この年代に京都校の生徒で原作キャラっていない…よね?
狭間・桜庭ペアvs永野・加茂の戦闘が勃発していたその頃、別地点にて柳木・浪川ペアも京都校の生徒と会敵していた。
「浪川!あんたしっかり私を守りなさいよね!」
「それは勿論そうします。ですが、先輩も多少自衛はしてください。俺は一人しかいないので」
早速、後輩という名の僕をこき使う発言が悪目立ちしている柳木の正面に立つは、丸刈頭と金属バットが特徴的な
「柳木先輩、そちらの後輩くんに対しての態度、とても褒められたものではないですね!俺のバットで理想の先輩像に矯正して差し上げるのでお覚悟を」
袖をまくりながらバットを突き出しホームラン宣言。
暑苦しい熱血漢に柳木はあからさまに嫌そうな顔で睨み返す。
「むさい男は嫌いよ!大体、年下のくせに生意気なのよ!後輩の理想像、ピンキーちゃんで刻み込んであげるから覚悟なさい‼︎」
その宣言に呼応するかのように、血塗れの鋭爪を振り翳して臨戦体勢に入るピンキー。野球少年と人形使いというシュールな絵面だが、浅田の余計な発言で柳木の闘争本能に火がついたようなので、それはそれでよしと目の前のミイラに視線を戻す浪川。
「二年の浪川涼だ」
「……硯要、二年」
暗いやつめ、内心毒づきながらも警戒は怠らない。
快活にバットで殴り合いを仕掛けてきそうな浅田と違ってこっちの硯はまるで思考が読めず、得体が知れない雰囲気を醸し出していた。
そもそも、この状況自体怪しさを感じていたのだ。
会敵の際も進行中のコチラに対して、相手の二人は態々正面に陣取るように現れた。
明らかに先にこちらに気がついていたのに、だ。
前後を互いに警戒しながら進行していたとはいえ、奇襲を仕掛ける余裕はいくらでもあったのにだ。
(とすれば、この場に何か罠を張っていると考えるのが自然か)
「柳木先輩、足元注意です」
「なんでよ」
「あいつらはこの場で待ち伏せしてました。先にこっちに気づいていたんです。その上で奇襲ではなくこの場を選んだ。何かあると考えた方がいい」
浪川の考察になるほどと感心した様子の柳木。
しかし、こちらの会話を聞きながらも相手二人は道を塞ぐように立ち塞がるだけで様子を見ていた。
「……時間だ」
硯の小さな呟きと同時に、周囲の茂みと地中から無数の帯が湧き出し、まるで硬質化したようにピンと張った先端が二人に殺到した。
(っ⁉︎これは!奴自身に帯は繋がっていない、ならば切り離した帯に呪詛を刻んで時限式のトラップにしたのか!!)
素早く空中に飛んで帯を回避した浪川は、宙で逆さになりながら、迫り来る帯を切り落とそうと技を繰り出す。
「炯眼呪法・斬塊‼︎」
一振りで複数の斬撃の塊を放つ。
だが、技を放った直後に目を見開いた。
無数の帯たちは途端に硬質化を解いたように軟化、柔らかくたわんで刀の切先を受け流したのだ。
(なっ!刃先を受け流したっ⁉︎)
「無駄……変幻自在の帯は斬れない」
掌印を結んだ両手をまるで指揮するかのように振るうことで、無数の帯を操っているらしい。その腕に連動するように浪川の足に素早く絡みついた帯、それに引っ張られるようにして大地めがけて叩きつけられる。
「ぐっ…!!」
「何やってんのよボンクラ!って、きゃあ!!」
浪川を罵った瞬間、唸りを上げて呪力の籠ったフルスイングが柳木の頭上を走り抜ける。迎撃させていたピンキーはどこかと視線で追えば、少し離れた場所まで吹っ飛ばされていた。
「頑張ってる後輩にその言い草!マイナス10点です!そぉい!」
「うるっさいわね!ピンキーちゃん!!」
交わされた結果、ぶち当たったバットによって硬いはずの樹木すら木っ端微塵に吹っ飛ぶ。人体にあたればタダでは済まない破壊力、そしてスイングスピードだった。
だが、それを紙一重で交わしながら後退、足元に転がるピンキーを素早く掴んで背中を開いた。
途端に中から10体近い同じ姿のぬいぐるみが湧き出し、浅田を取り囲んだ。
