縛りでショタった呪術師の青春?   作:アンハピ

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先週からpixivで上げ始めた人生初の二次創作です。
まず先に作者はショタコンです。
そして天与呪縛を知った私は思った…そんなの縛りでショタにするしかないじゃない。
ほんのりBLっぽい雰囲気になることが今後もしかしたらあるかもしれませんが、その時は事前にお知らせします。



一年生編
縛りでショタった呪術師の青春?


薬袋 紫鶴(みない しづる)

性別男、21歳、7/31生まれの獅子座。

サラサラの茶髪にくりっとしたパッチリ二重の瞳、色白のきめ細やかな肌とくれば顔面については親に感謝だ。

モデルをしないかと声をかけられることがある程度にはイケている。

そんな僕は今…というよりある日を境に大きな問題に直面している。

僕の体の成長は齢十二を数えたその日に止まった。

 

天与呪縛…呪術師が力の底上げを図るために自らにかける『縛り』とは別に、その者が生まれ持った『縛り』。それが十二を超えたその日から一切の肉体的成長・変化が起こらなくなるという形で現れたのだ。

そんなわけで僕の身長はわずか145センチ、体重35キロと吹けば飛ぶ紙の如し。

さっきのモデルの話も子供服のモデルとかそういうあれだ、ふざけやがって。

 

日々社会の荒波に揉まれ、疲弊し切った世の大人達にしてみれば、ピーターパンよろしくずっと子供でいられるなんて羨ましいなどと…そう思う者もいくらかはいるのかもしれない。

だが、当の本人にしてみれば堪ったものではない。

まず飲酒に喫煙、車の免許取得、その他1人の人間が自立して生きていく上で必要な諸々のことは成人と認められて初めて行える。それら全てにかかる手間が一般人のそれとは大いに異なる。

とはいえ、出先の店での年齢確認なんて今では随分と手慣れたものだし、最初こそ辟易とはしたが仕方がないと諦めがついた。

 

それよりもっ…‼︎

 

僕がこの姿のまま肉体の時が止まってから、最も苦しめられたことはそんなことよりも他にある。

 

生まれてこの方ただの一度も恋愛ができた試しがない

 

幾つになっても小学生、よくて成長を見越して大きめの学生服を買われた中学一年生にしか見えないことの弊害が、恋愛という一点において以下に重要な問題を発生させるのか分かるだろうか?

中学時代、当時のクラスでは可愛い部類に入る高嶺の花とはいえないまでも時間をかけて仲良くなったA子ちゃんも、近所のコンビニでバイトをしていた笑顔の素敵な可愛いB子さんも、日課のジョギングで知り合った小型犬を散歩させる可愛らしいC子ちゃんも…僕の勇気ある告白を前にこう言った。

 

A「うぅん…気持ちは嬉しいんだけれど、私自分より背の高い人がタイプなんだよね。ごめんね?できればこれからも友達として仲良くしてほしいなっ」

B「お世辞が上手ね!お姉さん嬉しくなっちゃうわ!でも、そういうのは君がもう少し大きくなって気持ちが変わらなかったら改めて伝えてほしいかな」

C「えっと…流石に小学生とお付き合いは…。ほら、色々と周りの目とかもあるし、警察にお世話になるのは…ね?」

 

玉砕。

 

なんなんだよ神様、僕は前世で何か大きな罪でも犯したのか?

だとしてもこんなのあんまりだ!生まれ変わったんだから、僕の魂はあの世での禊を終えたんじゃないのか?ちくしょう!

そうして気がつけば今年で21歳、僕の人生に春はまだ訪れない。

 

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そんな僕の青春?時代。

時は数年前に遡る。

 

「ねぇ、そこの君」

 

青春のせの字も知らないまま中学を卒業したその日、僕は雪のような銀髪にサングラス、モデルのような長い脚を持つ胡散臭さなら100点満点を取れそうな男に自宅の近くにある公園で声をかけられた。

こういう時の対処法は一つ、無視して通り過ぎるに限る。

一切何も聞こえてませんという風を装い、もう視界に入っている自宅の玄関目掛けて小さな歩幅をあくせく動かす。

 

「あれ?聞こえてるでしょ?ねぇってばー」

 

なんだかふざけた男だ。成人男性の平均的なそれより頭一つ抜けた高身長の割に子供のような喋り方が馬鹿にされているようで癪に触る。2度目の呼びかけも無視して玄関に飛び込もうとしたその時だった。

僕より遥かに広い歩幅で男が目の前に割り込み、僕の顔を覗き込むように身を屈めてきたのだ。

 

