葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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叙-11

 

「……成程ね」

 

「どう思う?」

 

その日の晩。

銀が風呂に入っている間に軽い相談。

 

「……一度会わないと分からないけれど、厄介そうとは思う、かな」

 

『何が理由でそうなっているかが読めぬからな』

 

『ただ、天理。 貴方があの場面で介入したのは間違ってはいませんでした』

 

「あ、やっぱり其処は正しかったか」

 

テーブルの上にも編みぐるみが三体。

内一体は微かに動こうとして、せんちゃんの方を向き。

せんちゃんもまた片手を伸ばしてそれに触れながらの話。

 

()()()()()()自体は有りましたからね。

 そして、それに気付けたのも一歩だけ離れた立ち位置の天理だからこそ』

 

『何だろ……一番最初にぐんちゃんに会った頃、みたいな?』

 

「……せんちゃんに?」

 

私?と首を傾げる彼女に。

たかしーからの言葉を経由して告げれば、少しだけ考え込む様子。

 

未だに勇者として力を経由して渡していない以上。

そして、神としての力を蓄えている以上。

その言葉を神域以外では聞けない制限は未だに有効。

面倒だし早くなんとかして欲しい、と思うのは流石に贅沢か。

 

「取り敢えず、俺が加入すること自体は問題無さそう。

 銀とかせんちゃんも大丈夫だとは思うけど……」

 

「私は……どうしようかしらね。

 今年一年でバーテックスの襲撃があるのか無いのか、でも変わる気はするけど」

 

確かにそれはある。

 

とは言え、だ。

個人的な意見が一つ存在する。

 

携帯端末に入っていた、友奈からの連絡。

 

『部活動に関して誘われたんだけど、相談に乗ってくれない?』

 

唯のそれだけ。

けれど、そうしてくれたことで対応幅は大きく広がり。

こうしてせんちゃん達にも、風先輩にも。

『物証』としてはっきり口にできることでもある。

 

「俺個人としては出来ればせんちゃんにも入って欲しいところかな」

 

「理由は?」

 

「先ず第一に、仮に今年何もなかったとしてもOGとして顔を出せるようになること」

 

何の関係もない……いや、正確には部員の友人、先輩として顔を出すのと。

以前に所属していたけれど卒業し、再びに顔を出すのでは立場が違う。

実際高校どうするんだろう、とかそういうのもあるけれど近いうちに相談はしておきたい。

 

「顔を出せる保険を作れる、ってこと?」

 

「うん。 神具に関しては特に……その、()()()()()()はないんだろ?」

 

()()()()?」

 

怖い顔しないでくれよ。

今大事な話してるんだし。

それに多少年上だって、今の俺達にはそんな関係ないだろ。

 

『預けている限りはない。 ……いや、当時の勇者服には制限があったか?』

 

『あー…………うん。 若葉ちゃんが相当怒ってたやつ。

 そうだね、神様が一部の権限持ってたってのはあったよ』

 

「……嫌なこと思い出させるのやめてくれる?」

 

年齢的に問題がないなら、何かあった際に頼れるのは員外の三人になる。

特に三人は三人共に実力が一定以上は保証されているし。

 

防具面……勇者服をどうするか、というのはあるけれど。

其処は携帯端末を手に入れた上で美森ちゃんとも相談する必要があること。

今は『そもそもの戦闘手段』を追求したい。

 

そしてそれを確認すれば、たかしーとせんちゃんは同時に同じようなことを言い。

何処か重苦しい空気に落ち込んでいく。

 

「あー、二つ目」

 

それを払う意味でも、少しだけ声を大きくして口にする。

のろのろと反応はしているが……。

こうして一度落ち込むと、直ぐには解放されないのはもう精神的な癖だな。

 

そういう所含めて、見えてこなかった場所を見えるようになって。

ますます好意は上乗せされていく一方だが。

 

「これは俺の都合だけど、全員が帰宅の都合を付けやすくなること」

 

「? …………ああ、家事とか?」

 

「それもあるし、帰り道の買い物とか杏さんタマ先輩の家。

 或いは大赦へ寄って帰ることまで含めて、全員で完結できる」

 

これは全員が同じ部活だから出来ること。

少なくとも、一年間同じ場所にいれば時間間隔は覚えていく。

誰か一人が帰宅部とか別の部活に入る、とかで時間がズレる場合を考えると。

家事の負担などなど込みで、出来れば一緒になって欲しい。

 

「…………まだあるの?」

 

はぁ、と一呼吸挟んだのを見逃さず。

ほんのりと、薄い笑みを浮かべ直した少女は問うた。

 

「ある……っていうか、これはせんちゃんだけに言えることじゃないんだけど」

 

出来れば全員が入って欲しい理由。

甘ったるく、そして口にするのも何処か恥ずかしい理由。

 

「最後。 …………あー、()()()()()()()()()()

 

この皆、とは文字通りに全員。

部に所属し、或いは所属出来ず。

その選択は何方にしても、誰かが活動していれば手伝うことくらいは問題ない。

 

部活自体を創設する裏事情は兎も角、表向きの理由が人助けである以上。

人助けする相手を手助けする幽霊部員や一般市民がいてもおかしくはないから。

 

「……思い出?」

 

「三人とは色々行事とか、春夏秋冬の出来事とか。 色々遊んできたけどさ」

 

イネスでの買い物。

夏祭り。

十五夜。

クリスマスに新年、バレンタイン。

 

途中からせんちゃんが入り、頭数は増え。

過ごす日常にも幅が広がったとは言っても。

 

()()()()()()()()()()、って事はなかったからさ」

 

どうしようもない前提。

ただ、今なら――――この一年間だけなら、それが出来る。

年下の少女へは定期的に、こまめに相手をしようと思っているけれど。

恐らくそれも……たかしーと合わせて、という形に近くなるのかも知れないし。

 

「……馬鹿ね」

 

「馬鹿!?」

 

え、此処で罵倒されるようなこと!?

 

「言うか悩んだけど、どうせだから言っておくわ。

 ずっと一緒なんだから、そんな回りくどい事言わなくても良いのよ」

 

「回りくどい……」

 

え、ちょっと傷付く。

 

『風呂上がるぞー!』

 

「あ、銀ちゃん上がるみたいだしちょっと私も行ってくるけど」

 

「う、うん」

 

くぐもった声。

風呂上がりを知らせる叫び声に合わせて、せんちゃんも立ち上がりながら。

一度俺の傍で立ち止まり、微かな笑みを浮かべながらに口を動かす。

 

「一緒にいて欲しい、って言えば。

 ――――皆、付いてくるわよ」

 

皆、寂しがり屋なんだから。

 

そう言い残し、額に軽く指先を当てられて。

何処か聞き慣れた鼻歌を口遊みながら、その場を立ち去る背中をぼうっと追いかける。

自然と、無意識に額に手を当て。

 

『……やっぱり、ぐんちゃんも魔性の女の子だよね』

 

「……言えてる」

 

いや、ほんとに。

勝てる気が一切しない。

 

多分、男ならではの変な感情も――――見透かされている気がして。

駄目だなぁ、と見送るだけの姿を晒していた。




ぐんちゃんつよーい。
多分次は亜耶ちゃん回……?
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