縛りでショタった呪術師の青春?   作:アンハピ

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ミミイカって可愛いよね。
知らない人はググってみることをお勧めします。


再誕

 

「それでは、帳を下ろします」

 

『闇より出でて闇より黒く、その汚れを禊ぎ祓え』

 

伊地知さんが帳を張ったのを確認したのちに、秋斗くんと涼くんの二人は滝に繋がる階段を降りて呪霊の捜索を開始した。

一方の僕は二人のどちらかが会敵するまで、ここで伊地知さんとお留守番だ。

 

「二人とも大丈夫かな…」

 

「…心配ですか?」

 

「それはそうですよ。三人で相手にできれば確かに不安はないかもですけど、二人は実際のところ二級と準二級…準一級呪霊との力量差は同等ってことです。三級の僕が心配してたら二人には怒られそうですけど、大切な友達だから怪我してほしくないです…」

 

伊地知さんの問いかけに自分の思いを正直に告げれば、彼は優しげに微笑む。

 

「絶対…とは言ってあげられませんが、それでもそうして仲間のことを思ってあげられる貴方と友人になんです。きっと大丈夫でしょう。呪術師というものは少々イカれていた方が良いなんて言いますが、私は薬袋くんのように、誰かを思って戦える、そういう人間でいられることの方が幸せだと思っていますから」

 

そう言う彼だって誰かのためを思って行動をする人なんだろう、そう漠然と思った。補助監督をしているのだって、命の危険に立ち向かわないといけない生徒や術師達のために、何かできればと思ってのことなのだろうから。

 

「伊地知さんも優しくて立派な人だと僕は思います。今日だって、僕たちのせいで予定が大幅に変わったのに慌てて対応してくれて、全部段取り任せちゃってますからね、僕たち。でも、そのおかげでこうして万全を期して任務に臨める」

 

「仕事ですからね…でも、ありがとうございます。その言葉だけで、補助監督をやっていて良かったと思えますよ」

 

 

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「桜庭、俺はこちら側から川沿いに探す。見たところ岩が突き出て足場もあるし水深も浅い、お前は対岸に渡って探してくれ」

 

「分かった、しーちゃんが来る前にやられるなよ。悲しむから!」

 

「こっちのセリフだ」

 

憎まれ口を叩き合いながらも川を挟むように二手に分かれて呪霊の捜索を開始する二人。

しかし、そう時間をかけることもなく脅威はあちらからやってきた。

 

「っ!桜庭、滝壺に何かいる!」

 

その言葉に反射的に後方へと飛び退いた秋斗を狙ってか、水面から黒い触手のようなものが出現して襲いかかってきたのだ。

反応が早かったことで掠りもしなかったが、先ほどまで立っていた岩は粉々に割れている。よく見れば、伸縮する柔軟そうな見た目に反して、尖端部分は硬質なトゲのようになっているらしい。

 

「浪川!そっちも行ったぞ!!」

 

「見えている!」

 

と同時に、今度は水中を蠢く影を秋斗が捉えて叫ぶ。

一拍遅れて水中から飛び出した触手を視認した涼は回避ではなく、管斬による斬撃を持ってその触手をザン!と輪切にした。

 

そして、その隙に合図を出すべく、大きく息を吸い込んだ秋斗が先の倍以上の声量で叫んだ。

 

「しーちゃん!今だ!!!!」

 

 

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秋斗くんの声が聞こえたと認識した時にはすでに走り出していた。作戦通りに階段を駆け降りて滝の前に到着した時には、すでに秋斗くんが呪銃を撃ち込んで呪霊の気を引いていた。

 

そして、眼前に見えた呪霊の姿は巨大な黒いイカだった。

複数の触手を波打たせて水中から攻撃を仕掛けているらしい。

それを彼はどうにか乱射によって迎撃している。

 

「薬袋!こっちだ!」

 

涼くんの掛け声に僕は階段の途中から手すりを越えて飛び降りる。彼が作戦開始直前に考えた策、それは僕を鞘に収めた管斬で受け止め、そのまま呪力強化を加えたフィジカルで力任せに吹っ飛ばすと言うものだった。

 

「おまたせっ!」

 

ガッ!と涼くんの構えた鞘の上に飛び乗る。

そして、涼くんが勢いよく鞘を振り抜いた。

 

「行ってこいっ!!!」

 

空中に舞い上がった僕は放物線を描くように、イカ呪霊の背面に接近した。水上に伸びて秋斗くんに応戦している触手は10本。イカの呪霊ならばあれで全部使い切っているはずだ。

 

(ここだ!)