「ひどいな、無視しないでよ。僕のガラスのハートが傷ついちゃうよ?」

 

くそ、あと少しだったのに…と心底うんざりした表情を浮かべ、こうなってしまっては無視を決め込むわけにもいかないと意を決して言葉を紡いだ。

 

「あ、あの、さっきから何か用ですか?僕はあなたと初対面だと思うし、声をかけられる覚えはないんですけど」

「さっきからって、やっぱ聞こえてるじゃん?まぁいいや、知らない人に声をかけられても話しちゃいけません、付いていっちゃいけませんって親御さんの教育が行き届いてる証拠だね」

「いや、あの…だから要件を。ないならそこをどいてください。家に入りたいんですけど。それにここ、すでにうちの敷地の中ですよ?」

「ごめんごめん、用件が終わったらすぐ出ていくからさ。それで用件っていうか、君にお願いがあるんだけど…」

 

は?とますます怪訝な表情を浮かべてしまう。

初対面の怪しい男に何をお願いされるというのか、十中八九碌なことじゃないのは目に見えている。

 

「お断りしますどいてください警察呼びますよ」

 

間髪入れず矢継ぎ早にそう言い放つ。

 

「わぉ辛辣、内容くらい聞いてよ。お願いっていうのはさ、僕はこれから君のお家に用があるから、それが終わるまでそこの公園で大人しく待っててくれないかなってことなんだけど」

「意味がわかりません、僕に聞かれたくない話を親とするなら別に僕が自分の部屋にいればいいだけじゃないですか?わざわざ公園で待つ必要ないと思うんですけど…?」

「うーん、話ってんならそうなんだけど、そういうのとは別の用件っていうかね。…はぁ、めんどくさいしもういいや」

 

なんて男だろうか。このやりとりにいい加減うんざりしているのはこちらも同じだというのに、と沸々と込み上げてくる怒りを堪えていると、目の前の男がこちらに背を向けた。

そして何をと思ったのも束の間、インターホンすら鳴らさず玄関のドアノブに手をかけ始めたのだ。

 

「ちょ⁉︎何してるんですかっ!家にお母さんもいるしせめてインターホンくらいっ…勝手に入るなよ!おいっ!離れろ不審者!」

 

それに慌てて背後からしがみつき男をドアの前から引き剥がそうとするが僕の力ではびくともしなかった。

 

「僕のお願い聞いてくれなかった君のお願いを僕が聞く義理もないよね?」

 

子供っぽく舌を出してニヤつく男に怒りのボルテージが限界を突破しようとしたその時、

ガチャ…と音を立てて玄関が開いた。

視界に映るのは見慣れた自宅の玄関、靴が揃えられ母が今日変えたばかりなのだろう、今朝家を出る時とは違う鮮やかな花が棚の花瓶に生けられている。

だが、見慣れたいつもの家の中だというのに空気が違うと瞬間的に肌で感じた。電気がついておらず薄暗い…専業主婦の母が家を空けているのなら鍵は閉まっているはずだし、鍵のかけ忘れ?とそこまで考えたところで男が口を開いた。

 

「これは…ちょっと遅かったかな、君はここから動かないように。怪我したくないでしょ?」

「ちょ、待ってよ!ほんとに警察呼ぶぞ!おいってば!」

 

聞く耳持たずと言わんばかりに靴も脱がずにズカズカの突き当たりのリビング目指して歩き出した。

慌ててそれを追うように靴をきちんと並べてから後を追う。

こんな時でも親の躾はしっかり守るのが良い子な僕だ。

だが、男の背を追う最中、鼻をつく妙な臭いに気がついた。

 

(なんだこれ、生臭い?生ゴミ捨て忘れたのかな…?それに空気がベタつくような…うぐっ!)

 

そう思考を巡らせるも突如としてそれは途切れた。突然リビングに入ったところで足を止めた男の背中にぶつかったからだ。

 

「いきなり止まるなよっ!ていうか靴脱げよ!外人か!」

「あれ?着いてきたの?待ってろって言ったのに…」

「うるさい!なんで僕がお前のいうこと聞かなきゃいけないんだよ!ここは僕の家だぞ!そこどけよ!警察呼んでやるからな!」

 

そう怒鳴りつけて男の脇を通り抜けようとした時だった。

『それ』が目に入った。

白いカーテンとベージュの絨毯を染め上げる赤黒い液体、手や足と思しきものが生物としてあり得ない向きに捻じ曲がったような何かが転がっていたのだ。

そして一泊遅れて理解した。

『それ』が『人間』だと。

 

