葦原天理は巫覡である 作:氷桜
「ええっと……あ、彼処にも」
とてとて、と小走りで走る小さな後ろ姿を見送る。
その手には中程まで埋まった、様々な燃えるゴミに相当する物品が詰まっている。
ゆっくりと歩いていく、隣の顔色を小さく伺う。
目線を伏せ、普段の顔色の仮面を剥がした顔を隠そうともしない。
(……後で何かして貰わなきゃ、割に合わないわね)
『風先輩の方は
そんな用件を送ってきた……
立ち止まりながら携帯端末を覗いていた顔を持ち上げて。
頭上、私達の心境のように曇った天へと溜息を漏らした。
予め話を聞いていたとは言え、役割が余りに不向きだと何度も言ったのに。
そうするしかない、と言い切られてこうして三人。
余りに似付かわしくない顔触れで、外のゴミ拾いの手伝いへと出向いている。
こんな事、私には不向きだと言うのに。
そんな内心を表面には出さず。
良く見知った、けれど決定的に何かが違う顔をした少女。
■■友奈ではなく。
結城、という姓を持つ少女の歩みに合わせて歩幅を調整していく。
「……結城さん?」
「あ、はい。 どうかしましたか、千景さん」
『ぐんちゃん』。
そう呼んでくれた、私にとって大事な少女は今はいない。
そう呼んでくれた……同じ顔が沈んでいると。
どうしても、心の奥深くが引っ掻かれるように痛みを覚える。
「悩み事?」
そんな……聞かなくても分かることを口にしながら。
今も尚、彼の胸元に仕舞われているであろう人形を思い浮かべる。
本来は二度と会えない相手――――けれど、何の因果か。
その精神を持つ、神樹様と一体化したという彼女と
そして、同じ相手の傍に佇んでいる。
そして、同じ顔の少女もまた。
抱えている事、思っていること、大事だと思っていること。
それがお互いに行き違うことで、互いにとっての負担と……傷となっている。
(……
後に反省することになった、私と高嶋さんの関係性。
お互いの表面のみを見、話し合うこともなく……永久に分かたれてしまったあの人。
その『話し合う』事が大変だ、というのはわかっていても。
外から見るのと……当人とでは、感じることが違うのは自分自身で良く分かっている。
「いえいえ、そんな事全く」
「だったら、もう少し表情は取り繕ったほうが良いわよ。
……勇者部の皆だったら、誰でも気付くくらいには酷い顔してるから」
私自身がよく言えるものだ、と自嘲してしまう。
周囲の
もしかして、という両親の変化を最後まで信じ。
思い出したくもない村での出来事を経るまで。
そういった変化さえ、
「そんなこと」
「無い、って言える?」
視線を少し先へ。
正確には勇者部の部員ではない、私が知る中で最も年下に当たる学年の子。
恐らく……年齢には不釣り合いな程に賢い子、樹ちゃんが此方を見ている。
その表情は、明らかに私達を交互に見つめていたから。
足取りが重くなっていた彼女の手を引きながら、少しだけ歩幅を広げていく。
「…………」
手を引かれながら。
微かに、小さく呟く声色は私の耳へと届かない。
やはり、らしくない。
少なくとも、この数ヶ月同じ部活での先輩後輩として見てきた子。
嘗ての傷を幾度も擦るような、懐かしい思い出に近い部分を多く持つ後輩。
そんな相手の……私からすれば一番素晴らしいと思う部分。
笑顔を周囲に振りまき、周りの気分を上向きにするムードメーカー。
その面影が欠片もない、いつぞやにも見たような苦しむ姿。
私がこの子の分までお仕置きしてやりましょうか、なんて浮かんだりもしてしまう。
(……大事なことだってのは私も同意するし。
何より、こうなっている要因の一つにも関わってはいるけれど。
もう少しやりようあったんじゃないの、まーくん)
実際のところ、私と彼の関係を知らない三人への説明は妙なことになっている。
遠い親戚同士で、幾度か実家の方で会ったことがある相手。
そして家族が病で亡くなり、同じような立場である彼の元へと引っ越してきた相手。
だからこそ、名家の繋がりで共に暮らしている銀の面倒を見ている存在なのだと。
……その中で、結城さんだけは。
私と彼が親しい相手……端的に言うならば好意を持ち合う相手だと識っている。
彼女は態々私にも話をした上で、彼へと思いを告げたことを知っていたから。
何とも言えない、奇妙な状態を作り上げた一端が私にもあるからこそ。
こうして役割を引き受けた側面が無い、と言えば嘘になる。
「……皆も心配、してるかな?」
「まぁ……落ち着かないのは良く分かるけれど、ね」
ぽつり、と漏れた言葉に敬語はなく。
取り繕う余裕も曖昧な程に迷いを見せているのかもしれない。
……流石に一月は長すぎたんじゃない?
女の目線からすればそう思ってしまうし。
勇者の目線からすれば、致し方ないとも思えてしまう。
「でも、多分……もうすぐ答えを出すと思うわよ」
それは同時に。
彼女を否が応でも『勇者』の役割へと引きずり込む魔手でもある。
その大前提は。
大赦から派遣されている遣いは、覚悟を決めたと先程の連絡にあった。
つまり――――近々。
私達のもう一つの顔を示すということで間違いない。
「天理くんが?」
「……そうね」
その名前が、他から漏れると。
少しだけ、心の奥に痛みが走る。
既に記録として処理している、『私』を形作っている半分が浮かんでしまう。
彼の役割は、私も理解はしている。
けれど……それをただ受け入れられるかは別。
そして、周りの少女たちもそれは同じ。
「……そっか」
だから、少しでも。
私だけを見て欲しい。
――――人数が増えるだけ、その総量は減っていくのに。
「……そうよ」
自分一人で抱えずに、皆で一つの集合体を形成する。
それを受け入れ始めている、私がいる。
多分、それは。
嘗ての友達との間だから。
命を懸けて立ち向かう、今を生きる仲間との間だから。
(……でも。
ぶるる、と再びに携帯端末が振動した。
そして、それは目前に離れていた幼い後輩にも。
隣に佇む、小さな後輩にも届いたものだったのだろう。
内容へと目を向ける前。
もう一度、雲が染める空を見上げて。
(責任は取りなさいよ、まーくん)
私も。
彼女達も。
拒絶しなかった、全ての相手に対して。
望むものを返せ、と。
花束を構築した一つの根幹に。
摘まれた一輪の花からの、呪いの言葉を。
・ぐんちゃんがあの状態から自分の幸福を考え始められている、という時点で神二柱のカウンセリングは成功してます。
・お前友奈ちゃん待たせ過ぎなんだよ主人公ゥ!
活躍させたいキャラ上位二名
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若葉様
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ひなた様
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ぐんちゃん
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あんずん
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タマ先輩
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たかしー