完璧で究極なアイドル様に執着されて   作:肉ぶっかけわかめうどん

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立ち位置

 

 星野アイを救う手段があったかどうか。これについて私は返す答えを持たない。可か不可か以前に、そもそも関与する気の無かった私は検討すらしていないからだ。

 しかしあの疫病神が100パーセントのウソをつくとも考えづらい。もしかしたら何か打てる手があった可能性はある。今から検討する意味があるのかはおいといて。

 あるとしたら何があるだろうか。姉から有馬かな、有馬からアクアと経由していって星野家と接触でも図るか? そもそも4歳時の姉と有馬かなに面識があったかどうか私はそこまではっきり覚えていないが。

 

 今もどこかで隠れてこっそり私たちを見ているのだろう疫病神の姿を思い浮かべていると、私の脳裏にふと浮かぶ考えが有った。そういえば、あれがこの間私のところに嫌がらせをしに来た時、いったい何の話をした? 

 黒幕が誰か分からなくとも、直接の下手人は分かる。悲劇を回避するだけならそちらへの対処でも良いのだ。

 

 

 ただ原作知識を持って生まれただけの転生者には何もできずとも、霊能者としての知識と経験を持って生まれた私になら取れた手段が一つだけあった。転生者と霊能力者の組み合わせにしかできない事だ。

 

 即ち『呪い』だ。何も呪殺までせずとも、もう二度とナイフ握れないぐらいに弱らせるだけでも良い。

 

 霊能力自体は大して強くない私にだって、呪いは出来る。人が人を呪うのに、特別なスキルなんて必要無い。ただただ不幸を願えば、呪いは成る。誰だってできるのだ。こんなの良くない、なんて良心や、呪いで人が死ぬなんて有り得ない、なんて良識を一切合切投げ捨てて、本気で心の底から『死ね』と恨みぬく。己の心も体も未来も来世も、全てを磨り潰し燃料に変える覚悟があれば、人は呪いに必要なエネルギーを生成できる。科学的に観測できないけど、それは確かにそこにある。

 では何故この世界に呪殺としか思えないような不審死が起きないのか。人は誰でも生きていれば嫌いな相手の一人や二人できるだろうに。その理由は極めて単純。単に失敗しているからだ。信じきれない心が無意識下でブレーキをかけ、その一線を越える事を妨害するのだ。あるいはそれを乗り越え呪いの原材料を作り出すまではいけても、それを呪いとして正しく形を持たせられなかったか。はたまた呪いの成就にこぎつけたが、自分が弱すぎた又は相手が強すぎた事によりせいぜい軽い体調不良やケガで終わってしまったか。

 

 私は知っている。今の科学ではまだ視えない存在が実在する。目的達成の為ならば、どれだけでも時間を掛け、あらゆる手を尽くす。この執着こそがヒトを生態系の頂点たらしめたのであると。そんなヒトの死力を尽くした願いは、時として現実の方が歪んでしまうほどの力を発生させると。

 私は知っている。私に犯人達を恨む心がないから自力では困難だ。だが全てを自力で行う必要はない。自分にできない事はその道のプロフェッショナルに頼めば良い。

 私は知っている。この世界だって地球だ。前世の時と全く同じ人はいないが、同じ場所に似たような人達ならいる。この世界にもいるのだ。人を呪い、また人を呪いから護る技術を修めたプロフェッショナルが。

 

 

 先ほど呪いなんて誰でもできると言ったが、では呪いにおけるプロとそれ以外の違いは何か。それは呪う効率と、返ってきた呪いから身を守る技術だ。人を呪わば穴二つ。呪いの成就如何に関わらず、全てが返ってくる。技術を修めたプロは会った事の無い、話に聞いただけの相手に呪いを成立させるほどの効率を誇り、さらに掘る穴は一つですませる自衛手段を持っている。

 

 もちろん誰彼構わず依頼を受けてくれるわけでは無い。時には金で人殺しを請け負う事もある組織なんてものが大手を振って商売するのを許すほど、この国の統治機構は甘くない。彼らは自身を秘匿しており、コネを持たない者はその存在を知ることすら困難。しかし私には前世での経験がある。同業同士の横の繋がり。このネットワークの中に彼らもいた。前世の時と同じ場所に行けば、おそらく会えるだろう。