「え、あぅ…うわぁぁあっ!な、なにこれ!し、死んでる⁉︎」

 

驚きのあまりに尻餅をつき悲鳴をあげるが、そもそも何でホラー映画も真っ青なグロテスク極まりない人間の遺体が我が家のリビングに転がっているのか…至極真っ当な疑問も捻じ曲がった腕の先、指に輝いた見知った指輪を認識した瞬間に真っ白に染まった。

 

「おかあ…さん……?」

 

慌ててその遺体に駆け寄ろうとしたが、すぐさま首根っこを男に捕まえられて脚が宙を蹴る。

 

「僕より前に出ないでくれる?死にたいの?」

「離せよっ!お母さんがっ、早く手当して救急車呼ばないとっ…」

「…見たらわかるでしょ、もう死んでる」

 

はっと息を呑んだ。

なんだ、何を言っているんだこの男は。

死んでいる…?誰が?お母さんが…?

 

「嘘だ…死んでるわけない、だって今朝も元気にしてたし、いってらっしゃいって…今日はカレー作るからって言ってた…のに」

 

母が死んだことを悲しむよりもあまりにも急な事態に脳が追いつかず、受け入れられず、そのせいか涙もこぼれなかった。

茫然自失と膝をついて崩れ落ちた僕を哀れみの滲むような瞳でサングラス越しに男が眺めたその瞬間、リビングの隣にある和室から引き戸を吹き飛ばして『何か』が姿を現したのだ。

3メートルはあろうかという巨大、それも明らかに既知の生命体ではない。

青黒い肉の塊にぐちゃぐちゃの歯ならびと悪臭を放つ口、左右で大きさが異なり、別々の方向をぐるぐると見渡す瞳、筋肉質な巨腕、脚がなく蛇のように這いずる尾のようなもの。

上げ連ねるだけでも化け物としか言いようのない『何か』がそこにいた。

 

『うきゅる…きゅぷ』

 

鳴き声なのかも判然としない異音を響かせた『何か』の瞳が突如ぎゅるりと音を立ててこちらに向けられた。

 

『ぎゅるおぉぉおおおおっ‼︎‼︎』

 

喧しい雄叫びを上げた『何か』に完全に腰を抜かしてしまった僕は悲鳴を上げる。

 

「うぁあっ!な、なにあれ…っ‼︎あんなでかいのっ!」

「人間の負の感情が具現化した存在、呪霊、と僕たちはそう呼んでる。君のお母さんを殺したのはこいつだよ。こいつに呪い殺されたんだ。…ていうか、君やっぱり見えてるんだね。ふざけた呪力量だと思ったけど、ほんとによく今まで呪霊を知らずに生きてこられたもんだ」

 

呪い?呪霊?この男が言っていることを理解するには今の精神状態ではとてもじゃないが余裕が足りなすぎる。

そしてそこまでで恐怖と驚愕、悲しみにパンクした僕は完全に意識を飛ばしてしまった。

 

「あれ?気絶しちゃった…。まぁピーチクパーチク喚かれるよりはいっか。そんじゃまー、お仕事と行きますか!」

 

『ぎゅむるぉっ‼︎』

 

呪霊と呼ばれたそれが床を軋ませて突進を仕掛けてくる。

 

『ぐぷぅっ⁉︎』

 

しかし、それも男にあと少しで触れるというところまで来ていきなり停止した。いや、止められたというべきか。力を込めて全身を振るわせるものの巨体は見えない何かに完全に押し留められているのだ。

 

「無駄無駄♪君程度の雑魚が僕に触れるなんて無理に決まってるでしょ?」

 

ボヂュンッ‼︎

 

瞬き一つの間に汚らしい音と共に飛び散ったのは呪霊だった肉片。それを眼前に微笑む男が何かをしたのは明白だった。

 

「だって僕、最強だから」

 

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「…ん、うぅ。…あれ、ここは…?」

 

暗闇に薄灯りが差し込む。

そのまま身を任せるようにゆっくりと瞳を開ければ、視界に広がるのは見覚えのない天井。自宅の白い天井とはまた違う材質のそれとあたりに漂う薬品臭さが、ここが見知らぬどこかであることを理解させるには十分だった。

 

「お?やっとお目覚めか、硝子ー見てあげて!」

「うるさい、でかい声出すな」

「さーせん」

 

意識を失うまで散々苛立たされた男が覗き込みながら僕の目覚めを確認し、続いて硝子と呼ばれた女性がゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。

 

「ちょっと失礼」

「あ、わっ」

 

