完璧で究極なアイドル様に執着されて   作:肉ぶっかけわかめうどん

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界面活性剤

 

 主役争いに決着がついてから2週間弱。普通に学校行って、普通に仕事しての日常を送っていたらあっという間に宮崎へ発つ日がやってきた。

 

 学校から帰ったら最低限の身支度を済ませ、姉妹ともども空港まで親に送ってもらう。

 まだ飛行機の時間まで少し余裕があるので、苺プロ組の引率役らしい壱護やカントクと親が挨拶し合っているのを片目に軽く休憩させてもらう事にする。どうせ向こうに着いたらまた仕事なのだ。

 

「……や、やっほー」

 

 目を閉じてのんびり座っていると、ちょっとぎこちない声が頭上から振ってきた。

 半分寝るのを止めて上を向くと、MEMちょの顔がそこにあった。

 

「おやMEMちょさん」

「寝てた? 疲れてるとこごめんね」

「いえいえ、お気になさらず」

 

 持ってきていたはずのコーヒーを手探りで探しながら、MEMちょに挨拶を返す。はて、今日B小町が来るとは聞いていなかったが。

 

「MEMちょさんは何故ここに?」

「見送りだよ。他の皆もすぐ来るから。次の仕事まで時間あるし」

「それは大変ですね」

 

 見送りしたらそのままB小町は仕事か。MEMちょはともかく、ルビーは学業に充てる時間が削れまくりで大変だろう。

 私やアクアには高校生を1度経験済みというアドバンテージがある。だから暫く学校に行っていない期間があってもそれなりにやれると思うが、そうでないルビーは授業に追いつくのも一苦労しそうだ。

 だからと言って私に手助けできる事など無いのだが。勉強ならそこにいる医大出の兄貴に教えてもらうと良い。

 

「大変だね。ただのバイトだったのにいきなり映画なんて」

「……まあ、ちょい役とはいえ出演を受け入れた私にも非はあります。仕事内容のエスカレートは世の常なので」

 

 いつだってそうだ。最初は申し訳なさそうに少しだけ。でもその内遠慮が無くなる。仕事と責任は増える事はあっても減る事は無い。フット・イン・ザ・ドアで世の中は回っている。

 

「はは……」

 

 MEMちょは苦笑いしていた。

 

「こうなった元凶たるウチの姉には今度何かご飯でも奢らせましょう」

「程々にしてあげてね……あ、ご飯と言ったら」

「はい?」

「この間の企画会議での話なんだけどさ」

 

 企画会議とは、苺プロに所属する配信者が次に何を配信するべきか話し合う会議である。まあ会議と言ってもほぼ形式的なものに過ぎないようで、配信者の考案した企画に会社側が口を出す事はそうそう無いらしい。

 ましてや企業の力を借りずとも単独で十分やっていけるMEMちょ級の配信者ともあれば猶更だ。彼女の持ち込んだ企画書に担当者がざっと目を通し、判子を押してはい終わり。企画会議5分で終了なんて事も珍しくないとか。

 元々会社の力なんて必要としていない相手なのだから会社側も口出しには相当に気を使うようだ。

 

「近いうちに料理回やろうって話になってるんだけど……そこでやるメニューに困ってるんだ。あかねに聞いたら、キミならなんかいいレパートリー知ってるかもって。悪いんだけど、なんかいいの知ってたら協力して欲しいな。もちろん分け前はちゃんと用意するから」

 

 あー、なんか何日か前に姉がそんな事言ってたような気がするな。B小町の料理配信やるからうち使わせてほしいって。

 若い女性配信者に作らせたらウケそうな料理か。B小町の配信を見てる層となるとやはりメインは男性だろう。男ウケしそうな絵面の料理に心当たりがない事は無い。

 

「良いですよ。後で送ります」

「いいの!?」

「こんなもので良ければお安い御用です」

 

 料理自体はそう難しいものではない。自炊経験がある面子なら工程自体は難なくこなせるだろう。後は動画映えを意識するだけだ。ルビーの人気のために頑張って欲しい。

 

