「キョウノオベンキョウヲハジメマス。ジュンビハヨロシイデスカ?」
また、いつもどおり勉強の時間が始まる。今日はなにを聞かせてくれるのだろうか。
いつものように物語を聞かせてくれるのだろうか。
「キョウカラハスコシムズカシイオベンキョウヲハジメマス。」
やった。新しい内容だ。でも、難しくなるのは勘弁してほしいなぁ。
「キョウカライママデノオハナシノツヅキヲヤリマス。」
お話の続き?それだったらなんとかなりそうな気がする。でも、続きがあるなら早く教えてほしかった。
「ソレデハハジメテイキマショウ。」
勉強の時間が終わり、独りの時間になる。
今日から新しい勉強に進んだのは良いけれど、納得できない自分がいる。
お姫様を助けるために苦難を乗り越えた王子様は、お姫様と結婚することが目的だった。
最後には王様となり、自分を馬鹿にした隣の国へ戦争を仕掛け、たくさんの人を死なせた。
家族の病気を治すために危険な冒険に出た男の子の目的は、自分の不老不死だった。
不老不死の魔術には十分な血縁を確保する必要があった。
間違った道へ進んでしまった親友を救うために動く女の子は、親友の財産が目的だった。
そのためには親友が悪人になってはいけなかった。
聞いていて気持ちの悪いお話だった。でも、もっと気持ちの悪いのは、今日のお話を聞いて納得している気持ちがある自分だった。
愛のため。今まではそう言われてもあまりピンとこないお話だった。
でも今は違う。復讐、目的、対価。
これらのため。自分の欲求を満たすために苦労をする。
「愛のため」は、わからなかったけど、こっちの気持ちは理解できてしまう。
そんな自分が気持ち悪かった。
それに、助けられたお姫様、家族、親友の気持ちを考えると、とても心が痛くなる。
絶望、希望、絶望。助かったと感謝したら、感謝した人に裏切られる。
一度目の絶望よりも二度目の絶望のほうが悲しみは大きいと思う。
信頼していた人に憎悪を向けなければならないのだから。
今回は前回のように続きがないのだろうか。
機械音声のお話は助けた人の思惑が明るみに出たところで終わってしまった。
お姫様は、家族は、親友は、どのような行動をするのだろうか。
あきらめて自暴自棄になってしまう?
助けてくれた相手に反抗する?
それとも許して改心を願うのだろうか。
……私だったらどうするのだろうか。
私にはわからない。
お姫様も、家族も、親友もいないのだから。
それでも、いないからこそ、彼らのより良い選択を祈れるのかもしれない。