葦原天理は巫覡である 作:氷桜
「じゃ、今日は掃除の手伝いと猫探しね」
「掃除、ですか?」
「そ。 空き教室なんだけど、色々と物が詰まってる場所。
交渉して、使えそうな物があったら引き取って良いって事になったわ」
ほう、と零した俺を除いた
今日は銀とせんちゃんは不在にしている。
本来は俺が送り迎えをする病院までの道程。
だが、今日は四肢のリハビリだけに留まらず身体検査も含むそうで。
ついでとばかりに彼女も見て貰うことになっていた。
だからこそ、今日残っているのは五人……でこの二つの仕事?
「どう分けるんです?」
「どうしても力仕事になるからねえ……」
「それに猫探しだと街中あっちこっち行かないとだよね~?」
彼方此方で飛ぶ己の意見。
各々の体格と得意な分野。
その辺りを勘案すると……大分絞られそうだな、と思うには十二分。
「友奈は猫探しでいいわよね?」
「だと思います、一番詳しいでしょうし」
「え、私掃除でもいいよ!?」
手をパタパタとしながらの表現。
だが、この中で讃州市に最も詳しいのは間違いなく友奈。
他は引っ越してきたり、それなりに長期間離れていた顔触れのみ。
ついでに言えば、銀と同じく
両親に聞いた限り、昔と比べればそれなりに落ち着いたとは言っていたが。
それでも何処に猫がいるのか把握するくらいは出来ると思う。
「で、葦原は悪いけど……」
「掃除ですよね……まあ、家でもやってるから慣れてますけど」
普通に考えて黒一点なら、力仕事を含む役割ならそっちに振られておかしくない。
それなりに家でもしているから、不慣れというわけでもないし。
この機会だ、せめて本格的に夏が始まる前に扇風機とか確保したい。
(クーラーはあるけど、其処まで温度下げられるわけもないしな)
こんな準備室に入れられている、というのも純粋な疑問だが。
恐らくは大赦側の補助でも入ってるんだろ、多分。
所属員に名家に名を連ねる人物が四人もいるんだし。
もし無ければ俺が裏から手を回して自費で入れてたわ。
「だったら私達はどうするんです~?」
「力仕事でもやりますが……」
ちらり、と向けられた目線は意識して無視する。
何方にしろ、人数を分けるとしたって2対3。
彼方此方を探さなければいけない、という意味で人数を取るか。
大きな荷物を片付けないといけない、という意味で人数を取るか。
……ただ、これは悩む選択肢のほうがおかしい気もするな。
「風先輩、その掃除……って期間としてはどれくらいなんですか?」
「ああ……大きな粗大ごみは車両の手配もあるらしいから、次の休みくらいまででいいらしいけど」
「だったらどれをどうする、って手順決めの意味でも俺と先輩で良いのでは?
猫探し側も見つけ次第加わって貰うとしたって、
大体だが、部活の最終時間は18時くらいまでと決まっている。
これは俺達の部活が運動系でない、という理由もあるが。
純粋に『学校の外に出る』という半ば例外的な対応を許可されているからでもある。
それ以上遅くならないように調整もしているし、そもそも無理なら休日に対応。
それなりに時間がある以上、無理してでも押すような内容でもない。
「あ~……別に私は良いけど」
間違ったことを言っているつもりはない。
実際、猫を見つけたら戻ってくればいいだけでもある。
それが嫌なら帰ってもいいし、裏道を把握するために動くという意味合いでは最適の依頼だと思う。
そして何より、
幼い頃の動きから、そして学校での周囲の女子の割合から。
それなりに
そんな相手が関われば、話を聞くにしても情報を渋られる可能性だってあるわけで。
(後、純粋に美少女だけのほうが得だし)
俺の顔がもう少し良ければ違ったかも知れないけどなー。
何処にでも埋没する程度の見た目しか無いし。
『そんなことないよ!!!!』
おうたかしー、耳元で叫ぶのはやめようか。
お世辞は結構、自分で自分の事は分かってる。
……というか、今言葉にしなかったはずなんだが。
考えだけで意思を伝え合える程度にまで、深度が深まってる……?
『ほんに、自己認識だけ妙にズレておるのよな』
『まあ……基準が勇者達ともなればそうなるのでしょうが……』
当然のように二柱も聞いてるし。
だから余計なことは言わんで良い。
「え~」
「風先輩は……大丈夫ですか?」
少しだけぶぅたれるそのちゃん。
そもそも出来るのか、と迂遠な聞き方にも聞こえる美森ちゃん。
まだ俺達は――――互いの事情に精通するほど仲が良い訳じゃない。
昼食は共に取るようにはなったけれど、その程度の雑談では。
休日は休日で中々噛み合わない、というのも恐らくはその理由の一つ。
……ああ、良い機会といえば良い機会だな。
俺一人って考えれば。
「大丈夫よ。 これでも家事全般は精通してんのよ?」
女子力上げるにはこういうところからよね~と。
何処か気楽に言っているからには、自信に満ち溢れているか駄目かの二択だと思う。
「らしいし、大急ぎで猫探し済ませてから手伝ってくれると助かるかなー」
目配せ。
それを受け止めたのは美森ちゃんくらいで。
にこやかな笑顔で、小さく口を動かしていた。
『かしひとつ』。
……十二分以上に重いだろう、その言葉に冷や汗が背中に溢れるのが分かる。
ただ、こればっかりは必要なのも確かなので嫌々ながら頷けば。
「…………仕方ないわね。 そのっちに友奈ちゃん。
明日以降、終わって無ければ交代交代で二人きりで作業させてもらいましょう?」
絶対に二人きり、の部分に重点置いただろ。
まあ、そんな言葉を言えるはずもなく。
不機嫌気味なそのちゃんと――――何故か似たような態度の友奈と。
急げば合流できるから、と言いながら立ち去る美森ちゃんを見送って、一言隣から声がする。
「葦原」
「はい」
「アンタ、どういう交友関係してんの?」
いや、口に出したくないです。
・これ犬吠埼姉妹イベント終わったらそれはそれで部活酷くならない?
その内やる掌編
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