「……図々しいお願いだけど」

 

 レシピだけ渡して後はご自分で、なんて言うほど私は鬼ではない。必要な道具くらいはこちらで用意しておこう。宮崎から帰ってきた頃に届くように発注しておかねば。

 脳内のやる事リストに新たな1文を書き加えたところで、MEMちょはおずおずとさらに話を続けてきた。

 

「良かったら撮るの手伝ってもらえないかな。やっぱり大勢の前で料理するのって緊張するし、慣れてる人が監督してくれてたら心強いし」

「黒子役という事ですか? どうせうちでやるならどの道居合わせる事になるでしょうから構いませんが」

「ありがとう!」

 

 MEMちょに手を握られてぶんぶん振り回された。

 そんなに喜ぶような事かな。前にツクヨミの前で演技させられて以来ちょっと怖がられてるような気がしないでもない。距離を測りかねてるというか。

 

 

 そしてB小町の残りメンバーも空港に合流し、有馬かなからはまるで後輩扱いかのような激励を受けた。

 

「あいつと同じ顔で素直なのってなんだか調子狂いそう……あいつもこれぐらい可愛げがあれば良かったのに」

 

 などと姉の方を見ながら言っていた。

 

「……素直になったらかなちゃんが可愛がってくれるの?」

「やめて気味悪い」

 

 そしてしっかり聞き耳を立てていた、上目遣いでにじり寄ってくる姉と押し戻そうとする有馬かなの攻防が始まった隙に私はそっと離れた。

 

「あっ、あおいさん」

 

 空になったコーヒーの缶を捨て、別のイスに移った私の元に今度はルビーがやってきた。

 

「お仕事頑張って!」

「はい。ルビーさんもこれからお仕事ですか?」

「うん。あおいさん、着いたら連絡してね。電話するから」

「それは構いませんが……」

 

 制服の上にコートを羽織った簡易変装スタイルの上からでも分かるほどにっかり笑った。

 お話ししようは構わないが、私なんかと話して楽しいか? アクアと話してた方がよほど楽しかろう。そう問いかけた。

 

「アクアさんや姉とはされないので?」

「するよ? お兄ちゃんともお姉ちゃんともするし、あおいさんともする」

 

 だがルビーは私の想定の上を行っていた。

 

「元気ですね」

「家帰っても誰もいないもん」

 

 兄は不在なのは勿論、壱護も不在なため彼に仕事を投げられないミヤコもまた仕事漬け状態。結果この撮影旅行中はルビーは実質1人きり。退屈だからお喋りに付き合えという事か。

 

「それにあおいさんとお喋りするのも楽しいよ。いつも落ち着いてて仕事もできて色んなこと知ってるし。でも大人しいだけじゃなくて怒ったら絶対怖いし。大人の人って感じ」

 

 そりゃまあ、精神的には大人ですからね。年に相応しい中身になれてるかについては自信ないけど。

 まあそこまで言われちゃ断る筋合いも無い。手隙の時で良ければ聞き役くらいにはなろう。

 

「分かりました。私で良ければお相手させていただきます。楽しみにしていますね」

「えへへ……行ってらっしゃい」

「行ってきます」  

 

 それから数時間、機上の人、あるいは車上の人となってどれだけの時間が経ったか。ずっと脳のスイッチ切ってたから何時間かは分からなかったが、ようやく高千穂の地に着いた。

 既にどっぷりと日は暮れている。仕事は明日から。その日はありふれた平凡なビジネスホテルに入って寝るだけと決まった。

 

 用意された部屋はベッドが2つあるツインだった。姉と同室にする事で1部屋分の宿泊費をケチったようだ。まあ私は枕が変わると寝れないような神経質な性質ではないので別に構わんが。

