葦原天理は巫覡である   作:氷桜

112 / 249
ちょいと雑かもしれないけど気楽に書けました。


叙-15

 

翌日、放課後。

 

友奈は先輩に確認しに行く、と教室を去り。

美森ちゃんとそのちゃんは銀を連れて女子会とやらに出向き。

せんちゃんは……久しぶりにゲームショップを見て回るとかで。

本来の予定に対し、丸々空いたような状況下。

 

とは言え、何もすることが無いわけじゃない。

 

(様子は見ておきたいしな~……)

 

昨日のうちに調べは回しておいたし、彼方此方出向くには時間不足。

故に行けるとしたらこの近辺……となれば、行く場所はほぼ一択。

 

学校帰り、普段通らない裏道を幾つか通り抜けた先の小さな集合住宅。

その敷地内に設けられた一軒家、というにはやや古びた家屋。

今までは人気もなく、精々が管理するために管理会社が出向いていた場所。

そんな場所も、今では妙な人気が中から漂っている。

 

家の前の呼び鈴を一度、二度。

直ぐに内側からぱたぱたと駆けてくる音がして、内側から扉が開かれて。

 

「……あ」

 

「調子はどう、杏さん」

 

お土産、と差し出す布袋。

かさり、と手元で揺れる袋の中には幾つかの飲み物。

ゆったりとした私服に身を包んだ先輩……杏さんが、出迎えてくれた。

 

「学校、もう終わったんですか?」

 

「他の皆は用事みたいでさ。

 殆ど顔出せてなかっただろ、何か問題とか無いかなって確認も兼ねて」

 

「いえ……その、色々ご厄介になっている身で」

 

有難う御座います、と口にしながらそれを受け取って貰い。

幾つかの電子音が響く室内へ、どうぞと案内されてそれに従う。

 

この家屋と土地は、俺の家……というよりは叔父叔母が所持していた資産の一つ。

無論死去して俺に引き継がれるまでは存在さえも知らなかったし。

使い道がなければ売るしか無いかな、と思っていた場所でもあったわけだが。

今はこうして初代勇者達の住処として提供・利用して貰っている。

 

実際、集合住宅側にも好きにできる部屋を二部屋程確保しているし。

建物自体が古いのもあってか、住民も今は誰もいない。

単純に()動産化していたのだから丁度いいと言えば丁度良かった。

 

廊下を進み、明かりと……恐らくはテレビだろうか。

近付く度に音量が大きくなるそれが置かれた部屋へと案内されて。

 

「あんずー、誰…………おお、てんりか」

 

「どーも、タマ先輩」

 

机の上で溶けたように伸びている生物を目撃した。

というかタマ先輩だった。

 

手先に伸ばしているのはリモコンで、小さく欠伸をしているところからしても。

お気に入りの番組か何かがやっておらず、適当に回している感じか。

 

「なんか久々な気がするなー」

 

「まあ、時折顔は見せてましたけど……寝てたりしましたからねえ」

 

何というか、出会す運が悪いと言うか。

外に出ていたり、或いは昼寝していたり。

直接顔と顔を合わせる機会が少なかったのも事実。

まあ、久々にでも顔が見れて元気そうなので良かったと思おう。

 

「あ、そーだ。 電話とかほんとに良かったのか?」

 

ぴ、とテレビの音量が一気に下る。

一応声は聞こえるから、最小ちょっとくらいまで下げた様子で。

話を優先してくれるのは素直に助かる。

 

「ああ……寧ろ持っておいてもらわないと困りますから」

 

「って言ってもなー。 タマ達だって世話になってばかりだと色々悩むんだぞ?」

 

それは此方の言葉です、と。

一応インターネットも可能な、使いたい放題の状態の携帯端末は複数台確保していた。

何に使うかと言えば、それこそ初代勇者への緊急連絡用。

そして外に未だ出し難いという状態の暇潰し用。

 

恐らく、早朝と夕方以降では殆ど外に出られていないんじゃないか?

