葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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幕間2-24

 

最初……ほんの数秒は呆けているように見えた。

理解が及んでいない、と言うより言葉を咀嚼している状態。

 

本来見せないであろう、年上の女性の珍しい表情。

面白くなかったか、と言われれば嘘になる――――が。

隣の最も年上の少女が陰を秘めた笑みを浮かべていて、何とか押し込める。

 

「……え?」

 

そして、二人のうちに先に反応を示したのはひなたさん。

思い当たった内容に、違和感と恐怖を綯い交ぜにしたような表情。

慌てて隣の若葉さんの顔を見た上で、此方に向かって真顔を見せる。

 

も(・)し(・)こ(・)の(・)考(・)え(・)が(・)正(・)し(・)い(・)の(・)な(・)ら(・)ば(・)――――と。

いつか、俺達が思い当たったのだろう事と同じようなことに気付いたと判断し。

 

「明らかに違和感、ありますよね?」

 

「いや……でも、そうなると……あの神託は?」

 

「恐らく矛盾はしないと思います。 一応、俺の考えの上では……ですが」

 

正しい答えは、それこそ神樹サマに聞かねば分からない。

たかしーも取り込まれた、とは言え精神的には独立している形に近く。

その全てを知っていれば――――今頃は彼女も、地の神の一柱として銘されていただろうから。

まあ、だ(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)彼女を掬い上げる手を思いついた……ってのは関係ない話か。

 

『?』

 

声だけでしか、今の彼女の考えは分からないけれど。

疑問を浮かべたのだけは確かに分かる。

そして……今はまだ、その手段を口にできるとも思い上がっていないから。

 

手元の編みぐるみに落とし込めている、器に封じられる精神を持つ彼女を一瞥し。

飲み物で軽く唇と喉を湿らせてから、俺自身の考えを口にしていく。

 

「先ず、バーテックスが現れた理由。

 その存在……属する陣営に、俺達人間に手を差し伸べて下さった地の神々。

 恐らくですが、単(・)純(・)な(・)二(・)元(・)論(・)……二陣営で考えるべきじゃないと思うんですよ」

 

「……と、言うと?」

 

そもそもの発端。

 

人を見限った天の神が遣わしたのがバーテックス。

これ自体はまあ、理解できなくはないのだが。

そもそも……日本神話や古事記、或いは世界各国の神話系列諸々か。

残っている限りのものを紐解いていくと、純粋な疑問にぶち当たる。

 

「まず……他国。

 もう言い切ってしまうなら西洋とかの主神に当たる存在。

 これらって、多かれ少なかれ人に対して罰を与える存在として書かれてますよね?」

 

「……そうだったか?」

 

「……そうね。 基本的に見えない、理解できない私達の目線で語るけど。

 事(・)象(・)の(・)擬(・)人(・)化(・)、とされる存在はどの側面を見るかで変わるから」

 

首を捻った若葉さんに、ため息混じりにせんちゃんが告げる。

 

……なんだかんだ、彼女も細かい知識は多いんだよな。

得ている方向性が少しだけゲームよりだから、本とかを主体としてるとズレるんだけど。

 

「杏の知識ともまた違うが……千景がそういうことを口にするのは珍しいな」

 

「……別にいいでしょ。 まーくん、続き」

 

そして、その考えは若葉さんも抱いたことらしい。

 

押し黙って、自分の考えと俺の考えを擦り合わせているひなたさんと違い。

其れ等を踏まえた上でどうするか、と自然に考えていそうな人。

 

……まぁ、こんな考えも。

俺が直接的に物事に関わり始める前だったから気付けたこと。

『勇者』、或いは『巫女』……それも命と世界を賭けた戦いの最中であれば。

こんな事に意識を割り振る余裕も猶予も無かったに違いない。

 

「はいはい。

 ……で、我が国の神話を辿る限り。

 最初の三柱の内の長女として在るとある神。

 彼女は『太陽』の豊穣の要素を強く持っていると思っています」

 

具体名は出さない。

まあ、ほぼ言っているようなものだが――――それでも繋がりを避ける。

そして何より、今の学校ではこの辺りの神話については教えることがない。

 

成り立ちであっても。

後世で象られた、とはっきりしているようなものでもなければ。

微かでも抱く信仰……それは当然に、相手方の力と成り果ててしまうから。

今こうしていることも諸刃の剣。

 

相変わらず、ギリギリの線を渡っているなぁ……と。

自分で自分に苦笑してしまいそうになる。

 

「……それで?」

 

「対し、西洋……特に黄道十二宮の発端となった地域なんかは顕著ですけど。

 太陽に当たる神は、人に対し強く当たる。

 ――――ハッキリ言ってしまうなら、自分の意志のみで好き勝手に行動を起こす側面が強い」

 

何方も太陽が持つ印象の表裏。

熱による人への加護か。

天候に於ける人への試練か。

 

「……だから、同じ『元』の神の影響を受けて暴走している。

 そして、その影響を受けて……或いは前後が逆かもしれませんが……神樹サマも荒御魂と化している。

 これが、俺と美森ちゃんで何度か突き合わせて至った想定です」

 

バーテックス。

人が理由で罰を下す、と裁定するに至った天の神。

神話上で、人に接したことさえ無い存在が一段飛びにそう定めた理由。

 

「……ならば、どうするのだ?

 古来より、荒ぶる神を諫めるには贄と事が決まっているが」

 

それを言いたいわけではないのだろう、と。

分かっていながらも口にしてくれることに感謝を抱きながら。

恐れを――――泣(・)き(・)そ(・)う(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)ひなたに、改めてこう告げる。

 

「もう一つあるでしょう?

 ――――相手の乱心を諌め、同時に力を……精神を示すこと。

 その為に必要な、最初に手を付けるべきことが神樹サマの和御魂化というだけです」

 

結局、俺達がやることは変わらない。

ただ、その上で――――倒すべき相手、として睨み続けてはいけない。

そうすれば、神(・)は(・)そ(・)の(・)心(・)を(・)写(・)し(・)取(・)っ(・)た(・)上(・)で(・)そ(・)う(・)動(・)く(・)だろうから。

 

「……まあ、全部妄想の可能性もありますが。

 間違っている所もそんなに無いと思ってますよ」

 

はぁ、と。

長々と話してしまったから、もう一度マグカップへと手を伸ばし。

 

……そんな俺を。

三者三様の目線で……微かに熱っぽさを交えたように。

捉えてしまったのは、間違いだと思いたかった。




・以前に須美ちゃんとした話のちょっとだけアッパー版です。
・正しいか正しくないかは別として、主人公はこう判断しています。

活躍させたいキャラ上位二名

  • 若葉様
  • ひなた様
  • ぐんちゃん
  • あんずん
  • タマ先輩
  • たかしー
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