葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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ちょっとだけ敵の強さも盛りましょうね。


幕間2-21

 

表情は然程変わらない。

けれど雰囲気が不満げな内心を周囲に撒き散らしている。

 

「…………あのー?」

 

「……何?」

 

おっかなびっくり話しかける俺と。

そんな俺に対しても不機嫌さを一向に隠すこと無く、けれど距離を取ろうともしない少女。

何というか……機嫌が悪いときの猫のような印象を抱かせる。

そんな黒猫のような……せんちゃんと共に向かうのは、俺が権利を持つ貸家地帯。

 

「何に対して警戒してるの……?」

 

「……何だと思う?」

 

あ、これ真面目に答えるつもりがないときの返事だ。

 

こちとら幼い頃からの長年の付き合い。

発する言葉は似ていても、その内心を何となく計ることには慣れている。

故にこそ、浮かんだ答えである『警戒している』という状態が良く分からない。

 

元々、今日はせんちゃんは銀達と帰宅する予定だった筈。

にも関わらず、図書室の清掃が終わるや否や俺の肩を掴んで一言。

 

『私も行くから』

 

『えっ』

 

周囲の三人を見れば、銀の車椅子をそのちゃんが押しながら一言。

 

『ミノさんは今日は私達が預かるから~。

 用事終わったら私の家寄って行ってね~?』

 

『……そういうことだから。 忘れないでね、天理くん』

 

『まあ女子会ってやつよ、女子会』

 

『えっ』

 

いつの間にそんな話が進んでたんだ。

というか美森ちゃんはほぼ俺と一緒に行動してたよな?

ってことは最初から……或いは俺達が別行動してる時に話し合って可決して。

そのまま押し切られたとか?

 

頭がぐるぐる混乱する中で、三人はそそくさと先に帰宅してしまい。

結局、動き始めたのはせんちゃんが袖を掴んだことに気付いてから。

 

……多分、脳内時間では十分も経ってはいないと思うのだが。

それ以降お立腹な有様。

 

いやまぁ、はい。

考えないように逃げてたけど、俺が悪いなこれ。

でも――――”怒る”とはまた違う、っていうのだけは理解できない。

 

「……ごめん、俺が機嫌悪くさせたのは分かるけど。

 それ以上は良く分からない」

 

「……良いのよ、私も急に予定割り込んだわけだし」

 

だから先手を打って(打ててないが)謝罪を告げれば。

隣で歩く姉のような人は、深い深い溜息の後で。

そんな、『気にしていない』事を強調して言葉にする。

 

いや、滅茶苦茶気にしてるじゃん。

 

ただ、今それを言えば逆効果だというのはどんなに抜けていても分かること。

だから深く追求せずに有難う、とだけ伝えて。

半歩だけ距離間隔を縮めながら、次に漏れるであろう答えを待つ。

 

「……あの、ね」

 

「うん」

 

信じられないと思うけど。

疑って当然だと思うけど。

そんな前置きを幾つも幾つも重ねた後に。

 

「…………ちょっと、私も混じっておかないと……不(・)味(・)い(・)気(・)が(・)す(・)る(・)の(・)」

 

不味い。

はて。

 

一体何がなのだろう、と内心で首を傾げつつも。

古い血縁を辿り、そして現代では彼女の巫としての何かが直感を擽る。

後頭部をばんばんと叩かれているような錯覚……これも久しぶりだな。

 

「でも、それが何かは分からない?」

 

「……何となくだけど、予想はしてるわ。

 ただ――――多分だけど、この感覚は私(・)達(・)じゃないと伝わらないと思うから」

 

一体何を、というのに何も答えず。

その発言から考える限り……せんちゃんはその、何だ。

俺の保護者と言うか護衛というか、そんな感じの立ち位置を含んで付いてきている?

嘗ての仲間たちの元に向かうというのに?

 

「あの、何を」

 

「まーくんは気にしないでいいわ。 ……考えすぎなら良い、と思ってるくらいだし」

 

多分、上里さんも気付いてないと思うから。

他の皆は――――乃木さんは気付いていそうだけど。

 

そんな言葉を零し。

天を、周囲を、道程を細かく見ながらゆっくりと進む。

 

貸家地帯までは……歩いて残り五分足らずの距離。

にも関わらず、歩く速度は段々と鈍化し。

同時に背筋に感じ始める、奇妙なほどの寒気。

 

『天理くん』

 

(……たかしー?)

 

『其処から……うん、五分でいい。 動かないで』

 

以前にも――正確に何処でだったか、思い出すのは難しかったが――感じたような違和感。

 

何(・)か(・)に(・)見(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)ような。

下手に動けば気付かれる、と本能的に理解するような感覚。

そして同時に浮かんだのは……何処か懐かしささえ感じてしまう。

明らかに異常な、相反した感情だった。

 

(…………何だ、何を探してる?)

 

『天理よ、焦るなよ』

 

『今(・)の(・)感(・)覚(・)に(・)気(・)付(・)い(・)て(・)い(・)る(・)方(・)が(・)異(・)常(・)で(・)す(・)か(・)ら(・)ね(・)』

 

声を出すな。

身動きするな。

其れ等を道端で要求される矛盾。

 

ちらり、と目線のみを隣の少女に向ければ。

顔色を変えず、けれど明らかに冷や汗が額に浮かんでいる。

 

(……何なんだ?)

 

『我等が敵よ』

 

『一歩、私達に近付いたことで理解できるようになったのでしょうね』

 

……神樹サマに近付いたからこそ。

存在の階位が違うモノの捉え方の一端を掴んでしまった、ということだろうか。

 

『勇者達……それも神具の力を正しく掴んだ側も似たような影響を受けている筈だ』

 

『……しかしまぁ、こうも露骨に。

 倒せたわけでなく……撃退で終わってしまった以上。 遠くない未来にはやはり始まるのでしょうが』

 

そ(・)れ(・)が(・)い(・)つ(・)に(・)な(・)る(・)の(・)や(・)ら(・)。

 

そんな呟きの中。

明らかな圧が不意に消え。

やっとのことで呼吸と、冷や汗を拭うことが出来るようになって尚のこと。

 

(……神)

 

それに抗う力が、どれだけ必要になるのか。

それに抗する心を、どれだけ練れるのか。

それを――――改めて理解させられたような、気がした。

 

活躍させたいキャラ上位二名

  • 若葉様
  • ひなた様
  • ぐんちゃん
  • あんずん
  • タマ先輩
  • たかしー
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