葦原天理は巫覡である   作:氷桜

125 / 249
結-7

 

そろそろ時間だから、と風先輩に追いやられ。

何をするにも中途半端な……今の時間を見てどうするか少しだけ悩む。

 

元々、今日の予定は各人毎に担当する時間が違うからこそ丸一日決めていない。

精々が同じ時間帯を選んだ間柄同士で何かをするか、というくらい。

つまり――――。

 

「この後どうする?」

 

「……お腹は?」

 

「少しは減ってきたけど、まだ早いよね」

 

「……そうよね」

 

恥ずかしがる顔を隠すこと無く。

けれどもその状態を解消することもなく。

片手を結んだまま、フリーマーケットの中を二人で進む。

 

向けられる視線は幾らか増して。

知っている顔も多少は増えて。

今後を考えれば離したほうが良いのは分かっていても。

 

それを超えて、どんな話を振り撒かれようとも。

そんな淡い決意を、互いに結びながら話を続ける。

 

「先輩達の後って誰だっけ?」

 

「銀とそのっち。 最後が友奈ちゃんと千景さんね」

 

「…………ああ、だから変な緊張してたのか。 せんちゃん」

 

よくよく考えれば昔から見守ってきた瓜二つの相手だもんな。

その当人が宿る編みぐるみは、今日は彼女と共にいる。

そりゃまあ何とも言い難い態度をとるよなぁ。

 

「良く分からないんだけれど、どういう感じなの?」

 

「あー……美森ちゃんに想像が付くように言うなら……。

 親友……か更に深い関係の相手の瓜二つの双子とデートする、みたいな?」

 

「…………何とも言いにくい感じになるのは分かったわ」

 

どう説明していいか分からず、何となく浮かぶ感じを口にする。

一応彼女の何かしらを継承してるらしいから間違ってはないはずなんだけど。

明確な子孫というわけでもないし、やっぱり一番近いのは瓜二つの双子……だろうか。

 

(普段説明なんかしないから迷うな、この表現)

 

基本何方かの存在しか知らないからこそ、説明する必要もなく。

初代勇者達の中で友奈のことを知るのは現状せんちゃんのみ。

多分見かけたら相当驚くなり何なりするとは思うが、たかしーの実在も知ってるしなぁ。

まあ、神様なら何でも有りって考えてくれれば一番マシか。

 

はぁ、と吐息を漏らせば……気付けばとうに白い息へと変わる季節は過ぎている。

 

立ち並んだビニールシートの上、置かれた色取り取りの物品の中。

俺自身が作らず、そしてそれなりに見栄えの良さそうな屑石の飾りを幾つか購入しておく。

お土産――――と言うよりは贈り物。

 

つい先日の……せんちゃんの囁きを真に受けた、と言うよりは気付かされた、か。

俺がしていることは、第二の人生を作り出しているのと同時。

彼女達を見捨ててしまえば、其処で『何も持たない誰か』を産み出すのと同じ。

 

故に、何かしらの形で決着が付くまでは相手をする必要があるわけで。

俺(・)を(・)好(・)む(・)と(・)好(・)ま(・)ざ(・)る(・)と(・)に(・)関(・)わ(・)ら(・)ず(・)、それなりの態度を示し続けるのは分かっていたこと。

 

だからこそ……とまでは言わないが。

お互いに仲良く付き合っていく、という意味で時間や物品を費やしてもいいとは思うのだ。

故に、知っている相手分の装飾品を買おうと目を向ければ。

 

「…………」

 

なにか言いたげな隣の少女の視線と、手への力が少しだけ入り込む。

 

言葉にして欲しい、と願っても。

多分それを断るのだろう、と薄々に感じながら。

 

「……髪飾りと、指輪。 どっちが好き?」

 

「……指輪」

 

何方にしろ買う予定だった二品を指さしながら。

彼女の機嫌を伺うように声を掛ければ、ほぼ間を置かずに返る選択。

 

指の大きさが合うのか、とか細かい問題はあるけれど。

微笑ましそうに見る、少しばかり年を召した女性に頭を下げて。

買ったそれを包んで貰わず、その場で彼女の右(・)手(・)の(・)薬(・)指(・)へと当てようとする。

 

白魚のような……或いは天女のような、と評するのが正しいのかは分からないけれど。

どう処置し続けているのかは不明な、その指へはスルリと入り込んだ。

 

それだけで――――意味が通じたのか。

或いは、分かっていたけれどそう見せていただけなのか。

俺には複雑怪奇な女心は分からずとも、笑みを浮かべたのだけは確かに分かる。

 

「お熱いねえ」

 

そんな店主に苦笑いを浮かべ、皆にそれぞれ似合いそうな物品を買い足して。

その間に、天へと手を持ち上げて……指を見上げてから。

彼女からは離すつもりも消えたように、しっかりと巻き付き絡め取られる。

 

改めて縛られた、と心の何処かで実感しながら。

そしてそれを嫌うわけではない自分自身をもどうかと思いながら。

また一つ、お互いが近付いたと喜ぶ彼女の朱色を眺めて笑う。

 

(……その内、本(・)物(・)も送ることになるのかね)

 

ただ、その場合は――――指輪じゃなくて、櫛になるのか。

それとも簪にするのか……少しだけ悩ましいと思いつつ。

少しだけ増えた荷物を片手に、見て回る最中。

 

「……ね、天理君」

 

「うん?」

 

「……ちょっとだけ、良いかしら」

 

隣に在る少女の気配が、移り変わったように感じる。

 

外見は確かに彼女のはずで。

けれど、漂う雰囲気や気配が彼女ではなく。

しかし、それに対する感情は決して悪感情ではない。

 

握る力が、少し弱くなったような気がして。

改めて、此方から離さないようにと手を握る。

 

「……何(・)?」

 

それだけで通じるかは到底未知数。

ただ、先程までの浮かれた雰囲気は何処かに呑まれたような感覚。

フリーマーケットの雰囲気の中には、何処かそぐわないモノ。

 

「……私(・)の(・)お(・)師(・)匠(・)様(・)から、今伝えてほしいって言われたのだけど」

 

「お師匠――――って言うと」

 

以前に何度か耳にした、夢の中で巫女のことを学んでいる相手だろうか。

……俺にとってのせんちゃんのように、見聞きされていると思うと少しだけ恥ずかしい。

 

「ええ、何度か口にしているあの人」

 

「……それで?」

 

「……封(・)印(・)を(・)解(・)い(・)た(・)後(・)の(・)嘆(・)願(・)、らしいわ」

 

周りから聞かれても意味が分からず。

身内だからこそ、警戒心が増す一言。

此方がしようとしていることを把握されている。

それは……利点欠点何方だろうか。

 

「……何だって?」

 

そう問えば。

小さく二度ほど頷いた上で――――。

 

「……天理君に、また負担を掛けることになるけれど」

 

「覚悟してるよ。 それで?」

 

「私達も、お傍に置かせて欲しい……ですって」

 

――――それ、どういう意味です?

 

美森ちゃんに聞き返しても、首を捻るだけで。

何故今そんな事を言ったのか。

それが本当に必要なのか。

そんな当たり前のことさえ分からないまま。

 

ただ、周りがまた少し騒がしくなるだろうな……という予感だけは。

確かに、微かに増していた。




・全員が婚姻相手とか言い出したらマジギレしそうだよね神樹様。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。