葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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贈り物。


破-5

 

「……天理?」

「……どうした」

 

たー、とーと声がする。

クレーンゲームの前で粘り続ける乃木さん……園子ちゃん、或いは()()()()()

それを見て後何寸左です、とサポートしているらしい鷲尾さん。

 

そんな二人を遠巻きに見ながら。

ひそひそと銀と打ち合わせというか相談中。

 

「園子に何したんだ?」

「何もしてねえよ……!?」

 

あの時宣言した通り。

乃木さん、と呼んで反応を一切見せなくなった。

その時点で少しだけ冷や汗が出たが、言われたとおりに『園子……ちゃん?』と呼べば。

『ん~?』と普通に返事をしてくれる。

 

そんな光景を目の前で見せられた二人は、当然俺を疑った。

 

特に鷲尾さんは俺を目の敵のように睨みつけてきたが。

『友達同士なら普通でしょ~?』と彼女に言われて、しぶしぶ落ち着きを見せ。

そして銀は、自分が知らない園子ちゃんの姿を見て目をぱちぱちとした上で。

幻覚でも見ているのか、と目を擦ったり頬を引っ張ったりとバカにされてる気がした。

 

だからこそ、次の場所として提示した幾つかの中でゲームセンターに到着し。

二人が色々と見て回っている間を見て銀の手を引き、相談になったわけだが。

 

「にしては態度色々おかしくない?」

「それは俺自身が言いたいことなんだが?」

 

ちらりちらりと向ける張本人への視線。

気付いているのかいないのか、クレーンが外れ変な猫が機体内に落ち。

頭を抱えて『サンチョー!?』と叫んでいる一部始終を確認する。

……というか、あの猫がサンチョって名前だったんだな。

銀の家のサンチョは元気にしてるだろうか。

 

「あー……まあ、何となく想像が付くことは無くはないんだが」

「ほらあるんじゃん」

「一応聞け。 銀ならどう判断するか聞きたい」

 

どうせそうだと思ったんだよなー、とか言わないでくれ。

妙に冷たい視線で見られている理由は分からんが、心が抉られる。

 

唯でさえ周りからすれば女子三人に男子一人。

変な目でちらちらと見られつつ、先程の二人での話を簡潔に伝える。

 

家で何をしているのか、という話。

遊ぶとしても大体一人で、それを平然と熟していることへの尊敬。

時間があるなら俺を呼んで貰えれば遊ぶくらいはする、という約束。

その他諸々。

 

「……ん~」

 

そんな解答(いいわけ)に、腕を組んで目線を上に持ち上げた。

 

「アタシの意見を言うならだが」

「おう」

「多分、園子にとっての『友達』って相当大事なもんなんだろうなぁ、ってコト?」

「いや、それを言ったら俺達だって同じじゃないか?」

 

少なくとも、友達をどうでもいい存在とは思ったこともない。

家庭環境とかその他諸々で放課後に家に遊びに行く、とかそういう経験はないけど。

それでも休み時間とかはそれなりに話もするし勉強だって聞いたりするし。

忘れ物があれば貸し合ったりもするし……そういうもんじゃないのか?

 

「園子の環境考えてみろって。 アタシ達は”初めての友達”。 だな?」

「そうだな」

「で、天理は”初めての男の友達”で”似たような家格の家の相手”になるわけだが」

「待ってくれ。 俺はなんにも知らないんだから後者は待ってくれ」

 

乃木と並ぶとか言ったら何が起こるか分かんねえよ!?

確かに家もちょっとは広いけど広いだけだし!

お手伝いさんだって一人毎朝来てくれるくらいだぞ!?*1

 

「本当はどうにしろ、向こうはそう認めたってことだろ。 良かったな~?」

「そう言いながら肩を強く握るのはやめろ」

 

気付けば両手に豆が幾つも出来始めている銀の手。

それに気付かないフリをしながら、小さく溜息を吐いた。

 

クレーンを見ればまた取れずに財布と機体を交互に見始めている。

泥沼になってるし……取れるかちょっと見てみるか。

その前に。

 

「……そうだ、忘れる前に渡しとくわ」

「は、何を?」

「これ。 最近色々作るのに凝っててさ、銀に丁度良さそうかなって」

 

布で出来た巾着袋を彼女に渡す。

首を捻りながら、その口を緩め。

中の……一番上に丁度来ていたそれを指先で摘んで引っ張り出している。

 

「……紐?」

「組紐で作った髪留め……髪結び、って言ったほうが良いのか?」

 

今付けているのも、端の方が擦り切れ始めていた。

その辺りを鑑みて、身につけやすいものとして用意したのが組紐で作れる色々なもの。

今浄化してるのは似た材質ではあるが用途が別物なので、お試しには丁度いい。

 

「お前赤いやつばっかだし、赤を主体にして白い紐を少し入れた。

 気に入ったなら使ってくれ」

 

『友達になった祝い』として、二人にも残りの中から選んでもらえば……。

うん、まあお揃いって言えるだろ。

微動だにせずに固まってしまった銀をその場に置いて、クレーンゲームへと近付いていく。

 

「サンチョが取れない~!」

「そのっち、後少しよ! 最後は気合と根性!」

「それならわっしーがやってみてよ~!」

 

……まあ、この手のは慣れいるもんなぁ。

本気で取れない調整されてることもあるけど、ここのは大体なんとかなるようにしてるはず。

 

「ちょっと交代させてくれ、そのちゃん」

 

騒いでる二人を前に店員さんもオロオロしてる。

一言掛けて、その隙間を擦り抜けて内側を角度を変えて確認。

後は腕の強さと落下させるための角度……其処までの微調整か。

 

「え?」

「慣れてるんですか? ……えっと、葦原くん」

「天理のほうが個人的には良いなぁ。 苗字は苦手なんだ」

 

…………ううん。

 

「多分、やれば取れると思うけど。 やっていい?」

「おねがい!」

「お手並みを拝見させてもらいましょう……!」

 

何処の視点から言ってるんだい、鷲尾さん。

苦笑いを浮かべつつ、財布の中から硬貨を取り出した。

*1
三ノ輪の家は家政婦に該当する人を雇っていないのでそれより上。気付いていない。




*変更点
・抱いている感情の肥大化。
・銀の後髪を纏めているゴム?(リボン?)が組紐に変更
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