葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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幕間2-38

 

その後に行われたのは、話し合いというよりは一方的な説明と言ったほうが正しい。

 

初代勇者達が現在存在している理由。

その際に力に成った巫女達。

彼女達がその間に知った事象についての共有。

現在に至り、そして今後どうしていきたいかについての相談。

 

そして。

 

「……葦原」

 

「はいなんでしょう」

 

「黒幕気取って楽しいかー!?」

 

「そんな事欠片もしてねーんですけど!?」

 

ついには熱暴走(オーバーヒート)したような様子で風先輩がキレた。

流石に卓袱台を挟んで反対側だから、というのもあるのだが。

上から手を伸ばそうとするのと、身体を引いて逃げようとする俺。

向こう側でも妹と友奈に抑えられつつ、明らかな態度を見せつけている。

 

いやまあ、俺でもそうはなると思う。

実際外から見ると俺の動き怪しすぎるし。

他の……それも大赦に伝えていない部分での()()度が凄まじいことに成ってるし。

そしてそれを名家の子女や内側の巫女が知り、協力しているという有様。

自分が道化か何かに見えるよね、うん。

 

実際、反対側の友奈の目線が強まっているのも確か。

返答できなかった理由は察して貰えたようだが。

同時に、()()()()()()()()()()()()()に対しての文句も含んでいそう。

 

……そういう所があるから、巻き込みたくはなかったんだけどな。

絶対に無理だと分かっていても、思ってしまうところはある。

 

ぎゃーぎゃーと騒ぐ俺達を、何処か微笑ましく。

同時に苦笑いを浮かべて見守る四人。

懐かしさ、と言うよりは羨ましさに近いのだろうか。

その心の奥底までは確認することは出来ないまま。

 

「お、お姉ちゃん!」

 

「何よ樹!」

 

「恥ずかしいからやめてー!」

 

妹の必死の言葉で何とか暴走は止まり。

変に俺の家も荒れずに済み。

深い深い溜息が一つ、俺の隣から漏れる。

 

「……元気ね」

 

「それだけで済ませるせんちゃんもせんちゃんだよ……?」

 

「実際そうでしょう?」

 

ぜいぜい、と荒れ模様の中での小声の会話。

恐らく何名かには聞こえたが、対岸陣には聞こえなかったらしい。

もし聞こえていたら……と考えるとゾッとする。

 

「……千景さんも変わりましたね」

 

「そう?」

 

「友奈さんがいた頃に比べると、ずっと」

 

今こうしてみて、改めて思ったことなのだろうか。

以前にも聞いたような言葉が杏さんから聞こえて。

良いことなんですけど……と良く分からない悩み方をしている。

 

「え~っと~」

 

どうしたものか、と空いた空白。

滑り込むように言葉を発したのは、のんびりとした口調のそのちゃんだった。

 

「てんくん、言ってた修練……だっけ?

 それについてはどうするつもりだったの?」

 

但し、その内容は実務的。

もう少し言うなら互いには伝えていても今擦り合わせなければいけないこと。

 

銀は呆れてるし、美森ちゃんは笑ってるだけだし。

気付いていて放置されてたのかこれ。 泣くぞ。

 

「あー……あー、そうだな、それに関しても考えてたことあったけど言ってなかったな」

 

ただ、そんな内心を外に漏らして良いこともない。

なので他の幾人かと同じように、一時的に仮面を被って対応する。

誰かがこの状態を気付けるのか、と言えば……まあそれなりにいるのだろうけど。

全員が全員、今は抑えてくれる()()()ばかりだからこそ見逃されている。

 

「そう言えば言ってたわね。 大赦絡みじゃないとか言ってたけど……まさか」

 

「そのまさかですよ」

 

バッ、と目線を向けたのは四人に関して。

より正確に言うなら、若葉さんに対して。

うんうん、と頷いていることから理解は及んでいる様子で。

同時に風先輩は物凄く何かを言いたそうな顔で此方を睨んできた。

 

「修練……です、か?」

 