 

 勿論会えば終わりではない。ちゃんと彼らに受けるに値すると認められたうえで、要求された対価を払わなくてはならない。そこは交渉次第になるが、受けてくれる可能性は僅かにだが、ある。

 

 ここまでやれば、もしかしたら助けられたかもしれない。私が得られる利益は無いが、強いて言うなら命を一つ救えた達成感と、液晶越しに見られるであろう失われたはずの彼女のステージが報酬だろうか。

 

 

 

 先ほどブラックを飲み干したばかりなので、今度は砂糖をたっぷり入れて飲んだ。溶け切れていなかった砂糖が舌に残る。

 

「馬鹿馬鹿しい」

 

 そこに悲劇があるから。ただそれだけの理由でなんだってやってのけるだなんて、まさしく転生者冥利に尽きるじゃないか。

 しかもこれだけやって、得られるものはほんの少しの延命なんだから。

 

 少しだけ、あの疫病神が何を指摘したかったのか、分かった気がした。今、私はアクアに、ルビーに、姉に、疫病神に、そしてアイさんに取り囲まれている。この事態を招いたのは不運ではない。間違いなく私の行動の結果なのだ。

 

「なるほど。私の落ち度と言われたらそうかもしれませんね」

「……小学生ですらない子供に何かできたとは思えないが」

 

 注文以外は今日何も口に出していなかったアクアが初めて喋った。姉がこれを口にできたという事は、アクアかルビーが姉にあの日の話をしたのだろう。この話題を切り出した元凶が同じ口で否定してるんだから面白い。きっと言われたから取り敢えずぶつけてみただけで、彼自身も本気で信じてなどいまい。まさか私が肯定するなど予想だにしていなかったろう。顔にはっきり驚愕が浮かんでいる。

 

「私にだけ使えた抜け道が一つ、ありましたね。まあ今更言っても詮無きことですけど。一回通せただけでも奇跡の狭き門ですが、確かに可能性はゼロではなかったようで」

 

 最初からはっきりさせておくべきだったのだ。関わるのか、関わらないのか。

 流石にアイさんとの遭遇は想定外でも、原作主要キャラの身内という立場に生まれた時点で否でも応でも原作に関わらざるを得ない事態になりえる事は予測できたはずだ。私にその気がなくとも、原作が向こうからやって来るかもしれないのだから。自分一人が気を付けたって事故は無くならない。その時に備えて行動を始めておくのは正しい判断だろう。

 

 もしくは、一度関わらぬと決めたのならば、誰に何と言われようともそれを貫くか。

 あの日、私が姉を追っていなければ、アイさんに会う事もなかった。

 今にして思えばとんだ愚行である。アクアはあかねを追っていると、あかねを救うと知っていた。そして私も姉を追っていた。二人が鉢合わせる展開ぐらい子供でも予想できただろう。アクアに会いさえしなければ、アイさんにも、疫病神にも見つかる事は無かった。関わりたくないとかぬかしていたくせに、私は自分から原作に近づいていたのだ。

 

 もし何かが間違った結果、姉が取り返しのつかない事態になったとしよう。親の要請を拒否していなければ回避できただろうと、お前が殺したも同然だと、私は両親親戚友人一同と絶縁の危機に陥るかもしれない。だが、それがどうした。私は関わらぬと決めたのだと胸を張って一人で生きるだけだ。幸か不幸か、この国は若い女が一人で生きるにそこまで困る国ではない。いくらかの望まぬ『商売』をする必要はあったかもしれないが、今日の事態を回避することのみを考えるのなら、これ以上の手は無かった。

 

 なのに私は今まで中途半端な対応しかしてこなかった。進むでもなく、かといって逃げるでもなく。半端な介入を繰り返してきた。

 見向きもしない大多数と、不十分だが支援をしようとしてくれた少数。追い詰められている人というのは前者でなく後者をこそ恨む。私のそれは支援でなく自分の為だが、似たようなものだろう。アクア達にしてみれば、今は敵ではないが味方としてもカウントできない謎の存在。優しくないのは当然か。

