葦原天理は巫覡である 作:氷桜
若葉「と言う割には台所仕事楽しんでやってないか?」
話し始めれば互いに終わりが見えないのが俺達の間柄。
特にその傾向は昔よりも強く、会う機会が他者よりも少ないのもある。
何より、
「……へえ、今でも先生が中で色々教えてるんだ」
「教員免許を取られる大赦勤めの方が中々増えないようですから」
携帯端末、手紙、電話。
普段から利用する其れ等を、亜耶は所持していない……いや、
こればかりは巫女の持つ役割と、重要性を強く鑑みた影響だとは思うのだが。
普通に職員は保持するのに、と思わなくはない部分もある。
「増やすように働きかける……とは言ってたんだけどな」
「難しい、というのは私にも分かりますよ?」
何より、同じ巫女であっても。
上里に属する巫女の統め役等は当たり前に持ち歩く。
だからこそ……個人的な感想にはなってしまうのだが。
派閥に属することで得られる特典の一つ……のように形骸化しているのではないか。
どうしても穿ってみてしまう目線は、そんな悪い方向へと思考を傾ける。
「唯でさえ忙しそうですし……」
「ああ、色々頼んじゃったりもあるしなぁ……」
「ああいえ、天理様のお願いとかだけではなくて」
「ん?」
ポツリと漏れた言葉。
色々と裏ルートで頼んでしまっている、という事情も有り。
主に直接接する機会が多い亜耶の言葉に反省の感情を浮かべながら答えれば。
その理由が俺だけではない、という回答に首を捻る。
「……その。
「あー…………あー? え、いや。
そんな俺の疑問に反応し。
周囲の……昼時に合わせて増えてきた職員に伏せるように。
更に小声になり、顔を近付けた言葉。
そして同時に、その顔色に色味が強いことを理解して。
頬を薄紅色に染めている意味を理解して。
以前からそういう関係なのだろう、と思っていた内容が進行した可能性へと至る。
(……相手は、まぁ……あの人、だよなぁ?)
無論、それを冷やかしたり出来るような相手の訳はなく。
寧ろ応援して然るべき相手なんだろうなぁ、と
……少なくとも、俺なんかよりはよっぽど祝福されるべきだろうし。
「え、っと。 そういうわけ……で、忙しい部分もあるみたいで」
「成る程。 それ以上は深く聞かないことにする」
そうですよね。
そうだよね。
二人の意見の一致が見られたところで、一旦話を中断し。
周りの邪魔にならないように、と昼食を優先して取ることにする。
「で、何にする?」
「……うどんで」
食券機の前。
後ろ……ではなく隣に並ぶ亜耶に問い掛ければ。
此処最近、いつもと同じ名前を挙げる。
だろうね、と苦笑をしながらにボタンを押せば。
隣でむくれるような声色が届き、更に内心で微笑んでしまう。
以前に聞いた話だが。
巫女達の宿舎が別にある関係上、本来は朝昼夜どれも宿舎内で取れるようになってはいるらしい。
ただ、その内容はやはり巫女に出すものとあってか粗食に近く。
以前は気にしていなかったらしいけれど……今だと少しだけ気になる、とか何とか。
(ま、育ち盛りにそれだとなぁ)
一応自分で用意することも出来るらしいので、普段はそうしているというのが亜耶の言。
つまりは自分で料理の勉強をし始めている、という意味合いであり。
逆に言うならばそれは『味付けが気に入らないなら自分で作れ』というお達しという事。
ただ――――それでも自分で作ろうとしないのはどうなんだろう、と思ってしまう自炊派閥の俺。
「天理様だってうどんじゃないですか……」
「いやぁ、上に乗ってるのが違うもん……大赦の奴……」
店屋物と比べる、という時点で何かが間違ってる気がするが。
基本的に此処は現在の四国を取り纏める中心的な立ち位置にある。
つまりは相当に優秀な人物でもなければ勤まらない場所であり。
同時に、それ相応に仕事の重責や量が山積みな場所であり。
昼夜問わずに行われる役割さえもある場所、という組織像となっている。
だからか、食事に関しては物凄い手が込んでいる。
特にうどんや骨付鳥に関しては気合が入りすぎているんじゃないかと思うくらいに凄い。
……まあ、俺達は大概うどんで済ませるのだが。
「他のお店を良く知らないのですが……そんなに違うのですか?」
「店独自の個性もあるから一概に言い切れないけど……。
少なくとも俺が自作したのとは比べ物にならないのは事実かなぁ」
主にコシとか、つゆの味付けとか。
何をどうしてるのか全く分からないし、見せてもくれないが。
「……うどんまで自分で?」
「ちょっと手を出してみたくてね……。
俺が知る限りだと知り合いの何人かも色々やってるよ」
そのちゃんはつゆの味に凝ってた。
かえし……だったか、アレを念入りに取っては継ぎ足してたはず。
何処の店の真似なんだ、と少しだけ恐れた記憶が思い起こされる。
美森ちゃんは
何をどう打ったのかは不明だが、不思議と喉に流し込めていた。
ちゃんと噛んでね、と苦笑交じりに言っていたが。
銀とせんちゃんは……俺が見ている前でだが。
上モノ、というか揚げ物とかのトッピングの多様さに手を出していた。
まあそれはそれで別のに応用できるから良いんだが、何かズレている気もする。
「そうですかー」
「……何、その物申したげな口調」
食券を手渡し、並びながら。
少しだけ機嫌を悪くしたような口調で言葉を出し。
その理由……真意に気付かないままに口に出し。
「……
何が、とも。
何を、とも。
それ以上には何も言わなかったけれど。
たったそれだけの言葉に。
酷く重圧を感じた気がして。
「…………楽しみにしてる」
「はい」
職員達と並ぶ、行列の中程で。
粘着くような、動きが鈍った口を無理に動かし。
そう、また一つ。
小さな約束を、二人で交わさざるを得なかった。
活躍させたいキャラ上位二名
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若葉様
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ひなた様
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ぐんちゃん
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あんずん
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タマ先輩
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たかしー