葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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幕間2-41

 

実年齢、という観点から見れば遥かに上。

精神年齢……眠っていた間、という観点から見ればほぼ同い年。

 

だから、なのだろうか。

 

あの日の顔合わせ、その翌日の修練以降。

お互いの趣味や性格と言った部分から見た場合、似た部分を多く持つ相手とは直ぐに仲良くなり。

自分達が持つ/相手が持たない知識や此処最近の流行り、嘗ての流行り。

そういった部分での交流が深まり始めたのは。

 

(悪いこと……では全く無いよなぁ)

 

例えば……分かり易い部分で言うならそのちゃんと杏さん、美森ちゃん。

それに加えて、最近の銀とせんちゃん……ひなたに樹ちゃんも加わるか。

 

つい先程まで行われていた読書会。

好きな本を勧め、勧められた本の感想を述べながらお茶を飲む。

自分で書く側であれば批評を受けたり、その場で即興で書き上げたり。

そんな当たり前の、文芸部とかそっちの活動に近い行動も始まっていた。

 

(部活の後の自由時間だし、問題は全く無い)

 

――――僅かに問題として、それが行われるのは我が家か一軒家のほぼ二択というところ。

必然的に俺も顔を出し、招かれて参加することもそれなりに多い。

少しずつ 少しずつ侵食されている俺の身の回りだが、もう諦めたほうが早いのか。

 

気(・)付(・)け(・)ば(・)傍(・)に(・)誰(・)か(・)が(・)い(・)る(・)、というのは。

嬉しさも当然にあるが……恐怖を感じないわけでもないのだから。

 

既に六月も中旬。

友奈とのあれこれも一応は片付いて終わり。

事情も説明し、顔合わせも終え。

残る一人に関しても、たかしーを介して伝言だけは伝えはした。

 

(出来ればしたいことはあるんだけど。

 唯……大赦に属する巫女を外へ、ってのは難しい……よなぁ)

 

たった一人、内側で足掻き続ける後輩。

神樹サマに仕える巫女に対し、唯家の権力のみを持つと思われている男性が近付く。

そんな話は、恐らくは上の立場……統括する先輩辺りから先ず行っている筈。

 

にも関わらず、直接的に向こうの家からの接触がないのは。

単純に此方を警戒しているからか。

或いは、接触を拒もうとしても役割として接してしまうからなのか。

 

既に将来の道筋は塗り固められている。

今の俺があの場所へと出入りできるのは、その前提が存在するから。

 

引き継がれてこなかったことを引き継ぐ勉強。

嘗てで言うならば神職……或いは宮司に近い存在になる為の継承。

自分に合いはしている、と奥底で感じるものも有るのは確か。

 

ただ……それは俺が外の景色を見た上で、自分から選んだから納得できるもの。

 

才があるから。

家がそういった家系だから。

幼い時より『そう』あれと決められていた彼女。

 

……そんな子に、少しでも人間らしさを取り戻したいと思ってしまうのは。

彼女を変えてしまった、俺の義務にも近いのかもしれない。

 

(……向こうの精神世界。

 同時に亜耶も顔を覗かせる筈。

 ……たかしーの事も含めて。 失敗だけは許されない、か)

 

彼方此方に飛ぶ思考の破片(おんなのこたち)を思い返しながら。

ふぅ、と漏れた吐息は既に色も付かない時期。

 

ただ棚引いたそれが天へと昇っていくのだろう、と無意識に上を向き。

暗闇の中、周囲を僅かに照らす人工的な灯りの下。

外と内、というはっきりとした分かち合いの中に佇みながら。

 

そっと、隣から伸びた手が手へと絡み。

暖かい、仄かな体温を感じる。

 

「……どうしたの?」

 

「んー……いや。 ちょっと色々思い返してただけ」

 

「思い返す程の事?」

 

「……出会ってから、ずっと濃い日常だったでしょ?」

 

最近の日常が妙に濃い、と言ってしまうのならば。

小学校の後半から今までに関して、知り合う相手が増える度にその濃さは増していたのだし。

その中でも、幾度も逢(・)瀬(・)を(・)交(・)わ(・)す(・)からこそにその濃さを増す相手達もいる。

……と言うよりは、ほぼ全員が似たようなものか。

 

「私が隣にいるのに?」

 

「貴女が隣にいるからこそ、ってことで」

 

露骨に不機嫌、と見せる少女。

それに対しての応酬は、軽口の叩き合いと言ったほうが正しく。

不(・)機(・)嫌(・)で(・)す(・)、と示す手先の行動は。

絡められた、指先の根本に走る痛みが告げている。

 

「私だけのこと考えてた?」

 

「……それは、まぁ。 うん、そういうことで」

 

「全く」

 

変わらないね、と告げる長髪の少女。

 

変わってしまったらそれはそれで色々言ってきそうではあるのだが。

沈黙は……金だったか、銀だったか。

口に出さなくても良いことは出さない、という賢明さは多分三人から学んだと思う。

 

そんな会話と。

そんな温もりを互いに分かち。

何方ともなく、歩き始める。

 

彼女の――――美森ちゃんの生家ではなく。

俺の――――今も中で楽しげに声が聞こえる家の中でもなく。

向かう先は、俺がこっそり用意していたアパートの一室(ひみつきち)。

既に場所はバレ、けれどある種の聖地として置いておかれていたそんな部屋。

 

「……本当に、あの部屋でいいの?」

 

「良いのよ……今日だけは、ね」

 

其処を望んだのは俺ではなく、隣の少女。

 

そうなった理由も、以前の契約が理由で。

其処を選んだ理由も、二人きりになれるからとのこと。

そして、明日以降は両親が土日と出かけるからこそ家へ誘われていて。

言葉にしているのかは不明だが……何処か受け入れられている気がしないでもない。

 

「ずっと待ってたんだもの」

 

手に吊るした布袋の中身は、汁が漏れないようにした上で詰め込んだ手料理と。

後は俺自身が知らされていない、半分程の中身を占める何か。

 

家を出る時、極自然に……当然のように泊まる気でいるそのちゃんが笑っていたのがどうも不安。

だからこそ聞いても、『後の楽しみ』としか言われないのはどうなのだろう。

 

「……そうでしょう?」

 

「……そうだね」

 

順番に。

順々に。

 

口頭でなく、ある種の儀式として。

そうすることを望んだ少女達だから。

 

――――同じ部屋で、美森ちゃんと夜を明かす。

 

学校で口にすれば始(・)末(・)されかねない、そんな贅沢な数日間。

その始まりは……こんな、たった二人での逃避行のような姿から幕を開けた。




・初代勇者達もこういうのやったほうが良いんじゃろうか。次章以降だけど。

他メンバーもメイン回でこういうの欲しい?

  • よこせ
  • いらん
  • 全員やれ……!
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