 ホテルの浴場で軽く温まり、風呂上がりの保湿と柔軟に忙しい姉を横目にベッドに転がって眠気の波が来るのを待つ。私も保湿やら美容やらをしないわけではないが、姉のように毎日毎日あんなに細やかにはできない。さすがに面倒が勝つ。それだけやる気が湧くのは羨ましい。

 

 ルビーにホテル到着と就寝を知らせる連絡を入れて、携帯の充電だけ忘れないようにコンセントを探していると、枕元までコードを引っ張るには微妙な位置にあるのを姉が指差しで教えてくれた。寝ながら携帯触れないとは気が利かない設計者だなと心の中で文句を言いながら充電を開始し、再度ベッドに寝転がった。

 

「ねえあおい」

 

 姉が背中を向けたまま言った。

 

「なに」

 

 私も寝転がったまま答える。

 

「あおいって緊張とかする?」

「するよ?」

「今のあおいは緊張してる風に見えないけど」

「今からしても仕方ないじゃん。仕事前になったらするよ」

「私は演劇しか知らないけど、本番前の新人って皆、台本読み返してたり振り付け確認したり、深呼吸してたりでとにかく余裕無さそうなんだよ。でもあおいは余裕たっぷりだね」

 

 それは嫌味で言ってるのか?

 どうせ病院編でのリョースケなんて一言二言しか台詞無いんだし、本番直前にちょろっと確認すれば十分でしょ。前日から見返して覚えようとするほどの量は無い。

 

「ぶっつけ本番は慣れてるから」

「へぇ」

「仕事なんてそんなもんでしょ。入念に準備して挑めるなんて滅多に無い。聞いてた話と違うなんて日常茶飯事。それでもやらなくちゃいけない。私はいつだってぶっつけ本番だよ」

 

 ただのちょい役と聞いてたら、いつの間にか大トリに配置されてたとかね。あるいは単なる事故、ちょっと心霊スポット行ったらなんか拾っちゃったみたいな案件だと思っていたら、後でガッツリ恨まれるような事してたのが発覚したり。何でそんな大事な事黙ってた、と怒鳴りつけたくなることは稀によくある。

 

「ま、どうせこちとら素人だし。一夜漬けしたところで大して意味なんかないよ。私はいつも通りにやるだけ。カントクだって、私が前にルビーさんにやって見せたの見て選んだんでしょ? ならあの通りにすればいいだけだよ」

「そうだね。あおいのそういうとこ、羨ましい」

「?」

「なんでもない」

 

 そういうとこってどういうとこか聞き返そうとしたが、姉は答える気は無さそうだった。

 

 

「……あおいが演じる犯人役の人って、推しのアイドルと付き合ってたんだよね」

 

 この話はもう終わりと、別の話題を持ち出したので私ももうそれ以上は聞かなかった。別にそこまでして聞きたい内容でもないし。

 

「そうだね」

 

 次に持ち出された話題は犯人役の話だった。

 犯人ことリョースケは、何と元推しのニノと交際関係にあった。そしてそれを壱護は気付いた上で見て見ぬふりしていた。原作最終盤で判明した衝撃の事実である。

 

「ひどいよね。自分だって現役アイドルと付き合ってるのに、推しが家庭持った事に怒って殺しに来るなんて」

「面の皮が厚いよね」

 

 どの口が言うか。私でもツッコミたくなる。

 ニノのファンが知ったら激怒するのは間違いないだろう。

 

「あおいもそう思う? 犯人は自分の事棚に上げて殺意を抱けるような人物だったって」

「……うーん、そうかもしれないし、そうでないかもしれない」

 

 本当のところは当事者本人にしか分からない。

 しかし、リョースケの言動を擁護する事は不可能ではない。

 

「どういうこと?」

「発言を素直に聞くと、犯人はファンを裏切った事に怒っているように聞こえる。けど、もしかしたら犯人はファンとしてではなくただの菅野良介として、アイドルのアイにではなく星野アイという個人に怒りを向けていたのかもしれない」

 

 リョースケとカミキ。この2者には交友関係がある。そもこの2人がある程度、つまりアイとの恋愛に関する相談を持ち掛ける程度に親しくなければ宮崎でアイの入院先がリョースケに伝わらない。

