葦原天理は巫覡である 作:氷桜
男から:彼奴いつも女の子周りにいるよな……話し掛けにくいっていうか……。
女から:あの子達の見る目、ちょっと違うよね。
……平凡にしか見えないけど何が良いんだろ?
先生から:色々取り纏めてくれて助かるな。
大人び過ぎている気がするが。
総じて:女の子たちのおまけ。 且つ意見の纏め・統括役。
幾らかの重みと。
幾らかの安らぎを得た週末も終わった後。
俺達は再び学生の本分へと戻り、幾らかの時間が流れた。
「んー……しょ、っと」
どさどさ、と床に落ちる積み重なる音を背景に。
ふぅ、と額に浮かんだ汗を右手の甲で拭い去る。
ぱたぱたと手団扇で風を発している、共に動いているのは美森ちゃん。
「これで……取り敢えずは終わり、よね?」
「終わりだねぇ……いや、もっと早く捨ててくれって話なんだけども」
暑い暑い、と言ってしまうくらいには蒸し始めている五月下旬。
滲んでくる内側からの汗……に対抗するために体操服に着替えた上で作業して。
それでも――――というより
直視するにも、ほんの少し覚悟がいる。
「仕方ないんじゃない? それに、貰って行っても良いって話だったし」
「それなら前のフリーマーケットの時のほうが良かったんじゃ……って思うよ」
今いるのは、勇者部としての部活で使用している準備室ではなく。
以前に片付けた、廃棄品や不使用品を纏めていた特別棟の一室。
部室を二つ持つ……というのはある意味で特別なようにも捉えられがちではあるが。
その性質上、色々な事に手を出し協力していく以上は仕方ない、と。
目の前に広がっているのは、ビニール紐で縛られた数多の本。
上から下まで運んでくるのは地味に体力仕事で、そして動員できる人数も少ない。
……
「ただ……向こうは大丈夫かなぁ」
「風先輩に友奈ちゃんがいるなら大丈夫だとは思うけど……心配?」
「まあ、そりゃあね」
タイミングが悪すぎるのか何なのか。
運動部の大会前の手伝い、という名目での緊急依頼も重なってしまい。
そちらに運動が得意な二人が取られてしまっている……というのが厄介な点ではある。
本来の補助役……マネージャーが季節外れの大風邪を引いてしまった、というのが大きな理由。
つい先日、俺の関係者周りでも大流行していたアレが未だに蔓延っているのだろうか。
「いつも思うけれど……天理くん、妙に友奈ちゃんに甘いわよね」
「そう? 其処まで気にした覚えもなかったけど」
「昔からの付き合い、っていうのは分かるけど。 それでも、私達だって寂しいんだからね?」
言われなくても分かってる、と小さく告げる。
熱気と湿気が籠もる教室の中に二人きり。
廊下側からは曇り硝子で塞がれて、外側からはカーテンで覆われて。
一見すれば、明らかに妖しい一室……と思われても仕方ないけれど。
本が焼ける事を防ぐためには仕方ない、と思ってもらう他にないよな。
「……もう少し、自由になる時間が欲しいよね」
「十分に、とは言えないものね。 ……お互いに」
お互いに思い起こしているのは、小学生の頃。
四人だけで関係性が完成していた頃――――互いに、感情を共有し合えた頃。
今もその思いは何ら代わりはないけれど。
身体が、精神が成熟していく度に。
遺された時間が確実に減少していく度に。
見られる目線と、関係性が齎す変化には気付いてしまう。
「全部が終わってからになりそうだからねえ……」
「一人でお婆ちゃんになるのは勘弁よ?」
「それ、俺もお爺ちゃんになってるってことと同じだから……」
以前のように、と完全に戻るのは互いに無理。
それだけの経験と付き合いと、想いを交差しているから。
それ自体を踏み越え、その先を望む者達として。
世界を救う『勇者』と、その役割を乗り越えることを望む数少ない人間として。
どれだけ掛かるのか……そんな分かりきった話を振るだけの余裕がある、と示す。
「
「はいはい。 ……未亡人にさせることだけはしないようにしますよ」
「宜しい」
何が宜しいというのだ。
互いを呼ぶ呼び方がどう変化するかは……これから次第にはなるが。
既に、生涯を共にする覚悟を平然と口にしている/されている間柄。
周りから見れば、聞けば。
明らかに異常と言うか……重いとか言われるのかなぁ。
「でも、それは俺も同じこと言うからね?」
「……分かってるわ」
片隅に置かれた、新たに持ち込まれたらしい椅子の上。
気付けば座り込んでいた美森ちゃんと、俺の目が交差した。
「……違うなぁ」
「え、違う?」
「
そう。
そうだよ。
互いに、微かにだけ唇が動いて。
頬に熱が浮かび、照れ臭くて一度視線を外した。
「……図書室、戻りましょうか」
「そのちゃんとかせんちゃんが持ち帰る……とか言ってたしね」
「程々にするように言わないとね」
こほん、と咳をして。
話を元に――――部活動の内容へと戻そうと提案が飛び。
それに乗っかる形で俺も動き始める。
「帰り際に用事もあるし、手伝えないからなぁ」
「ああ……
「うん。 ……取り敢えずは俺とひなたさんと……若葉さんで考えては見るけど」
近々協力は頼むと思う。
それは風先輩とのこともあるし、友奈との今後の関係性の決定もある。
そんな言葉を残して、廊下側の扉へと近付けば。
極自然に、そして当然のように。
漸く彼女に見合う身長になってきた俺の隣へと、寄り添うように歩み寄ってきた。
――――そして、彼女から求められた。
雨月から水無月に移り変わる、『婚姻』という儀式もあるからこそ。
そっと伸ばされた手を、一度だけ握って離し。
それ以上は……後の楽しみとでも言いたそうに。
「……待ってるから」
「うん」
それだけで。
それだけの言葉で。
――――意思を伝え合えたと思うのは。
多分……俺が、単純故なのかもしれない。
活躍させたいキャラ上位二名
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若葉様
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ひなた様
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ぐんちゃん
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あんずん
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タマ先輩
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たかしー