ロングの茶髪に気だるげな垂れ目、右目の下に泣きぼくろが特徴的な彼女は医師か何かなのだろうか、一言断りを入れてからテキパキと僕の体を触診して、痛むところがないかを聞いたり心音を聞いたりしている。

そうして一通り状態確認も済んだのか、少し椅子を引いてもたれかかりこちらに視線を向けた。

 

「特に異常はなさそうね。色々とショックが続いて一時的に意識を飛ばしたみたいだけど、どこまで覚えてる?」

「僕は……うぷっ⁉︎」

 

どこまで…、そうして記憶を手繰り寄せた瞬間に脳裏をよぎるにはあまりにも凄惨な記憶がはっきりと思い出され、思わず込み上げた胃の中身に咄嗟に手で口元を押さえて俯く。

彼女はそれを見て特に慌てる様子もなく、近くにあった袋のセットされたゴミ箱を拾い上げて渡してくる。幸い何とか湧き上がったものを飲み下して堪えたものの、ありがたく胸元に抱え込んだ。

 

「あ、あの…僕の母は、お母さんはどうなったんですか?それにあのでかい化け物も、あとここはどこなんですか?」

「質問攻めだね。まぁ落ち着いてよ、記憶は思ったよりはっきりしているみたいだし順番に説明してあげるからさ」

 

あの男もそう言うなり椅子に腰掛けて組んでいた脚を崩し、先ほどまでの軽薄な表情を鎮めた。

あれは夢じゃないのだろうか?そうであってほしい、あんなこと起こっていいわけがないし、あんな目に遭う覚えだって微塵もない。だというのになぜだろう、目の前の男の放つ雰囲気が話す前からあれが現実だったのだと伝えてくるようで、妙な動機と嫌な汗が止まらない。

 

「あの場で一緒に見たからもうわかっているとは思うし、下手に取り繕ってもよくないからね…単刀直入に伝えるよ」

 

息を呑んだのは誰だろうか、嚥下の音が嫌に大きく聞こえる。

 

「君の母親は死んだ。正確には呪霊に殺された…というのが正しいけれど」

「…っ、なんで、なんで僕のお母さんが殺されなきゃいけないんですか?何も悪いことしてない…優しい人だった!あんな化け物に殺されるなんてそんなのっ、あんな死に方していい人じゃなかったのに!」

 

全てが現実だったと知るのと同時に溢れ出す涙。

あの場では涙など出なかったのに、どうしてか今は胸の喪失感が計り知れない。そして、その悲しみを相殺するように押し寄せる怒り、なぜなのかという疑問。

その様子を痛ましいものを見るように見つめる2人。

少年の慟哭を空間が吸い込み切った頃に男は続けた。

 

「何度も言うけれど君の母親を殺したのは呪霊と呼ばれるものでね、まぁ悪い幽霊とか妖怪みたいなものと思ってくれればいい。で、それが偶々君の家を訪れたのか誰かがけしかけたのか…は目下調査中なんだけど、その呪霊を祓う…つまりやっつけるのが僕たちのお仕事ってわけ」

「呪霊を…祓う?」

「そ、呪いには呪いを…僕たちは呪力を持って奴らに対抗している呪術師。君が見た呪霊は君が気を失った後に僕が祓った。君をそのままにしとくわけにもいかないから、こうしてここに連れてきたってこと。それで薬袋紫鶴くん、僕から君に提案があるんだけど、うちの呪術高専に入らない?」

「呪力…呪術高専…?あ、あの何が何だか分からないというか…。高専ってことは学校ってことだと思うんですけど、僕もう進学先決まってますし、それに呪いとかそう言うのもよくわからないです」

 

いきなり呪いだなんだと言い出したかと思えば、今度はそんな怪しい学校に入らないか?と言われても困惑するほかない。

明らかに狼狽えている様子のボクを見かねてから、それまで黙って様子を見ていた硝子さんというらしい女性が割って入ってくれた。

 

「相変わらず説明が足りなさすぎて困ってるでしょ、このクズ。それは順番に説明できてるとは言わないんだよ」

「えぇ〜?そうかな?そうなの?」

 

心外だと言わんばかりの様子でこちらを見やる男に、親を失ったばかりの悲しみに暮れる子供に対してどれだけ無配慮な人間なのかと、クズと言われるだけの片鱗を垣間見る。

 

「まぁ、その辺りの詳しい話は君の返答次第で時間をかけて説明してあげるからさ。どうかなこの話、乗るかい?」

「いや、と言うか僕、まだあなた達の名前も知らないんですけど…」

「…名乗ってなかったの?」

「……うーん、忘れてた!てへぺろ」

 

