葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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幕間2-26

 

「それで。 もう片方の……本来の目的に話を振っていいですか?」

 

「はい。 ……これに関しても、知ると知らないとでは大きく違いますものね」

 

先んじた確認。

それに小さく頷く少女の目線。

 

揺れていた目が、何処かまっすぐ物事を捉え始め。

そして同時、その奥で煮詰まったような熱が俺の瞳を貫いている。

 

その理由を。

その理由の一端を。

確かに、あの場所で……二柱から聞いてしまったから。

何も応じず、言葉にされるまでは受け入れることが出来る。

 

「先ず……昔については理解できる部分もあります。

 神樹サマを祀る大赦としての教えが行き届いていなかったこと。

 嘗ての時代と……今の、代を重ねることで薄まった考え方」

 

『今』を基準にすると、明らかに異常とも言える答えが浮かび上がる。

 

で、あるなら……幾度も聞いた二柱からの言葉と。

何より愛し、傍にいる嘗てを生きた少女の経験と。

戦いの後を経験し、自ら封じられる事を選んだ二人と。

西暦の時代から、神世紀へと移り変わる最中を生きた勇者と神の言葉達。

 

彼女達からすれば、そうしなければ不味い状況があったのは容易に導き出せた。

 

「それでも、今も続ける理由がある……と思っていいんですよね?」

 

そうやって監視し続ける事自体、リソースを食い潰している側面は必ずある。

それを何より知る大赦の……それも奥深く、中枢に近い場所に属すだろう人々が行い続ける。

なら、それに対する何(・)か(・)があると考えるのが自然なのだが――――。

 

「そう、ですね。

 先ず、これらを監視し始めた……正確には本腰を入れて把握し始めた切っ掛け。

 それも、先程話に挙がった千景さんの件があってからです」

 

話しても構いませんか、とひなたは問い。

もう話しているわ、とせんちゃんは答える。

 

そ(・)れ(・)が指していること。

彼女が背負い続ける過去と。

それが齎した……恐らくは、監視し続ける必要性に行き当たった原因について。

 

「でしたら……細かく説明するなら、千景さんの故郷での出来事があってから。

 私もその頃は詳しく知る権限がなかったので、曖昧な部分もあるのですが……」

 

インターネット上で流れていた、勇者達を嘲るような言葉。

自らの個人情報が秘匿された場所だからこそ流される、無責任な言葉。

そしてそれに対し、分(・)か(・)り(・)や(・)す(・)く(・)当(・)た(・)る(・)相(・)手(・)を求めていた避難者達が迎合。

 

神樹サマが……せんちゃんから力を引き上げてしまう事になってから。

つまり、どうしようもない状態に陥ってから。

大赦の中で、其れ等についての調査が始まったのだとひなたは告げた。

 

「翻り、全てが終わってから。 私達が眠りにつくまでの約一年。

 最初に手を付けたのは其処で、必要不必要を判別の対応なども行いましたね」

 

「……そんな事してたのか、ひなた」

 

ただ、俺達だけでなく。

その内部で何をしていたのか知らない『大赦の顔』もいたりしたが。

 

「若葉ちゃんは……あの頃の記憶曖昧なんですよね?」

 

「そうだな……起きている時と眠っている時。

 そ(・)の(・)感(・)覚(・)が(・)曖(・)昧(・)に(・)な(・)り(・)始(・)め(・)た(・)頃(・)だったとは思うが」

 

それをフォローするような言動。

頷きつつ、口にしながら胸元辺りを上下に擦っている。

その動きに服が揺れ、微かに腕が前後して。

隣の足元に伸びた手が、太ももを強く抓り上げて痛みに片目を開き閉じる。

 

「……続けますね?」

 

絶対に足元で行われている状況を把握していると思う。

その上で、笑(・)顔(・)を(・)濃(・)く(・)しながらの話の続行。

内心に何を抱えているのかを知るのが怖く、押し黙りながら。

ヒリヒリと残る熱に、顔を何とか安定させて耐える他ない。

 

「ええ、宜しく」

 

「はい、受けました」

 

多分、今の一瞬だけは二人の考えが合致したように思えた。

取り残されたのは俺と若葉さんだけ。

それが何なのか、を理解していないように首を傾げる彼女に気付かれないよう。

……いや、それも無理じゃないか?

 

(……多分、大赦でもそ(・)う(・)い(・)う(・)目(・)で見られたんだろうなぁ)

 

『勇者』の基準は外見を最優先にしているわけじゃない。

特に今の時代、見た目に優れた子はかなり見受けられるのだが。

その中でも一つか二つ抜けてそう見えるのが関係者達、ともなると疑ってしまう。

 

特に、年齢に不釣り合いな体を持つ巫女達ともなればまた別だろう。

その性質上――――なのかははっきりしない。

ただ、俺もそのちゃんの母親から伝え聞いた内容。

 

『巫女としての才能は突然変異もあるが、あ(・)る(・)程(・)度(・)遺(・)伝(・)す(・)る(・)』。

 

実の娘にその才能があることを知ってから。

そして、その傍に俺がいることを知ってから。

 

名家に近い場所にいる家だから、ある種の不文律としてのその事象をも知っていて。

こっそりと、娘を護ることを頼まれたことを思い出し。

 

同時に……『国土』という家の。

名家としては名前が挙がらず、けれど確実に巫女としての名を保つ少女の顔が……ふと浮かび上がった。

 

「それが未だに機能していることを把握したのも、こ(・)れ(・)です」

 

卓袱台の上に差し出された、新たに提供した携帯端末。

恐らくひなた用として扱っているのだろう、落ち着いた色合いのそれ。

調べ物をする基本画面と……連絡用のアプリとを一度ずつ提示した。

 

「殆ど……それこそ上の上しか知りませんけれど。

 この画面、検索画面からでも機能しているかどうかは確認する術があります」

 

流石にやり方は教えられませんが。

そう口にするけれど、その事実だけで十二分に怖いのですが。

 

「そしてこのアプリ……は分かり易いですね。

 大赦の方で開発され、其処から経由して配信されたソフトでしょう」

 

恐らく、勇者用の機能もこれを利用しているかと。

当たり前のように言う彼女へ、逆に問うことにした。

 

「……なんでそんなのが分かるんです?」

 

「神樹様のお力を利用している根(・)底(・)は(・)変(・)え(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)か(・)ら(・)、でしょうかね。

 多分……特徴を教えれば。 こういった機械に詳しい人ならば気付くと思いますよ」

 

そう言われて……浮かび上がったのは、彼女にとっての巫女としての弟子。

肢体もどことなく似た部分を持つ、黒髪の少女だった。

 

「……なら、今後の連絡は原始的(アナログ)な方が?」

 

「大事なことは無論そうなるでしょうが……。

 私としては、どうでもいいようなことで覆うのも一つの手だと思いますよ?」

 

「……と、言うと?」

 

「そうですねえ……」

 

お出かけの約束とか、どうですか。

 

そんな風に、面白そうに……けれど本気の色を混ぜ込んで。

誘われてしまうと……色々と人によって態度が変わってしまうのは、まあ。

仕方ないと思うので……許してくれませんかせんちゃん。




・例のお墓シーン、『国土』姓の墓が地味に幾つか見受けられるんですよね。
・伝聞に過ぎませんが、朗読会で出たらしい情報とか想像とかが幾らか混ざってます。

・因みにひなた様は割と本気です。

活躍させたいキャラ上位二名

  • 若葉様
  • ひなた様
  • ぐんちゃん
  • あんずん
  • タマ先輩
  • たかしー
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