 

「領域展開…っえ⁉︎うわぁっ‼︎」

 

だが、隙をつかれたのは僕の方だった。

水中からさらに2本の触手が現れて僕の両足に絡みつき、そのまま水中に引き摺り込んだのだ。

 

「しーちゃんっ‼︎」

 

「薬袋っ‼︎」

 

ザブン!と水飛沫が上がる。

しかし、ここは川底が見えるような浅い川だ。

すぐに呪力砲で触手を焼き切って脱出を、そう思い呪力を掌に込めようとする。

 

(っ⁉︎呪力が…練れないっ⁉︎)

 

どういうわけか全く呪力が出力できない。

呪力がなくなった感覚はない。

練れないのだ。

そして、周囲を確認した僕は衝撃的な光景を目にすることになった。

 

(うそだろ…っ!ここは浅い川じゃっ⁉︎)

 

水底が見えない。

 

(外からの景色が術式で作られたものだった?いや、そんな感覚は全くしなかった…!だとしたら…水中に範囲を絞った領域か結界術…!本体から感じる呪力から見て後者か!)

 

水中のみを効果範囲にするという縛りを科すことで、呪力を封じる効果と空間の拡張を両立させているのだろうか。

見下ろせば海溝かと思うような闇が大口を開けている。

 

(術式が使えない…意識を失ったら終わるっ…!)

 

なんとか脚に絡みつく触手を振り解こうと力を込めるが、呪力強化すら働いていない今の僕では非力すぎて不可能だ。

どんどんと水面の薄明かりが遠ざかっていく。

 

(油断した…呪霊なのに見た目で勘違いして判断を誤るなんて、先生が知ったら怒られるかな…。…息がもう…苦しい。嫌だ、こんな死に方、二人の仇も…まだ取れてないのに……)

 

ゴボッと残りの空気を吐き出してしまった僕の意識はそこまでで闇に飲まれた。

 

 

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「この!こいつ腕幾つあんだよ!イカだろうが!」

 

「バカっ!見た目だけだ!呪霊なんだから本当のイカの体構造と同じなわけないだろ‼︎」

 

次から次に水中から生えてくる触手を前に、二人は防戦を強いられていた。

本来なら作戦失敗の時点で撤退のはずだった。

だが、それでも水中に引き込まれた仲間を救い出さない限りは引くつもりなど毛頭ない。

そのための隙を作ろうと、二人は敵の無数の触手を減らすべく攻撃の手を緩めない。

 

(おかしい、引き込まれてもこの浅さなら、外からでも薬袋の姿が見えるはずだ。だが、影も見えない…!さっきからこいつの攻撃も必要に水中に引き込もうとしているきらいがある…水中に何かあるのか?)

 

仲間が引き摺り込まれるところを確認していた涼は、水面越しに見えるはずの姿が見えないことに違和感を覚え、早くも敵の術の正体に気が付きかけていた。

 

(ここからじゃこれ以上の憶測は不可能…ならば!)

 

「桜庭‼︎少し一人で抑えてろ‼︎」

 

「は⁉︎何考えてっ…て、おい浪川‼︎」

 

このままでは埒が開かないと考えた涼は、即決で自ら水中に飛び込んだ。

そして、彼もまた驚きの光景を目にすることになる。

 

(これは!水面を外との境界に見立てた結界か‼︎深すぎて底が見えない!薬袋はどこだ!)

 

見渡せど広がるは深海の如き闇。

そして、そんな彼をさらに深みへ誘おうと無数の触手が襲いかかってくる。

 

(ちっ!長居すれば俺も出られなくなるか!)