 

 

 手段はあった。時間もあった。なのに思考放棄を続けた結果が今のお前。日頃からもう少し頭を使って生きていたらこうはなっていない。お前の逃げ道を塞いだのはお前自身。分かったら諦めてお前もこっちに来い。神様はきっとそう言いたいのだろう。 

 今後、どう身を振るべきか。今から考えなくてはいけない。もしかしたらこうやって思考を巡らすまで含めて疫病神の手のひらの上なのかもしれないけど。

 

 逃げるのはできればナシ。一度請け負った事を途中で投げ出したくはないと思う程度のプライドはある。頼まれてない事はしないが、頼り縋られたなら応えたくなる。いよいよどうにもならなくなれば話は別だが、それまでは粘りたい。

 どうやれば沼地に沈むこの双子に蜘蛛の糸を垂らしてあげられるだろうか。真実の先にゴールがあるとは限らないのが難しいところだ。

 

 ああでも、その前にアクアにこれだけ言わせてもらおう。

 

「あの悲劇を未然に防げたかも。その一点についてだけは認めましょうか。でもその発言、重要な部分を意図的に抜いてますよ」

 

 木を隠すなら森の中。ウソを隠すならホントの中。最初と最後だけ言葉にし、間を隠す事であえて希望を持たせるような言い方にしている。意地の悪い。

 

「私が死ぬ気で働いたとしても、彼女が今日まで生き延びてはいない。彼女を狙うものが一人だけではない可能性について、貴方は考えた事がありますか? 私が手を貸せるのは片方だけですよ。私が動いても、どの道彼女は殺されて、あなた達は復讐のために今日を生きるようになる。家族仲良く三人で笑える日常が、ほんの少し延びただけ」

 

 もしストーカーを未然に防げたなら? その時は満を持してあの男がやって来るだけだ。そう、カミキヒカルである。

 不謹慎ながら焼肉で例えれば、極上の肉をゆっくりじっくり育ててきて、食べごろを今か今かと待っていたら、唐突に横から伸びた手にかっさらわれてしまった形だと私は考えているのだ。

 

 二人とも呪殺は無理だ。まともな財産を持たぬ私が依頼の対価として差し出せるであろうものは『自分の未来』だけ。二度は使えない。

 

「『ねえ、子供達も結構大きくなったんだよ。一度会ってみない? 新しい住所は……』」

 

 アイさんがカミキに連絡を取った時の台詞の始終。住所は、ではなく、新しい住所は、と彼女は言った。現住所だけでなく、星野家が最近引っ越したばかりであるともカミキが知っていたら? ここで殺せば住所を知る己が真っ先に疑われると読み、暫し時間を置くことを選んだ可能性は?

 

「己が父が誰なのか。子供たちが気にしていると知った彼女は別れた昔の男に連絡を取った。さあ果たしてこの行動は正解なのか間違いなのか。彼女が余計な気を利かせなければ? 子供達がもっと会話に注意していたら?」

 

 そうだとしたら、ストーカーの襲撃を私があらゆる手段を講じて防いでも星野アイの死は止められない。どうしても彼女を生かしたいのなら、もう一人協力してくれる人間が必要だった。

 

「もしくは、彼女を付け狙う者がいると知っていた誰かが、もっと防犯を意識するよう親に忠告していたら? 落とし穴は数多くあったのに、まるで私に全責任があるようにも解釈できる物言いは心外ですね。その女の子に厳重な抗議をしたいところです」

 

 アクアと連絡を取り合い、私がカミキの排除、アクアがストーカーからの防衛と、役割を分担して対処に当たる。これがありえた唯一の可能性だろうか。

 連絡自体はいつでもできる。カントクか苺プロに電話を掛ければ良い。カントクは双子をアイの子ではなく当時マネージャーだったミヤコさんの子だと認識し、存在自体が厄物な背景を持つなどとは露ほどにも思っていない。その場にいれば電話を代わるなり伝言を伝えるなりしてくれるだろう。