 

「リョースケはアイとカミキの関係を知っていた。2人が別れた事も、その直後に産婦人科に入院した事も」

 

 もしリョースケが、あの双子はカミキとの子であると知っていたなら、そも男を作った事、子を成した事を責める一連の言動がおかしくなる。

 つまり、リョースケはアイに子供がいるのは知っていたが、父親については知らなかった。

 

「もし父親が誰かを知らないのであれば、犯人から見た星野アイはどうなるか」

「……カミキヒカルと交際してる裏で別の男とも関係を持っていた。しかもその男との子供が出来たのを切っ掛けにカミキヒカルを捨てた最低の女に見える、って事?」

「散々好き好き言って釣っておいて、全部ウソっぱちじゃないかてね」

 

 ファンをではなく、オレをでもなく、よくもカミキ君を騙したな。最低の破局を迎えてなお、彼女を想い続ける友人の為にこそ、リョースケは襲撃を決意した。そう考える事も出来なくはない。犯行時にカミキの名を出さなかったのは彼に迷惑を掛けない為にだろうか。

 

「そういう解釈もできるよ、って話でしかないけど」

 

 そしてこの解釈は雨宮吾郎とも繋がってくる。彼もまた、双子の父については知らない側の人間だからだ。もし誰か1人でも、父親が誰か知っている人がいたなら、リョースケは犯行を思いとどまったかもしれない。

 これを私の演技に反映すべきかどうかはまた別の問題だし、そうであっても私にそんな技量は無いのだけど。

 

 

 

 寝転がっている内にいつしか寝息を立て始めた妹を背に、あかねは安っぽいスタンドの照明の下で思索にふけっていた。

 

 先のあおいの解釈と、以前話した雨宮吾郎の死亡時期についての可能性。この2つを組み合わせると、ひとつの推測が上がってくる。

 双子の出生を知っていて、星野家の住所を聞き出す手段を持ち、しかし父親が誰かは知らぬ人物。即ち雨宮吾郎こそが犯人に情報を与えた黒幕であるとする説だ。

 

 しかし、この説には大きな穴が空いている。それは動機だ。

 

 ゴローの動機でも、リョースケの動機でもない。犯行の為にこの2人が手を組むに至った動機である。

 人が手を組む時、そこには必ず共通の利害がある。しかしこの2人にそれがあるように思えない。

 

 雨宮吾郎はアイの信奉者だった。彼が宮崎での事件を偶然ではなく誰かの悪意だと考えたなら、斉藤壱護を疑うだろう。アイと壱護、どちらを信じるかと問われればアイを信じる。アイがあの笑顔の裏で己を亡き者にしようと画策していた? アイがそんな事をする筈がないと。

 であるなら彼の矛先は斉藤壱護に向かう筈だ。

 

 斉藤壱護を害したい雨宮吾郎と、アイを害したいリョースケ。まさしく水と油。似ているようで全く異なる目的を有した2人が手を組んだ。

 

 まだ何か足りないピースがある。あかねはそう感じる。

 

 ろくに面識も無ければ利害も合わない2人を、それでも繋げた何かがある?

 あるいは、何かじゃなく誰か。2人に『住所を入手する役』と『その住所に乗り込む役』を割り振り、その間で情報を受け渡していた司令塔がいるのか。それができる人物がアイの関係者にいるとするなら、それはおそらく……。

 

 あかねは眠りこける妹の顔をもう一度見やった。

 そのピースを知っているのか。知った上で無関係と見なしたのか。それとも、隠さなければいけない理由でもあるのか。

 

「……」

 

 眠る妹を起こさないよう軽く頭を撫で、あかねは自分も空いている方のベッドに潜り込んだ。

 

 

 

 

 華美ではないが、見る者が見れば高級品と分かる調度品に囲まれた和室の中で、長い豊かな銀髪を寝やすいようにゆるく団子状に結んだ少女が開け放した障子から夜空を見上げていた。