「む!物量でゴリ押すつもりですか!見かけによらず脳筋ですね!」
「あんたにだけは言われたくないわよ!野球少年!!」
一斉に腕を振り翳して襲いかかるぬいぐるみの群れ。
それを呪力を込めたバットで薙ぎ払おうとぐるりと振り回す。
「ぬいぐるみでは手応えが弱いっ!やはり打つなら硬式球か人体ですね!」
見た目に反して発言がサイコパスのそれな上に、浅田の瞳は常にカッ開いているので、余計に他人を不安にさせる異様さを醸し出している。
対する柳木もやられてばかりではなかった。
打ち返されて宙を舞うピンキーの背中から、さらに別の個体を出現させると全て迎撃して油断している浅田の背後から強力な蹴りをお見舞いする。
「むぐっ⁉︎」
背後からの一撃にツンのめるように吹っ飛ぶ浅田。
その飛んだ先、柳木の正面には既に体制を立て直したピンキーが爪を交差させて構えていた。
「油断大敵!これでトドメよっ!!」
「なんのぉ、これしき!!!!」
しかし、クロスするように繰り出された爪撃は空を切った。
浅田が直前でバットを地面に突き立て、その反動で真上に飛び越えるように軌道を変えたのだ。
「っ⁉︎」
「
そのままの勢いを乗せて、柳木の頭部めがけて兜割よろしけバットが唸りを上げる。
だが、タイミング的に回避不可のその一撃も、標的が視界から消えたことで大地に突き刺さった。
「消えたっ⁉︎」
巻き上がる土煙と砕けた地面、咄嗟に周囲に視線を巡らせれば、硯と交戦していたはずの浪川が小脇に少女を抱えて少し離れた位置に立っていた。
「助けるの遅いわよ」
「……こっちも戦闘中なんです。次は助けられるか分からないですから頑張ってくださいね」
「ふん、生意気ね!」
先ほどの硯の攻撃で浪川の額からは少し血が滲んでいたが、なんとか切断のできない無数の帯を潜り抜けて、間一髪先輩を救出したらしい。
「硯!あとでケツバットの刑です!!!」
「……済まん、取り逃した」
身内に対して処罰を宣言する浅田にゲンナリとしつつも謝罪する硯。その様子を見ていた柳木がここぞとばかりに口撃に転じた。
「ちょっとあんた!私に理想の先輩像がどうとか言ってたくせに、同級生にケツバットって何よ!!男子校生のそんなプレイ誰も期待してないんですけどっ!!!」
「やだな、柳木先輩。女の子がケツバットなんて、はしたないです…よっ!!!!」
とはいえ、この異常者はそれを気に止める様子もなく、会話の途中で再び攻撃に転じる。呪力で強化した肉体で地面を蹴り抜き、柳木に目掛けて肉薄すると、途端に姿勢を落としてスライディングしながらバットを振りかざす。
「ひゃっ!!!」
咄嗟に跳ねて回避したものの、まだ追撃は終わっていなかった。
柳木の足元に待機していた浅田が野球のバッティングの構えを取る。
「
途端にバットに蓄えられた呪力がグネグネと形状を変え、鬼の金棒のように呪力で形成された棘が現れる。
「うぐっ…!!!こんのっ!!!」
咄嗟に自身とバットの軌道の間にピンキーを挟むことで、衝撃の緩和には成功したものの、勢いは殺しきれずに再び空中に打ち上げられる柳木。
下には追撃のために、再びか前に入る浅田がいる。
「往生際の悪い!二打席目!一仇入棍!!!!」
今度はさっきよりも出力が上がっている。
それを見た柳木は相手の術式にある程度の予想をつけた。
(あの感じからするに、野球がモチーフの術式、二打席目って言ってるから、多分回を追うごとに縛りを儲けたスイングの威力が上がる…!上昇率から見るに5回を超えたら100%を超えるわねっ…!でも!!!)
「フライばっかり見上げてたら、足元掬われるわよ!!!」
先ほどの攻防で全て薙ぎ払い、破壊したはずのピンキーが三体、浅田の背後から襲いかかった。
(ぬいぐるみっ⁉︎さっき全部行動不能にしたはずじゃっ⁉︎いや、柳木先輩が落下してバットが直撃する方がわずかに早いっ!イケる!!!)
