葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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最後の二人。
未だに眠る別の地の二人。
手を出すのが、幸福なのか。


センニチコウ/神結いの災い・結
結-1


 

――――随分久々に、漂うような夢の中にいる。

 

幾つか移り行く光景。

そのどれもが見覚えもなく、けれど何か見覚えがある。

 

()()()()()()()、それ以外は何ら変わらない映像の中の其れ等は。

移り変わる度に、悲劇と涙を映し出している。

 

 

――――の眠る姿が見える。

 

二度と目覚めない眠りの中で。

閉じられた空間に、嘗ての誰かと共に収められる光景を幻視する。

 

それに気付かず、気付くこともなく。

只々泣き叫ぶ、たった二人の姿が見える。

 

 

――――須美の眠る姿が見える。

 

全てを忘却し、忘れてはいけない何かと。

喪ってはいけない何かを無くしながら、それに気付くことがなく。

 

魂と断絶させられた記憶のみが、そんな抜け殻に叫ぶ光景。

決して届かず、隣に立つ姿さえ見えない……()()の姿が見える。

 

 

――――園子の眠る姿が見える。

 

殆ど全てを喪い、ただ”在る”事だけを求められる()()()の姿。

 

室内、室外。

他者から、自身の意志でも。

別人と、その人物と。

 

相反し、相似する。

有り得ない二つの姿が重なりつつも、交互に映るのは。

そういうものだ、と誰かが定めたからなのだろうか。

 

 

ふらり、ふらりと漂う中で。

自分自身が世界に溶け込んでいくような。

或いは世界を自分自身で染めるような。

世界と自分が同一視されるような悪寒を前に。

 

『…………もう』

 

ぷつり、と手で何かを千切るような音と。

聞き慣れた/聞き慣れない、聞こえるはずのない肉声と。

途端に途切れた、見えていた筈の光景が移り変わるのを目の前で錯覚する。

 

『…………巻き込んじゃった、かな?」

 

少しずつ、声の揺れが収まりながら。

 

けれど周囲の光景は……空想する宇宙のような、何もない中で幾つもの何かが浮かぶ中で。

『俺』と、目の前に――――いるはずのない彼女がいる姿を幻視した。

 

「………………たか、しー?」

 

「ごめんね、多分私が()()()()()()んだと思う」

 

何処か掠れた言葉。

けれど一言目を口にすれば、自然と或るべき形に戻るのが分かる。

自分自身が、普通ではない……何度も経験しているからか。

今の自分が、肉体でないのは冷静になってみれば直ぐに分かった。

 

「今の、は?」

 

「私が見た夢。 ……()()()()()、神託に近い有り得た可能性、かな?」

 

彼女が指す()()

 

多分それが意味するのは、神樹サマではなく。

彼女の周囲に漂い、そして彼女もまた誰かの周りを漂うような。

そんな中で、見覚えのある目を持つ誰かに睨まれているような。

一人であり多数、多数であり一人である彼女を指しているのだろう。

 

「可能性、ねえ……」

 

「信じてないなー?」

 

「いや、たかしーの言うことだし信じるけどさ。

 何でそんな物を今更、ついでに俺を巻き込んで?」

 

あの光景がいつ頃のものなのかは分からない。

ただ、「いつ」なのかが肝心なのではなく。

恐らく――――()()()()、というその事象其の物が問題なのだとそう思う。

 

「……んー、多分はあの依代、形代が原因なんだけど……。

 後は……女の子の秘密ってことで!」

 

「ズルいなぁその言葉……」

 

当然のような確認。

けれど半ば誤魔化す言葉と、微かな頬の朱。

深く踏み込めば不味い、と理性の何処かが囁いてそこで話題を打ち切って。

……後頭部あたりに、何か珠のようなものが激突し続けている。

 

「まあ良いや……結局神樹サマの中にまた呼ばれたってことだよね」

 

「んー、ちょっと違う。 天理君の夢と()()()()、かな?」

 

そう言われて、思い出したのは杏さん達の時のこと。

あの時の逆、と考えればまあ納得しなくもない。

 

「じゃあ俺がこんな最悪な夢見てるのか……」

 

「だからぁ、違うって」

 

腕で抱え込まれるように、背中を掴まれ距離が縮まる。

目と目、顔と顔の距離が妙に近く。

後頭部の何かの動きが加速している。

 

「落ち着いてー、はい。

 吐いてー、吐いてー、吐いてー、吐くー」

 

「死ぬわ!?」

 

一番最初だけは空白になった思考に染み渡るように反応し。

其処からの連続する言葉は明らかな異常性故に反逆し。

そんな俺を見て小さく笑う。

 

「でも、落ち着いたでしょ?」

 

「……それはまあ落ち着くけどさ。 今こうされてる方が落ち着かない」

 

「私は落ち着くからー」

 

……そういう問題ではないのだが。

 

少なくとも先程の光景、泣いている誰か。

それを見たくない、と思うのは本能なのか。

それとも……知る誰かの可能性なのか。

 

「……まあ良いや。 起きるまでにちょっと教えてくれ、たかしー」

 

「んー?」

 

「最後の二人……乃木と上里の始まりの場所はこないだ聞いたけど。

 ()()()()()()()()()()()()()()?」

 

それは、彼女からしか分からない視点。

相手が担う現状と、俺達が持つ手札。

其れ等で対応できないのなら、する方法を今から掘り返す必要性が出てくる。

 

「……んー。 一応、多分?」

 

「曖昧だなぁ……」

 

「はっきり言えないよ、()()()()()()()()()()()()()

 

それは亜耶に負担が掛かる、という意味でも正しく。

俺には認識できない言葉になる、という意味で正しく。

大赦側の巫女もその知識を得る、という意味でも正しい。

 

それを取っても現状不利になる選択肢しか無く。

故に、明確に言葉にはしない。

 

「でも、言えることがあるとすれば……若葉ちゃんの持ってる武器と、逸話かな?」

 

「え?」

 

「これ以上は無理~。 ワカさん達に聞いてみて?」

 

そんな話ばっかりじゃなく、もっと色々話がしたい、と。

縋るように張り付き続ける少女の瞳に、その場は折れて。

 

「……話?」

 

「うん。 そうだなぁ……」

 

口付けって甘いって言うけど、本当?

 

そんな、答えにくい質問の山々と。

じっとりと見詰め続けているであろう、ご先祖さまの視線。

その二つに呑まれたまま、目覚めまでの時間を待つ羽目になった。

その内やる掌編

  • そのっち@小説絡み
  • 東郷さん@ぼたもち
  • 銀ちゃん@部屋でだらだら
  • ぐんちゃん@ゲーム
  • ずんずん@真面目な話
  • タマ先輩@アウトドア
  • 友奈ちゃん@お出かけ
  • 亜耶ちゃん@お祈り
  • たかしー@夢の中
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