そこまで話してようやく聞くことができた内容によれば、この胡散臭くて空気の読めない子供みたいな彼は五条悟、もう1人の医師のような佇まいの彼女が家入硝子という名前で、それぞれその呪術高専という呪力を持って呪霊を払う呪術師を育成する学校の教員と言うことだった。

 

「いやぁ、僕としたことがうっかり。それであんなに僕のこと警戒してたんだね!」

 

いや、いきなり出会い頭に怪しい風体の男に呪いがなんだと名乗られてもそれはそれで絶対に信用なんかしない。

納得といった様子でご機嫌なようだがそんなことよりも話を戻さなくては。

 

「あの、そもそも何で僕をその呪術師の学校、呪術高専に入れようだなんて話になったんですか…?」

「ん?あぁ、そこからか。だって君、呪力を持っているでしょ?それもとんでもない量の」

「え…?僕に呪力があるって…でも僕あんな化け物を倒すような力なんかないですよ?」

「僕の目は特別製でね、呪力とかそういったものがよく見えるんだ。それに君、呪霊を見たのは今日が初めてじゃないだろ?」

 

五条の言葉にまるで何もかもお見通しだと言わんばかりの気配を感じて、一瞬肝が冷えたような感覚に陥る。事実、今までにも彼らが呪霊と呼ぶものと同じ存在らしきものを見たことが何度もあったからだ。無論、隠そうと思っていたわけではないし、あの時はパニックになってただひたすらに情けない姿を晒すしかなかっただけだ。

 

「…なんでそれを」

「だって君、あんなでかいのって言ったでしょ?最初からあの呪霊は見えていた。そんで持って呪力があるのは一目見た時からわかっている。そこにあの発言とくれば、あんなにでかいのは見たことがないって言いたかったんじゃない?そして、それはつまり、あれより小さいやつは見たことがあるってことだ」

 

その通りだった。

物心つく前から見えていたのだろう。

大人たちの前でも他人に見えない何かがいると言って散々気味悪がられたし、小学校の頃は嘘つき呼ばわりされたことだってある。だから、成長に伴って他人に見えないそれについていたずらに話すことはしないようになっていった。

幸いにも本当に小型犬よりも小さいようなサイズのを時々街中で見かける程度で、近づかず気づいていないふりをしていれば特に何が起こるわけでもなかったから、自然と意識しなくなっていたのだ。それがまさかあんなにヤバい存在だったなんて夢にも思わなかった。

 

「それにさ、僕の誘いを断るのも全然OKなんだけど、君はこれからの学費とか生活とかどうするつもりなの?」

 

それを問われた瞬間にただでさえボロボロの自分の足元が完全に崩れ去る音を聞いた。

確かに五条の言う通りだ。自分はただの高校入学前の子供で母は既に居ない。父親は随分と前に生活費や子供の養育費は入れてやるからと言って、愛人とともに出ていっていた。幸い稼ぎのある人だったから母も専業主婦ができていたわけだが、その仕送りも母亡き今、送ってくれるにしても僕を引き取るなど絶対に嫌がるだろうし、僕だって妻と我が子を見捨てた男の元になんか行きたくはない。最悪の場合は金すら入れず、中卒で働き口を探す羽目になる可能性だってなくはない。そこまで考えて一気に不安が押し寄せた。

 

「あの…その呪術高専っていうのに入学したら生活とか学費とかってどうにかなるんですか?」

「モチのロン!誘った手前無責任なことはしないのが僕だ!安心してくれてOKモーマンタイ!」

 

なぜだろう、不安しか感じない。

だが、背に腹は変えられないのも事実。

それに今は早く母を弔ってあげたかった。

 

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結局あの後は、念のためと一日入院のような形でお世話になり、そこから母の葬式、親戚等に世話にならなくて済むように諸々の手続きをしたり、呪術高専とやらの制服を作るために五条さんの付添で寸法を計りに行ったりと、忙しく過ごしていればあっという間に桜舞う4月。僕はすでに決まっていた高校を蹴り、呪術高専への入学の時を迎えていた。

 

入学式はそれは寂しいもので同学年は自分含めてたったの3人、しかも全員男と来たものだから激しく落ち込んだ。

どうやら高校生活でも甘酸っぱい恋愛は出来なさそうだ。

人数については事前に説明は受けていた。なんでも呪術師を育てる学校というマイノリティーすぎる特性ゆえに生徒は毎年こんなものらしい。

そうして今、最初のオリエンテーションということで男3人机を並べて教室にいるわけだが…。

 

ガラガラッ

 

