葦原天理は巫覡である 作:氷桜
一段落(?)した後。
話す機会を設けるのは今週末、特に予定も無い平日最終日と相成った。
その際、話が長くなったり遅くなることは当然加味し。
夕食くらいはうちで……という話へと移ったのはまあ別の話として。
「……やっぱり辛かった?」
ある意味当然のように付いてきた三人。
そして我が家にて合流した一人。
普段も騒がしさ、と言う程のものでもない三人暮らしではあるけれど。
輪を掛けて静かに、言葉を発する事自体が億劫なように。
身と心を震わせて、一人でいることを拒んでいるように見えた。
「……そうもなるわよ」
「だよなぁ……」
ぴこん、と電子音を鳴らしながら携帯端末を眠らせる。
送っていた先は初代勇者達――――の名前を偽装した連絡先。
内容も単純、端的に。
予定日と、その日の予定。
後は
向こうでは今頃何か騒ぎになっている気がしないでもないが……まあうん。
明日の俺に負担を全部任せて、小さく息を吐いて見なかったことにする。
「私達の時とは色々と前提が違うとは言え、ね」
落ち着こうと淹れられたココア。
時間が在るなら久々に緑茶に手を出したのだが、余り目を離していたくはなかった。
そんな事を言い出せば……過保護、と笑われてしまうだろうけれど。
ある程度落ち着いた、とは言え。
面と向かって糾弾を受ける、という状況。
年齢的なものもあるだろうし、それに対して正しく受け入れられる状態でもないと辛い。
丸まった密集状態のような。
手や足、或いは首。
どこかしらに接することでやっと落ち着きを取り戻しているのは、嘗てと同じ。
(……ただ、そのちゃん辺りは
自身を俯瞰して、身体と精神を切り離している部分。
震え続け、恐れを思い出してしまった幼い部分。
口に出すことはないが、そういった精神的な管理に関して一番長けているのは彼女だろうから。
「昔は……何だっけ。 俺も聞いただけだけど、誰が勇者かを公開したりしたんだっけ?」
「必要がなければ断ってたわよ、あんなの」
天から現れた謎の生命体。
それらに対抗できる手段を持つ少女達。
大社、と名を変える前の組織が台頭し……そして不安を抱え続けた民衆を安定化させるための措置。
今となれば、それは明らかに利点と欠点を併せ持つ手段だったと言い切れるけれど。
嘗てで考えればそうする以外に方策が見えなかった、というのもまた事実。
……ただ。
その欠点に飲まれた当人からすれば、そんなことは知ったことではないと思うけれど。
「そういう意味では……三人のことが余り知られていないのは幸福でしょうね」
それに関しては深く同意する。
今の『名家』という形がうまく作用したと言うか……何というか。
災い転じてなんとやら、に似た感覚を受ける事。
「
今こうしている、こうなっていることから考えても。
もし彼女達が勇者だ、なんて公開されていたら。
……あの地震や橋の事故だけではない。
下手をすれば、汎ゆる災害……どんな小さな事故であってもその責任を押し付けられる。
名声という表面のみを受け取って。
実害のみを引き受ければ――――恐らくだが。
真っ先に美森ちゃん辺りは壊れていただろうから。
恐らく、感じたことは同じで。
「…………てんり、くん」
「はいはい、俺は此処にいますよ」
普段に比べて、明らかに弱々しい態度を見せている美森ちゃん。
自分の腕と足を思い出し、幻肢痛のような……既に掻き消えたはずの痛みを思い出す銀。
そして、それらを自分のせいだと纏めて思い込む園ちゃん。
三者三様の性格が出た現状へ、落ち着くまで肉体を差し出し。
四肢や首元への力が強まって、痛みのような感覚さえも浮かび上がる。
「あら、それは私達への皮肉?」
「分かっててそう言う事言わないでよ……」
唯一平然としているせんちゃん。
自分用のココアを口に運びながら、そんな事を口にしながら。
目線は変わること無く『俺達』を捉え続けている。
口では色々と言うけれど。
態度と、行動からして……後輩に優しいのは皆知っている。
だからこそ、銀と二人の時は何処か甘えている様子を見せるのだろうし。
彼女もまた、存在しなかった妹の面倒でも見るかのように親切に動き回る。
まだ出会って半年足らずだと言うのに……というのは、流石に言えることではないけれど。
「どうするの?」
「このまま帰すわけにも行かないけど……ずっとこうしてるわけにも行かないからなぁ」
家族と暮らしている黒髪の巫女。
流石に遅くなることくらいは告げなければならないが、現状離してくれるのだろうか。
移動しようと思えばほんの数分も掛からずに行って帰ってこれるのだが。
「私が……ってわけにもいかないわよね」
「まあ、もう少ししたら無理に引き剥がしてでも一回行ってくる」
距離が近すぎることの弊害の一つ、と言えるのかもしれない。
電話で済む案件であっても、直ぐに行って帰ってこれる以上は顔を見せることを望む。
特に、泊まる先が異性の家ともなればそれは余計に。
それの対抗策も……まぁ、同じように。
良く知り得ていて、納得できる相手が簡単に挨拶をすることくらい。
故に結局、移動するとすれば俺。
(友奈がもしいれば……ああいや、それなら東郷の奥さんも電話で納得するか)
思い浮かべた相手が相手で。
しかもその内容が酷いモノである、というのも正しく理解していたから。
今日、せんちゃんに任せてしまった暗い表情の少女。
何処か距離を取られている理由も、俺自身が原因だとハッキリ理解しているからこそ。
今週末付近。
何でもない週末が、関係性を定める重要な日程になるのは。
多分、言った側と言われた側……互いに理解していた。
「……女泣かせね」
「まっっったく嬉しくない評価どーも」
そして正しく、俺の表情からの言葉を読み解いて。
半ば呆れ、半ば本気で言葉を発した。
それ、良い意味合いの割合皆無な言葉だからやめて欲しい。
「まーくん」
「ん?」
そんな言葉の暴力に耐えつつも。
手元の飲み物へ何とか手を伸ばし、口をつけようとした矢先。
同じように両手でカップを支えたせんちゃんからの言葉が耳へ届く。
「言わないでも分かってると思うけど……。
ぎゅ、と掴まれる力が強くなって。
以前に――――彼女達と縁を結んだ時のことを思い出していた。
「大丈夫」
もう、何をどうするにしても。
俺の人生は、君達と共にあると定めているから。
「――――俺が、どう答えるかは決めてるよ」
友奈が……自分の役割を知ったとして。
どう振れるかは……曖昧にしか分からないけれど。
それを支えることだけは、決めている。
「そ」
果報者ね、と口にしながら。
揺れる目線を俺へと向けながら、何かを欲しがるように瞬きを繰り返す。
何も言わない。
何も言えない。
けれど。
こくり、と小さく頷けば。
目の前の少女と。
周囲の少女からの圧は、また一段と増し。
その分だけ……互いの距離は、近付いていた。
唇を、人工の灯りで――――艶めかしく照らしながら。
・こいつら中学生なんですよね。一応。
東郷さんに着せるならどれ?
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白無垢
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ウェディングドレス
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巫女服