完璧で究極なアイドル様に執着されて   作:肉ぶっかけわかめうどん

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もう一度会いたい人

 

 月曜日。本日全ての授業を終えたので、私は同級生たちとの放課後のお喋りもそこそこに今日も苺プロへと向かう。

 

 会社にたどり着き、オフィス内でまだイスに座っていたり、入れ替わりで出ていく先輩諸氏に挨拶をする。入れ替わりで出て行っている人たちはもう上がる人たちである。学生が普通に1日授業を終えてからバイトに行こうとすると、職場に着く頃にはもう一般的な意味での定時になってしまっているので、このような形になるのだ。

 苺プロは小さい会社であまり余裕があるとは言えないが、それでも皆が皆毎日が残業地獄という訳ではない。繁忙期でもなければ普通に定時で上がる人も多い。

 毎日いつでも溢れているのは主にアイドル部門関連の仕事であり、ほぼ毎日残業と休日出勤してるのはその殆どを自分で抱え込んでるミヤコ社長ぐらいのものだ。

 

 忙しいなら部下に仕事投げれば良い、と思うかもしれないが、現在ミヤコさんの抱えている仕事は余人をもって代えがたい業務が多い。14年前の旧B小町とアイドル部門解散、それに伴う人材とノウハウの散逸は本当に痛かった。あの事件を経てなお、芸能界と関わる仕事がしたい者は他社に行ってしまった。

 

 それに今さっき定時で帰っていった人らも、別にヒマという訳ではない。彼らもまた、彼らなりに頑張って何とか仕事を業務時間内で終わらせているのだ。さらに仕事を振れば彼らは定時で仕事を終える事が出来なくなり、そのような采配をした社長に不満を感じるようになるだろう。

 仕事を頑張ったら頑張っただけ仕事が増える。早く帰りたい、を原動力に仕事に推進している者からすれば、これほどやる気をそがれる話もない。それを苦に辞められでもしたら会社としては大損である。

 

 下に空きがないなら人を増やすしかない。しかしその根本的な解決策を採れない会社や部署でいかに過剰な業務をこなすかとなると……最終的に、管理職が残りの仕事全部背負うという力業にたどり着く。今まさにミヤコさんの陥っている状況だ。

 今もどこかをほっつき歩いているだろう斉藤壱護さんへ。貴方の嫁が過労で倒れる前に帰ってくる事を強くお勧めします。実の母と育ての母、2度も母を失った双子が本格的に再起困難になったりでもしたらどうするんだ。

 

 

 学生バイトが定時過ぎにやってきて何をするのか、とも思うかもしれないが、ちゃんと仕事はある。というのも、アイドル部門は定時を過ぎてからが本番なのだ。

 アクア、ルビー、有馬かな。苺プロの所属タレントの4分の3は現役学生である。彼らの通う芸能科高校はその名の通り芸能人としての仕事に理解と配慮をしてくれるが、それにも限度はある。極端に成績が悪い、あまりにも出席日数が少なすぎる、などとなれば普通の高校と同じく留年の危機が待っている。

 なのでどうしても必要でない限りは夕方以降の時間帯、あるいは土日に仕事を入れるのが慣例だ。苺プロもまた、自社内だけで調整できるレッスン等の日常業務は夕方や夜に入れている。

 

 今日の夕方から早くも撮影が開始されるという事で、今日最初の仕事は撮影で使う場所の掃除、必要な機材の用意、撮影で夜遅くなるので皆の食事の支度、となる。仕出し弁当の発注はもうしてくれているのでその受け取りと配膳片付けだ。

 あと冷めた弁当だけじゃ満たされない、などとほざいてきた黒づくめの子供の要望にお応えして、全員分のインスタント味噌汁も購入してきた。わがまま放題しやがって。

 

 

 ではさっそく仕事、といく前に、やっておくことが一つ。カントクに会いに行く必要がある。撮影が始まるという事で、カントクこと五反田監督も今日苺プロ内にいると聞いている。

