葦原天理は巫覡である 作:氷桜
わすゆ組は余り考えなくても勝手に動き回る……
「ぶー」
何処かで聞いたような音楽が流れ。
携帯を覗いた後、急に機嫌を悪くする瞬間を目撃してしまった。
「ミノさんどーしたの~?」
「天理のやつと千景さん、遅くなるってさ。
あー、どうしてくれるかなー」
銀が文句を言い、そのっちがそれに対して宥める。
「……ん~。 だったら夕ご飯どうしよっか」
「パーッと食べ散らかしたい気分なんだけどさぁ」
「お腹ぷにぷにになるよ?」
軽口、真顔、そして共感。
もう何度目になるのか分からない
時には制服のまま。
時には私服に着替えて。
時には寝巻きの事もある。
けれど、この一年半……何度も何度も繰り返してきて。
その内容に必ず上がる、私達
だからこそ、ある程度は抑えようとしても。
感じる言葉は誰もがある程度以上に抱くものだと受け入れているからなのか。
そんな姿を見ながら、心の内側で二人の私が言葉を発していた。
『少しは言い聞かせたほうが良いんじゃないかしら』
『この光景、他の三人も入るのかしら』
前者は……まあ、分かる。
公言しているかしていないかの差しか無いものの。
多分三人共に、多かれ少なかれ不満を抱いているのは間違いない事実。
銀から言わせれば『
私達からしても……千景さん、という切り離せない相手がいることを含めて。
同居し続けている、という事実にこそ目を向けてしまっている。
だから、お互いがお互いを羨み合う状態。
自分がしていないことをしてほしくて。
それを望むには気恥ずかしくて、気付いて貰いたい。
……乙女心、と言うのは。
自分で理解してしまうと面倒なものだ、と小さく内心で息を吐く。
「須美?」
「わっしー?」
「……あ、うん。 ごめんなさい。 何だっけ?」
そんな私の顔を二人が不安げに覗き込み。
声を掛けている事に気付いたのはその直後。
表情を見てくれて、その上で言葉にしてくれたからなのか。
軽口のような色合いは薄れ、純粋に心配の成分だけが見えて。
それこそ、此方が申し訳ない気分でいっぱいになってしまう。
「いや、百面相してるからさ」
「百面相!?」
「笑ったり怒ったり……後は良く分かんない顔だったり?」
「だよなぁ?」
「だよね~」
一体どんな顔をしていたのだろう。
一周回って気になってきたけれど、私自身のことだから。
恥ずかしさもあって頬に熱を感じて、小さく咳をして誤魔化した。
「あ、いつものだ」
まぁ、この二人には通用しないのは分かっていますけど。
「で~?」
「……答えなきゃ駄目?」
「無理に、とは言わないけど」
気になるなぁ、と興味本位で問いかける。
普通の……他の相手には決して見せない態度。
そのっちは内心、自分にだけ分かる基準でだけど……相応に考えて動いているから。
今のこの態度も、……とまでは思えないのよね。
「天理くんのことと……
あぁ、と漏らしたのは……多分そのっちも考えていたからでしょうね。
友奈ちゃんは、ああ見えて……っていうのも失礼な話だけど。
私達を含めて、色んな人を見て気にかけて過ごしている。
その側面に重なるのは、私達にとって大事なあの人で。
そして、そんな彼女が。
気付けば無意識に、彼を目線で追いかけているのに気付いていたから。
『私……ちゃんと、口にしようと思うんだ』
彼が席を外している時。
風先輩と共に部活で出ている時。
そう言われたとき……『そうだろうな』と思わなかったと言えば嘘になる。
ただ、もやもやした感情が僅かに浮かんだのもまた事実で。
そして、その感情は――――もう
後で聞かせて貰いましょう、と三人で頷いたのもつい最近。
でも。
多分……妄想とかお話とか、後はそのっちがたまに書く小説とかで見かける通りにはならず。
密室で、女の子に誘われているのに。
彼は、答えを保留にしたのだと聞いていた。
「ま、アタシからすればそうなるだろうなー……とは思ってたんだけどさ。
友奈がいる前じゃ言えなかったけど」
銀だけは余り表情を変えないままで。
話題に上がったからこそ、という感じで。
壁に背をつけ、足を投げ出すように伸ばしながらも呟いた。
「どういうこと?」
「んー……なんていうかな。
多分……風先輩とか樹だっけ? あの二人もそれっぽい気はするんだけど。
友奈に関しては、アタシと同じように見てる節が昔からあったんだよ」
「昔から? え、でも」
「ああ、天理のバカの横顔からだぞ?」
ちゃんと聞いたわけじゃない、と前置きした上で。
「たまぁにアタシと遊んでた時、どっか遠くを見てることがあったんだよ。
って言っても段々とそういうのも減っていったし、最後は
巻き込まないように、近付けさせないようにでもするつもりだったんじゃないかなーって」
何してんだ、って言っても言葉濁してたしなぁ、なんて。
呟く銀の顔は、少しだけ寂しそうにも見えて。
もう少しそういう態度を見せれば違うんじゃないかな、と思ってしまう私もいる。
「でもでも。 結局こうなっちゃった訳だよね~?」
「そこだよなー」
「だったらさ、もう増えること前提でも良くない?」
「えー、また時間減るのか……?」
「ミノさんは贅沢だよ?」
打てば返る、二人の会話。
以前のような……なんでも無い、唯遊んでいたときの話とは変わってしまったけど。
”今、こうしていられるのが奇跡みたいなものだから。”
「はいはい。 だったらもう、いっそのこと……」
「わぁ。 わっしー、おっとな~」
「あー……まあうん、最近その辺に目線向くもんなぁ……」
彼を、私達から離さないように。
私達が、彼を離さないように。
その為に……目線を向けるくらいは、と。
すごく恥ずかしいし、護国の精神とは反しているのは分かっているけれど。
――――同じくらいに、溺れているのだ。
彼が、私達を思うのと同じくらいには。
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たかしー