「やぁみんな!おっまたせー‼︎これから君たちの担任としてビシバシ指導していくことになる最強最イケメンのこの僕!五条悟のお出ましだよー‼︎みんな元気かなっ‼︎⁉︎」

 

勢いよく入室するなり、ウザさ全開で声を張り上げる残念な男。

そんなこれから担任となる男を見て、生徒3名は絶対零度の視線を送る。

 

「あれ…なんだかノリが悪いなー。もう一度行ってみよう。みんな元気かなーっ‼︎⁉︎」

 

教室ってこんなに静かになるものなのか。

 

「みんな元気かなーっ‼︎⁉︎」

 

これはもしかしなくても反応返すまでやめないつもりだなこのクソやろう…。仕方がない、このノリで永遠に続けられるのもストレスだ。ここは僕が子供らしい外見を生かして悪ノリに乗っかってあげるとしよう。

 

「はい!元気です!」

 

ふふ、まるで小学校の頃を思い出す風景に隣の2人も少しは寒すぎる空気から脱却して笑いの一つも取れたことだろう。

そう思い視線を隣にむけてみればそこには…、なんだこいつと言わんばかりの担任に負けるそれよりなお冷たい視線が。

は、恥ずかしい。穴があったらなんとやらだ。

そして当の担任は、

 

「え、なに?教室では静かにしましょうって小学校で習わなかったのかな?」

 

こ、こいつっ‼︎散々滑り倒したから可哀想に思って乗ってやった僕の優しさを仇で返しやがったぶちのめしたいっ!

 

「それじゃあ気を取り直して改めて、僕は五条悟。君たち呪術高専新一年生を担当することになる。こう見えて最強なんて呼ばれちゃってるすごーい人だから、みんな死ぬほど敬ってくれて結構だよー」

「最強とかいって、実は頭のおかしい最狂とか一緒にいると不幸になる最凶の間違いじゃないの?」

 

タダでは終わらん。

反撃の狼煙は今上がった。

 

「失礼だな、あんまり可愛くないこと言ってると夜蛾センお手製呪いの人形を敷き詰めた部屋に閉じ込めちゃうぞー」

「先生ごめんなさい」

 

それだけはごめん被る。

入学前に一応形式だけなんて面談をさせられた時に会った学長。

それが五条の言う夜蛾センこと夜蛾正道である。

彼は呪骸という呪力を込めた人形を操る傀儡呪術の使い手であり、面接においては彼の質問に対して求められる答えを返さなければ殴りかかってくる呪骸がいたので記憶に新しい。

 

「さて、それじゃ僕の自己紹介はこの辺にして、次は生徒の諸君に自己紹介をしてもらおうかな。誰からでもいいから前に出てよろしく」

 

その言葉の終わりと同時に一番教室の扉側に座る生徒が席を立ち、黒板の前へと歩みを進める。

身長は170ぐらいだろうか。黒髪短髪に日焼けなのか地黒なのか褐色気味の肌、運動部だったのか引き締まった肉体といかにも高校男子と言った容姿の彼。

 

浪川 涼(なみかわ りょう)、中学までは剣道をやっていた。好きなものは焼き魚全般、嫌いなものは特にない。全て守り抜けるくらい強くなるためにこの高専に来た。仲良しごっこをするつもりはない。以上だ」

 

そう淡々と告げてさっさと席に戻った彼は、質問も追及も受け付けないとばかりに視線を廊下の方へと向けてしまった。

 

「はいありがとう!じゃあ次!」

「じゃあ次は俺で」

 

そう言って今度は真ん中の席の生徒が前に出る。

彼は浪川よりもさらに高身長で180近くはあるだろうか、染めているのだろう金髪ツーブロックの頭に左耳に輝くピアス、垂れ目気味な瞳と人懐こい笑顔がまるでやんちゃな大型犬のような印象だ。

 

桜庭 秋斗(さくらば あきと)。中学ではバスケやってました!好きなものは肉!嫌いなものは野菜!あとこの金髪とかピアスは高校デビューってことで最近やっただけで、不良とかじゃないんでよろしく!」

 

実に見た目通りの性格だ。

彼とはすぐに仲良くなれる気がする。

そう信じたい。

 

「うんうん、元気のいい自己紹介ありがとう!それじゃあ最後いってみよー!」

「は、はいっ」

 

すごく緊張してきた。昔から人前に立つのは人並みに苦手だ。直前まで言おうと思ったことが飛ぶせいで余計に訳わかんなくなるのが恐怖だ。

 

