葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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幕間2-37

 

お互いの顔を見、微かに時間が止まった気もする。

 

友奈は知らない相手が多数、俺の家にいること自体に固まり。

樹ちゃんはその眼力と、声色自体に微かに怯え。

風先輩はそんな妹を護るように、僅かに腰を持ち上げて警戒した。

 

それに対し、四人の目線は全て友奈に向かっている。

 

……その理由と、外観の相似。

何方とも顔を合わせたのは、今を除けば俺だけだったが故に。

 

「……驚いたな」

 

「友奈にこんなそっくりなのかー」

 

「……向こうの友奈さんも何か言っていましたね」

 

「皆さん、相手方も混乱していますから……」

 

まあ、此方がこうなるのもある程度想定通り。

お互いの摺合せはいつかは必要だったし、それが今になったと言うだけで。

たかしーを除いた全員の顔と背景を知る四人は……まあ平然としていて。

だからこそ、俺を含めた知る側は少しばかり浮いていたと言って良い。

 

「……えーっと、誰? 私じゃない私?」

 

そんな中で、最も見られている友奈。

周囲に気を張る性格は未だに変わらない。

だからこそ、見知らぬ複数人にじっと見られても然程影響はない……のだが。

 

理解が及ばず、戸惑いが浮かぶのはどうしても避けられない。

俺から見ても、明らかに頭上に疑問符が浮かんでいる。

 

どうするか、と思いつつ若葉さんやひなたに目線を向けて。

私達に任せてください、という意思を読み取って口を閉じる。

 

「……先に自己紹介から致しましょうか。

 私は……上里ひなたと申します」

 

どうぞ宜しくお願い致します、と。

その姓が持つ力を理解した上で、正しく名を名乗り頭を下げる。

 

「乃木若葉だ。 表向きはまた別の性を名乗ってはいるが」

 

「土居球子だ。 タマでいーぞ」

 

「あの、えっと。 伊予島杏です」

 

上里、乃木、土居、伊予島。

それら四家は……正確に言うなら高嶋を加えた五家は。

現代まで続く、名家と呼ばれる家系であるのは誰もが知っている。

 

だからこそ、そう呼ばれるようになった理由の断片を理解している相手の反応は劇的。

 

「……え、どういう繋がりですか!?」

 

「園子……!?」

 

「あ~……そうだよねぇ、私を疑うよねえふーみん先輩」

 

同じ苗字を持つ相手。

よくよく見れば顔や雰囲気、その在り方。

幾つかが似通っている、隣に立つひなたと合わせれば()()()()()()()少女。

 

故に、最初に浮かぶのは親類か何か。

そうでないにしろ、名家がそのために裏で動いている……と考えるのが正常。

だからこそ、そのちゃんへと目線を向けたのだろうが。

 

「けどね、これに関してはてんくんが主体で動いた結果だよ?」

 

「は……いや、どんな手品を使ったわけ!?」

 

「手品……まあ、そうですね。

 ある意味では手品に近い行為と言うか、裏技に近い結果であるのは否定しませんけど」

 

まあ当然か。

どういう繋がりがあるのか、とか。

そもそもこの年代の名家の少女たちの話が一切流れていないのに此処にいることとか。

全てが疑問符で埋め尽くされていくはず。

 

「単純な話ですよ」

 

ぽつり。

外見上、(美少女であるということを除けば)目立つ所も余り見えない少女(ひなた)

けれど、その発する言葉は圧力と……同時に()()()()()()()()()モノがある。

 

恐らく、後天的に身に着けた技術か何か。

先天的に引っ張られる、背を追いたくなるのが彼女にとっての勇者であるなら。

それを支えるために学んだ方策、なのかもしれない。

 

「私達は()()名家……でしたか? それらに類するものでは有りません」

 

「というか、そんなことになるとは思っても見なかったしなー」

 

「私達もやれるだけはやってたけどね、タマっち先輩」

 

けれど、ある意味では更に重要度が違う。

存在するはずのない相手が今この場にいる、という事実。

時間跳躍か、そんなSFに似た技術を取ったのか。

それ自体を知られてしまうことがリスクになり得る存在達。

 

――――然し、黙っておくわけにも行かない。

だからこそ、今こうしてこの場にいるのだから。

 

「それより前、初代勇者に類する存在です。

 言い方を変えるなら……名家として名を残す切っ掛けとなった初代でしょうか」

 

無音のまま、数拍の呼吸が続いた。

その言葉を理解するまでに掛かる時間としては短すぎるほどの間で。

 

「は……は?」

 

理解できずに、頭から煙を出すかのような風先輩。

 

「え、っと……なんで今、生きてるんです、か?」

 

その言葉を理解しつつも。

初代勇者、と呼ばれる存在がどれ程古いのかは知らずとも、今いることが不思議だとは気付き。

思わず口から漏らしていた樹ちゃん。

 

「そんな人達がなんで私の名前を?」

 

正しく受け止めてはいるのだろう。

但し、それよりも気になったことを口にした友奈。

 

それぞれの疑問に対し、ゆっくりと答えを返していく。

 

「まず……今こうして此処にいるのは、東郷さん、園子さん、銀ちゃん……。

 それに千景さんに天理くんに救われたからです」

 

細かいことは後で説明します、と。

複数の目線が向けられたせんちゃんを庇うように付け加えられた言葉。

彼女自身は――――出来る限り目を合わせないように顔を伏せたまま。

 

「そして、私達が貴女を見る理由」

 

恐らく、良いのかという意味での目を向けられた。

こくり、と頷きを返しながら……懐から編みぐるみを一つ。

机の上に置き、全員に見えるようにする。

 

「……あれ、私……っぽいけど、違う?」

 

無論、その違いに最初に気づいたのも友奈当人。

幾らかの違い――――けれど、それが決定的な違い。

 

()()()()()()。 私達の友人で、仲間で……。 嘗ての勇者の一人で」

 

すう、と一度息を吸ったのが分かった。

 

「神樹様と同化を果たした、神へと成った人と瓜二つだからです」

 

ひゅっ、と。

誰かが詰まるような呼吸を吸い上げたのは、確かに分かった。

東郷さんに着せるならどれ?

  • 白無垢
  • ウェディングドレス
  • 巫女服
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