葦原天理は巫覡である 作:氷桜
「……どうぞ」
ことん、と目の前に置かれたマグカップ。
内側に入っているのは手製の麦茶だろうか。
「はい、若葉ちゃんも」
「……ああ、助かる」
未だに混乱し続けているのは互いに同じ。
だからこそ、普段のハキハキとした感じとも違う。
何かに迷っているような、揺れている……という実感をまず最初に得る。
この間、杏さんと買いに行ってきた各個人用の飲み物入れ。
無論、それは俺だけではなく――――他の知り合いの分も幾らかは購入され。
そして各々の家に留め置かれているはずだ。
その内の一つ、俺が選んだこの家に置かれたマグカップと。
杏さんが選んだ、せんちゃん向けの……白い陶器に黒猫が象られたマグカップ。
その中身の波紋が落ち着いた頃。
若葉さんと……ひなたも座り、四人で一つのテーブルを囲みながら。
誰から話すか、と目線を交わし合った。
「……タマ先輩と杏さんは?」
「二人は……私達程影響を受けなかったようでな。
とは言え、精神的な悪影響は大きく出たようだった。
私が半ば無理矢理に眠らせたところだ」
……家の中に入って、一度席を立ったのはその確認か。
迂闊に女性の住処を探し回るわけにもいかなかったし、向こうが対応してくれたならそれで良い。
まあ、帰る前に一声掛けていくつもりではいるけれど。
「ってことは……多かれ少なかれ影響は出たってことでいいんですね?」
「そうだな。 ……まずはそちらを詰めるか」
ぼそり、と漏らした言葉。
本来の……当初の予定とはまた違ってしまっている会話内容。
ただ、それは何方も重要度では変わりはしない。
「まず、私が感じたのは……
「個人的には探している、って感じじゃなかったと思うけど。
其処はどう思ってる?」
「そうですね……
ただ、と一言話を置く。
何を言おうとしているのかは俺にも察しが付き。
そしてその言動に合わせて、次の話へと水が流れるように続いていく。
「此方から向こうは見えたとして――――向こうから見えたと思いますか?」
「思わない。 ……と言うよりは、なんだけど。
奉火祭で請願した細かい内容を誰か知っていたりする?」
首を左右に振る姿。
……と言うよりも、対する二人は何方も表情が暗く落ち込んでいる。
嘗てを思い出してしまったか……と思いつつも。
改めて、全員が知らないことを把握する。
俺自身も、その儀式の概要と……どのように祈ったのかしか知らず。
そして当時、最も近い場所にいたひなたが知らないのならば。
この中では誰も見知らないのだろうな、と理解した。
「――――どのような内容を頼み込むのか、と言うのは聞いています。
……元々は、私が立候補する予定もありましたから」
「でも、最終的な内容は知らない?」
「……はい」
もし知っていれば、其処から考えて現状を逆算できたかもしれないが。
正直、今こうしての反抗計画を練ること自体も神への対抗と捉えられる内容。
俺達……そして初代勇者達がある程度でも見逃されるのはたった一つ。
地の神、神樹サマを構成する神々との縁を以て。
現世の神々の代理として在るからなんだろう、と俺は二柱との話から想像している。
大枠では外れていないだろう、と俺は想定しているが。
その考えが正しいのかどうかは――――やはり、何方かの神々当人に聞くしか無い。
だからこそ、その線を迂闊に踏み越えないように気をつけながら。
以前に想定した……神話からの想像に関して、彼女達と共有することにする。
「……前に、ワカとヒメと話をしてて思ったこと。
美森ちゃんにも伝えたことが在るんだけど、意見貰っても良いか?」
「……意見、か? 私達に?」
「そう。 具体的に言うと……そうだな」
まず、何処から話を持ち出すべきなのだろうか。
嘗て――――あの神域で、俺と(まだ)須美ちゃんだった頃。
まず最初に、巫女としての才を持つ彼女に伝えた言葉。
神樹サマから伝え聞いた、と言っていた大型バーテックスの名前。
そしてその名前から派生して気付いた、純粋な疑問。
「ずっと昔……神具を手にした頃の話になりますけど。
今の、俺達がバーテックスと呼ぶ存在を……何と呼んでいましたか?」
「……何?」
「個体名、或いは種族名……ということですか?」
せんちゃんは何も口にしない。
自分用のマグカップからちびちびと飲み進めるのみで。
目線を幾度か向けるが、特に気にした様子もない。
……いや、寧ろ今の態度と目線は意味が違うか。
(私は知ってるから気にしないで良い、かな……?)
そう言えば場所も場所。
ついでに言えば
あの会話、あの場所でのむず痒くなるような行為も見られていたというわけで。
……今更ではあるが、妙に気恥ずかしくなってしまうのは避けられないこと。
「最初は変なの、とか悪魔、とか……でしたっけ?」
「そうだな、外見上からそれらしく呼んでいた記憶がある」
嘗てを思い出すように、目を瞑ったり開いたり。
或いは隣の自らの勇者/巫女と話すことで記憶を刺激しながら。
以前の時点での情報と擦り合わせていく。
「……ですが、神樹様から『アレが産まれたのは人類に原因がある』とお告げがあって」
「……そうだな、誰かが言い始めた記憶がある。 バーテックス、か」
仮称名として頂点/vertexの名を与え、それが一般に広まったのか。
それとも神樹様がそう定めたのか、今となっては聞く意味もないことではあるが。
「それがどうしたんだ?」
「昔のバーテックスと、今のバーテックス。
どう違うのか……どう変わったのか、というのは俺は目視したわけじゃないのではっきりしません」
遠巻きに三人が戦う姿を見て。
タマ先輩達が抗う姿を見た。
その何方もが似たような何か、だと感じるに余りあるからこそ。
「ただ。
黄道十二宮の名を持つ、と神樹サマから神託を受けた――――となると違ってきませんか」
嘗てと同じように。
嘗てと同じ疑問を投げ掛ける。
「この国に於いて、神樹サマを狙う遣いが他の国由来の名を担っている」
――――どう思いますか、と。
再びに、彼女達へと口にした。
・小説版を追い掛ける限り神具を手に入れた後の経過3年で「バーテックス」と名付けられたっぽいんですが。
・どっからこの名前出てきたんですかね……何故唐突に英語名。
・いや、怪物感を顕すって意味では間違いではないと思うんですが。
活躍させたいキャラ上位二名
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若葉様
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ひなた様
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ぐんちゃん
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あんずん
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タマ先輩
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たかしー