 

 まだ主役も決まっていないのに撮影、と聞くと素人にはおかしな話に聞こえるが、撮影というのは忙しい。タレント達のスケジュールを長期に渡って押さえようとすると金が掛かる。出来る限り短期間に抑えたい。

 それにスタジオ等を借りる場合は貸す側の都合も関わってくるし、屋外で撮るならこの上に時間帯や天候も考えなくてはならない。撮れる時に撮っておく、はこの業界の常識らしい。

 主役以外は決定済みなのだから、主役の出ない場面から撮り始めてしまうのだ。

 

 カントクのいる部屋を訪ねると、カントクは何やら持ち込んだ資料を手に唸っていた。机の向かいにはミヤコさんがいて、同じく何か悩んでいる。撮影スケジュールか、はたまた予算か。何かのやり繰りが上手くいかず悩んでいるようだ。

 

「五反田監督、少しお時間よろしいですか」

 

 私が話しかけると、カントクは資料を机に置いてこちらに向き直った。

 

「アンタは……妹の方の黒川か。オレに何か用か?」

 

 私を見るカントクの目は歓迎とは程遠い目だ。嫌われているとは思わないが、特別好かれてもいないだろう。そもそもろくに話したこともない。距離感を測りかねている感じだろうか。

 

「今後の撮影に関する事で、2つほど監督にお願いしたい事が」

 

 無言で先を促したカントクの前に、映画の台本を掲げる。

 

「まず主役の選定についてですが、勝負の方法はこの台本の中から私が指定した場面を実際に2人に演じてもらう、という方法を考えています」

「それはオレじゃなくてお前の姉ちゃんに言えよ……あと、お前はルビーに肩入れしてるんだろ。中立じゃないヤツが選ぶのは不公平じゃないのか」

「公平である必要は無いと思います。方やプロで方や素人なのですから、このぐらいのハンデはあって然るべきかと。まずは1つの場面に集中して、彼女のポテンシャルを皆さんに見ていただくのが最善と考えました」

 

 カントクのもたれかかったイスの背もたれが、ぎしりと耳障りな音を立てた。

 イスに深く座り直したカントクの目は、様々な感情が込められているように感じた。深く入り込み過ぎて私にはよく読み解けない。

 

「たかが数日の練習で張り合えると思ってるなら、それはプロをなめ過ぎだ」

 

 台本をパラパラと意味もなくめくりながら、カントクは長く息を吐いた。

 

「だが、それはオレが口を出すことじゃない。この国じゃあ、主役のオーディションはしないのが慣習だ。なら、お前らの勝負にオレが首突っ込むのも良くないだろ。あくまで、勝った方に正式なオファー出すだけだ。好きにしろ」

「ありがとうございます」

「で、もう1つとやらは?」

 

 これで片方は片付いた。こちらに有利な環境を作るために、中立気取りの他者に横槍を入れられるような事態は防がなくてはならなかった。

 監督が静観を宣言したのだ。なら他の者もおいそれと口出しはできまい。

 

 そしてもうひとつ。こちらは別に無理なら無理でいいが、もし実現すればルビーの追い込みの一助になるだろう。

 

「この映画に多大なご協力をしてくださった方々への、ちょっとしたファンサービスを企画したいのですが……」

 

 企画と言っても、そんな御大層なものではない。説明なんて1分で終わるような薄っぺらいものだ。かかる費用はそれなりになるのは問題だけどね。

 ルビーを鍛える為の効率の良い方法を考えていた時、ふと頭をよぎった『授業参観』の4文字に、適当にそれっぽい理屈を添えて形を整えたのがこの企画。

 実際に参観するのは授業ではなく撮影だし、撮影そのものよりその後の接待の方が本体だが。

 