 

「人間は面白いね。正しい情報から間違った答えに向かう者がいれば、誤った情報から正しい答えを導き出す者もいる」

 

 幼さを残した声はよく冷えた冬の始まりの空気に溶け込んでいく。数頭のカラスだけが少女の独り言の聴衆だった。

 

「なまじ知識を持ってしまっているからこそ、余計に迷ってしまうのかな」

 

 人は信じたい物を信じる。当人は頭を使って考え出した合理的で正しい答えだと信じていても、そこには若干ながらこうであってほしいという願望が含まれているものだ。人は自分1人で客観的な答えを出す事などできない。そこには必ず主観的な思考、思い込みが混ざっている。

 

「本当に父親が黒幕でいいのか。これが推理の出発点になっているから、父親以外に犯行が可能だった人物が現れた途端に、やはり父親は黒幕ではないのだと思い込んでしまう。その推理なら、他の謎や疑問のいくつかに説明をつけてしまえるから猶更」

 

 彼女が呼ぶところの『原作』において、多くの謎や疑問は終ぞ明かされないままだった。主人公もその協力者も、父親が悪であるという根拠を提示する事は出来なかった。

 

 雨宮吾郎の死の真相は? いかにあの男が人を操る怪物だったとしても、知らない相手への憎悪など煽りようがない。しかし彼1人では死体を処分するのは困難だ。

 

 斉藤壱護はなぜ失踪した? ニノとリョースケの関係を知っていて黙っていた男だ。アイとカミキの関係を知ったとしても、同じ対応を取るだろう。アイの殺害を手助けした第3者がいると確信しておきながら、それでも実行犯の恋人や被害者の父親の事は疑わなかった。壱護は何を知っているのか。

 

 超常の存在が主人公に度々口にした『使命』とは何であるか。転生の対価に背負わせたものなのだ。それはきっと、主人公の復讐譚に深く関わるものなのだろう。

 

「そして何より、その答えは彼女にとって極めて都合が良い内容でもあった」

 

 彼女の目的は主人公に、過去ではなく未来に目を向けさせる事。母の死の真相を明らかにする事でも、復讐を遂げさせる事でもない。むしろ『原作』のような終わり方を回避する為には復讐を阻止すべきだ。

 その目的において、父親は事件にほぼ無関係である。お前が復讐すべき相手は最初から存在しないという真相はベストと言ってもよい。誰も不幸にならないのだ。

  

「1度、これは正しいと思い込んでしまうと人はもう梃子でも動かない。だってこれは正しいのだから」

 

 己は雨宮吾郎の生まれ変わりであると信じる彼が、雨宮吾郎を疑う事などありはしないように。雨宮吾郎こそが悪であると信じた彼女はそれ以外の可能性を無意識に思考から排除するようになった。

 

 例えば、どこかの誰かが、その双子は自分の子だと“うっかり”言い忘れてしまっていた可能性だとか。

 

「他人事と思わずもっと踏み込んでくればいいのに。何度言っても学習しない子」

 

 そういうところも可愛いのだけれど。少女は傍らの濡れ羽を優しく撫でた。

 

「あの子が神頼みをしてくれるようになる日が楽しみだ……ふわぁ」

 

 この世に生物という態で存在する以上、少女もまたその手の欲求と無縁ではいられない。

 可愛らしい欠伸の後、その小さな手を鳴らすと少女の背後で襖が静かに開いた。

 

「お呼びでしょうか」

 

 書類上は親族、しかしその実態は無我の従者たる男が頭を垂れている。少女は男を振り返りもせず用件を口にした。

 

「前に言った代わりの霊能者、今日こっちに来たんだ。明日仕事してもらうつもりだから送迎お願い」

「畏まりました」

「頼んだよ。じゃあ、私は寝るから」

「ごゆっくりお休みください」

 

 自分に付き従うモノたちに見送られながら、少女は和室を後にした。

 

 

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