葦原天理は巫覡である 作:氷桜
「此処に来たなら先ずこれ! ジェラート!」
「じぇ……ああ、氷菓子ですか?」
「間違ってはないけどねえ、わっしー」
「はいはいいらっしゃい。 色んな味があるよー」
わいわい、がやがや。
普段とは違う人員、それも美少女が二人。
店員が見る目も何処か微笑ましいモノが混じってる気がする。
「坊主と嬢ちゃんはどうせいつも通りだろ?」
「そうだけども……態度違いすぎない?」
俺とか銀に関してはいつも通りだったが。
「まあ新しい客をつれてきてくれた礼だ、少しだけサービスしとくぜ」
「おおう……太っ腹ぁ」
そんな言葉と共に、普段のジェラート……抹茶味に寄せられるように乗っけられた
おいこれ醤油味だろ。
隣の銀も同じように受け取っているが醤油の隣に緑色が重ねられている。
「嫌がらせ?」
「いや、応援」
何のだよ。
二人で何言ってんだろうな、と話しながらベンチではなくテーブルに座る。
手慣れている俺達とは別で、色んな角度から覗き込んでは目を輝かせている乃木さんに。
勇気を出して一口齧り、その冷たさと濃厚さに口に手を当てている鷲尾さん。
各々が買い食いなど初めてだと分かりやすい程に主張している。
「喜んでるみたいだな」
「だなー。 味はどうだ?」
「最高! お母さんと食べたクレープが最高だと思ってたけど……こんな美味しいのもあるんだねぇ」
あー、やっぱり一人で何かするのも禁じられてたタイプか。
「他にも色々あるけど……食べ過ぎると夕ご飯に影響しちゃうし、また今度だな」
「えー……後ちょっと、だめかなぁ」
「えーじゃなくてさ」
気付いたら大体食べ尽くしていて、次を求めて目が動いている。
ただ、初めての時特有のトラブルと言うかやりがちなことはきっちり指摘しておく。
不満が物凄い漏れて、上目遣いで庇護欲を誘ってくるが。
ダメなものはダメです。
「それに、此処で全部使っちゃったら到底全部回れないぞ」
「んー……例えば?」
「服……は流石に見てる余裕無いか。
ゲームとか……記念写真とか、後はまあアクセサリーとか?」
指折り数えて、浮かんだ店を口にする。
商店街のような店とは違って、もっと専門的な細かいお店が多いのが特徴。
本屋とか裁縫の材料系列は銀に付き合って良く回った。
それに、ゲームセンター……というかクレーンは大体勝負の題材に選びやすかったな。
「げーむ……?」
「え、ひょっとしてやったことない?」
「無い……と思うなぁ。 トランプとか囲碁とか将棋ならあるけど」
「なら普段何してたの?」
此方が聞くばっかりになってしまっている。
銀の方に目を向ければ、向こうは向こうで『負けた!』って顔してる鷲尾さんと何かやってる。
……向こうも向こうで気になって困るが、今は此方のぽやぽやっ娘が先。
「ありさん眺めたりー」
「うん」
「サンチョとお昼寝したりー」
「うん」
「小説書いたりしてた」
アリの観察。
サンチョ(猫か何かか?)との睡眠。
小説執筆。
だいたい全部一人で出来ること、というかほぼそれだけで此処まで過ごしてきたことが凄い。
「そっか。 凄いなー、乃木さん」
「なにが~?」
「俺じゃ耐えられそうにないからさ、そんな生活だと」
彼女が『当然』だと感じている今までの日々。
退屈という感情も勿論抱えていただろうし、家でのやるべきこと……行事の対応も多分いる。
その上で、周囲に親しい友達も作れなかったとなると……ちょっと。
こうしてぽやぽやしてるだけで過ごせるのはすげー、と思ってしまうのだ。
「でもね。 わっしーやミノさんみたいな友達が出来たから全然違うんだー」
「だろうねえ。 まあ……今言うのもなんだけどさ」
「うん~?」
「時間さえあれば俺も遊ぶの付き合うから」
ついつい深入りしようとしてしまう。
何も知らなければ、顔を合わせてそれで終わりだっただろうに。
遠巻きにしてしまうのと、少しでも力になりたくなるの。
どっちの気持ちも分かるから、こうして動いてしまう。
「いいの?」
「別に、俺は何かをしなきゃいけない訳でもないからさ」
ワカとヒメの件は除く。
少なくとも今は黙っておくように、と厳命があるし。
……近々、それが解かれるんだろうか。
「わーい、友達が増えたー!」
「ってそれで良いのかい」
「うん。 そういうものだ、ってミノさん言ってたよ?」
先ず第一に、乃木家……家の人が俺を含めて許してくれるかどうかって問題があるんだが。
銀も鷲尾さんも、名家っていうバックがあってこそって部分は大前提にしてるだろうし。
俺なんか簡単に吹き飛ばされそう。
「まあ、乃木さんがそれでいいならいいか……」
多分、こうやって人間関係って深入りするんだろうなぁ。
「あ、そーだ」
「ん?」
友達になったんだからー、と言いつつ頭に指を当てた。
なにそれ、何かの考えるポーズ?
「私のこと、”園子”……でいいからね?」
「いやいや恐れ多い」
「えー」
「いやいや本気で恐れ多い」
銀は銀、以外無いが乃木さんは今日初めて会ったのに急過ぎる。
苗字呼びくらいで丁度良くない?
学校でも友人以外は苗字が普通だし。
「じゃー、そう呼ばなきゃ反応しないからねー。
「は? 乃木さん?」
「ミノさーん、わっしー。 友達増えたー!」
そんな戸惑いと、疑問を残し。
彼女は二人に突撃してしまった。
……残されたのは、俺だけで。
「は?」
いや、今何が起こった?
そんなのを受け止めるので、脳が精一杯だった。
*変更点
・そのっちが原作より友人に餓えている
・そのっち診断の結果『善良』に分類されたので身内候補に登録
・原作より動き方が積極的。 四コマ・ゆゆゆいの良い雰囲気の時の暴走風味強め。
・自分は半分諦めている。 いた。