 18年以上前、彼女が病室のベッドの上でしていたであろう妄想。病に蝕まれていない健康な身体で、大好きなお母さんお父さんと一緒に食卓を囲んで、取り止めのないお喋りに花を咲かせる。その願望を叶えてあげる、家族水入らずを存分に堪能させてあげるのが狙いだ。

 ほら、お母さんが来てくれたぞ、喜べ、ってね。

 この部分に関しては説明を省くけれど。

 

 

 しかし説明を受けたカントクと、ついでに聞いていたミヤコさんの反応は芳しくない。

 

「出来る出来ないで言えば、無理とは言わないけどよ……それやって何の意味が?」

「さらなる出資と、万が一コケた時に出るであろう不満を少しでも抑える効果が期待できます。また、ルビーさんが一皮むけるのに役立つ可能性もあります」

「前はともかく、後のはまったく理解できないんだが。ルビー何も関係ないだろ」

 

 一方的な関係だけならあるんだよなぁ。それを説明する事は出来ないけれど。

 

「……ねえ」

 

 カントクが怪訝な顔を浮かべる傍ら、ミヤコさんはまた思い詰めた顔になっていた。

 

「その人達って、広告代理店の天童寺さんも含んでる?」

「そうなりますね」

 

 もちろん含んでおります。というかそっちが本命です。天童寺家の方々が来ないならこのイベントやる意味が無くなります。17年越しの感動の家族の再会を演出する為の理由づけなので。

 天童寺家のみ呼ぶのは不自然だから他のスポンサーとかも含めただけであって、他は正直どうでもいいんだよね。

 

「天童寺さんってあの酒好きの元気なおばさんか。何か問題が?」

 

 カントクはやはり面識あるのか。スポンサー回りの時に会って一緒に飲んでた場面が原作にあったし、この世界でも似たような出来事があったのだろう。

 

「その、アクアから『あの人をルビーに極力近づけないで欲しい』って頼まれてて。昔何か色々あった親族で、ルビーが不安定になるかもしれないとか何とか」

「アクアが? 前会った時は初対面みたいな素振りだったが」

「私はそんな名前の親族なんて知らないんだけど」

「社長が知らないとなると、アイが生きてた頃か? オレの知る範囲では何もないな」

 

 それはそうだろう。前世の時の血縁なのだからミヤコさんらが知るはずもない。

 しかし、やはり釘刺し済みだったか。仕事が早い。近づけろという私の求めと、近寄らせるなというアクアの求め。普通に考えれば、相反する2つのうちのどちらを優先するかなんて考えるまでもない。

 私としても正直ダメ元で言ってみてる部分は割とある。

 

「私も力にはなりたいけど……でもアクアは何も話してくれなくて。黒川さん、もしかして何か知ってたりするの?」

「もちろん、知った上で提案しております。ですが、教えてくれと言うならそれはお断りします。アクアさんが口を閉ざしているというのに、私が勝手にお話する事はできません」

 

 ミヤコさんの顔からは大いなる不満や苛立ちが湧き出ている。仕方あるまい。自分だけ除け者というのは誰だって不満だろう。

 

「子が苦しんでいるのに力になれない自分に、そして、自分に頼るという選択をしてくれない我が子に、色々と思うところはあるでしょう。私に子はいませんが、その気持ちは理解しているつもりです。ですが、ここはどうか抑えて下さい」

 

 やはり親としては、子供には己を頼って欲しい。悩みがあるなら話してほしい。言ってくれればいつでも、いくらでも力になるとも。親なのだ。愛する我が子を守るため戦う覚悟なら当然ある。

 きっと今、ミヤコさんはそんな気持ちなのだろう。

 

「会社も家庭も同じです。長たる者が不安そうにしていてはいけまけん。寄らば大樹の陰。皆の寄る辺となれるよう、大きくどっしりと構えるのが長の務め。ミヤコさんが親としてすべき事は、疲れ果てて帰ってきた子供たちのために、心安らげる日陰の準備をしておく事です。親のいる場所が、子供にとっての帰る場所になるのですから」

 