ただ、そんな中で置いていかれているのは今日話を聞いた二人。

その中でも、肉体を鍛えたこともない樹ちゃん。

友奈は父親からの武術という下積みがあるから、幾らかマシとは言え。

何も言わずに放り込まれていて身体が動かせたのか、と言われるとちょっと謎が残る。*1

 

「んー……アタシの実体験の話をするけどな。

 初めて勇者服を着て動いた時、普段の何倍もの力で動けたんだ。

 ただ、その分転びかけたり勢い余って森に突撃しちゃったりもあったからさ」

 

「私も……生身で弓を引くのとでは色々と勝手が違ったわね」

 

「あ~……うん、懐かしいなぁ。 ()()()()()()()()()()じゃ使えないんだよねえ」*2

 

三人が思い出しているのは、恐らく昔行われていた……と言っていた集合してのものだろう。

そこで初めて勇者服を身に着けた、とも言っていたからこそ違いに気付けたのは間違いないとして。

問題は……扱う武具さえもわからない二人(しまい)なんだよなぁ。

 

「……そうなのか?」

 

「そうなの、わかちゃん」

 

照れた顔……と言うよりも真っ赤な顔で何か言っている若葉さんを横目に。

恐らくは今と昔の勇者服としての決定的な差、()()()()について言及する。

 

「多分……精霊、って言うか防御能力の差……かなぁ。

 それに近いのは間違いなくありそうなんだけどね~。

 一番違うのは、同じ勇者服……同じアプリを使っても、その出力は()()()()()()()ってところ」

 

武器、武具の扱い方は生身でも基本は確かめられる。

が、基本はどの程度振り回せば自分を傷つけないかなどの習熟程度に落ち着く。

 

と言うよりその辺の細かい技みたいなのは趣味で突き詰めていく方が正しいはずだ。

何しろ、相対するのは人ではなく神の使い。

対人として磨かれてきた部分のある技よりも、ある程度力や連携で押し切るのが正しい部分も大きい。

無論、個人的な行動の流れを組むこと自体は止めないし……寧ろ大賛成なのだが。

 

「……さっき葦原が言ってた、器の差異ってそういう事?」

 

「ですね。 汲み取る力が強ければ、その分勇者服を着た際の倍率も上がるはずです」

 

無論、変換値自体は一定にしているのだろうが。

その総量差は間違いなくに有り、そして最も大きいのは間違いなく友奈。

 

「だから、友奈」

 

「あ、うん。 私に出来ること?」

 

故に、こいつにさせるべきは生身での動きの錆を取るのもそうなのだが……。

 

「お前に関しては強制的に付き合わさせる。

 ……多分、その合致度なら間違いなく通るからな」

 

「……え?」

 

「夏休み、強制特訓コース行き。 風先輩と樹ちゃんも、()()()()()やらせて貰う」

 

勇者服を着た上での動きの習熟。

そして、それが確実にできるのは今のこの場ではなく精神世界。

つまり――――神樹サマの作り出した、あの場所で確かめる。

 

「それまでは……基礎体力でも付けましょうか。 基本的な部分は若葉さんに丸投げします」

 

「最後の最後で雑だな、天理」

 

「そりゃそうですよ……俺、運動能力並ですもん」

 

出来る人に、出来ることを丸投げする。

まだまだ動く必要はあるが……隠していたことは、とりあえず吐き出せた、かなぁ。

*1
原作アニメではこの辺り失敗もありましたが……ある程度対応できていた事も考えると、

先代勇者達(銀その他)達の訓練データのフィードバックもあったんじゃないかと想定しています。

そうじゃなきゃ急にあんなに動けるのが怖いわ。

*2
当作品一部独自設定。




・銀の遺したアプリ継承争いから考えても、恐らく当人にあった形で進化収束させる事は出来ると仮定しています。
・ただ、現状はそもそもそのアプリ自体を保持していない(開始前時点では持ってるので二学期入って以降)、という前提で当作品は進行。

・……と言うか、一話の風先輩と言い後半の樹ちゃんと言い武具扱う適性高くない?その辺も込みで選んでます大赦???

東郷さんに着せるならどれ?

  • 白無垢
  • ウェディングドレス
  • 巫女服
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