「吹っ飛べぇぇぇえええ!!!!!」
瞬間、柳木は自分と共に打ち上げられていたピンキーの背中を開いて浅田めがけて突き出した。
「は⁉︎」
直撃コースのバットがなんということか、開いた背中に広がる異空間にズルリと飲み込まれたのだ。
そして次の瞬間、浅田の背中に激しい衝撃が襲いかかる。
鈍い打撃音が鳴り響くと共に、地面に叩き伏せられた浅田はそのまま意識を失った。
背後にいたピンキーの内一体がこちらに背を向けており、その背中からは浅田自身のバットが突き出していた。
「自分のバットの威力を知って、ケツバットされる人間の痛みを知るといいわ!」
完全勝利の文字を背後に掲げて、腕組み仁王立ちでフンスッと鼻息荒く息巻く少女。昏倒した浅田の腕に巻かれたベルトをピンキーの爪に引っかけて無理矢理に引きちぎる姿は野蛮の極みだった。
浅田勉 リタイア
「次から次にユラユラと!」
無数の迫り来る帯を前に浪川は相変わらずの苦戦を強いられていた。同時にいつかの巨大イカ呪霊を思い出して若干のイライラが募っていく。
「……しぶとい、これならどうか」
一本一本の帯では手数はあっても威力が足りず、戯れた硯は次の手段に切り替えた。
捩れてより合わさるように絡みついた帯が、やがて太い縄のように形状を変化させる。硬く縛られた布が硬度を増すように、ぎりぎりと音を立てて捻れる帯の硬度は呪力込みでダイヤモンド級に底上げされていた。
「……潰す!」
まるで巨大な拳のように振り下ろされるそれに対して、浪川は回避ではなく迎撃しようと踏ん張りを効かせる。
(あれなら即座に軟化もできないはず…!今なら斬れる!!!)
「シン・陰流・簡易領域!抜刀!!!」
自身の周囲に展開した簡易領域に帯の塊が侵入した瞬間に、呪力でバーストをかけた管斬を振り抜く。
だが、予想とは裏腹に切断どころか刃を食い込ませることすらできず、硬さと勢い、質量の乗った攻撃にガリガリと金属音を立てて刀が押し返される。
「くっ、ぐうう!!!」
「……
無理矢理にでも仕留めようと圧力を増す帯の塊。
受け止めてる浪川はそれと地面とに挟まれていることで、ミシミシと全身の筋肉が悲鳴を上げる。
その時、浪川の脳裏に過ったのは一年前の苦い記憶。
敵の猛攻の前になす術もなく、味方を一人逃すために命を張って死にかけた。守るために高専に来たというのに、その決意すら揺らぎかけた己の無力感。
(あんなものはもう懲り懲りだ!)
「触手ものには……」
「っ⁉︎」
「ウンザリしているんだよ!!!」
脅威的という他のない現象に硯は目を見開いた。
自身の繰り出せる最大威力の一撃だったというのに、目の前の浪川という男は受け切るどころか、力任せに押し除けたのだ。
「馬鹿なっ…!脳筋め!!!」
「脳筋結構、ようやく声を荒げたな根暗め」
「炯眼呪法・斬塊!!!」
複数の斬撃が同時に放たれ、硯に迫る。
「これで攻略したつもりかっ!!」
しかし、硯も諦めてはいなかった。
全身を覆う帯を全て解き、多層に展開することで斬塊を防いでみせたのだ。
まるで脱皮のような芸当をみせた硯は、一度体制を立て直すために後方に飛びのく。
そして、それを目で追った浪川は余りの衝撃にその目を見開くことになった。
流れるように風に靡く金糸の長髪
海を思わせる深い青の瞳
透き通るような白磁の肌
そして女ならば誰もが羨み男ならば衝動を駆り立てられそうな豊満なバスト
洋画に出てきそうな絶世のパツキンねーちゃんがそこに立っていた。
「私の真の姿を見た以上、生きては帰さんぞ」
「いや、誰だよお前」
そもそも、交流会で殺しはアウトだ。
衝撃があまりに強すぎて逆に淡白な切り返しになってしまったせいで、もはやそれを声に出す余力はなかった。
豊満なバストとやらは帯をサラシみたいに巻いて隠してたらしい。
知らんけど。