葦原天理は巫覡である 作:氷桜
筆者も一般参加側で紛れてるので会えた人がいるならよろしくお願いします。
放課後。
未だに学校の時間と取るか、自由の時間と取るか。
少なくとも俺は後者として考えているが。
前者として受け取る奴等は少なからず存在する。
『うえー、今日も走り込みなのかね?』
『基礎体力が大事ってのは分かるけど一ヶ月走る事しかやってないぞ……』
ぶつぶつと文句を言いながら教室を出ていく運動部員。
『次の締切って今週末だっけ?』
『そうそう……だけどまだ半分しか終わってないんだよね……』
肩を落としながら、残っている期限までを考え落ち込んでいる文化部員。
無論そんな生活を楽しんでいる側も存在しているし。
極小さい大会ではあるけれど、活躍する生徒もいたりいなかったり。
……色々な意味合いで、何処にでもあるんだろうと想像がつく学校終わり。
「よーし、今日もがんばろー!」
ただ、そんな中で少しだけ変わっていると言えば俺達が発足させた『勇者部』になるのだろうか。
この間のフリーマーケットで出た収益の幾らかを寄付へと回し、残りを活動の際の消耗品費へ変える。
大赦に半ば命じられ、手が回っているからか……部活自体はすんなりと成立したとしても。
そのための予算は無尽蔵に湧き出るものではないから、お互いにこのやり取りは有益だったと思う。
「友奈ちゃんったら……見てないの?」
「え~……なんだっけ?」
「今日は風部長が用事って連絡来てたと思うけど」
「え……ごめん東郷さん。 見てないや」
そんな部室へ向かわない理由。
それは単純に、部長が妹さん……樹ちゃんの体調不良があった関係で急遽活動を休むことにしたから。
正確に言えば依頼の内容を確認程度はするけれど、実際に動くのは明日以降になるだろうか。
それだけ、何だかんだで『部活』としては成立し始めている此処最近。
(……まあ、だから。 相談内容に返信が無いのも仕方ないんだけど)
視線を下に落とした先。
手元には未だに読んだ形跡さえ無い一通の連絡。
『
時間がある時に俺・美森ちゃん・そのちゃん・部長の四人で話をさせて下さい』
この四人に共通する内容は、と最初に浮かぶモノ。
事情を知っていなければ理解できず、逆に一部でも知っているのなら分かること。
せんちゃんを除外しているのは先代勇者としての建前を置くことが出来ないから。
逆に言うなら、別の建前を用意することで参加させる理由とするモノ。
(素人考えの浅知恵ではあったけど、色々と修正して貰えて助かった部分は大きい)
つい先日――――全員で集合した際に挙げた提案。
『次代の勇者候補……特に選ばれる可能性が極めて高い友人達に事前に話をしたい。
その上で、最低限の身構えと訓練を仕込んで欲しい』
これ自体は先代勇者……三人の頃にも行われ、そして選ばれた結果勇者となっている。
その枠が名家以外にも広がった以上、それなり以上に候補は選ばれているはず。
にも関わらず、美森ちゃんや風先輩と言ったそれなり以上に対応できる人員を配置した理由。
『最も選ばれる可能性が高い』という基準が分かっている以上。
此方側も
この加減を見誤るとまた一騒動になる、というのは元々俺も抱いていた危機感の一つだったが。
『……そうですね、”勇者”としての機能がどうなっているのか把握できるのなら。
私も幾らかは動きようがあります。
元々、上里の家にもし戻れたら……という仕込みはしてありましたから』
『私も基礎体力などを仕込む事は出来ると思う。
ただ。 それ以前に……意志の確認と、その……部長、だったか?
その人物を引き込む方策を考えるべきだろう』
『私が見る限り、変に何か計画を立てるよりは直接言ったほうが良いと思うわね』
『ああ……風先輩ならそうだよなぁ』
それぞれが、それぞれの出来ることを挙げていく。
ひなたさんの場合だったら、たかしーの言っていた通りに色々な手回しや知識。
つまりは後方支援的な役割を。
若葉さんの場合だったら、嘗ての勇者達と共に訓練を続けていた知識。
道場、というある種の修練に特化した場所で学んだ技術等と、その腕前其の物を。
そして風先輩に関しては……二人の言う通り、変に誤魔化すよりは直接のが良いと思った。
ただ、それ自体にも問題がないわけではない。
『一つ問題があるとすれば、あの人の立ち位置其の物ですかね……』
大赦側に属す……と言うよりは。
大赦の世話になる代わりの代償、と言い換えたほうがいいか。
無論、その事情を知った以上は迂闊に離れることも出来ない首輪として機能するのと同時。
対応することを前提とし、離れるのでないのなら立場を動かすことが出来る……という意味でもある。
『と、いいますと?』
『生活の面倒と……後は妹さん其の物ですか。
色々と報告を上げたりもしているようですが、俺達が突っ込むまでは抱えているしかなかったみたいで』
まあ、それもそうだろう。
俺は利用し倒しているし、そうしなければ何ら動くことが出来なかったと理解しているが。
あの組織に対し、何かをしようとするのなら。
それなり以上の成果や権力、或いは何らかの家に属することでの背景が必要となる。
要するに組織自体ではなく、家に付く……という意味合いではほぼ変化がないのも事実。
故にその選択肢を取る伝手も、覚悟も、意識さえもなかったと思うんだが――――。
『……どうするんですか?
『そんな事大声で言えませんって』
……故に。
どうするかは先輩に選んで貰う事になったのだが。
それを話す機会が未だに来ない。
「天理ー?」
「ん、おう?」
「ボーっとしてんなよ。 部室ちょっと寄ったら買い物して帰ろう、って」
携帯を手に溜め息を吐けば。
顔だけを器用に傾けて、目前に銀の顔が全て入ってちょっとだけ身体を引いた。
こんな行動……いや、小学校でもしてたんだろうなぁ。
「買い物? まだ材料あったろ」
「あー、違う違う」
「?」
前に言ってたけど出来なかったことがしたい、って言ってさ、と。
微かに引っ掛かりを見せながら、手で指したのは友奈の方。
「皆でご飯でもどう、だとさ」
「あー……」
……いや、まあ今更か。
「分かった、行くか」
「ん、任せた」
何かを言おうとして、けれどそれを諦めて。
椅子から立ち上がり、がたりと音を鳴らした背中。
じっ、と向けられていた気がする視線が幾つか。