった先は幼稚園、見てみれば保育士に慰められながら己の息子は泣いていた

 それだけなら彼は驚かなかっただろう、目を見開く事もなかっただろう。

 余裕綽々で休日を謳歌する羂索に、虎杖悠香の声が届く。

 

「みんな、みんな死んじゃうの!しめつかいゆうでじゅれーになっちゃうの!」

 

 その時の彼の感情はもはや言葉で表現可能な範疇を超えていた。

 死滅回遊、それは自らがいずれ実施しようと試みていた儀式。

 日本国民を彼岸へ渡し、想像を超えた呪霊を創り出そうという旨の儀式。

 偶然言い当てた?一瞬浮かんだ可能性を彼は脳内から追い出す。

 皆が誰を指すのかは知らないが、呪霊へと変化させるところまで言い当てるには偶然の範疇を超えている。

 理解を超えた現象、羂索の思考は加速する。

 

 未来視の術式を自覚したという可能性、それはゼロではない。

 未来視自体は歴史上何度も観測されている、だがそれらはどれも数秒先か長くて一日先までしか観測出来ないモノだった。

 いつ起こすのかは決めていない死滅回遊、だが決行はまだまだ先になるだろう、つまり彼の術式が未来視だとしたら彼女は最低でも十年は先を予知できる事になる。

 そう考えてると此方に気づいた少女が走ってきて、羂索へ暴言を吐いた。

 

「その縫い目!お前だな!お前がけんじゃくだな!ぜんぶせんぶお前のせいだ!ふしぐろが乗っ取られたのも全部!」

 

 伏黒、その名には聞き覚えがあった。

 天与の暴君であり術師殺しである伏黒甚爾、だが彼は現在既に死人だ。

 ならば少女は誰の事を言っているのか?

 伏黒甚爾は御三家の人間、そして彼の息子たる伏黒恵は虎杖悠香と同年代だ。

 つまり、少女はこの先己の思い通りに術師となった後、伏黒恵となんらかの交流を持ち果てには友を失ってしまったという事なのだろうか。

 そこまで考えて彼は自嘲する。

 相手は幼稚園児、後でゆるりと聞き出せば良い。

 今ここで無駄に推論を重ねる必要はない、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 五条悟と出会ったのは偶然だった、伊織の糸の試運転を兼ねた外出だったというのにまさか最強の術師と出会うとは運がいいんだか悪いんだか。

()()()()()()()()()()不審者フォルムの五条悟、呪力反応をチェックするまでもなく本人だと分かった。

 

「宿儺の指すら封じる檻……?信じ難くはあるけど実例がすぐ目の前にいる、ちょっと予想外だねこれは」

 

 予想通り五条悟は混乱しているようだったが、流石は特級術師と言ったところだろうか、呪力に乱れが見られない。

 優れた呪術師程呪力の流れがスムーズで感情に左右されないとは夢の中で五条悟が言っていたが、正直言ってこれは想像以上だ。

 私はそこそこ衝撃的な事実を彼に叩きつけた、しかし呪力の変化がほんの一ミリも起こっていない。

 私にはまだまだ辿り着けない呪術の境地が、目の前にいる

 

「先に言っとくけど『何故私が檻としての力を持っているのか』『宿儺の指の入手経緯』その他諸々は話せない。縛りに接触する可能性があるからね」

 

「それを僕に信じろと?」

 

「……信じてくれとしか言いようがない。でも、それでダメなら新たに貴方と縛りを結びたい。もちろん貴方にデメリットは一切ない縛りを」

 

 私は羂索と縛りを結んでいる。

 ()()()()()()()()()()()と羂索との関係について他者へ伝える事を禁ずる縛り、それに加えて幾つもの羂索有利の縛りを。

 あのクソ脳みそ、私が夢とはいえ未来の情報を知っているからってノリノリで縛りを結びやがって。

 当時幼稚園生の私はまんまと彼にしかメリットのない縛りを結んでしまった、そのせいで強制的に宿儺の指を飲ませられた。

 故に、ここで術師になることができなければ私の目的は大きく遠のく。

 

「まぁ、いきなりこんな事言われて信じろって言われても「信じるさ」

 

 五条悟はなんでもないようにそう言った。

 

「君も知ってるとは思うけど術師は年中人手不足、それに加えこの前の百鬼夜行で多くの術師が負傷し死者も出た。今は孫の手も欲しい状況なんだよね。で、そこに現れた君という戦力を逃すなんて選択肢僕らにはないってわけ」

 

「……つまり、私の言ってる事が嘘だろうが真実だろうが術師として使えるならそれで良いってこと?」

 

「露悪的な言い方になるけどだいたいそんな感じ。それに嘘でも無さそうだし」

 

 『君って考えてる事わかりやすいよね、表情に出てる』と付け足しながら彼は言う。

 たしかにポーカーフェイスが下手だとはいつも羂索に言われていたし、学校の友人にも似たような事を言われた覚えはある。

 そんな欠点が今回プラスに働いたのは喜ぶべきか、初対面の人にもこう言われる自分の性質を残念がるべきか。

 そんな下らない思考と共に安堵の感情が湧き上がってくる。

 

「なんか複雑な気分だなぁ」

 

「ま、それは良いとしていくつか確認しておきたい事があるんだけど……」

 

 五条悟と虎杖悠香の対談は、この後二時間続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「つ、疲れた〜〜。まさか檻の耐性確かめるためにもう一本指を飲む事になるとは」

 

 私はぐったりとしてソファに寝転がっていた、宿儺の制御には最大限の精神力が必要なのだと言うのに今日一日で何度も出たり戻ったりしたから疲れ果てているのだ。

 

「お疲れ、悠香」

 

「ん?あぁ帰ってたんだ」

 

 ソファの後ろから羂索が悠香に労いの言葉をかける、そんな事思ってもないだろうが。

 

「にしても随分と長く話してたじゃないか、そんなに私を殺したかったのかい?」

 

「……気づいてたんだ」

 

「まぁね、私の事を話せないとはいえ五条悟をこの家に呼ぶことはできる。『たまたま家に夏油傑の姿をした男が少女の家に現れた』って状況を作ろうとしたんだろう」

 

「ま、成功するとは思ってもいなかったさ。そもそも五条悟の呪力を察知したオマエがノコノコ帰ってくるわけがない」

 

「悪あがきとはいえ諦めない事と試す事は大事だ、君のそういったところは長所だよ」

 

「思っても無いくせに」

 

 ぐでーとしている私を横目に羂索はキッチンに立つ。

 

「事実を並べただけさ。そういえばエビを買ってきたんだが『エビチリ』と『エビサラダ』どっちが良いかな」

 

「エビチリ、しかもとびきり辛いの」

 

 

 

 

 

 

 

 




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虎杖悠仁の記憶の影響でオリ主の口調は割とごちゃごちゃです
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