 斉藤社長は「そんな名前は知らない」としらばっくれるだろうが、押し切る手段は幾らでもある。だって私もまた、一連のスキャンダルの全てを知っている人間なのだから。世間に星野アイの秘密をぶちまけられたくなかったらアクアと内密に話をさせろ、とね。

 

 カギはアクアの側にこそあったと言いたい。私がどうするかに関わらず、最終的に彼が動いてくれなきゃどうにもならないんだから。温かい日々におぼれ、気のゆるみきった彼が。

 

「1パーセントの可能性だけで良いのなら、私がいなくたってどうにかなったかもしれないのに。最も身近にいて、かつ最悪を予見できる材料を持っていた人間が、もう少し悲観的にものを考えてくれていれば、なんてね。ああ、別に誰かを責めようだなんて思ってませんよ。だって」

 

 実際、アクアばかりに責任があるとも言い難い。内通者無しに住所を知る手段なんて限られている。単純な尾行程度は言われるまでもなく警戒していただろう。全てを見通すなんて神にしかできまい。私だって、原作で描かれているもの以外は分からないのだ。

 

「後悔なら、もう死ぬほどしてるでしょうからね」 

 

 とはいえ、いくら擁護されても後悔は消えまい。あの時ああしていれば、なんていくらでも出てくるだろう。

 私も今まさにしている最中だ。そして、次にこんな思いをしなくても良いよう、考えを巡らせる。それでも考えきれなかったものが現れて、また後悔するのだろうが。

 物事が計画通りに進む事は無い。それでも計画を立てる事は大事。

 

「さて、こんな不毛な話はもうやめにしましょうか。次は建設的な話でもしましょう」

 

 差し当ってます始めるべきは何だろうか。やはりもう少し説明をすべきなのか。

 逆の立場に立って考えて見た時、つまりアクア側から見た私はろくに説明もせず自分の言いたい事だけ言い捨てていなくなる意味不明な存在だろう。いくらか有益な情報もあるとは言っても……いやむしろ情報そのものは当たっているからこそ却って怖いのか。タダより怖いものはなし。目的は見えず、対価も取らず小出しの情報だけ置いてく謎人物。信用なんて到底できまい。

 何を聞いても言えない、話せない、知らない方が良い。言われた側はそれでは納得できないのもまた然り。

 

 無料がダメならなら対価を取ればいいのでは、というのはナシ。私はお金は好きだが、この件でアクアに何かを請求するつもりは一切ない。なぜならアクアは依頼人ではないからだ。相手が身に覚えのない請求はできない。唯一請求の対象にできる相手はアイさんだけだ。こっちはこっちで支払能力が無いけど。

 幽霊とか宗教絡みは何かと警戒されるし、何をやる、いくら貰うは事前にしっかり決めてそこから外れないのは大事。

 

 

 幾ばくかの沈黙の後、静寂を破り私は切り出す。

 

「今日はこちらかも一つお願いしようと思って来たんですよ。苺プロ前社長、斉藤壱護さんに会わせてもらえませんか。以前から話をお聞きしたいとは思っていましたが、やっと聞くべき内容がまとまったので。もし二つの質問の答えが両方ともYesだったなら、それでもう犯人が確定するので」

 

 犯人確定、という言葉に周囲が騒めいた。

 

「表向きは失踪だそうですが、全く連絡が取れないなんて事は無いと思うんですよね。アポ取り付けてもらう代わりと言っては何ですが、少しばかり個人的な話をしようかな、と」

「……その名前を教えてくれ、というのはダメなんだろうな」

「すみません。まだ憶測の段階で言いたくないので。ああ、私ばっかり話してる、とかそういうのはお気になさらず。対価なんて期待してないので」

 

 大赤字になるなんて最初から分かり切っていた事だ。経緯がどうであれ、お金を持ってない相手と分かっていながらそれでも受けると決めたのだ。 

 

「ときにアクアさん。今からでも全部忘れて投げ出して、適当に女作ってどこか地方で平凡な暮らしをする、なんてライフプランに興味はありませんか? お相手は星野ルビーでも有馬かなでも黒川あかねでも、はたまたそれ以外でも好きに見繕いください」