少なくとも大赦側……それも()()()()()()()立場の人間に気付かれても困る。

一応苗字は適当に名乗って貰いつつ、名前だけで呼び合うように雑な対策はしてるんだが。

 

「先輩達に頑張って貰うのは寧ろこれからですし。

 体力の方は大丈夫です?」

 

「あー、最盛期? の頃よりは落ちてると思う。

 身体が固くなってるのは分かるからなー」

 

「ええ……」

 

「あんずよりはマシだぞ!」

 

いや、比較対象杏さんは正しいのか分からないんだが。

あんなに柔らかそうなのに身体が硬い、ってのもどうなんだろうとは思うが。

 

「タマっち先輩! 余計なこと言わないで下さいよう!」

 

そんな対話をしていれば、杏さんが顔を覗かせる。

少しばかり顔を赤くしているのは気の所為だろうか。

 

お盆に飲み物……持ってきた炭酸をコップに入れて三つ。

叫びながらも移動し、ブレさせないとかいう微妙に器用なことを成し遂げていた。

 

「いやぁ……千景と同じくらいに酷かっただろ。

 体力とか付けるのに友奈と一緒に走ってただろー?」

 

「アレは……色々と辛かったですね……」

 

少しだけ目が暗くなってるのは何故だ。

視線をタマ先輩に向ければ、肩を竦められた。

 

「まぁこのとーり、今直ぐは難しいかも。

 一応夕方は走るようにしてるし、腕立て伏せとかもやり始めてはいるんだけどな」

 

「タマっち先輩の場合、キャンピングとかの為って意味も無い?」

 

「あるぞー。

 ……ロードバイクとかも乗りたいんだけどなぁ」

 

そういやタマの愛車はどうしたんだろう。

大赦が預かってるみたいだよ。

そんな幾らかの雑談をしながら、炭酸を口に運ぶ。

 

「取り敢えず、早急に体力だけは戻してくださいね。

 五月の頭には……乃木さん、でしたっけ? あのリーダーたちも助けたいので」

 

「場所はー?」

 

「たかしーに聞きました」

 

反則技ではあるが、嬉しそうに教えてくれたのだから良し。

 

実際……眠っている、一応俺の先祖……先祖? いや、恩人?

まあそんな巫女の人にも会いたいし。

時折美森ちゃんが会ってたっていう巫女の人って多分その人だろ。

 

「何という反則」

 

「何でも良いんですよ、バーテックス相手にするほうが酷いでしょ」

 

「そりゃそーだ」

 

打てば返る。

割とこの人とは話していて楽。

 

「なので……まあ、杏さん? お世話になるとは思うので、がんばってくださいね?」

 

「……は、はい!」

 

そして、なんか妙にカチコチしている彼女とは何故か会話に引っかかりがある。

特殊な呼び方、それ自体が引っ掛かっている気はするけれど。

まあ……うん。

 

ほんの少し、やる気を出して貰うか。

そう思いながら、耳元で小さく言葉を漏らす。

 

「頑張ったら、ご褒美ということで」

 

「!?」

 

「?」

 

一人は確かに話を聞いて。

一人は良く分からない風に、ただ呆れていて。

俺は、小さく笑っていた。

 

「……も、もう!」

 

「あんず……」

 

「嘘はいってませんよー」

 

結局、その日の放課後は。

終始、一人だけが弄ばれるような形で終わりを告げたのだった。

 

……いや、案外楽しかった。

その内やる掌編

  • そのっち@小説絡み
  • 東郷さん@ぼたもち
  • 銀ちゃん@部屋でだらだら
  • ぐんちゃん@ゲーム
  • ずんずん@真面目な話
  • タマ先輩@アウトドア
  • 友奈ちゃん@お出かけ
  • 亜耶ちゃん@お祈り
  • たかしー@夢の中
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。