葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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幕間2-25

 

「……少し、休憩挟みましょうか」

 

そう提案したのは隣の黒猫。

目の前の二人の……考えもしなかった方向からの俺の言葉。

 

多少なりとも消耗が見られたから……だとは思うのだが。

以前ならばそんなことは言わなかったからなのか。

目を白黒させる二人を目前に捉えることになった。

 

「……ま、そうよね」

 

「何が?」

 

二人を見てきます、と告げて一時的に席を立った二人。

それは一つの理由であり。

同時に一度落ち着くためのものでもあったのは俺でも気付くこと。

だからこそ、二人で居間に取り残される。

 

「飲み込むのに時間がかかる、って話」

 

「……俺からすると、せんちゃんが普通に飲み込んでたから疑問に思わなかったしなぁ」

 

「そりゃあ、話の概要は聞いてたもの。 それに、ワカ様にヒメ様もいたから」

 

侮ってるの、と手が伸び頬を引っ張られる。

ごめんごめんと謝れば、少しの間があって手を離した。

全く、と呟く口元は……少しだけ笑っているように思える。

 

「特に最後まで遺された二人……私達の分まで任せることになってしまった二人。

 思うところは大きいわよね」

 

「だよ、なぁ」

 

方や、途中で身代わりに似た形で自らを差し出したと自嘲している勇者。

方や、勇者の戦いを見ているだけで、その代償を引き受けるだけの巫覡。

 

その立ち位置と、在り方と、考えと。

そのどれもが正しい意味での勇者達と違うからこそ。

将来の為に、と自らを投げ出した二人と違う……と自覚しているからこそ。

変に冷めた目で捉えてしまっているのかもしれない。

 

「でも」

 

「そうね。 ……足りない部分は支えればいい」

 

そんな当たり前のことにも、私は気付いていなかった。

 

既に過去を悔やみ尽くした上で、更に同じ言葉を漏らす。

 

彼女にとって、弱みを見せられる相手は()()いない。

きっと、嘗ての勇者達には――――それを全て見せられなかったのだと思う。

 

もしそれが出来ているのなら、多分過去の出来事も少しだけ変わった。

それを自覚しているからこその悔やみ。

隣で、支えるしか出来ないという隔絶。

 

(……時間の壁って残酷だよなぁ)

 

当時のことを、当人から聞く以外の手段で知ることが出来ない。

いや、正確に言えば幾らか他の手段はあるけれど。

 

当人たちの考えと、その時に感じていた重圧。

其れ等を、後世に纏め……或いは口伝で伝えた内容。

この二つの差は、俺のような専門外であっても……分かり易すぎる程に理解できてしまう。

 

だから、何も言わない――――何も言えない。

そして、その状態を正しく汲み取ることが()()()()()()()()()のが隣の彼女。

 

有難う、と呟かれるいつもの言葉。

その重みを共有できるのも……多分、事情を知る全員だからこそ。

 

「……まあ、乃木さんだったら。 こんな悩み、直ぐに何とかしちゃうんでしょうけど」

 

呆れたような、羨むような。

決して自分ではどうしようもない相手への感情が滲み出るような声色。

こうした態度……言葉を取るのは今のせんちゃんにしては物珍しい。

 

それだけの関係を持ち。

それだけの感情を抱く相手だから、なのだろうけど。

 

寂しい……と言うよりも、何だ。

()()()()()()()()()()、みたいな。

変な感情が浮かんでは消え、空咳をして気分を紛らわせる。

 

「?」

 

明らかに途中から変な態度を取った俺へ、疑問の目線が向けられた。

知らない、気付かない振りをしてなんとか誤魔化す。

 

「まだ知り合って短いんだけど……そんなに凄いのか、若葉さん」

 

まあ、そのちゃんの祖先……と考えれば。

嫌でもそうだろうなぁ、と思考の果てには行き着くことなのだが。

 

「凄い……って言葉も違うわね。

 色々と持ち上げられてはいたけれど……」

 

その目に宿るのは、昔を懐かしむ色合い。

その先に俺がいないのは当然で。

けれど、それが物悲しく感じてしまう……そんな悪癖が擡げている。

 

「”私達”を取り纏めるのは、多分乃木さん……とそれを支える上里さんだった。

 口にしているかしていないかは別としても、皆そうは感じていたはずよ」

 

だから大丈夫、直ぐに戻ってくるでしょうし。

そんなフォローの言葉が胸に刺さる……そんな予感の次の合間。

 

「今の……そうね、先代勇者の三人みたいに。

 そして、彼女を支えていたまーくんみたいに」

 

俺はそんな立場ではない、と直ぐに首を振る。

 

褒められるべき、敬われるべきは彼女達。

身を挺して、身を捧げて世界を護ることを決めた勇者達。

彼女達がもしいなければ……俺がこうしていたか、その選択は疑問が浮かぶ。

 

「っていうかそういう話じゃないでしょ!?」

 

「私からすれば同じような話よ」

 

自分を卑下し過ぎて、過去に足を引っ張られて。

それで失敗してきた相手を見ているのだし。

 

そう淡々と告げた彼女が見ていたのは。

自分なのか――――それとも、近い良く知る誰かなのか。

 

「でもね。 絶対に忘れないで。

 ――――私を、あの場所から引き上げたのは貴方なんだから」

 

そのことは、忘れないで。

他の誰でもない、貴方だから出来たことなんだから、と。

耳の奥……脳が、揺らされた気がした。

 

微かに染まった頬を隠すこと無く、そんな事を言い放ち。

廊下に再び足音が二つ響くのと合わせ、二人で並んで姿勢を正す。

 

「……?」

 

「何か、ありましたか?」

 

何も、と。

声が二つ。

並んで、同じ部屋の中に響き渡った。

活躍させたいキャラ上位二名

  • 若葉様
  • ひなた様
  • ぐんちゃん
  • あんずん
  • タマ先輩
  • たかしー
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