葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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幕間2-13

 

「……いや、焦った焦った」

 

「単なる熱で良かったわね」

 

「体調不良、って時点で良かった訳じゃないけどさ」

 

はぁ、と溜め息を漏らす。

開いた扉を介して、寝転んだ少女と合わせて()()

同乗していったそのちゃんからの連絡を受け、安心したのは間違いない。

 

「…………えっと、その。 先輩方?」

 

「其処まで他人行儀じゃなくていいよ……特に今は辛いだろうし」

 

「そういう、訳にも」

 

心の底から申し訳無さそうな表情を浮かべている少女。

確か……樹ちゃん、だったか。

良く風先輩が名前を出す、可愛がっているはずの妹さん。

 

一度だけ俺達と顔を合わせたことのある後輩の一人。

そして勇者としての適性を持ち合わせる少女の一人。

 

(とは言え……多分先輩はまだ言ってないんだろうけれど)

 

そうでもなければ、彼処まで内側に抱え続けていなかっただろうし。

俺達の提案にも、もう少し乗り気な反応を見せていてくれただろう。

……そう思ってしまうのは、期待という考えが大部分を占めているからか。

 

何にしろ、今この場で告げる……或いは問うような話ではない。

 

「学校は……」

 

「緊急の用件で休む、って連絡してある。

 ……お姉ちゃんが倒れたんだから、今は余り気にしないで良いんだよ? ほんとに」

 

「……っていうのも難しいとは思うけれど、ね」

 

こほんこほんと繰り返される咳。

背中を支えるか少しだけ悩み、けれど固辞されてしまった美森ちゃん。

少しだけ悲しそうに見えたのは……多分気の所為だったと信じたい。

 

「美森ちゃん。 皆から連絡は?」

 

「そのっちからの連絡以降は特に、かな。

 ああ、千景さんとかは心配半分と怒り半分みたいだからね?」

 

「其処はもう諦めてる……」

 

ちょっとその辺が怖くて携帯端末を開いていない。

 

一度用件を電話越しで伝えたときも、笑っているようで笑っていない声色だった。

無論、現状の重大さであったり必要性は理解している筈。

それはそれとして、自分が置いていかれたのが多分沸点に触れたのだと予想してる。

 

(……昨日、というか今朝から続いてだから多分余計に……だよな)

 

そのちゃんに美森ちゃんはその辺を何とか飲み込んでくれた。

というか飲み込まさせた。

 

どんどんと俺の扱いの雑さが増しているのは分かっているが、最近色々有りすぎる。

このあたりを含め、先輩が退院した後で全部整理できれば良いんだけど。

出来るのかなぁ……。

 

「……怒る、ですか?」

 

「ああ、天理君が悪いだけよ?」

 

「そうハッキリ言い切られるとそれはそれで辛いんだけど?」

 

なんでそうなるのだろう、と首を傾げている。

その視線は俺と美森ちゃんの間を何度も行き来していた。

 

……この間、あの場所で彼女は俺達の状態を見たはずだ。

だからこそ、どういう関係なのかはそれなりに想定していてもおかしくはない。

今の反応は……そう言うことなのだろう、と何となくに理解しつつ。

ただ認められるはずもない関係を口にせず、気付かない振りをして押し流す。

 

同じように美森ちゃんの顔を覗き込めば。

視線に気付いた上で押し黙っている、俺と同じような状況のようで。

口元だけを妖艶に笑みへと変えて微笑む姿に、一瞬だけ息を呑む。

 

このまま飲まれてはいけない、と慌てて深呼吸を重ねる俺へ。

何をしているのだろう、と再度首を傾げるのは当然でも有り。

そしてその理由を説明できない。

 

……道化か何かになったような気分を味わっていた。

 

「……美森ちゃん」

 

全面的に降伏する他無いのは結局変わらない。

そもそも、彼女達に対して何かしら優位に立とうと思ったことも無い訳だが。

そう幾ら口で言っても納得してくれないのはいつもと同じ。

 

「なぁに?」

 

「俺が全面的に悪かったのでお許しください」

 

なので、まあ。

一種の儀式と言うかお決まりと言うか。

物理的な手段を介さない、精神的な意味での吊し上げ。

 

此処に他の『彼女』がいればその強度・強引さは増していたと思うけれど。

現状此処には何も知らない年下一人、しかも病気。

姉が帰宅するまでの留守居、という名目で留まらせて貰っているのも有り。

家主……家族に迷惑を掛ける訳にもいかないのは分かって貰えると思うのだが。

 

「……仕方ないわね」

 

「ははー」

 

仰々しい言い方。

仰々しい態度。

そうやって、目に見えるようにすることで精神的な重圧は幾分か解放される。

 

くすり、と小さく微笑む声色。

ほぼ同時に俺と二人でそちらを見れば、微かに笑う顔が浮かんでいる。

そんなに面白かっただろうか。

 

(……ま、いいか)

 

深く考えても深みにハマるだけ、と俺は判断した。

だからこそ、少しでも身になりそうな行動へと移そうと提案する。

 

「で、美森ちゃんや」

 

「うん?」

 

「樹ちゃんも少しは元気出てきたみたいだし、消化に良いものでも用意しない?」

 

無論、台所を貸してもらえれば……と言う前提だけど。

 

そう思いながらベッドの上の少女を再度見れば。

両手を此方に向けて首を振りながら。

くぅ、とお腹の辺りから音が鳴っている……よくある、典型的な状態に陥っていた。

 

「食べなきゃ良くならないよ?」

 

「で、でも……ご迷惑をお掛けする訳にも」

 

「此方はしたいことしてるんだから。

 ……寧ろ、俺達が迷惑かけてる側だと思うよ」

 

いや、これは本当に。

勝手に家に乗り込んでそのまま居座ってる、と取られたらどうなるか。

考えるだけで恐ろしいからこそ、俺一人で残るのだけは絶対に食い止めたんだし。

 

「いえいえ……!」

 

「いやいや……」

 

そんな言い合いは、ほんの数分。

もう一度、樹ちゃんのお腹が鳴るまで続き。

 

顔を真っ赤にした彼女が、布団を被ってしまうまで……やはり後数分。

活躍させたいキャラ上位二名

  • 若葉様
  • ひなた様
  • ぐんちゃん
  • あんずん
  • タマ先輩
  • たかしー
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