葦原天理は巫覡である 作:氷桜
殆ど勉強には使って無さそうな学習机。
その上には此奴の唯一の趣味とも言って良い、手製の押し花を使った栞が幾つか飾られている。
開かれた形跡の殆どない図鑑や、少女らしい……でいいのか良く分からない箪笥。
部屋の中心を挟んで反対側に置かれたベッドに、枕元の鉢植え。
そして何故か増殖している仮称名サンチョのぬいぐるみ。
(あんまり変わらないな……)
ぐるりと部屋を見回しながら。
座って、と示された部屋の主……友奈の言葉に従い。
フローリングの床の上に座り込んだ。
「ごめんね、急に時間取って貰って」
「お前が声掛けてくるなら緊急だろ。 時間なんて幾らでも作るわ」
午前中、大赦への顔出しと微かな
其処で聞いた現在の動きや、此方が手に入れている情報を伝え合った上で。
少しでも怪しい動きがあれば、彼女達へと手を出して保護することを確認した。
どうにも、良く分からない派閥の動きは流動的。
但し神樹様を妄信的に信じる一部の連中は確実に動いており、その数を増しているらしい。
一度ならず、何度か声を掛けられたこともあったらしいが無事に払い除けたというのが彼女の言。
そして、最近になって俯きながら大赦を去る俺達くらいの女子の数が増えてきた、という報告。
何かあったら最悪はたかしーに頼むから、と伝えての別れではあったが。
最後に手を強く握られたのだけは想定外。
……その後にこんなことしてる、と言ったら……多分複数人に殺されかねないが。
友奈の家にやってくる夕方までの間は、ワカとヒメの指示で彼方此方の調査を行っていた訳で。
意外と疲労が溜まっている。 しかも明日は普通に学校の日である。
(……もう少し休みが欲しい)
そう切実な思いを抱えながらの相談。
ある意味では休息の時間とも言える現状。
出来る限りリラックスしようとは思うのだが、状況がそれを許さない。
「相変わらずそういう事軽く言うんだからー」
「ずーっと前からそうだろ……と言うか俺は誰かの面倒を見る係じゃないんだが」
「お父さんお母さんに言う前に自分で決めておきたくてさ。
そうなると、やっぱり天理君でしょ?」
「何をどうしたらやっぱりなのかがさっぱり分からん」
変わんないなぁ。
それはお前だろ。
そんな事を言い合う、
元々父親は色々と忙しい人で、今何しているかは知らないが余り家にも戻れない人。
母親はそれに比べればマシな方だが、それでも時折家を空けることが多い人。
そういう事もあって、昔から互いに行き来をしていた間柄だからこそ。
変な信頼を抱かれているんだろうなぁ、とは思う。
(実際なんかあったら叩きのめされるけど)
父親直伝の格闘技術とマッサージ技術。
たかしーも似た感じではあったらしいが、殴る蹴ると言った行為に手慣れている友奈族。
寧ろ守って貰うのは俺だよなぁ、と少しだけ悲しくなる。
「で、部活に関してだっけ?」
「うん。 先輩に誘われたんだけどね」
「だったら別に好きでいいと思うんだが、何が引っ掛かってるんだよ」
「んー…………何だろ、自分でも良く分かんないんだけどさ。
私一人だけで入るのはなんか怖いなー、って」
また妙な勘を働かせおって。
恐らく此奴一人だったら……或いは以前と変わらない性格だったら。
一も二もなく飛び込んでいたと思うと、ちょっと冷や汗が出てくる。
「友奈も成長してるんだな……」
「誰目線なのそれ」
うんうん、と頷いていれば細い目でじーっと見詰めてくる。
実際問題、俺からすれば成長だと思うぞ。
「ただ。 本気で緊急の時なら、お前の意思に従って動いたろ?」
多分、その根幹だけは変わっていない。
俺は躊躇しながら、後詰めとして色々苦労をし。
友奈は何も考えずに突っ込んでなんとかする。
そんな雑な役割分担。
感謝を返してくれる人が多いとは言え、奇妙な目で見る相手がいなかったわけじゃない。
そういった相手から守ってやるのも、昔の俺の役割だった。
「うん。 今は時間があるし……それにさ」
「うん」
「人を助ける前に自分が万全に、でしょ?
天理君が出来てないこと」
「そっくりそのまま返してやるよ」
えへへ、と。
花のように笑う顔は、昔から変わらない。
女の子なのに、とか。
男の子なのに、とか。
そんな性別で考える前に、自分が傷だらけのまま誰かを助けに行く。
助けられた側は、複雑な感情を抱くし。
お前を大事に思う人間も、色々と悲しくなる。
そんな事をコンコンと伝え、ブーメランを投げ返された。
微かに残る、嘗ての神社跡地……石段の上での約束を思い浮かべながら。
「それで、お前はどうしたいんだ? その部活」
本題――――相談内容を確認する。
多分、友奈の中ではある程度答えが出ている。
其処に歯止めを掛けるようにしてしまったのが俺だからこそ。
俺から聞き返す以外の選択肢はない。
「…………入ってみたい、とは思ってる」
そうして、迷うこと数秒。
口を開いた内容は、先程の焼き直し。
「なら」
「でもね」
さっきも言ったけど、一人で入るのは怖い、と。
同じことを繰り返す会話。
そして、目の前の少女の瞳は俺を見ていた。
「……つまり」
「一緒に入ってくれない、かな? 勿論、先輩に聞いた後だけど」
……
いや、全てが全てその通りだったわけではないけれど。
結果的に同じ部活に所属する流れになるのは風先輩との話と同じ流れ。
直接伝える訳にはいかない、秘密を隠しているのは心苦しいけれど。
全員の目的を達成するには、必須の選択なのは間違いない。
「
だから、不審がられない程度に言葉を上乗せする。
勘が鋭いのは間違いなく。
そして、気付いたとしても口にしないで溜め込む少女だから。
そもそも気付かせないようにするにはそれなりの手法がいる。
「えー、何その言い方」
「他にもいるだろー、美森ちゃんとか銀とか」
「ああうん。 入ってくれたら嬉しいなぁ、とは思ってるよ!」
そんな不吉な言葉が、端から漏れる。
「
どう、と問いながら。
ニコニコと笑うその表情に。
奇妙に――――寒気を感じた。
「……聞いてからだろ?」
「入って良い、って言ったら入ってくれる?」
「どーかなー。 俺一人だけなら分かんねえ」
まぁ先ず、そうはならないのだが。
気付かない振りをして。
気付いていない振りをして。
その笑みから、意識を少しだけ外した。
「そっかぁ。 じゃ、先輩に聞いとくね!」
言葉は、一切変わらないのに。
奇妙に、背筋に走ったのは……多分。
緊張と、恐怖にも似た――――焦り、だったのかもしれない。
「あ、そうだ。 東郷さんも呼んでご飯食べていかないかな?」
妙な緊張に。
生唾を飲み込みながら……晩飯用意してるだろうからまた今度、と。
断るのに、妙な精神力を要した。
ニコニコニコニコ。
その内やる掌編
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そのっち@小説絡み
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東郷さん@ぼたもち
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銀ちゃん@部屋でだらだら
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ぐんちゃん@ゲーム
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ずんずん@真面目な話
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タマ先輩@アウトドア
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友奈ちゃん@お出かけ
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亜耶ちゃん@お祈り
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たかしー@夢の中