猿展廻戦 作:NHM
それはそれとして呪術アニメさん…あなたに言いたいことがあります
人の心とか無いんか?(ドブカス書き文字)
15:00。都立呪術高専筵山麓、高専の結界内にて。
「これで呪詛師共の襲撃からは守られたわけじゃ、そうじゃの?」
「うん、高専の結界内では未確認の呪力ではアラートが鳴る様になっているからね。鳴っていないってことは安心できるってことだ。にしても悟、本当にお疲れ様。相当な回数術式使用してただろうけど大丈夫かい?」
「はっきり言ってめちゃくちゃキツイ。二度とやりたくないですね…ガキのお守りはね」
刹那、完全に脱力しきり生まれた五条悟の虚を刃が貫通する。下手人は抜き身の刃のような肉体、そして何より一切の呪力を感知できない異常を纏う男であった。
「アンタ、どっかで会ったか?」
「さあな、ただオマエを殺すことは確かだ」
その会話を交わした瞬間、下手人は無限で吹き飛ばされ宙を舞い、呪霊がそこへ迫る。夏油傑が愛用する一口で大凡の物を飲み込める呪霊、それが夏油の命で五条が刺されたことを認識した瞬間に召喚されていたのだ。
しかし男は律儀に受けてやる道理はない、そのまま空へ飛び上がった。
それを恥じる必要はない。なぜなら男は天与の暴君、即ち伏黒甚爾であるのだから。呪霊から抜け出した勢いを殺さぬまま甚爾は鳥居の上に立つと、タスキのように巻き付けた武器庫呪霊から一振りの武器を取り出す。その武器の名は人間兵器ガルシア11号、刻まれた銘は悪魔王子である。
「んじゃまあ五条の坊は俺が殺るから
「わかってるよ、甚爾。殺してはいけない、だよね」
その瞬間、二つの暴力が爆発した。より疾いのは術師殺し。空中で呪具を取り替え、音速に届かんとするスピードで五条悟を殺さんと複雑な軌道で躍動する。より直線的なのは人間兵器。落下の重力に助けを借り、銃弾の如く夏油傑を貫かんとする。
両者ともに人を容易く殺せる其の威力。だがそれだけでは最強を討伐することなど出来るわけもない、甚爾は無限に吹き飛ばされ、悪魔王子は呪霊に空中で防がれた。
「悟!!」
「大丈夫、体内で武器滑りさせたから問題ねえよ。それより天内優先、こっちの呪霊を巻きつけてる方の相手は俺がするから傑達は先に天元様のとこへ行ってくれ」
「油断するなよ」
「誰に言ってんだよ」
それにより戦場は二分される。先行するは夏油、天内、黒井。そして彼らを追従するは悪魔王子。そして夏油は駆け出すと同時に数は三、格は準二、そんな歪な動物のような呪霊を召喚していた。だがその効果は微かに過ぎない。鬼の拳で二体が弾け、龍の足で一体がえぐり取られ消滅した。
─不味い!この強さだと単発での呪霊は本命でなければ足止めにすらならない!…最終手段だが仕方ない。流石にこれ以上敵の増援はいないだろうし、理子ちゃん達を高速移動できる呪霊に乗せて逃す!そして私はここで敵を倒した悟が来るまで足止めする!─
そうとなれば迅速こそ最善、即座に天内たち非戦闘員を空を飛べるマンタのような呪霊に乗せて薨星宮に向かわせた。そして夏油本人は前傾姿勢の構えをとり迎撃に徹し、空間を歪ませ呪いを顕現させる。
「虹龍!」
其の名を開示することによる縛りで強化された手持ちで最硬呪霊。それがトラックの如き勢いで悪魔王子に襲いかかる。其のタイミングは絶妙そのもの。攻撃後の回避も防御も困難な瞬間に標的に激突する!
