葦原天理は巫覡である 作:氷桜
一応最後までのプロットは出来てるけどこの話の通りとは限りません。
*聖夜の夜に
樅の木に飾りを備え付け。
人に依っては着飾る
12月24日/25日、クリスマスイヴとクリスマスと呼ばれる日。
……その数日前。
少なくとも日本の文化ではなく、外国から入ったモノとして成立し。
けれど日本特有の取り込む文化に依って混ぜられた年の終わり。
これが終われば当然のように年末年始が待っている。
基督教と仏教、神道に精霊信仰。
そのどれもの儀式が入り混じりつつも。
神樹サマという唯一にして絶対の存在に見守られながら。
平然と過ごせる文化を保つ、この世界の片隅で。
「……似合う?」
「いや、凄い似合うけども」
正直に言えば、目の前の少女のその格好自体に驚いている。
本来ならばする筈もなく。
というより嫌い、燃やし尽くそうと暴れ回っても不思議じゃないが故に。
「何でそんな格好してるのさ、
この家に招いた当人。
俺が途中に合間を挟みながらも長年を暮らしている家の極近所。
両親がいない、という前提を踏まえながらも当然に呼び寄せ。
目の前で着替えている衣装は……その、赤と白の見慣れない衣装。
ありていに言ってしまうなら
普段なら絶対に着ることのない服装だからこそ戸惑い。
そして同時になんとも言えない感情が湧き上がってくる服装で目の前にいる美少女。
うん、せめてもう一人くらい招いてくれないだろうか。普通に。
褒める言葉を聞いて、心底嬉しそうに。
何かが有る度に皆に同じような事を言うような人間では有るけれど。
そんな人から言われる言葉が嬉しくて嬉しくて堪らないように笑みを浮かべ。
くるりくるりと目の前で回られてしまうと、見えてしまっては不味いモノが見えてしまう。
……別の意味で見慣れているとしても。
「聞いてない?」
「何を?」
そんな光景を勉強机の椅子の上……最早半分定席になった場所から眺めつつ聞いてみれば。
俺が知らない事自体を不思議がる様子での返答があった。
「子供会の樅の木のお祭りについて。
勇者部としての活動の一環って話よ?」
「……聞いてないなぁ。 いや、最近大赦側の活動が忙しかったのはあるけど」
誘われていたから、無理に時間を作ったのはある。
唯、実際最近勇者部の方に携わる時間が減っている自覚自体は持っていた。
神樹サマの変化。
それに伴う儀式の調整。
家業として引き継いでいた部分だからこそ目を離せず。
その担当として……そして結界の外周部に干渉する役割として設けられた新たな少女達。
「夏凛ちゃんが落ち着いたと思えば天理くんがそうなるんだもの。
……でも、部活で何しているかくらいは認識しておいて欲しかったわね」
「ごめんごめん。
……っていうか、純粋に気になるけど。 皆そんな格好するわけ?」
つい先程までの笑みは何処へやら。
ぷう、と頬を膨らませた彼女へ謝罪しながらも、ふと気になったことを問うてみる。
……まさかなぁ、という感覚と。
それを命じるなら先ずあの人達だろう、という感覚。
どっちつかずで、迂闊に口にするのもちょっと怖かった。
「皆が皆でもないけれど……用意されていた服は大体こんな感じね」
裾の辺りを摘みながらの発言。
色々と危ないポーズなのだが、余り気にしていないのはもう仕方ない。
仕方ないとしても辞めて欲しい……と言ってやめてくれなくなってどれだけ経つのか。
「一応聞くけど、誰の発案?」
「そのっちと風先輩」
「オッケー、後でしばき倒す」
そんなことだと思ったよ、という脱力感。
コスプレさせようとするなら先ずそのちゃんだろうなぁ、と思う反面。
俺と同じ程度には仕事してるはずなのに何でそんな気力が起こるのか。
凡人と天才の差なのか、ちょっとどころじゃなく凹みそう。
「銀にも似たような衣装配られてたはずなんだけど……見てないの?」
「見てたら此処まで驚かないかなぁ……。
そういう意味ではせんちゃんは卒業してたからセーフと思って良いんだろうか」
「まぁ……そう、ね?」
何その言葉を選ぶような言い方。
目線をじろりと向ければ、胸元辺りを隠すようにしながら明らかに何かを隠している。
というか、そうすること自体を楽しんでいると言って良いのかもしれない。
「何か隠してる?」
「べ、別に?」
「もし嘘だったら暫く口聞かないけど」
「ごめんなさい隠してました」
早いよ。
というかそんなことすれば俺にダメージが来るのは勿論のこと。
勇者部の面々からも色々と言われるのは間違いないから諸刃の剣なんだけど。
何だかんだで友奈も樹ちゃんも、こういうところでは協力してくる節があるし。
「……うん、それで?」
「千景さんも銀経由で衣装渡ってるはずよ。
ほら、子供の面倒見るの好きでしょ、千景さん」
「あー……まあ、そうだけども」
高校生が行っちゃいけない理由は別に無いけど。
彼女も彼女で結構忙しい筈なんだけどな。
「下手をすればその数々を俺だけ見られなかったのでは?」
「別に見ようと思えばいつでも見られるでしょ。 見たいって言えば、だけど」
「言えてたらこんな愚痴言わないわけですが」
分かってるでしょ、と言い返せば。
分かってはいるけれど、と当然に返る。
口に出すのが恥ずかしい。
俺の底に根付いてしまった悲しい原則。
自分から何かを言い出さない、言い出せない。
ヘタレ、と言ってしまえばそれまでだけど。
皆との関係性を保つ為に取り決めた、少女達からの誘いに乗る形を取る集団に囲われる男。
傍から見れば――――どうなのだろうと。
思わないわけではないのだけど。
「なら――――」
眼の前のように、ある意味露骨に誘われれば。
否定してしまえば、それこそ関係性が崩れてしまう。
それなり以上に、そんな経験を積み上げてきたから。
「少しだけ早いプレゼント、何が欲しい?」
私の格好だけ先に見たわけだけど、なんて。
蠱惑的な笑みと、格好と。
そんな言葉を呟きながら、一歩また一歩と近付かれて。
そんな顔と、そんな全身をと。
眺めるように見上げて、一言。
「サンタさん、贈り物くれるの?」
「欲しいって言うなら、私毎」
伸びる手と。
伸ばされる手と。
灯りへと伸びる手が、重なって。
ぱちりと電源が落とされる。
そんな、いつも通りの日の。
彼女達との、紡ぎ上げた日常の一幕。