 誰にも頼らず、1人で背負い込もうとする我が子は見ていて心配になるだろう。しかし、その宿命は他の誰でもない、あの双子にしか背負えないものなのだ。手を差し伸べたい、何なら代わってやりたい気持ちはあるだろうが、それはぐっと堪えてもらいたい。

 

「帰るべき場所があると思えば、自分の帰りを待つ人がいると思えば、きっと勇気が湧くでしょう。信じて任せるのも年長者の役目と思って、ここは我慢してくださいませんか」

 

 私がそう御託を並べ立てれば、ミヤコさんは何か言いたげにしながらも黙り込んでくれた。この問題に関しては残念ながらミヤコさんには一切の出る幕を用意できないのでどうか引き下がってほしい。納得いかないだろうけど。

 この件に関して最終的にアクアの肩を持つことに決める可能性が高いが、まあ無くて困るものでもないし、ダメだったらダメだったで次の手を考えるだけだ。

 

「……何がどうなってるのかよく分からんが、それをやればルビーのレベルアップに繋がると、お前はそう考えてるのか?」

 

 適当に思いつく言葉を並べつつも、やっぱりこれ無理筋かな。と私は半ば諦めつつあった。だがカントクから意外な言葉が発された事で再び希望を取り戻す。

 

「レベルアップと呼ぶべきかはともかく、重要な事ではあるかと。ルビーさんが本気で夢に邁進する気なら……母を超える究極のアイドルを目指したいというのなら、避けては通れない道。ただ『アイ』の上っ面をなぞるだけでは、アイより上には上がれない。自身と向き合う時が来た、という話です」

 

 ルビーがアイドルとして成り上がる為にも、母の死の真相に近付くにあたっても、自身との向き合いは間違いなく必要。

 天童寺さりなはもう死んだ。自分はもう『さりなちゃん』ではないのだ、と過去と決別してもらわなくてはならない。雨宮吾郎の名を聞くのはその後にした方が良い。

 その手段として、前世の母から直々に『お前は私の家族じゃない』と現実を突き付けさせるほど効果的なものはあるまい。

 

「アイを超えるって……また高いハードルを持ってきたな」

 

 カントクとミヤコさんの顔を見ているとなんとなく思う。やはりこの2人は、問題の意味と深刻さを理解できていない。ただ息子に頼まれたからそうしているだけで、なぜ天童寺家とルビーを関わらせるのが良くない事なのか分かっていない。

 アイの死後、斉藤家に引き取られてからの接触ならば、斉藤ミヤコがそれを知らないのはありえない。アイの存命中の接触にしても、斉藤夫妻とアイと、ついでにアクアの目を盗みつつルビーにトラウマを刻み付けるなんて真似は容易ではない。

 そも当時のアクアとルビーは5歳未満の小さな子供だ。何か色々と記憶違いを起こしている可能性だって普通の大人なら考える。

 

 転生者で、前世では親子でした。酷い親だったので今でも苦手です、なんて事前情報なしで思いつくのは不可能だ。

 アイが売れたからあれこれ集るために会いに来た極めて浅い関係の親族で、さぞ子供の目にも醜悪な存在に映るような振る舞いでもしたのだろう、と考えるのが最も現実的だろうか。成功者として有名になると、それまで存在も知らなかった自称親族が列を成して訪ねてくるなんて珍しい話でもない。

 真面目に考えようとすればするほど、問題は矮小になってゆく。

 

 これが原作の映画の時期のルビーのように、肉体的にも精神的にも余裕の無い限界寸前の時期であれば、今はこれ以上負担は掛けられない、と隔離一択だっただろう。だが幸か不幸か、今のルビーにはまだ余裕がある。

 

 彼らもまた大人だ。監督、社長という責任ある椅子に長年座ってきた。これまで様々な酸いと甘いを経験してきただろう。そんな彼らだからこそ、苦労なくして成長なし、可愛い子には旅させよ、と一般論を説かれれば耳を傾けてくれる可能性は高い。