─夏油の顔が、驚愕に歪む。なぜなら悪魔王時に攻撃が当たったのを確実に目にした次の瞬間、虹龍が伏臥し動かず、そして何より
「すごいな、”幻魔拳”は呪霊操術にも効いたよ。ああ、なんでこいつが一撃でやられてるんだっていうんだろ?これははまず灘神影流の”弾丸滑り”を改良した”スリッピングアウェイ”を使って避けて、すかさず”幻魔拳”を打ち込んだんだよ。恐怖が呪霊にも効くのは甚爾の武器庫呪霊でわかっていたからね。だか─」「もういい、呪いの要素がある灘神影流の技が、術式と同じように情報の開示が効果の底上げになるのは静虎さんから聞いている」
「なんだ、知ってたんだ。だったらどうする?」
「殺す…」
言葉で火が付く。夏油は空間の歪みから軽く百を超える呪霊を召喚した。烏合の集でも数は数。物量で360度、全方位からの攻撃をすることで悪魔王子の足止めを可能とした。だが数は揃っていても雑魚は雑魚。僅かな間に殲滅されてしまうだろう。
─だがそれでも構わない!隙さえできるのなら。虹龍に近づいて支配を強め直して口裂け女といった手持ちの呪霊のすべてを召喚する!そして私自身も前線に出る!この今私ができる全力で悟が来る数分までの時間を稼ぐ!─
そして最初に召喚した雑兵呪霊が消滅するやいなや口裂け女の簡易領域を発動させる。質問に答えるまでの互いに不可侵と答えをトリガーとして発動する攻撃が含まれたその領域。そこに悪魔王子は巻き込まれる。
─雑魚共を殺したと思ったらいきなり雰囲気が変わった!これが簡易領域か。初めて体験した─
『わた、わタ、わたし、キレイ?』
答えによりダメージが変わる術式、それに対し悪魔王子は─
「抱いてやるよ」
その発言で術式発動、彼の周りにチョキリと切れる刃物が出現、即座に数個は叩き落されるが全ては防ぎきれず、悪魔王子の体に3つの傷を付けるに至る!
─よし!口裂け女の領域なら確実にダメージを通せるな。なら後は全力でこいつを守る!─
だがそれに気づいたのは夏油だけではない。悪魔王子は口裂け女が今の簡易領域の主で有ることを見抜くと始末せんと疾走する!だがその間に巨大な壁が出現する。虹龍だ。其の巨体は仮に再び幻魔拳を打ち込まれたとしても肉壁としては機能するだろう。だがそれがどうしたと言わんばかりに悪魔王子はその壁に向かい、飛び上がり拳を叩きつける!
そして、其の一撃で
「なっ…!!!」
その動揺を逃す悪魔王子ではない。一瞬で口裂け女を消滅させると、再び夏油に縮地の要領で接近し殴りつける。とっさに呪霊を壁として運用したものの、悪魔の一撃はそれを貫通し冷酷無慈悲に夏油の体を戦闘不能にした。
無論、そんなことは宮沢静虎にすら不可能である。だが、彼の内側には特異点が存在する。特級呪具、ガルシア・ハート。その効果は心臓の持ち主の身体能力の超絶強化。そしてもし心臓が仮に完全覚醒すればフィジカル・ギフテッドにすら匹敵するだろう。その特別製の心臓が彼の内側で稼働しているが故に今の攻撃を可能にしたのだ。
その一撃を受け、薄れゆく夏油の意識。その目で最後に捉えたものは脳天から血を流し、虚ろな目をした天内理子を、肩に抱えた伏黒甚爾であった。
◆◆◆
「はぁ!?報酬が払われねぇ?!」
盤星教宗教施設、棺に箱詰めされた天内理子の死体を本来ならば引き渡す予定となっていた場所で甚爾が時雨から聞いた事実。それはいきなり盤星教の施設に鬼龍が殴り込み、その結果盤星教は大混乱の最中にある、ということだ。無論暗殺報酬は盤星教が安定するまで支払われることはなく、そのため甚爾は報酬が最低数ヶ月遅れ、最悪報酬未払いになってしまったのだ。
「はあー、マジかよ。五条の坊殺したんだからボートレースでパーッと遊びたかったんだが。あの
「…ま、災難だったな」
─バキッ、バキッ─
瞬間、異様な音が鳴り響く。発生源は天内理子を入れた棺、それがぶち破られているのだ。そして、棺の扉が蹴り破られる。そして木クズが全て地面に落ち、人影が現れた。其の名は天内理子。甚爾に殺されたはずの少女が再び立ち上がり、鬼のように嗤っているのだ。
「…マジか、なんで生きてんだよ」
だがその驚愕とは裏腹に甚爾には一つ、たった一つだけだが今の状況を説明できる前例が脳裏に存在した。その名は─
「
「正っ解っ!
