葦原天理は巫覡である 作:氷桜
銀「前から変わってないぞ」
その後の部活の活動、という大枠で一つ変化が起こった。
『え、えっと……宜しくお願いします』
『ってー訳で……悪いけど面倒色々掛けるかもしれないけど』
今回のような状態になることを防ぐ為、という名目で。
恐らく裏では勇者候補を前倒しで顔合わせさせる為に。
小学校が終わった後、樹ちゃんが勇者部にやってくるようになった。
とは言え『中学校の部活』という枠組みである以上、お客さんという扱いも強く。
主に銀や美森ちゃんと言った内側の人員と共に過ごすことが多い。
それを見て、風先輩は何とも言えない顔を時々見せるようにはなったけれど。
具体的に『何』とまではまだ言わずに。
『……来月くらいまで、考えさせてくれない?』
たまたま俺と二人きりでの作業が起こった際に、そんな言伝をしながらの日常。
だからこそ、普段通りの――――少しだけ変わった生活が再開した。
無論、元通りになったわけではない。
『この依頼、友奈ちゃん一人だと難しいかしら』
『うーん……。 じゃあ……東郷さん! 手伝ってくれる?』
恐らく親しい相手でもなければ気付かない程度に、友奈が距離を取っている。
もう少し正しく言うのなら、二人きりになることを
『じゃあそっちは二人に任せるわ。 だったらー……葦原、力仕事』
『へーい』
その代わり、というのでもないのだろうが。
風先輩と樹ちゃん……犬吠埼姉妹との距離感がほんの少し縮まった気がしている。
元々似た部分を抱えている相手だからなのか。
それとも先日の病院絡みが原因なのか。
理由は分からないけれど、扱いが一歩内側……見せる表情が増えた、とでも言えばいいか。
ぞんざいとまでは言わないが、親しい相手に取る態度に見えるのは俺の勘違いか。
何にしろ、あの数日の変動はこの部活の内部事情に影響を与えたのも間違いないらしい。
(……ま、だから何だって話なんだけど)
関係性がほんの少し変わったとして。
一番大事な、大元の変動が見えないのでは何の意味もない。
それは友奈に対しても、風先輩に対しても同じ。
無論――――他の少女達に対しても同じ。
そんな中で……明確に週末の一日を費やす、と決めている相手。
翌日は翌日で買い物に付き合うことが決まっているけれど、今日は今日でとても大事。
早朝から動き出し、電車での移動を経た上でそれなりに慣れてきた入口へと足を滑り込ませる。
受付で普段通りの挨拶を交わし、生暖かいような目で見られている視線を背負い。
普段会うことも難しい少女のところへ、少しばかり足早に向かえば。
「……あ」
向こうも当然のように待っていたのか、普段のテーブルに腰掛け。
何らかの文庫本にも似た大きさ・厚さを持った何かに栞を挟み込みながら。
足音で気付いたように、柔らかい笑みを浮かべて此方を見つめている子が一人。
「亜耶」
「お待ちしていました……天理様」
恐らく、互いを呼び合う言い方が変わったのもあるのだろう。
俺達くらいの年頃で、こうして……何だ、
それも片側は巫女であるのなら、普段からして見られるものではないのは確実。
そして、巫女であるのなら世界の真実を知る側の人員で。
だからこそ、他に接する機会自体も制限されているのだから余計に。
こうして男女で出会えるのも……偶然か、言い換えるなら神樹サマの導きか。
そんな風に思われているんだろうなぁ、とやっと何とか飲み込み始めた。
「それは?」
「買ってきて頂きました……新しい文庫本です」
表紙に掛けられたブックカバー。
何がしかの花が彩られた、布……或いはそれに親しいモノで作られた物品。
何処か亜耶が持つには高価だ、とも感じてしまうような。
普段彼女が持つには相応しくない――――そう感じてしまうのは。
俺だけが感じる違和感なのだろうか。
「そのカバーも?」
故に、当然のように聞いてみた。
互いに相向かいに座り、話し始める。
いつ、と日にちが決まっている訳では無いが……それでもそれなりに会っている間柄。
だからこそ、いつものようにちくちくと刺さる背後からの視線と。
ほんの少し混じる羨ましさ、或いは嫉妬に近い感情と。
微笑ましさ、何かを懐かしむ感情。
それらが飛び交うのは、その当人がどういった付き合いをしてきたかによって分かれるのだろう。
「これは……自分で作ってみました」
少しだけはにかみながら。
目線を伏せながら、見上げるように。
少女は小さく囁き、言葉にする。
「亜耶が?」
「不思議でしょうか?」
ちょっとだけ首を傾げる。
その動きが何処か小動物のようにも感じて。
心の奥底で少しだけ情動が動くのを感じながらも……何と答えていいか戸惑いが浮かぶ。
「……あー、いや。 不思議、っていうか……何というかな。
そういう物品持たない印象があったから」
「ああ」
慌てつつも、心の戸惑いを言葉にする。
けれど、それだけで理解してくれたのだろう――――頷きと共に。
それは……明らかに、何かが少しだけズレているような気もしながら。
「元は……私も、必要としていませんでしたね」
「やっぱり?」
「はい。 でも」
何かを頂くこと。
自分で用意するのではなく、何かを貰うこと。
それ自体まで否定していたのでは――――
片手を唇に触れさせながら。
嘗ての、あの世界での月夜を思い起こさせながら。
二人だけに届く、吐息に混ぜ込むような音量の声が耳に届きながら。
「……慣れようと思って」
そういった欲望も、人として生きていくのなら必要になるだろうから。
そんな言葉を囁いて。
唇に触れていた片手を、俺の手へと伸ばして一度握り。
小さく、けれど
「高嶋様が、そのように」
「……たかしー」
何してるんだろう、と少し遠い目を浮かべつつ。
慣れるまで時間が掛かりそうです、と亜耶も零しながら。
それでも、以前と同じように。
――――幾つかの論争と。
大赦の中での動きの差異と。
次にやってくる約束と。
……少女に向けた、贈り物と。
そんな、幾つも抱えた……唯の日常会話を、語り始めた。
互いの表情に、笑みを浮かべながら。
美森「大赦勤めの方々から変な目で見られるのだけど」
園子「……わっしー、色々と大人っぽいのもあるしね~」
活躍させたいキャラ上位二名
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若葉様
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ひなた様
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ぐんちゃん
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あんずん
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タマ先輩
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たかしー