 これから社会で、特に芸能界で活躍したいのであれば、嫌いな相手との付き合い方もある程度は学んでいく必要はある。芸能界に限らずとも、一度も謝罪する事なく生きていける社会人など存在しない。

 これから何か気に入らない事がある度に、兄や仲間達の背に隠れてやり過ごすなんてできはしないのだから今の内に表面だけでも取り繕う事を覚えるべきだ、と言われたらミヤコさんはどうするだろうか。ルビーを本当に大事に思うなら、失敗しても笑って許してもらえる時分のうちに練習させておこう、となるのが一般的な考えではなかろうか。

 

 アクアがこの企みを知れば、どんな手を使ってでも阻止しにくる事は予想に難くない。だが、アクアが強硬に反発すればするほど、いったい過去に何があったのか、と大人たちの疑問は深まる。

 しかしアクアはその疑問に答えられない。星野家と天童寺家の諍いなど最初から存在しないのだ。中身の無い不自然な反論しか返せない。

 

 中立で理性的にものを考えられる人ほど、事実を重視するだろう。理由も言わずにただ駄目だ駄目だと繰り返すしかできないアクアでは、周囲を味方にはつけられまい。

 

「この映画を通して母の孤独と葛藤を追体験し、アイの強みと弱みを理解する。そして知り得た母の本当の姿と己を比較して、己の強みを知り、星野ルビーというアイドルは今後どう在るべきかを考える。このプロセスの先にこそ、彼女の夢と栄光があるでしょう」

 

 アクアの言う通り、ルビーと天童寺を絶対に関わらせてはならないと事態を深刻に捉えているのならどうにもならない。しかし多少なりとも甘い認識でいてくれているのなら、一般論を武器に押していけば主張を通せるかもしれない。

 一部の者はそれでも向こうにつくだろうが、それ以外の者を味方にできれば数の力で押し込める。

 多数決で押し切られたから仕方ない、もう個人の発言力ではどうしようもなかった、と言い訳できる状況であればミヤコさんも折れてくれるかも。

 

「短い期間ではプロには追いつけない。その点は監督の仰る通りです。ですが、ルビーさんにも皆に負けない独自の色があると信じています。その片鱗、本物へと至り得る可能性ぐらいはお見せできるかと」

 

 まあそれもこれも、上手くいけばラッキーぐらいに思っておいた方が良い。どう言い訳しようと、私の主張を容れればミヤコさんは息子との約束を破る事になるのに違いはないしね。

 ミヤコさんは私の雇い主。気分を害しすぎてクビでも宣告されてはたまらない。決定権を持つのはあくまでこの人だ。

 

 皮算用の話はいったん置いておいて、最初の話に戻るとしよう。

 

「先にお話しした件、明日、実際に1場面やってみたいと思います。監督におかれましては大変ご多忙とは存じますが、ぜひ足をお運びください」

「え、明日?」

「監督のスケジュールが許すなら今からでもやりますが」

「いや今日は無理……待って、こっそり練習するための選択権じゃなかったのか?」

「いいえ。こちらに有利な土俵を作るのが狙いではありますが、練習目的ではありません。明日は私が指定したたった1行の台詞を、心を込めて発してもらうだけを予定していまから。では、失礼します」

 

 今日の所は即却下とならなかっただけで十分だ。元より今日この場で返事を貰える話とも思ってない。私のやり方で成果が上げられれば、カントクの見る目も変わるだろう。その後でもう一度同じ提案をする。それでも通らなければ、その時は無理だったと潔く諦めよう。私の都合でお金をたくさん使わせてしまうからね。仕方ないね。費用対効果の観点から突っ込まれたら普通に何も言えなくなるから。

 

「こいつ本当に何考えてんのか分からねぇ……」

 

 カントクのつく溜め息の音を背後に感じながら、私は2人の前から下がる。そろそろ普通の仕事も始めないとね。

 

 

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