─ハイパー・バトル、と言う最強の格闘者を決める武闘大会があった。だがそれは死者を出し、闇のフィクサーが大量に関与した、とても真っ当な大会とは言えない。そしてその過程で闇のフィクサーの逆鱗に触れ、スナイパーライフルで脳天を撃ち抜かれながらも生存した男がいる。悪魔を超えた悪魔、鬼龍だ。
そしてその時彼の生存を可能とした技こそ呪いの域にあるスリッピング・アウェー、即ち
「オマエに脳天をぶち抜かれた時、体が勝手に動いたみたい。多分鬼龍とかいう私の父親を名乗るなんかよくわかんないオッサンがやけにこの技を重点的に教えてきたおかげね。つっても脳天ぶち抜かれるまで私も一度も出来たことなかったけど…格闘漫画によく有る陳腐な例え話だけど死に際の土壇場で覚醒したってやつかな」
そこまで言い切ったのを聞いて聞いて甚爾は笑みを浮かべる。
「あー、わかった、それならもういっぺん殺せばいいだけだろ」
その一言を言い切るやいなや、甚爾はドオンという音を伴うほどの踏み込みを行い、天内の腹に目掛けて拳を放つ。だが拳ならば、弾丸ですら滑らせた弾丸滑りを用いれば回避可能である。そして拳が当たるタイミング、その直前
「おっ、やっぱこの手の技術タイプにはよく効くな、幻突」
─幻突、それは当身の究極、拳を当てることなく打撃を当てる神域の技である。そしてこの技を甚爾はTV中継された灘神影流の宮沢熹一、幽玄神影流の日下部覚吾の試合で知り、有用性を見出したため再現しようと試みたのだ。無論他の奥義ならいざしらず、
だが、宮沢熹一、日下部覚吾が
そして幻突で虚を付き天内を打倒した甚爾は、武器庫呪霊から確実に殺すべく釈魂刀を取り出し動かなくなった天内理子に近づく。
「っと、やっぱまだ生きてんな。まあいい、もっかい殺して終わりだ」
そしてギロチンの如く首に刃を振り下ろそうとした其の瞬間、甚爾を無限が吹き飛ばす。そして上を見上げると、其処には空に立つ五条悟が立っていた。
「終わりじゃない…ここから始まるんだ」
瞬間、茈が顕現する─
◆◆◆
夏油傑が目を覚ます、そこは白いベットの上だ。そして側には五条、そして家入がいた。時計を見るに約三日ほど寝ていたらしい。そして意識が明確になると焦りが生まれる。
「悟!!襲撃者と…天内はどうした!」
「もう荼毘に付したよ…伏黒の方は遺骨を息子に渡してある」
「そうか…天内は…」
言葉が喉につかえている。声にならない声しか出すことが出来ない夏油の心をドス黒い絶望と、後悔と、その他500億の感情が混ざりあった闇が覆う。ともすれば”闇堕ち”しかねないほどに。
「待てよ、星漿体は死なないのじゃ」
「え…?」
扉を開ける音とともに、姿を見せたのは頭を包帯で覆っているものの五体満足な天内理子が、そこにいた。横を見ると拍手しながら笑う五条悟がいた、なるほど。ドッキリというわけか。夏油傑は脳の血管が切れる感覚がした。ここにあるのはいつもの日常、ただし新たに一人友人が増えているが。
こうして、今でも青は澄んでいる。
Q,なんで鬼龍が霞打ちじゃなくて弾丸滑り教えてんだよえーっ?
A,お前が弾丸滑りを教えなかったせいでジェットが死んだんだ。満足か?