 

再び水面を目指そうと泳ぐが、それに追い縋るように敵の触手も迫ってきた。

そして、迎撃しなければ捕まると判断した彼は一度泳ぎを止める。

 

炯眼(けいがん)呪法…っ‼︎これは!結界による妨害かっ‼︎)

 

触手を払うべく、術式を持って広範囲の斬撃を繰り出そうとするが呪力が練れない。

涼の術式『炯眼呪法』は呪力操作による視力強化の極限。

常人を遥かに超えた視覚を持って、本来有するフィジカルと管斬の斬術を組み合わせたそれは神速の斬撃に昇華される。

だが、この状況では素のフィジカル頼りの攻撃しか通用しない。

 

(ちっ、少し精度は落ちるが視覚に頼らずともこの程度!)

 

とはいえ、攻撃性能の殆どを自身の本来のフィジカルで補っている彼には大きな問題となり得なかった。

動きの重くなる水中にも関わらず、全身の筋肉に血流を巡らせた一撃の下に追撃を斬り払う。

そして、酸素の限界を感じた涼はそのまま水上へと急浮上、岩場に手をかけるなり、腕力任せに空中へと躍り出た。

 

突然水に飛び込み、そして突然戻ってきた涼を見て秋斗が声を荒げる。一人で頑張って持ち堪えていたらしい。

 

「浪川テメェ!俺の呪力ももう保たねぇぞ!」

 

「桜庭!水中が底なしかつ呪力封じの結界になっている!こいつの術式だ!」

 

戻ってきた仲間の報告を聞いて一瞬頭が真っ白になったような錯覚を覚える秋斗。

その言葉が意味するところを地頭がいい彼は即座に理解したからだった。

 

(それじゃあしーちゃんは術式が使えない!酸欠で意識を失ったらそれまでってことじゃねぇか!)

 

「どうすんだよ!早くなんとかしないとしーちゃんがっ…‼︎」

 

「分かってる!だからこそ、今から最短でこのイカを捌く‼︎祓ってしまえば術式が解けてただの浅い川に戻る!そうなれば薬袋も本来の深さまで押し戻されるはずだ!」

 

確かにそれが今取れる最善の選択だ。

潜って助けに行くのは自殺行為に他ならないのだから。

だが、それでも先ほどと同じように二人だけでは、手数が圧倒的に足りていないというのも事実だった。

 

(このままじゃジリ貧だ、でも倒すのが遅れるほどしーちゃんの生存率が下がるっ…どうする!考えろ!無い頭でも、こういう時に使わなくてどうする俺!)

 

そうしている間にも、先ほどから注意を引くために呪銃を連射しているせいで呪力の底が見え始めていた。

浪川も斬っても斬っても現れる触手を前に、決め手となる一撃を本体に通せずにいた。

 

(っ…やるしか無いか!)

 

「浪川!次の一撃で触手をまとめて撃ち払う!だからその隙に本体を斬れぇっ!!!」

 

そう叫んで両手を構える。

 

「呪銃殲滅式・流星散弾(メテオショット)!!!」

 

両手の十指から放たれた残りの全呪力を込めた弾丸が光軸を描き、敵の頭上へと迸る。そして、それらは空中でさらに無数に分裂して触手や本体に降り注いだ。

 

「よくやった桜庭!あとは任せろ‼︎」

 

全ての触手が迎撃されたことで激しい水飛沫が上がり、敵の本体も何発かの直撃を受けて怯んでいる。

殺るならここしかないと言わんばかりの最大の好機。

 

「炯眼呪法・斬塊(ざんかい)!!!!」

 

飛沫を斬り裂くように繰り出された三筋の斬撃が呪霊の胴体に突き刺さる。

 

《ピギィァアアア‼︎》

 

絶叫を上げた呪霊は、斬撃の直撃した傷口から内臓のようなものをボトボトとこぼれ落としながら、ぐったりと力が抜けるようにその場に(くずお)れた。

 

