とある昼下がり、極めて普通なファミレスは、非常に危うい雰囲気に満ちあふれていた。
霊感があるアルバイターは命の危機を察知し逃走、一般人にさえ悪寒が伝播し、客はたちまち減っていった。
「のう、夏油。儂は宿儺の指何本分だ?」
活火山のようにグツグツと熱気を放つ頭を持つ1つ目の呪霊が、額に網目の有る袈裟懸けの男へ問う。
「少なめに見て12本分はあるかな。本当に自然発生した呪霊か、私が疑っているほど君は強い。」
「で、あるならば、儂が五条悟を殺せるだろう。獄門彊なんてモノは必要ない。呪いの王と呼ばれた宿儺ならばともかく、齢が20かそこらの童なら容易い。それに、儂は知っているぞ。」
ただでさえ熱い熱気が止まらず、ファミレスの壁が溶け出す。
「何をだい?」
「その獄門彊、中に問題があるのだろう。そうでなければ儂らに話を持ちかける必要はないな?」
「いや〜話が早いな。みんなコレくらい物分りが良いと楽なんだけどね」
誤魔化すように男は笑う。
「ふん。新たな人類である我々と貴様らを一緒にするな、夏油。」
「ん、あぁ。君の言う通りさ。獄門彊の中にはヤバイのがいる。そして、ソイツは私が獄門彊を使わないといけないことを予め知っていた。」
「どういうことだ夏油。」
呪霊は理解に苦しむ顔をする。
「私のことを知っている人間が中にいる。」
「カハハハハハハ!!何だ!
貴様は五条悟でもない人間を殺すことすら出来ないのか?
それで儂らに手伝えと?
余りにも舐め過ぎであろう。表舞台に出るのがそんなに嫌か!」
活火山の呪霊はそういって熱気をさらに高める。
「しかし、夏油、貴様が儂らに手伝えと言うのならば必要なのだろう。貴様が正しいことは分かる。
だが、それは儂が五条悟に勝ったらやらなくていいことだ。
違うか?」
「まあ勝てるならだけどね。無理だと思うよ。五条悟に勝てるのは宿儺だけだ。正直私は宿儺でも厳しいと思っている。」
「はあ?それはないだろう。呪術全盛平安の世で君臨した絶対の王だぞ。宿儺は。」
「君は宿儺の指が元々何本あるか知っているかい?」
「そんなものは20本に決まっておろうが。」
呆れたように顔を顰める呪霊。
「そう…20本さ。宿儺は自身の四本の腕にあった合計20本の指を死猟として呪物化した。縛りと色々合わせて、絶対に壊せないと確信してたんだけど。」
「どういうことだ?話が見えん。」
「五条悟は宿儺の指を消した。」
「は?」
「だから私は焦っている。時間があれば君と五条をぶつけて、差を知ってもらうかと考えたけど、もう時間がない。」
「なるほど、言いたいことは分かった。ゆえに、獄門彊で封じる必要があるのだな。」
「そういうこと。だから、獄門彊の中にいる奴を出さないといけない。」
「術式解除の術はあるのか?夏油。」
「あぁ。一応持っているよ。それに同行してもらいたい。最悪全滅しかねないが、どっちにしろ中の奴が獄門彊に戻ることを決めたら私達の目標は達成し得ないのだから。」
そういって席を立つ。それと同時に席は消し炭になる。
「良いだろう、夏油。貴様の言うことを信じよう。だが、獄門彊の中身とは儂が戦う。それでいいな?」
「うん。死にそうになったら私が助けよう。」
どっちにしろ、我々に時間はもうない。