葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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破-7

 

夕立、土砂降り、豪雨。

そのどれもが正しそうな、空からの涙。

それらが物理的に威力を持っているのだから洒落にならない。

 

『最近は特に降るようになりましたねえ』

「そういうものなの?」

『ええ。 此処数十年で……といったところですが』

 

ぱしゃりぱしゃりと靴が水を弾く。

右手の傘も、水滴が垂れ落ちすぎて若干重くさえ感じる。

 

小学校に通うための制服の内側に、人形が()()

誰か知らない相手に見られれば奇妙……或いは人形趣味にも思われるような光景。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と言い放ったのはヒメとワカだった。

 

曰く、

『結界もある程度張れるようになった』

『いつかはあの場所から移動し、天理は常に我等と共に動くと言うつもりだった』

()()()()()()()()()()。 更に叩き込むべきことも多い』と。

 

この二体――――二人に、気付けば全面的な信用を寄せていたからか。

怪しさを覚えなかったかと言えば嘘になるが、時間がないという部分を重視して。

自宅の俺の部屋の中に箱をもう一つ用意し、其処に二体を安置するようになった。

将来的には籠なりを用意して、不自然ではない形で同行して貰おうとは思っているが。

 

『それで天理。 本日はどのような内容で、こんな雨の日に?』

「あー……というか、雨だから、に近いんだろうな」

『と言うと?』

「何しているかは知らないようにしてるけど、何かしらの運動を含む活動だろ?」

 

そのようですね、とかくりと人形の首が傾く。

ワカなら此処で幾らか騒ぎ出すだろうから、相手がヒメでやりやすい。

 

「で、室内では今日はできそうにないから中止……らしいんだけど」

『はい』

 

文面を読んで、もう一通届いていた内容を見て。

本気でどうするか悩んだのは俺と二人だけの内緒の話だ。

 

「時間が出来ちゃったし、遊びにこないかってお誘いが来た」

『……乗ったんですか?』

「乃木家に迂闊にノーって言えるか?」

 

迎え行かせるから~とあったがそれは丁寧にお断りした。

家の前に見たこともない車が急にやってきたら多分相当問い詰められる。

それになぁ……。

 

銀:『たすけて。 いややっぱなし、絶対来るな』

 

そんな文面で入った良く分からない内容を見てしまうと。

どうすればいいんだ、と悩みつつも行く方向に舵を切ってしまう。

 

「まあ何もなければすぐ帰ればいいだろ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()し。」

 

確か細かく言われなくなったの……五月入るかどうかくらいだったか?

まあお陰で色々と夜に学ぶべきことを学べて助かっている反面。

これ絶対不良だよなぁ、と思う部分もあるので普段以上に自分を制御しているのだが。

 

『……天理よ』

「はい?」

『周囲の違和感には気を配るのですよ?』

「…………はい?」

 

そんな良く分からないアドバイスを受けつつ。

普段は決して通らない、家というよりは公共の建物くらいの大きさを持つ地域に足を向ける。

 

この辺りになると商店街の品物一つとっても高いものばかりで。

値段を見るだけで『先ず無理だな……』と理解してしまうもの。

趣味の一つである、煎茶や抹茶の値段。

或いは作成物の値段を覗き見て、脳内で簡単にメモを取りながら指示された場所へ向かえば。

 

「遅いです!」

 

大きな門の入り口。

傘を差した、黒髪の少女が立ったまま此方を見つめている。

 

「え?」

「え、ではなく!」

「いやいや、そうなるでしょ!? 何してるの鷲尾さん!?」

 

此処、指示されたとおりならそのちゃんの家だよな……?

門の柱を見れば『乃木』とあるので、間違いではなさそうだが。

何故か守衛……でいいんだっけ? 門番の人も今はいないし。

態々雨の日に何をしているんだ……。

 

「天理くんを待っていたんですけど……?」

「それにしては待つ位置おかしくない? 中で何かあったりした?」

「……そのっちと将棋で負けた、というのはあります」

 

くっ、と悔しがられても。

その勝負で友人に外に出ていろ、とは普通言わないんじゃないかなぁ。

 

「それで?」

「き…………着ぐるみを着せられそうになって……」

 

……それが嫌で、逃げてきた?

 

凄い恥ずかしそうな顔をして、目を伏せる。

この距離でも赤い顔の一部が見えて。

傘で防ぎきれなかった雨で濡れ、肩の辺りが透け始めている状態から目を逸らす。

 

ってことは銀のあの連絡もそれに連なる何かの結果だろうか。

一気にアホらしくなってきた。

 

「着包み。」

「ひよこの着包みです」

「ひよこ。」

 

なんでそんなもん持ってるんだ。

……まあ、細かいこと考えるだけ無駄か。

 

「取り敢えず……。

 鷲尾さん、身体濡れてるしそれ以上冷やすと良くない。

 家の人か誰かに言って乾かしてもらったほうが良いと思う」

 

手持ちの傘を閉じ、同じ門の前……軒下前に滑り込む。

出来るだけ目を逸らしながらの指摘なのは……まあ男の情け的な奴。

 

「え?」

「風邪とかの大問題になるよりは良いでしょ」

 

多分、此処まで逃げてきてる時点でその辺りまで頭が回ってない。

そんなに嫌だったか着包み罰ゲーム。

 

「俺からもそのちゃんに言ってみるし。

 今の鷲尾さんの身体、自分だけのものじゃ無いんだろ?」

 

ぼん、っと顔が赤くなったのは分かったが。

…………今、何か間違った指摘しただろうか。




※変更点
・「お役目」(=バーテックス戦開始)は六年春ではあるがそれまでは鍛錬。
・候補、から正式に任命されるのが夏と想定。以降は知識や独自訓練・連携訓練を重視している。
・大凡月1前後のペースで四人で集まって遊んでいる状態。

・乃木家、及び『勇者』の立ち位置も有り、『葦原』家の嫡男に勇者のことを伝える許可交渉中。

ヒメとワカの人形イメージは雛人形のお内裏様とお雛様です。
その表情がコロコロ変わる感じ。
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