葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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破-2

 

四月も終わりが近づく頃。

 

普段のように、一人で時間を潰して帰宅して日課を済ませた後。

俺の部屋、として与えられた部屋で。

普段とは少しだけ違う現象が起こって、それに対処を迫られていた。

 

「……連絡するならもう少し早くしろよ」

 

スマホに届いていた、銀からのメッセージを見て。

溜息を交えながら、鉛筆をノートの上に転がしながら呟く。

 

銀:『明日時間作れそうだー』

俺:『そうかー』

 

たったこれだけで済んでしまう話。

……それはそれで別に良いんだが。

一体何を求めてるのかが分からん。

 

何だ? 俺を混乱させたいのか?

お陰で宿題が全く手につかない。

 

(なにかしたいんだったらはっきり言えよ!)

 

……多分そう言うと、自分を自分で傷付ける気がするので言えない。

俺も銀も、多分口にしていないことは山程あるから。

その為に、互いの時間を費やしているのが現状。

 

(少しだけ方向性は見えてきたし)

 

手先は器用とも不器用とも言い難かったが、何度も指摘されながら練習すれば変わるもの。

その為に掛かった費用は俺の小遣いの大半を費やす事になったけれど。

()()()()()()()()()()があるのなら、早めに用意して渡しておきたい。

……問題は、完成した後でも時間を少し必要とするということか。

 

ちらり、と背中側の壁沿いに目を向ける。

 

部屋の隅、押入れの片隅の箱の中。

散々練習して、やっとあの場所以外でも扱えるようになった……と言える『結界』。

その内側に、幾つかの作成物を安置し清める。

完成までに三月くらいは見る必要があるとかって話だから、実際に完成は夏になるか。

 

(……問題は、真っ当に受け取ってくれるかだよなぁ)

 

以前のような状態になってしまえば、互いに意地を張ってしまうと思う。

だから、それを防ぐためにも関係性は落ち着かせていたい。

そんな打算が、一割にも満たない程。

残りの部分は、緊張や無駄な内容で埋まり切っている。

似合えば良い、と思って幾つかの素材や色で作ってはいるのだけど――――。

 

(作りすぎってのは否めないし)

 

下手に家の関係者には渡したくない。

唯捨てられるだけならまだいい。

もし、()()()()()()()()()()()()()()、と考えると。

正直な所、嫌で嫌で仕方なくなってしまうだろうから。

 

「……悩んでても仕方ないか」

 

畳の上で横になりながら。

先程の文章に追加するように、分からない部分を問い掛ける。

 

俺:『なら、明日はどうする気なんだ?』

 

「送信、っと……」

 

ぴこり、と軽い電子音を立てて完了表記。

後は……まあ、返信が来るまでは宿題を再開して気分でも落ち着けよう。

そう思い、腹筋で起き上がろうとすれば直ぐに電子音。

気が抜けて、また畳に背中を打つ。

 

「はえーよ」

 

待ってた……ってのは多分、無い、よな。

端末でも弄ってて、それで偶然とか。

その方がよっぽど考えられるし。

そういうことにしとこう。

 

銀:『イネス行こうかなって。 天理は?』

 

うん。

まあ。

 

「普段通りって言えば普段通りじゃねーか」

 

態々知らせる内容でもないよな、と思いつつも。

ならイネスで合流でもするか?と打ち込もうとした矢先。

もう一つ、続けてメッセージが届く。

 

銀:『あ、そうだ。 明日問題無ければ友達を案内したいんだ。 手伝ってくれないか?』

 

友達を案内?

 

俺:『別に俺は空けようと思えば大丈夫だが、銀の友達をか?』

銀:『そーそー。 神樹館でもちょっと浮いてる二人なんだよ』

銀:『イネスに一回も行ったこと無いって信じられるか!?』

 

…………。

なんかちょっとズレてないか?

 

俺:『別にあると思うんだが……神樹館通うような生徒だろ?』

 

唯でさえあの学校は名門校としての名前を持っている。

だからこそ、名家と呼ばれる家の子供も通っていたりしてるわけだが。

そういう場所なら、下手にショッピングモールも出られないことも考えられる。

 

銀:『神樹館(うち)は四年生から買い食い解禁なんだけどな……』

俺:『決まってんのか。 って、ああ……将来のこと考えると、ってやつか』

銀:『そうそう。 で、アタシとしては二人ともうちょっと仲良くしたい訳だ』

俺:『それで俺を付き合わさせるの、なんか間違ってないか……?』

 

連絡が続く。

続いてしまう。

途中で止めようとしても、止め時が見えない。

 

銀:『いーんだよ。 アタシの友達を紹介する、ってのは間違ってないだろ?』

俺:『大分間違ってると思うぞ、俺は』

銀:『頑固な奴』

俺:『銀に言われたくない』

 

お互いの意見は平行線上。

別に紹介する/される事が問題な訳じゃない。

ただ、目的がズレてないかという疑問が消えないから確認していたわけだが――――。

 

「あ」

 

ちょっと考えて、頭に降りてきた閃き。

ひょっとすれば、そういうことか?

 

俺:『もしかすると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からか?』

 

何をしてるのかは分からんが、顔に擦り傷を作るような何か。

後は銀にしては珍しく筋肉痛を覚えるような何か。

 

その関係で、と考えるなら……。

三人一組、みたいに考えてるのなら。

早めに紹介される、というのも納得できる。

多分其処まで考えず、『俺なら大丈夫』みたいな根拠もない信用で動いてる気がするけど。

 

銀:『あ、うんそう。 そんな感じ』

俺:『嘘つけ』

 

……文字でさえバレバレなのはどうかと思ったが。

 

俺:『まあ良いよ。 付き合う』

銀:『サンキュー!』

 

なんだかんだで一月ぶり……くらい、か。

 

ちょっとだけ、明日が楽しみになった。




*変更点:
・須美と園子を取り巻く環境の『遠巻きにする』状態に銀が気付いている。
・原作より更に一段階悪化して遠巻きにしている。
・(これは家からの指示もあり、迂闊に関わるなという命令に従っているため)
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