攻撃の勢いのままに対岸へと着地した涼は、そこで全呪力を使い果たして座り込んでいた秋斗の元へと駆け寄る。

 

「休んでいる暇はない、すぐにどこかに沈んでいる薬袋を見つけないと」

 

そう言って伸ばされた手を掴み、引いた反動で起き上がる秋斗。

 

「分かってるっつーの!急ごう!」

 

岸からざっと川全体を見渡すが、それらしい人影は見えない。

まさか下流に向かって流されているのでは、と二人揃って滝に背を向けたその時だった。

 

激しい水飛沫を上げて、滝壺から新手が姿を現したのは。

 

「嘘だろ…祓えたんじゃなかったのか⁉︎」

 

「いや違う、さっきのやつは消滅したのを確認しただろ!あれは…二体目だ!」

 

そこで涼は気づいた。

先ほど見た水中の結界、出入りは自由、水中でのみ呪力を封じるという効果は釣り合いがとれる。だが、底なしの広さが加わると効果の足し引きの釣り合いが取れていないのだ。

 

(最初から二体存在して、協力して結界を作っていたのかっ‼︎)

 

それならば結界の規模の辻褄が合う。

だが、そこに気付いたとしても時はすでに遅かった。

秋斗の呪力は底をつき、もう戦闘は不可能。

涼自身も呪力は多少残っているが、度重なる連撃の行使によって体力の方がそろそろ限界だ。

 

「桜庭…俺が殿をやる。…その間にお前だけでも逃げろ」

 

そう言って覚悟を決め、腰に刷いた刀に手をかける。

 

「ふざけんな!仲間を置いて引き下がれるかよ!それにまだしーちゃんだってっ!」

 

「全滅したいのかっ‼︎」

 

状況はこの上なく最悪。

最初の作戦失敗の時点で引き返していれば、二人は助かったのだろうが、それを今考えても仕方がない。仲間一人でも犠牲にするなどあり得なかったからだ。

 

そしてそれはこの状況でも変わらない事実。

二人も互いのどちらかを見捨てて、自分一人生き残るなどごめんだった。

秋斗が引かないことが分かるやいなや、涼はちっと舌打ちを一つ鳴らして対岸に飛び渡り、呪霊目掛けて突撃を仕掛ける。

 

「くそ、浪川!戻れ!」

 

自分も走って追いかけたいが、今の秋斗に彼を追いかける気力は残っていなかった。

 

(やばい、このままじゃ本当に全滅する!どうする!どうすればいい!しーちゃん…!)

 

 

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冷たい…寒い…暗い…寂しい…

 

どこまでも終わりの見えない水底に落ちながら、意識を失ったはずなのに、魂がそう叫んでいるのを感じる。

途方もない孤独感は何か知っている感覚に似ている。

なんだっただろうか。

 

(あぁ、そうだ。つい最近感じたばかりじゃないか)

 

大切な人を失った時に感じた喪失感と孤独。

自分の命が失われる直前になって、僕は自身に対して喪失感を覚え、一人暗がりで死にゆくことに孤独感を覚えているのだ。

 

『━━る━━━紫鶴、そろそろ起きる時間だよ』

 

(……だれ?)

 

こんな場所、僕しかいないはずなのに誰かの声がする。

暗闇しかなかったはずなのに、水中で開け続けたせいでぼやけてほとんど見えない視界に何かが映る。

 

『ほら、おいで』

 

そう言って僕を抱き上げた男は誰だろうか…あぁそうだ。

 

(…お父さん)

 

これは走馬灯というやつだろうか?だとしたらなんて皮肉だろう。今際の際に思い出すのが大好きなお母さんでも奈沙さんでもなく、憎いはずのあんただなんて。

 

『もうすぐ今の俺のことを忘れるだなんて、結構寂しいな』

 

なんの話だろう、僕が今のお父さんを忘れる?わからない。

それにあの時と同じ……

 

 

この記憶を僕は知らない

 

 

『お前と葉月のためなんだ。…すまない、許してほしい』

 

葉月…お母さんの名前…僕たちのため?