「あ、えと、薬袋 紫鶴です。見た目はこんなですけど一応ちゃんとみんなと同い年です。好きなものは海老グラタンで嫌いなものはピーマン…です。中学は特に部活とかしてなくて、あっ読書が趣味です。スポーツとかは詳しくないけど、仲良くしてくれると嬉しいなーなんて…よろしくお願いします」

「んー、声が小さくて聞こえないなー?もう一回最初からいってみる?」

「うぐ…」

 

ニヤニヤと楽しそうに僕だけいじってくるこのクソ担任。

こいつだけは絶対に仲良くなれないと初対面の時から思っていたが、やっぱり嫌いだ。

 

「まぁ、他にも話すことあるし今はとりあえずそれでいっかな。そう言うわけでこれから生徒3人担任1人で青春を謳歌しつつ呪霊と命懸けの戦いを繰り広げていくわけだけども、なぁに不安になることはないさ。なんたってこの最強の僕が指導するんだ。生半可な術師に習うより遥かに強くなれると保証してあげよう。無論、君達の努力とやる気次第って前提がつくけど」

 

その後は構内の施設や授業のことなど簡単な説明を行うなり、別件の仕事があるからと五条は解散を申し渡してさっさと出ていってしまった。

教室に置き去りにされた僕たちは、要するに勝手に帰れってことだろうが顔合わせ初日だ。これから命を預け合うことになる仲間でもあるわけだし、自己紹介以外にも会話などで親交を深めるのがいいだろう。

そう思って隣の席に座る2人に声をかける。

 

「あ、あの桜庭くん、浪川くん、2人ともこれからよろしくね。僕体が小さいから体力とかはあんまり自信ないんだけど、精一杯頑張るから!」

「おう、よろしく。あと苗字呼びじゃ堅苦しいし下の名前で読んでくれていいぜ?俺も勝手にしずちゃんって呼ぶから」

「そ、それはなんか芸人みたいでやだな…」

「えー?んじゃあしーちゃんで」

「ま、まぁそれなら…」

 

うん、やはり桜庭くん…いや、秋斗くんはとても好感が持てるし仲良くできそうだ。ちょっと距離の詰め方がえげつない気がしなくもないけど。

 

「俺も別に呼び方にこだわりはないから好きにするといい。俺からは苗字で呼ばせてもらう。それから、任務で同行することもあるだろうがさっきも言った通り、俺は強くなることを第一目的にしている。頑張るのは結構だが邪魔だけはしてくれるなよ」

 

自己紹介と同じように淡々とそう告げた浪川くんは、さっさと席を立つと僕たちの返事を待つこともなく帰ってしまった。

あまり人付き合いとかが得意じゃない…というか嫌いなのかもしれない。

秋斗くんも特に嫌な顔をするわけでもなく、

 

「なんか一匹狼って感じだけど、自分から会話に入ってくるあたり友好関係絶許ってわけじゃないんだろうな。まぁ授業やら任務やらこなしてればそのうち打ち解けんじゃね?」

 

と楽観的な様子だ。見かけに反して大人な余裕がある彼に少し羨ましさを感じるとともに頼もしくも感じる。

 

「桜庭くん…じゃなかった、秋斗くんはどうしてこの高専に?」

 

これは相手が誰でも聞いてみたかった内容だ。

自分がここにいる理由が理由だけに安易に聞くのもどうかと思っていたのだが、浪川くんと違って影のなさそうな彼ならば聞いてもいいような気がしたのだ。

 

「ん?なんでって言うか俺の親父が一級呪術師だったんだけど、その親父に憧れて…ってところかな。お袋は物心つく前に病気で死んじまって全然覚えてねぇんだけど。その分、親父が男手一つで育ててくれて。まぁその親父に恥じない男になりたいと思ったんだよ」

 

すごく立派な理由だった。

すでに両親がいない(クソ親父が生きてはいる)が、生活と学費の問題を解決するためなんて浅はかな精神でここにいる自分をぶっ飛ばしてやりたい気分になってしまった。

自分で聞いておいてなんて様だ。

と、そこで引っかかった部分があることに気がつく。

 

「呪術師だった…て、じゃあもしかして」

「あー、いや別に死んだとかじゃなくて今もめっちゃ元気よ?ただ任務で怪我しちまってさ、そのせいで任務に出たりが難しくなって引退したんだよ。今は補助的な仕事をやってるって言ってた」

 

なんだ、聞いてはいけないパンドラの箱でも開けた気分になったがご存命のようで何よりだ。

 

「そう言うしーちゃんはなんで高専に?術師の家系って雰囲気でもないし、なにより戦闘とかに出たら真っ先に狙われて死んじゃいそうに見えるんだけど」

 

