葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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アンケートは一旦今日いっぱいで明日からは別のに変更予定です。


幕間2-12

 

誰かに抱き上げられたような気がした。

誰かに支えられていたような気がした。

何かが、身体の奥底へと染み入るような気がした。

 

――――誰かが、隣にいてくれる気がした。

 

「…………ん?」

 

気付けば、頭痛は大分引いている。

頭に感じていた違和感や眩暈も大分無くなり。

視界もボヤけることはなく、両眼で視界をきちんと確認できている。

 

だからこそ。

 

「……此処、何処?」

 

普段見慣れた、少しだけくすんだ天井ではなく。

白い天井、周囲を囲む白い布。

自分の右手に繋がった、立てられた液体と管。

 

そして、何より……。

 

「ふーみん先輩、起きた~?」

 

「アンタ……園子、何してんの?」

 

枕元。

普段座り慣れたような丸椅子に座って、何かしらのメモを取っている見慣れた後輩。

けれど、この知らない場所だと……識っている相手がいることのほうが違和感で。

 

そして……倒れ込む前。

聞こえた気がした誰かの声とは違うことに、ほんの少しだけ違和感と……残念さが有った気がする。

 

「何……っていうか、ふーみん先輩に付き添ってるだけだよ?」

 

「いや、だから何処なのよ此処は」

 

何となく分かっている気はするけれど。

同じ部屋にアタシと園子の二人しかいない事に、やはり抱くのは恐怖が先。

……主に、所持金的な問題で。

 

「びょーいん。 倒れちゃったからてんくんが慌てて救急車呼んでね」

 

「……え、救急車?」

 

「うん。 えーっと……妹さん? の方は大分体温下がってたから一緒には乗せなかったみたいだけど~」

 

そう言う問題じゃない。

 

……まあ、倒れてしまったから助けてくれた、というのは素直に有り難いと思う。

それだけアタシは自分の身体の状態を理解できていなかった、ということだし。

こうして眠っていたことで辛かった大半の症状が収まったという自覚もある。

それだけとして。

 

「……てんくん、ってことは葦原よね? 何してるの彼奴」

 

「妹さんの面倒見てるよ~? わっしーと一緒に」

 

なんで、と思ったのは最初の疑問。

けれど……そういえば顔を見知っているのはあの二人だけか、とすぐに思い直す。

 

あのフリーマーケットの時に紹介したのは二人だけで。

その後に来た……のは友奈たちだったか、園子たちだったか。

どっちにしても、紹介する事無くその日を終えたことだけは覚えている。

 

「え、ええ……?」

 

「だいじょーぶだよ? 少なくともわっしーがいるから()()()

 

アタシの顔が引き攣ったのをどう解釈したのだろうか。

なんというか……葦原は同学年のアホらしい話をしている男子とは別の目で見ているのは確か。

とは言っても、同性では絶対にないし……。

 

うん、確かに樹と二人っきりにするのはちょっと不安だったのはあるわね。

でも、東郷と一緒なら絶対に大丈夫……?

アタシが見てる限り、葦原との関係性は東郷のほうが普段は下……というか自分から抑えてる気がするんだけど。

 

「……それ、聞いて大丈夫なこと?」

 

「え、うん。 基本てんくん、わっしー……もそうだけど、私達が本気で怒ったら絶対に従うし。

 そもそも、女の子を泣かせるの嫌いみたいだからさ~」

 

別の理由で泣かせてばっかな気がするけど~……と。

メモ帳を見て溜め息を漏らす姿を見て、普段とはまた別のモノを見ている気がする。

学校や部活での姿とは違う、日常風景としての……親しい者達だけが見られる姿。

 

……ずっと昔なら、アタシにもこんな姿は有ったのかな。

 

そんな風にさえ思えてしまう、ちょっとだけ羨ましい。

同性から見ても可愛らしく見えてしまう横顔を含んでいた。

 

「……っと、そうじゃないそうじゃない。

 ねえ、こんな高そうな部屋……アタシだとちょーっと辛いんだけど?」

 

()()()()()()()()()、と言いそうになってしまう。

 

……乃木。

 

その名字を持っている相手がどういう存在なのか、どんな馬鹿でも知っていると思う。

けれど――――そんなお嬢様が家を離れ、こんな場所に来ている理由も。

一人暮らしをしている理由も、アタシ達は誰も何も知らない。

 

「あ、それは大丈夫。

 此方が勝手に呼んだんだから、お金は此方で片付けとく……っててんくんが」

 

「は? 何言ってんのあの馬鹿」

 

「……()()()()しちゃってるからねえ、私達も」

 

するものじゃないよね~と朗らかに。

けれど、目だけは笑っていない。

仕方がない、と割り切っている具合でもなく。

 

……何? 自分を責めてるの? 園子が?

 

「……慣れてるの?」

 

そんな混乱と。

アタシ自身、少しだけ油断が有ったのだと思う。

気付けば――――普段は聞かないようなことを聞いていた。

 

お互いにある程度間を空けているような違和感。

その間隔を気にしないように動き回るのは葦原と友奈くらい。

 

……よく考えると。

二年生の半分くらいは……ほんの少しだけ、謎が残っているのよね。

 

「うん――――ちょっとね」

 

「……身体が弱い、とかじゃないのよね?

 ほら、銀の足とか」

 

「ああうん、関係はしてるけど別だよ。 ふーみん先輩」

 

気付けば身体を起こしながら。

互いに見合って、知恵熱にも近いような頭への熱を感じながら。

アタシは……一歩踏み出そうとしていた気がする。

 

両親がいなくなってしまった、あの出来事。

あれについて、何か僅かでも知っているのではないか。

そんな思い込みを、鈍器のように振り翳しながら。

 

「それって」

 

「ん~……別に教えても良いんだけど……多分、今じゃないほうが良いよね?」

 

体調もあるし。

……てんくんから連絡してるはずだし、と。

 

そんな言葉を前にして押し黙り。

そんなアタシを見て、園子は普段通りの笑顔を漸く浮かべた気がした。

 

「ま。 もうちょっと休んで……薬入れ終わったら帰れるから~。

 私と一緒に帰ろ? てんくん達も学校休んじゃったし」

 

え。

――――後輩に、学校を休ませた?

 

「……あ、気にしないでいいからね~?」

 

いや、そりゃ無理よ無理。

……どうやって謝ったもんかしら、これ。

後。 連絡し忘れていた事も、連絡しなきゃ……か。

活躍させたいキャラ上位二名

  • 若葉様
  • ひなた様
  • ぐんちゃん
  • あんずん
  • タマ先輩
  • たかしー
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