葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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次でよーやく話が進む……!


結-14

 

翌日、早朝。

 

着込んだ服は何処か婚姻の色の時に近しい、運動しやすい服を選んで。

共に向かった先は以前に聞かされていた場所――――の前に。

彼女達にとっての仲間達の現在の住処。

 

「……準備は出来てます?」

 

当然のように準備をして――それぞれの武器だけは荷物に隠しながら――立つ二人。

 

「おう!」

 

「はい……色(・)々(・)と(・)複雑ですが」

 

タマ先輩と杏さん。

一人は元気一杯にリュックサックを背負い。

もう一人は少し大きめの手鞄を持ち。

何方も伸縮がしやすそうな、一概に言ってしまうなら体操服に近い格好。

少なくとも、何かの儀式に参列するような衣装ではない。

 

「複雑~? …………ああ」

 

なにか思い当たるような節でもあったのか。

杏さんへと向けた目線の色が少しだけ変わり。

けれど、またすぐに戻ったのを感じた。

 

「そのちゃん?」

 

「ううん、何でも無い。 ……早くしなきゃ、手に入らなくなっちゃうよ~ってだけだもん」

 

「?」

 

ぶぅ、と口元を歪めて。

良く分からない言葉を口走る彼女へ、タマ先輩が苦笑いを浮かべていた。

 

「どっちも子供っぽいってことだよな!」

 

「いや良く分かりませんけど……先輩方はその服装で良いんです?」

 

「タマは慣れてる! あんずは色々ときつそーだったけど」

 

そうですか、聞きたくないです。

 

顔を真っ赤にして目線を伏せた人を出来る限り視界に捉えないようにしつつ。

今(・)日(・)は(・)ど(・)の(・)程(・)度(・)無(・)理(・)す(・)る(・)必(・)要(・)が(・)あ(・)り(・)そ(・)う(・)か(・)を、改めて概算する。

 

こういう時、相手をバーテックスに近い状態になっている生命体と定義するのなら。

殆ど必須の装備とも言える防具……勇者服。

肌を守り、死から遠ざける鎧にも親しい神の護り。

 

だが、現状。

『勇者服』という定義を、『大赦から受け取る、神樹サマの力が変化した装備』と仮定するなら。

今は……誰も所持出来ていないのが実情だ。

 

故に。

今日の対応の始まりの際には人数を絞り、それに近い防壁を嘆願。

そ(・)の(・)上(・)で(・)切り札か満開を発動し、一気に抑え込む必要性がある。

 

(……その為に、美森ちゃんには潔斎を頼んである。

 問題は抑え込んだ後……どう契約を結んでしまうか)

 

身を清め、特化している訳では無いが巫の能力を持ち合わせる少女と共同する。

今回の場合はそのちゃんの担当は俺になる必要性がある以上。

恐らく任せるのはせんちゃん……と俺の補助になる予定なんだが。

 

(ただ、二人の相性が結局不透明なままなんだよな……)

 

性格的な相性ではなく、能力的な相性。

時代が変わったことで選ばれる基準や好みも多少は変動していく。

特に同じ世代の勇者であるなら兎も角、別の世代と無理に合わせられるかどうかは未知数。

 

それを確かめる余裕もなく、また場所もなく。

可能であればせんちゃん単独を、無理なら俺の負担を幾らか引き受けて貰う形で考えてはいるが。

それを確かめるのは……結界を解除する直前になってしまうか。

 

「……天理さん?」

 

そうして考え込んでいれば。

声を掛けられていたことに、今更ながらに気がついた。

治そうと思っても中々治らない癖だなぁ、これ。

 

「あ、すいません。 何です?」

 

謝りつつも問い掛ければ。

少しだけ頬を膨らませているのが目に見える。

 

幾らかの混乱と、何となくの――――今までの見聞きしたことからして。

万が一を考えてしまえば、それにばかり気が引かれてしまう。

少しだけ距離を置こうと思っていたのだが逆効果か。

 

タマ先輩は面白そうで、少しだけ残念そうな顔を浮かべて。

そのちゃんは一切の曇りがない笑み……が逆に怖い。

 

「……他人行儀」

 

「仕方ないと思って貰えませんかね……って言うかこういうの嫌いですか」

 

「嫌です」

 

特に貴方相手だと、と態々に付け加えて。

そうですか、と流せた――――筈。 うん。

 

(……吊り橋効果みたいなもんだと思うんだけどなぁ)

 

勇者だったら、或いはそれに近い精神を持つのなら。

可能であれば、誰だって同じことをしたはずだ。

だからこそ、特別なことだとは思っていないし。

こうして特別視されるのはどうにも違和感を感じる。

 

……ただ。

こういう扱いを嫌がるというのなら、あの時と似た感じに戻したほうが良いのか。

 

「……で、てんり」

 

「あ、はい?」

 

妙な空気を感じ始める中。

とっとと出立しよう、と言いたくて仕方なかったが言えず。

どうしたものか、と少しだけ悩んでいたところに助け舟。

一も二もなくそれに飛び付けば、二人の意識も少しだけ前向きになった気がする。

……気の所為に過ぎない気もするが。

 

「千景とかはどうしてるんだ?」

 

「ああ……せんちゃん達なら先に公(・)園(・)前(・)に行ってる筈です」

 

今回の場合、相手が相手だから大赦には決して気付かれてはいけない。

故に大金を賭け、タクシーと電車を併用し。

可能な限り早急にこの場所まで連れる必要がある。

 

本来なら俺達が先んじて移動する必要がある事。

けれど、彼女達は自らその役割を買って出てくれた。

その代償は……まあ、俺の何日か、という自由時間ではあったが。

そんなに欲しがるものなのだろうか。

 

(……まあ、それより問題は場所だよな)

 

そして、今回の問題になる場所。

ある意味で因縁を持つ場所。

 

『因縁を感じるのは間違いないだろう?』

 

『縁は良くも悪くも生の間を付き纏いますからね』

 

そんな二柱の声が耳元に届く。

 

もう少しで崩壊するところだった場所。

 

あと一歩のところで勇者達に護られ、世界への影響を受けなかった場所。

……そして、ほんの少し前まで住んでいた地域の近く。

せんちゃんが封じられていた公園とも、地図上だけで言えば近くも感じてしまう場所。

 

大(・)橋(・)傍(・)の(・)公(・)園(・)奥(・)地(・)、(・)花(・)畑(・)の(・)付(・)近(・)一(・)帯(・)。

 

「……まあ、各々言いたいことがあるのは分かった」

 

隣に立つ今日の花嫁。

目前に立つ先輩と、王子と慕う年上の女性。

 

決して相性は悪くはない三人だからこそ――――二人でちゃんと話して欲しい。

その機会は、終わった後にこそ作り出そう。

 

「……全部終わった後で、話をしようか」

 

今は――――そんな言葉が手一杯で。

仕方ないなぁ、と肩を竦めるタマ先輩(びしょうじょ)こそが……妙に苛立った。

 

さっきまで助けて貰っていた筈なのに。

……他人事だと、思っているからなのだろうか。

良くは、わからないけれど。




・まだあんずんとそのっちはお互いのことを詳しく知らない。
・話をすれば多分即座に仲良くなると思われる。

・互いの気持ちがわかるからこそ。
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