千代田桃の幼馴染   作:ナメクジ次郎

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使い魔とミカンと

 ある日の事、ミカンちゃんから頼まれて保育園のお迎えの代理をし、ウガルルちゃんをばんだ荘まで送ることになった。

 ウガルルちゃん。少し前までミカンちゃんの中に居た使い魔で、今まで桃や桜さんが呪いと呼んでいた現象を起こしていた存在らしい。桜さんが人が死なない程度の規模に変える結界を用意したお陰で被害は小さめだったけど、桃は巻き込まれて可愛い服を着せられたりしてたっけか。

 この子はつい最近実体を得たばかりだって聞いていたけど保育園にも通っているし、ばんだ荘の門番なんかもしているしすっかりこの町に馴染んでいるみたい。

 今も、帰って来たばかりだっていうのに自分から掃除を買って出ているので、自分も手伝うことにした。

 

「ウガルルちゃんは偉いなぁ」

「んがっ、オレ、偉いカ」

「うん、とっても立派で偉いよ。ウガルルちゃんは」

 

 掃除が終わったので一休みということで、ミカンちゃんの部屋に戻って雑談。

 胡坐をかいて座っている自分の膝の上にウガルルちゃんが乗っかっている状態になっており、昔メタ子をこんな感じで抱いてるのが好きな時期があったなぁ。なんてしみじみ思った。

 

「ずっとずっとミカンちゃんの近くで……というか中で守ってたんでしょ?」

「でもオレ、昔はミカンをずっト困らせてタ」

「それでもやっぱり、すぐ傍で守り続けられるのは凄いことだよ。俺は……できなかったから」

 

 桜さんに託された「いつか君が、町の外に居る桃ちゃんを迎えに行ってあげて」という願いも。自分が決めた桜さんが帰って来るまであの家を守るという誓いも、どちらも守る事はできなかった。

 町にやってきた魔法少女に襲われて死にかけて、桜さんの家を守れずに入院して。そして戻って来た桃に、たくさんの迷惑をかけた。

 そんな自分とは比べ物にならないほどに、ウガルルちゃんは本当によくやっていると思う。

 

「大丈夫だゾ」

「えっ?」

 

 ウガルルちゃんのもふもふの髪を優しく撫でていると、突然こちらを向きそう言った。

 真っすぐな、綺麗な瞳がこちらを見据える。

 

「この町の奴らハ大失敗したくらいじゃ気にしなイ。オレもミカンも失敗したけど、受け入れてもらえタ! だからお前も大丈夫ダ」

 

 大丈夫だと、力強い言葉が胸を打つ。

 

「オレ、いい使い魔として自分の仕事と生き方探してル。だからお前モ、生き方探セ! もう一度頑張レ!」

 

 んがーっ! と叫ぶように、ウガルルちゃんはそう自分に言う。

 桃にも、同じような事を言われた。今までよりもこれからを見て欲しいと。

 それなら自分にも許されるのだろうか。今以上の幸せを求めることが。

 自問自答の答えは出ないまま、俺は優しくウガルルちゃんの頭を撫でた。

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 結局あの後、少しの間話しているうちにウガルルちゃんが眠ってしまい。起こすのも悪いので動けなくなってしまっていた。

 全体的にもふもふで体温が高いのでつられてこちらも眠ってしまいそうになりうつらうつらとしていたところで、入り口の扉が開く音がして一気に意識が覚醒した。

 

「帰ったわよ! ウガルル、ちゃんとすずの言う事聞いて大人しく……ってあら? 寝てるのね」

 

 帰ってきたミカンちゃんはウガルルが寝ているのを見て、少しだけ声のトーンを落としてから、あまり音を立てないようにこちらへ近づく。

 こうやって細かい気遣いができる辺り本当に優しい子だよなぁって、改めて思う。

 

「頼んじゃってごめんなさいね? 急に用事が入っちゃって、あんまり待たせるわけにもいかなかったから頼んじゃったけれど本当に大丈夫だった? すずにも用事とかあったんじゃない?」

「大丈夫だよ。今日も特にやることは無かったから。なんなら明日のお迎えもできるくらい」

「それならいいけれど……ってあなた、今何か気になる事を言わなかったかしら?」

「えっ、いや特に何も?」

「すず、あなた普段どういうスケジュールで生活してるの?」

「えっと、基本的には家事をやって外に出たい時はあすらでご飯食べたり桃に教えてもらった猫の多い公園で体動かしたりして、家に帰ってからは良子ちゃんからオススメされた本読んだりとか……?」

 

 その言葉を聞いてやっぱり、といったような顔をするミカンちゃん。

 

「あなた、なんというか仙人みたいな生活してるのね。まだ退院したばかりで安定してないとはいえあんまり健全じゃないわよ? 健康的な生活を心がけなさい?」

「うっ……はい、善処します……」

「善処じゃなくてちゃんとするの、このままじゃあなたプー一直線よ?」

 

 それは確かに非常にまずい。いつまでも桃のお世話になって暮らすのは、兄として絶対にまずい。

 

「今すぐにとまではいかないけど、落ち着いたらバイトでも探してみるのがいいと思うわ」

「バイトかぁ……」

 

 労働、ずっと入院していた身だからその言葉がえらく遠いものに感じてしまう。

 けど日常に戻るってことは、やっぱり働いて日々の糧を得ることが必要不可欠なのも事実で。

 こんな自分を雇ってくれるところ、果たしてあるのだろうか。

 

「もしすずが望むのであれば将来的に陽夏木の工場で雇ってあげても……」

「あっごめんなさいあんまり遠くだと桃に気軽に会えなくなるから……」

「あなた本当にそういうところよ!? まずは妹離れから始めた方がいいんじゃなくて!?」

 

 行動指針は少しだけ定まりつつも、二人の騒がしい夕方は過ぎていった。

 ヒートアップし過ぎてウガルルが起きてしまったのは、また別のお話。

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