彼の曇りなき純粋な瞳に見つめられながら、言葉の刃に引き裂かれる。いや、弱そうに見えるのは否定しないし、フィジカルが見た目通りの能力しかないのだから間違っちゃいないが…。

 

「う、その…実は中学卒業した日に家族が呪霊に襲われて…それで僕も殺されそうになったんだけど、たまたまそこに任務で来ていた五条先生に助けられて…さらにそこから呪力があるから身寄りがないなら高専に来たら?って誘われて…それで」

「なるほど、それでか。あー、なんか嫌なこと聞いちまったかもな、わりぃ」

 

そう言って申し訳なさそうにしょげる彼に慌てて身振り手振りで否定する。

 

「いやいやっ!先に聞いたのは僕だし、それに辛くて悲しいことだったけど、でも立ち止まってもいられなかったからここに来たってのもあって…だから、秋斗くんが気に病むことじゃないよ」

「…そっか、サンキューな。しーちゃんはいいやつだな!」

 

そんな彼の笑顔は妙に眩しかった。

そして彼はあっと声を上げるとまるで内緒話でもするかのように顔を寄せてきた。

 

「優しいしーちゃんについでに聞きたいんだけどさ」

「なに?答えられることだったらなんでも聞いて?」

「しーちゃんが小さいのってなにか病気とかそう言う感じのやつ?中学の頃もタッパの小さいのはいたけど、しーちゃんと同じレベルは流石にみたことなかったからさ」

 

まぁ当然、これから命を預け合う相手が小学生にしか見えないのでは、多少不安もあるだろうし気になりもするだろう。

それに呪術の世界に片足を突っ込んだ時点で新たな新事実が判明したこともあって、以前ほど身長ネタを振られても卑屈にはならなくなっていた…と思いたい。

 

「えっとね…これは僕も五条先生に会うまで、成長ホルモンとかそう言うのの病気とかかな?ってそう思ってたんだけど」

「ほうほう実は違った感じかな?」

「うん、先生が言うには天与呪縛っていうらしくて、内容は人それぞれみたいなんだけど、僕の場合12歳前後で成長が止まってしまう代わりにすごい呪力を手に入れるって代物だったみたいで…」

 

天与呪縛、生まれつきその者に課された縛りであり、その代わりに別の強大な力が得られるという難儀な代物だ。

親ガチャよろしく当たり外れの差が激しく、後から変えることもできない分、内容が当たりなら一騎当千はくだらない術師になり得ると言う。

 

「天与呪縛か、術師の家系だし俺も名前くらいは聞いたことあるけどさ。実物は初めて見たわ」

 

そう言って、至近距離でマジマジと観察してくる彼にたじたじになっていると続けて質問が飛んできた。

 

「それで、その縛りの代わりに得た呪力ってのはどんなのだったんだ?…って先に俺から教えないとこう言うのはフェアじゃないよな!俺のはこいつだ」

 

そう行って彼が人差し指を突き出すとその指先に渦巻く球のようなものが生成された。

 

「わぁ、これは?」

「俺の生得術式、『呪銃(じゅがん)』だ。こうやって指先に呪力でできた弾丸を作って、呪霊にぶっ放すんだ。使う指の数が多いほどデカくて強い玉が作れる。片手で五本指全部使うとバスケボールくらいの大きさになって、今見せてる指一本分で電柱をへし折るくらいの威力は出せる。弾道もある程度操作ができて小回りが効くし、燃費もいいから俺自身気に入ってんだ」

 

なるほど、確かに遠距離攻撃でそれだけの威力が出せるものを撃てるというのは強みだ。それに実際の銃と違って予備の弾薬も気にせず呪力の続く限り撃ちまくれる。

さらには指の数だけ10段階の威力調節、弾道操作も可能と応用の幅もありそうだ。シンプルゆえに強力な術式と言えるだろう。

 

「まぁ、俺のはこんなところだな。そんでしーちゃんのは?」

「僕のは見せるのは難しいんだけど…こんな感じ」

 

説明は見てもらってからがいいだろうと術式を使用した次の瞬間、教室中の窓ガラスが粉々に吹き飛んだ。

 

「あっ…」

「は…なにが?」

 

ダダダダダダ

ガンッ

 

「何事だっ‼︎」

 

盛大なガラスの割れる音と術式で発した呪力の気配を察知でもしたのか、凄まじい勢いで教室に飛び込んできたのは夜蛾学長その人だった。

 




pixivとは投稿の形式とかルビの振り方が違くて仕様変更がすんごく大変だった。
ついでに本家より若干加筆修正してます。
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