葦原天理は巫覡である 作:氷桜
梅雨を通り越し、夏の暑さにも耐え抜いて。
特に夏休み中は忙しいらしかった三人とも会うことはなく。
その間はじっくりと学んだ知識と技術の復習を例の結界内で。
半ば趣味と化していた物作りに関しては、イネスのフードコートの片隅でちまちまと。
……やはり、家に居座ることは殆どなかった。
(何でか良く分からないけど……他に誰もいなくても、
本能的なモノなのか。
それとも直感的な何かなのか。
『家』にいるんだったら、一度だけ行ったそのちゃんの家のほうがよっぽど馴染む。
その感覚が日に日に増し始めたのは――――もしかすれば、二人の影響なのかもしれないが。
そんな、夏の残滓を未だに残した九月。
未だに起きるには早すぎる早朝際。
――――~♪
(…………ん~?)
唐突に電子音が鳴り、眠い目を擦りながら端末を手にとって確認する。
園:『や~っと許可が出た~!!!』
文字だけで疲労を訴える言葉。
その後に乱雑に貼られた絵文字。
俺:『……へ、何の話?』
いつもの連絡部屋に唐突に挙がった話題。
短文にも関わらず、妙に苦労を滲ませる文章。
ただ、それが何を示すのかは何も知らずに問い返す。
園:『私達がいつも忙しくしてたこと!
(…………ええ)
一体何をしたのか、どんな交渉をしたのか。
或いは権力でも振り翳したのか。
その相手が推測大赦である、という一点からして危険度が凄い。
鷲:『大赦が良く許可出しましたね……』
銀:『え、あの話冗談じゃなかったのか!?』
続々と返ってくる文章。
その誰もが文面を見て大なり小なり驚いているのが分かる。
……こんな朝早くから何をしてるんだろう、俺達は。
園:『本気だよ~?
……実際、『上里』の本家の方は
それに私達と同世代っててんくんしかいないから。
それなら分家を継ぐかもしれない子にも、って無理矢理通してもらった』
候補?
同世代?
俺はそういう部分……政治的な事とか家柄絡みからは完全に阻害されている。
だからこそ、そのちゃんが知っている当たり前のことを俺は知らない。
例えば、その本家が何をしているのか、とか。
鷲:『そういえば……でも』
園:『それ以上は今此処じゃ駄目~。
直接会って、話した上じゃないと面倒なことになっちゃうから~』
いつも通りののほほんとしたような文面。
ただ、彼女が真面目な顔をしてそれを打ち込んでいる姿を想像して。
少しだけ笑みと、感謝の気持が湧く。
俺だけが知らない、ということを気にし続けてくれた――――という意味で。
俺:『ありがと、そのちゃん』
園:『ううん、今まで言えなかったことでもあるし……。
言っておかないと、
後悔。
忙しい事、偶に見かける身体に負った傷。
……最悪の最悪も有り得る何か、か。
園:『だから~、てんくん。 今度の24日、時間空けてね?』
俺:『24日?』
日付を見て、それだけで判断できず。
暦を見て、其処に記載された印を見て。
ああ、と小さく納得した。
俺:『十五夜か、そういえば』
銀:『他人事みたいだけど祝ったこと無いのか?』
俺:『無い……な、俺以外は小さく月見とかしてた筈だけど』
向こうから声も掛けられず。
俺も何も言わずに。
障子一枚という分厚い壁に遮られ、何をするのかも良く分かっていない。
園:『だったら~……夜にやるから、和服でお願いね~?』
俺:『はいはい』
そこで一度文面を打ち切り、頭に手を当てて小さく息を漏らす。
……今年に入ってから、随分と世界の色が変わった気がする。
積極的に巻き込んでくる二人がいるからだろうか。
それとも、俺自身の考え方が変わったからなのか。
(…………相手が女の子しかいないけど、随分と息し易いんだよな)
絶対に他人には言えない、そんな感情を浮かべながら。
もう少し眠ろうか、と目を瞑ろうとすれば。
『天理よ。 少し良いか?』
…………脳裏に響く、ワカの声。
もうこれは眠れないな、と覚悟して目を瞑り。
最近やっとできるようになった、脳裏での会話へと没頭する。
『何? 寝たいんだけど』
『それは分かるが先に聞け』
恐らく人形が外に出ていればじろり、と睨まれただろう口調。
聞き流す、とまでは言わないがそれなりに慣れた言葉遣い。
『分かったよ、それで?』
『……まあ良い。 我が
それだけで、少しだけ話の重みが増した。
『……拝聴しましょう』
滅多な事で口にしないその単語が出た、ということは。
二人にしてみれば、絶対に伝えておきたいことと理解していたから。
『三人に、どんな形でも良い。
『我等…………って、ワカとヒメの事をか?』
『そうだ。 向こうが信じるか信じないかは構わぬ』
――――それに、どんな意味があるんだ?
恐らく、そう考えたのが向こうに伝わった。
いや、元から三人が秘密を話してくれるのなら。
俺も伝えるつもりでいた、という面もあるんだが。
『縁を繋げる。 神樹以外の神との縁を、だ』
――――やはり、何がしたいのかが良く分からなくて。
微かに、首を傾げていた。
*変更点
・(名家の分家という立場を鑑みて)勇者三人の精神安定を考えて伝える許可が出た。
・ただ、『知っている』だけで介入する方法も何も存在しない。
・他の名家は子が勇者に選ばれる=大赦での権力が増す、という思考が強い。
・なので、上里への一定の配慮を見せた、と捉えることも可能。
・無論、この時点で『葦原』は面倒を見ている相手が何処に出ているか把握済み。
但し相手が相手であり、始まりの関係性からして何も言えないでいる。
・尚、『他の神の結界』の影響から一時的に逃れる手段は入手済み。
「わすゆ」中編パートに於ける最終話ヒロインあんけ~と
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そのっち
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銀ちゃん
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わっしー