「……」

「ああ、答えは結構です。聞くまでもないので。でも、私にとってはこれが一番都合が良いんですよね。復讐劇の成否なんてどうでもいいので。私のゴールはそのもう一歩先にあるので、むしろ今すぐ諦めてくれた方が嬉しいぐらいで」

 

 アクアはじっと何かを考えこんでいる。

 もしかして先のライフプランについて一瞬でも真剣に検討してくれたのか、と期待したが、そうはいかないらしい。

 

「行く先なんて地獄しかないと思っていたが、君は地獄に用があるのか?」

「死んだ後はさておき、生きている間は前向きでそれなりに幸せでいてもらわなきゃ困ります。貴方にそういう人生送らせるのが私の目的なんで」

「……は?」

 

 三通りの戸惑いの声が三方から聞こえた。

 

「そんな後ろ向きでつまらない生き方を止めさせるため協力してくれ、との依頼なんですよ。なんで事件に関わっても私に利益が無い、とかは気にしなくていいです。復讐なんてさっさと終わらせて次行こう、という予定だったんですが、中々上手くいかないものですね。犯人引き渡して、後は煮るでも焼くでもお好きに、としたかったんですが、そういう訳にもいかなくなりそうな雲行きで」

 

 さて、この辺で良いだろう。正直今はこれ以上話せる事ないし。

 財布から五百円を出そうとして……しかし小銭を切らしていたので千円札を机の上に出し、立ち上がる。通路側の席だったので誰にも邪魔される事はない。

 身を寄せ合って座る双子の間の僅かなスペースに挟まっているアイさんに帰りますよの目配せをする。

 

「待って!」

 

 何か言うならアクアか姉だと予想したが、意外にもルビーが呼び止めに来た。

 

「何か?」

「あ、えっと、ゴロー先生の事、あおいさんなら何か知ってるんじゃないかって思って。それでお兄ちゃんに頼んで呼んでもらったんだけど……ただ聞きたかっただけでこんな事するつもりは」

 

 ゴロー先生の事、というのは殺した犯人捜しがしたいから情報欲しい、という事かな。

 

「ああ、別に構いませんよ。それで犯人でしたっけ。それなら多分カミキさんじゃないでしょうか」

「カミキさん?」

「お墓参りの時にいたあの人ですよ。証拠は無いですけど、他に思いつく人もいませんし。かもしれない、というだけなので突撃とか無謀な真似したら駄目ですよ。ちゃんと事前にアクアさんに相談してからにして下さい」

 

 まあこれぐらいは教えてもいいだろう。犯人捜しのために無理してでも出世しようとしなくなってくれれば万々歳か。

 相談相手は兄指定だ。姉の方はそういう無謀な真似するヤツの筆頭だし。

 

 

 

 ちょっと名残惜しそうな感じが出ているアイさんを引き連れて店を出る。多少こちらの事情を明かしたのが吉と出るか凶と出るかは不明だ。目的が分かって多少は信じて貰えるようになるかもしれないし、余計怪しまれて距離を置かれるかもしれない。

 まあその時はその時だ。斉藤社長の居場所なら最悪アクア抜きでもどうにかなる。原作で出没していた場所、都内で釣りができる場所や飲み屋を虱潰しに探せばいつかは会えるだろう。

 

 そんな事より今後だ。ただ流れに流されるままにではなく、泳ぐ方向を決めなくては。

 もういっそ壊してしまうか? 粉々にしてから有馬かなあたりに預けたらいい感じに修繕してくれないだろうか。

 

 そんな考えが頭をよぎった時、突然目の前が真っ暗になった。

 思わず足を止め、真っ暗な視界を見渡す。よく見ると暗くない部分もある。青白い白と黒で構成されたものが視界を覆っている。しばらく見ていたら気付いた。これアイさんだ。物凄く顔が近い。近過ぎてがらんどうの眼窩しか見えなくなっていたのだ。

 

 アイさん、お願いだからそこどいて。

 うん、壊すとか冗談だって。ちゃんと壊れないように注意するから。だからそんなに怒らないでよ。

 

 

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