葦原天理は巫覡である 作:氷桜
見たいシーンとか募集してます。
幕間2-1
「疲れた~~~~……」
「お疲れ様」
多分言う側が逆じゃないかなぁ、と思う部分も多々あるが。
それでも……無理をさせたことには変わりなく。
二人で戻ってきた、そのちゃんの家。
二人並んでソファーに倒れ込んで、口々に慰労の言葉を口にする。
早朝からの戦い。
あの話が終わったのは結局お昼手前。
身体が動く面々でお昼と夕ご飯両方の材料を買い込んで。
疲労のままに昼寝を挟みながら、簡易なお祝いのような状態に雪崩込んでいた。
無理もない、たかしーを除いて肉体を持つ初代勇者達が全員揃い。
その中には子孫(に近い存在)だっているわけだし。
眠っていた期間を無視するなら近い年の同性達。
急激に仲良くなったり、或いは仲良くなるきっかけを作ったり。
身体が完調になるまで暫くは外に出られないとは言え、家の中で出来ることは幾らかある。
(その内また携帯端末とか……パソコンとか持ち込んだほうが良さそうだよなぁ)
腕で目を覆いながら、暗闇の中で今後のことを思う……思ってしまう。
杏さんとタマ先輩にはそれぞれ渡してはいるが、今日から入る二人の分の用意はない。
美森ちゃんの話を聞く限り、なんか写真の趣味も合うとか言ってたし……。
贈り物ばっかで機嫌取ってる気分になるから嫌になるんだが。
ただ、他に手を回せるのが俺くらいしかいないのも確か。
その内に、先生と三好さんは完全に此方側に引き込みたいけど……。
(……駄目だな、こんなことばっかに意識が向く)
はぁ、と溜め息を漏らし。
かさり、と服同士が触れるような音が気になって腕を離せば。
「うぉ!?」
「も~。 また何か考え事~?」
丁度俺に覆い被さるように、そのちゃんが直上にいる。
いや、いつの間に移動したんだ。
普段だったら絶対気付くのに。
「え、今どうやって……?」
譫言のように口から出た疑問。
彼女が時折見せる妙な特異性でなにかしたのか。
だが、返ってきたのはもっと単純な言葉。
「普通に~? てんくん、今日お疲れみたいだもん」
「俺自身のせい、かぁ……?」
……少なくとも銀に美森ちゃん、そしてそのちゃんにせんちゃん。
この四人に関しては身の回りで動かれれば大体気付くし声を掛け合う。
日常的に近くにいるようになって、互いの距離感が縮まったからなのか。
場合に応じては声すら必要としない事もあるくらいに感じ取り合っているのに。
「相変わらず、自分の事は後回しだよねぇ」
「そっくりそのまま言い返しても良い?」
「だ~め~」
両手を顔を挟むように。
只々見下ろす顔は、電灯を直視することになる俺からすれば影になる。
具体的にどんな顔をしているのかはわからないけれど……ちょっとずつ、近付いているのは分かる。
「相変わらずズルいなぁ、そのちゃんは」
「ズルくないってば~」
声はコロコロと回る普段通りで。
でも、一切逃げ場がない現状は――――いつかの銀やせんちゃんを思い出させる。
何を欲しているのか。
多分、その目を見れば嫌でも分かるのだと思う。
ただ……その色合いが反射で見えず。
「……でもさ」
「うん?」
「もっと、欲しい物があるって言って良い?」
だから、少しだけ反応が遅れた。
それだけの話。
「……欲しい物?」
「うん」
「今日の儀式だけじゃなくて?」
「……分かってるじゃん」
だから、彼女が求めているものを聞いてしまった。
それだけの話。
「……何を?」
「……本当はさ~」
じぃっと、見詰めている顔が降りてきて。
顔が電灯を覆い、漸くにその全貌を捉えることが出来た。
何処か冷たさを感じさせながらも、その目は蕩けている雰囲気。
その目を見て――――微かに怯えと、喜びとが湧き上がってしまうのは。
多分相当に……毒されているからなのだと思う。
「今日も、私のものだったわけでしょ?」
「一応、俺は俺だけのものなんだけどね……」
「……でも、
じっとりとした目線。
そうだね、と微かに動く唇を見られている気がして。
何を欲しているか、察してはしまうが――――彼女の側からは、と。
今は出来れば考えないことにしたい。
実際、儀式の時に気がついてしまったことの一つ。
全員を完全な平等にするのは難しくても、それに近いことはしようと思っているのに。
二人に対しては直接何かをして上げる、ということが出来ていない。
(……同じことを、か)
寧ろそうしてしまう方が不誠実な筈なのに。
それを受け入れてくれた彼女達に対しては全くの逆。
思い出したからこそ、直ぐにするべきことなのに。
彼女に先に求められてしまう……それに加えて。
正直腹を裂けば良いのか、と暴走してしまう方が楽な気さえしている。
「……
「カンガエテナイヨー」
「何その棒読み~」
少しだけ呼び名を変えただけで。
けれど、確かに変わってしまった関係性を知ってしまうようで。
……彼女を、少しだけ自分のものにしたようで。
暗い感情が沸かないと言えば嘘になる。
「……でもさ、そのちゃん」
「うん?」
「……寝るときと、今。
だから、質問になってさえいない問いを投げ。
ほんの少しだけ待ってみる。
見上げ/見下ろし。
その関係性が、少しでも緩むことを待ってみれば。
「う~~~ん……」
少しだけ悩んだ様子で――――そのちゃんは、こう囁いた。
「どっちも」
だって、悪い子だもん……今の私は。
そんな言葉を、付与しながら。
彼女の姿勢は、微動だにせず。