許してほしいだなんて、謝るならなんで僕たちを捨てて出て行ったのか。

 

『二人を危険から遠ざけるためなんだ。だから、今から紫鶴が大きくなって、自分で自分を守れるようになるまで、自分で大切な選択をできるようになるその時まで、記憶を俺が預かる』

 

『本当にそれしかないの?この子には何も罪はないのに…!親の記憶が偽物だなんてっ!』

 

お母さんが泣いている…お願いだから、お母さんを悲しませないで欲しい。

 

『必ず…帰ってくるのよね?』

 

『あぁ、必ず、約束する。だから、その時まで二人は何も知らないただの一般人として過ごしてくれ』

 

『分かったわ…あの子のためだもの。あの子にだって隠し通して見せる』

 

隠し通す…お母さんたちは僕に何かを隠していた?

なんだこの記憶は…知らない…いや、知らなかったはずなのに

 

 

僕はこの記憶を知っている

 

 

途端に欠けたピースがかちりと音を立てて嵌った感覚がした。

 

(あぁ、そうだ。僕はこの光景を全部知っている。この目で見ていたんだから…でも、お父さんは僕とお母さんを守るために、まだ幼かった僕が家族の秘密を口外しないように手を打ったんだ)

 

とうに酸素が尽き、朦朧としていたはずの意識がやけにはっきりとしてきた。

 

(そうだ…そうだった……)

 

 

全て思い出した

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「作戦開始から一時間経過、遅すぎますね…」

 

経過時間から見て作戦が失敗したのは確実。

だが、予定通りに撤退してきたものは一人もいない。

補助監督として、これ以上は待つわけには行かない。

即座に応援を…と携帯を取り出す。

だが、その瞬間、ガラスの砕けるような音と共に帳が破壊された。

 

「っ!あれは…!」

 

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「ちくしょう、浪川ァ‼︎…っ、このイカ野郎!浪川を離しやがれ‼︎」

 

単身、呪霊に立ち向かった浪川は健闘虚しく先に体力がつき、動きが鈍った隙に触手の棘で腹部を貫かれ、意識なく捕縛されていた。

瀕死の仲間を救わんと呪力の尽きた秋斗が石を投げているが、当然そんなものが呪霊相手に効くわけもない。

 

「死ぬな!浪川っ‼︎っぐあ⁉︎」

 

煩わしげに振るわれた一撃が秋斗を直撃し、河岸の岩に打ちつけられる。

どうやら頭を打ったらしく、垂れてきた血が目に入ってぼやけた視界が赤く染まる。

 

(あぁ…俺たち特級だって祓ったのに、判断をミスったせいで全滅かよ…情けねぇ。しーちゃん、浪川…わりぃ)

 

もう打てる手は尽きた、そう己に言い聞かせて意識を手放そうとする。

 

だが、突如として川底から迫り上がってきた途轍もない気配を感じて、その意識は再び現実に引き戻された。

 

「な…っ!なんだよこれ…これは…呪力なのか?わぷっ…!」

 

ポコポコと泡が立ったと思えば、水面が激しく揺れ始め川岸にいた自分も波を被ってしまった。そして、水底から突き破るように彼は姿を現した。

 

 

 

 

その姿を隠れ見る男が一人。

 

「ようやく全てが戻ったんだな。紫鶴…誕生日おめでとう」

 

そう呟いて男は闇に溶けるように消えていった。

 

 

 

 

一方、被った水を少し飲んでしまい咳き込みながらも、水上に飛び出した何かを見て秋斗は息を飲んだ。

 

「しー…ちゃん?」

 

確かに姿は自分たちの知る仲間のものだ。

だが、その彼から感じる気配も纏っている呪力も、知っているそれとは大きく乖離していた。

 

「待たせてごめん……少しだけ待ってて」

 

 

 

 

「今、終わらせるから」

 

 

 




ハッピバースデーしーちゃん覚醒⭐︎
書いてたら呼子でイカの活け造り食べたくなってきた。
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