葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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・犬吠埼姉妹イベントその2導入。


幕間2-10

 

軽い振動音。

手に感じる同様の衝撃。

身体の上に感じる、何らかの重み。

 

「ん、んん……?」

 

ゆっくりと、瞼を開き。

 

「…………」

 

目前に銀の顔。

身体の上に被せられるように置かれた布。

妙に固くなった体の節々。

 

(んー……?)

 

ぼんやりとした脳で周囲を見回せば、其処は自分の部屋ではなく。

昨晩、じゃれ合っていた居間の一室。

椅子の上に座り込んでいたことに気がついた。

 

(……あれ?)

 

そういえば、昨晩自室に戻った記憶がない。

 

じゃれ合い、話し合い。

童心に帰り(と言うには艶かしい感じが否めないが)、互いに密やかに話していただけ。

にしては時間が経過して――――何方ともなく眠ってしまった、というのが答えだろうか。

 

(まあ、良いか……?)

 

鳴った音は普段から設定している目覚まし。

その時間は早朝のランニングを加味してかなり早く。

今の季節であっても太陽が昇るかその手前くらい。

 

だからこそ、銀が眠ったままというのは納得できるところがあるけれど。

こうして寝顔を見ていると、普段とは違う感想を抱きそうになる。

 

小さく首を振り、自分を戒めつつ……鳴り続ける携帯端末の音を止め。

そのまま、右方向に伸ばした手で眠っている間に何かが届いたかどうかを確認していく。

 

一件目、せんちゃんから。

時間は……深夜帯に差し掛かる前か。

 

『仲良しね。 でも風邪引くわよ』

 

添付されていたのは一枚の写真。

俺達が共に眠る姿を映し出したもの。

 

送信先……が()()()()()になっているところにほんの少し悪意を感じる。

いや、悪意と言うよりは悪戯心だろうか。

少なくともそれでは済まない状態になっているのだが。

 

(うっわ……美森ちゃんにそのちゃんだけじゃないのか。

 タマ先輩達からも来てるよ)

 

『どういう事?』

『何してるの~?』

『風邪引くなよー?』

 

特に前者二人と……後は初代勇者組からちらほら来てる。

連絡手段渡したの早まったかなぁ、と少しだけ遠い目をしつつ。

絶対にせんちゃんに仕返ししてやろうと固く誓う。

 

(良し。 見なかったことにして次)

 

後で、と言うより数時間後か。

多分笑顔で詰問される気がするが今は考えないことにする。

深く考えると朝からちょっと恐れが湧き出てくるだろうし。

ついでに、目の前の眠る少女を起こすことにもなりかねない。

 

……いや、本来は起こしても許されるとは思うんだが。

 

素肌、特に手越しに感じる体温とか。

小さく聞こえる寝息とか。

普段は余り気にしない要素が、今日に限って妙に大きく聞こえるから。

そう言うことにして、自分の心にそっと蓋をし。

 

二件目……あれ、風先輩からか。

時間は本当についさっき、しかも送られた先は勇者部全員宛。

 

『ごめん、樹の風邪が感染ったみたいで今日は私も休むわ。

 部活の方は緊急性の高い奴以外は後回しでいいから、任せるわね』

 

(……これは)

 

ある意味恐れていたこと。

姉妹二人しかいないのに、その二人が何方も病に倒れ伏している、と考えるなら。

緊急性は大分高く見積もっていいと俺は判断する。

 

見る限り……まだ早朝だからか。

反応している様子は見られない。

端末片手に文章を打ち込み、同時に誰か住所を知っている人がいないか確認する。

 

こういう時だと……多分、副部長みたいに認識されてる彼女なら。

 

『了解しました。 それはそれとして心配なのでお見舞いには行きます。

 途中買い物していくので必要な物品があるなら早めにお願いします』

 

これでよし。

 

一限目には恐らく遅れていくことにはなるが……まあ、うん。

多分部長本人も怒りそうだが、それよりも身体の方が心配。

 

(どっちかが倒れた時に対応できない……ってのは大赦も困るだろうしな)

 

特に先輩が倒れた場合、向こうの組織側からすると『派遣する駒』が一枚減る事になる。

そうなったらそうなったで……多分、樹ちゃんとかに手を回すつもりなんだろうが。

此処でいっそ『ある程度親しい』面を見せて牽制するのも悪くはない。

 

……しかし。

 

こういう”小細工”ばかりに長けてしまうのは色々とどうなんだろうな。

嘗ての巫女は、この辺りの精神的な悩みをどう解決したのだろうか。

機会があれば聞いてみることにするとして。

 

(お、二人も起きてきたか)

 

『天理君、住所分かる?』

『ちょっと明るくなったらお店見てくるね~』

『無理しなくてもいいぞ。 特にそのちゃん』

 

この場合の店……って言うと多分24時間営業の小売店か。

確か駅前に一軒あった記憶はあるが、彼処に風邪薬とか売ってただろうか。

 

『分からないから教えてくれると助かる →美森ちゃん』

『そんなことだと思った。 朝早く出るわよ』

 

画面の前で溜め息を吐いているのが有り有りと想像付く。

 

……多分、合流した後で俺と銀は酷いことになるんだろうなぁ。

その時まで考えたくないので再度思考の端に追い遣って。

 

(……そうなると、走るのは帰宅後にするか)

 

あの優等生は、多分学校に遅れることを許容しないだろう。

いや場合によっては可能かもしれないけど今の俺の話を聞いてくれるか次第。

 

……どうだろう。 可能性が多少残る程度だとしか思えない。

 

それもこれも全部せんちゃんのせいだ、と言いたくもなるのだが。

迂闊に口に出せば多分複数人に笑顔で酷い目に合わされる。

 

……やるなら帰宅した後、せんちゃんの部屋だな。 良し。

 

(取り敢えず持っていくモノを先に決めておこう。

 スポーツドリンク系と薬……後缶詰有ったよな。

 学校帰りに消化が良いもの買ってもう一度寄るとして)

 

こてん、と首が垂れ落ちて。

俺に寄り掛かりながら眠る少女を前に。

腕だけを動かし、あちこちに連絡を飛ばし始める姿が一つ。




・尚初代勇者の中だと結構な騒ぎになってたりなってなかったりします。
・こういうイベント自体欠けてましたし、そもそも享受する余裕もなかった時代なので。

幕間-2で目立たせたい候補@組選別

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